ヒルネボウ

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腐った林檎の匂いのする異星人と一緒 34 ゲーム(STAGE40 浜辺)

2024-02-08 23:39:49 | 小説

   腐った林檎の匂いのする異星人と一緒

    34 ゲーム(STAGE40 浜辺)

掌島の地下の泉の岸に舞台がある。そこに、人魚はあなたの肉体を押し上げる。

古い蝋燭に灯が灯る。舞台の奥の洞窟の前にある椅子の上で、おばあさんが生まれる。

あなたが死んでいるから、おばあさんは生まれることができる。

おばあさんは、あなたの脚と人魚の尻尾を取り変えてやる。

「なぜ脚が欲しいんだい?」

「歩くためだよ」

「なぜ歩くのかい?」

「靴を履くためだよ」

「なぜ靴なんか……」

「歌を集めるためだよ」

人魚、いや、人間になった姫は、靴を探しに出かける。

人魚のあなたは息をしない。おばあさんは、あなたを水に戻す。渦を巻く水。やがて渦は消え、水面に蝋燭の炎が映る。

オンディーヌ・ジャンプ! 

一回転半。飛び散る水滴。

あなたは人魚として蘇り、掌島の砂浜で悠々と裸身を曝す。

あなたが藪に身を隠すのは林檎を齧るときだけだ。ママの真似。

日が沈む。日が昇る。

朝の光を浴びて、あなたの傷口あるいは欠落の全部がぱくぱくする。

あなたは、そんなあなたを許せますか。

許せるのなら、そろそろ、帰りましょう。

「どこへ?」


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