散日拾遺

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先生の遺書(百五)/弟子への手紙 ~ 牛のススメ

2014-09-18 07:36:21 | 日記
2014年9月18日(木)

 私の良心はその度にちくちく刺されるように痛みました。そうして私はこの質問の裏に、早く御前が殺したと白状してしまえという声を聞いたのです。

△ 英文学者の漱石は、ポーなどに対してどんな評価をもっていたんだろう?

 私はその新しい墓と、新しい私の妻(さい)と、それから地面の下に埋められたKの新しい白骨を思い比べて、運命の冷罵を感ぜずにはいられなかったのです。

△ 「新しい」という形容詞がつなぐ三つのもの、その連関と対照が鮮やかで恐ろしい。

***

 漱石は筆まめだった。生涯で約2500通の手紙を残している。亡くなる年の夏、門下生の芥川龍之介と久米正雄に、続けて3本も手紙を書いた。
 「勉強をしますか、何か書きますか。君方は新時代の作家になるつもりでしょう。(略)しかしむやみに焦ってはいけません。ただ牛のように図々しく進んでいくのが大事です」(8月21日)
 「牛になる事はどうしても必要です。われわれはとかく馬にはなりたがるが、牛にはなかなかなり切れないです。(略)あせってはいけません。頭を悪くしてはいけません。根気ずくでおいでなさい。世の中は根気の前に頭を下げることを知っていますが、火花の前には一瞬の記憶しか与えてくれません。うんうん死ぬまで押すのです」(8月24日)

 ~「漱石こんな人」より

***

 Le talent n'est qu'une longue patience. Travaillez!
 (才能とは長い忍耐以外の何ものでもない。精進せよ!)

 フローベールがモーパッサンに与えた励まし・・・確かそうだ。

 

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