散日拾遺

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野球のことと酒のこと ~ 朝刊紙面から

2017-01-12 07:48:29 | 日記

2017年1月12日(木)

 ラヂヲ体操が始まる時にはまだ暗いが、終わるときにはあらかた明るんでいる、そんな陽の巡りである。西の方に住んでいる家族のところでは、ラヂヲ体操が終わってもまだ暗いだろう。殊に松山市北部は東側に山があり、その頂に陽が昇ってはじめて朝が来るので。

 年が明けて新聞の連載記事が改まり、「あの夏」では昭和34年準々決勝の徳島商vs魚津高を扱っている。板東英二と村椿輝雄、スコアボードに0が36個並んだ伝説の名勝負、この大会で板東は通算83個の三振を奪い、これは現在も破られていないという。今後も、まず破られないかな。仮に一大会で多めに6試合戦うとして、一試合平均14個の三振を取らないといけない。ほとんどあり得ない数字で、金属バット導入以後はそれ以前に比べ打撃側が有利にもなっている。数字も数字だが、登場する人物が軒並み戦争の惨禍をきわどく生き延びた人々であることが眩しい。板東は満州の生まれで4人きょうだいの末っ子、「いつ置いていかれるか、倒れるかわからない」引き上げの道程、神戸にたどりついたのは1947年春だったという。魚津高校の監督をつとめた宮武英男はさらに遅れて48年の秋の帰国、やはり旧満州で運送会社に勤めており、シベリア抑留の憂き目を見た。「地獄のようなところから日本に帰ってくることができ、好きな野球をやれて生き生きしていた」と夫人の追憶。30回の連載が楽しみである。

 連載小説も改まった。今朝はその11回目。

 「人が酔っていくというよりも、運ばれてくる徳利の酒がすでに酔っているようでして、その酔った酒を酔った人間が飲むのですから回りは早うございます。」

 長崎を舞台にした凄惨なやくざの抗争を描く筆致の、流麗な手弱女ぶりに目を見張る。「酒がすでに酔っている」「酔った酒を酔った人間が飲んで回りは早い」・・・言い得て妙、レトリックのようでいて実はこの上なくリアルなのだ。千利休のものとされる、こんな格言が思い出される。

 一杯は人、酒を呑む/二杯は酒、酒を呑む/三杯は酒、人を呑む

Ω 


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