回文
～カルト
過失 いつしか
（かしつ いつしか）
カルト推し 劣るか
（かるとおし おとるか）
ドキン 本気度
（どきん ほんきど）
僕笑む 靨
（ぼくえむ えくぼ）
（終）
聞き違い
～真似
for you 朋友
management 真似苛め
achievement ああ恥部舐めて
hot dog 掘った土偶
（終）
モロシになりそう
～紅葉狩
垂れ下がる枝が気になっていた。
今日こそ切ろう。
一番長い鋸を選ぶ。
ところが、行ってみると、その枝がない。
辺りを見回す。
それらしいのが、木から少し離れた所に打っちゃってある。
自分以外の誰かが切るはずはない。
切り落とした枝を誰かが左から右へ動かしている。
そんな場面が思い浮ぶ。
夢のようで、灰色。
見たことのない男だ。
見たことのない服を着ている。
視点は彼から一メートルも離れていない。
自分の記憶なら、腕ぐらいしか見えないはずだ。
誰かの作業を見ていたとしても、そんなに近づけない。
折角持って来たから、鋸を使った。
同じぐらいの高さで、横に張り出した枝を切る。
鋸屑が目に入った。
こんな体験は初めてだ。
切り終えた枝を古い枝の上において戻る。
あの枝を自分が切ったとしたら、数日前だろう。
その記憶がない。
思い出そうとすると、さっきの記憶が阻むようだ。
阻むばかりか、重なるようだ。
仕分けできない。
真新しい記憶が偽の古い記憶に変わりつつある。
あの枝は自分の重みで垂れ下がったらしい。
その先が地面に触れていた。
門のように見えていた。
誘うようでもあり、拒むようでもある。
折れかけて、半分だけ、幹と繋がっていた。
葉っぱは生きている。
幹と枝との白い裂け目が瘤になった。
だから、切るのをためらったか。
だから、切ってやろうと思ったか。
枝の位置が高かった。
高枝切りを使うほどではない。
あれだと却ってやりにくかろう。
最初から一番長い鋸を使えばよかった。
いや、これは鈍っていて、しばらく前から使わないでいた。
枝のことと鋸のことで迷っていたか。
迷う理由は他にもあったか。
切りたい本当の理由は何だったか。
はっきりしない。
あの枝を自分で切ったとして、どの鋸を選んだか。
何も思いつかない。
誰かが切ったと考えてみる。
彼の姿が少しずつ鮮明になる。
鋸を立てて持っている。
ぎざぎざの刃がこちらを向いている。
私はじっとしている。
（終）
回文
～理解
御意見番 今晩 敬語
（ごいけんばん こんばん けいご）
轡 ざわつく
（くつわ ざわつく）
怒りを理解
（いかりをりかい）
鐚一文 用い 旅
（びたいちもん もちい たび）
（終）
野遊び
～草刈唄
ハア。
草を刈る。
草を刈る。
要らない草を刈る。
邪魔な草を刈る。
ハア。
纏わりつくから。
ちくちくするから。
虫が棲むから。
蛇が潜むから。
ハア。
「お化けだぞお」と言ってるみたい。
だから、刈る。
ええい。
こいつめ。こいつめ。
ハア。
刈っても、刈っても、
きりがない。
後から後から生えてくる。
ええい。
こいつめ。こいつめ。
ハア。
あいつめ！
こうしてやる。こうしてやる。
こうしてやればよかった、
あのとき、あそこで、あいつを。
ハア。ハア。ハア。
（終）
