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ヒルネボウ

笑ってもいいかなあ? 笑うしかないとも。
本ブログは、一部の人にとって、愉快な表現が含まれています。

萌芽落花ノート  47 バラを隠して

2025-06-15 23:26:04 | 

  萌芽落花ノート

  47 バラを隠して

ぼくたち 少年少女は 未来を信じます

今日という日を直視せず

昨日という日を回顧せず

未来という日を透視します

誰もいない荒野に腹這って

虎狼のような叫びをあげません

ぼくたち 少年少女は 爆弾を投擲しません

爆弾の軌跡を優しく氷漬けにした薔薇の花束を運搬します

僕たち 少年少女は 花束から抜いた薔薇の花を一輪 携帯します

見えない薔薇の花を

〔薔薇携帯に関する規定〕

1 この薔薇は少年少女にのみ携帯を許される。

2 この薔薇を他人に譲渡することは許されない。

3 この薔薇を紛失した場合、少年少女の資格は剥奪される。

4 成人後、この薔薇は枯らさねばならない。

5 この薔薇の有効期限は一季節とする。

6 少年少女は薔薇を隠して歩かねばならない。ちくちく、バラは痛いけど。

(47終)

 


野遊び ~皮手袋

2025-06-06 00:33:12 | 

   野遊び

   ~皮手袋

このあたりのどこかに皮手袋を置き忘れた。

そのはずだが、見当たらない。

見付けやすいように、少し高い所に重ねて置いた。

腐った丸太の上だ。

腐った丸太は、沢山はない。

そもそも、ここは広くない。

猿が持ち去ったか。

人間の手は取り外しができるとでも思ったか。

自分でやってみたが、うまくいかず、怒って噛み千切った。

人間様だって、できないときはある、手袋に限らず。

切れ端は川に流れ去ったか。

でも、全部ではなかろう。

何切れか、残っているはずだ。

考え過ぎだな。

明日、晴れていたら、探しに来よう。

発見したときの驚きや喜びを想像しながら歩き回ろう。

(終)


萌芽落花ノート  46 夕闇

2025-06-05 01:37:25 | 

   萌芽落花ノート

   46 夕闇

ぶよぶよの四辺形は

円錐形に接する

ト措くと

うんこしたくなる

美しい日本のふるさとは

慢性カタルでさ

だから 

ねえ 君

ちょいと そこらを歩かないか

お知り合いになりたいから

(46終)


萌芽落花ノート  45 デンポー

2025-06-01 17:48:40 | 

   萌芽落花ノート

   45 デンポー

ボクタチワモウトモダチデワナイノダヨ

ボクタチワモウトモダチデワナイノダカラ

ワライナガラボクノホホヲタタイテワイケナイヨ

ボクタチノホソイカイナワコイビトドオシノヨウニムスバレテイナイノダヨ

キミニワモウタツタイツポンノウデサエナイノダヨ

ウツクシククグモルヨウナコエデ

きみのことがすきだよ

ナンテイツテミタイボクワマダココニイルケド

キミガソウイワレタガツテイルカラダヨ

ホホエンデルネ

キミワシツテイルンダ

ボクタチワトモダチデワナカツタノダヨ

(45終)

 


萌芽落花ノート 44 酷寒

2025-05-26 00:15:12 | 

   萌芽落花ノート

   44 酷寒

ああ わたくしはおまえの谷間へと雪崩込む一握りの石炭殻だ

おまえは一度だってわたくしの母であったことがあったか

風ではなく 葦笛のように

おまえは飛ぶ鳥を真似ている

飄々と

わたくしは小指を立てる 

おまえは人差し指を

あはは 鬼だ 鬼だ

一度も聞いたことのない協奏曲にかぶれたおまえは

わたくしを産み直す 何度も 何度も

おまえの父は遠い北国の荒れ地を耕している

わたくしの父は遠い北国の荒れ地のようだ

別の季節 冬ではない季節になれと

おまえはわたくしにねだる

だが わたくしは おまえの父にはなれない

そして おまえは わたくしの母になれない

おまえは おまえに似た娘を欲しがっている

その娘は 水車小屋で春を待つ

折り目正しい娼婦だ

娘は 紙幣のような愛をねだる

世界中で通用する紙幣のような愛を

それは 腐った紐帯だ

ああ わたくしは耕すことを知らない農夫だ

夕暮れには おまえの背にしがみつき 家路を辿る

「お家が どんどん 近くなる 近くなる

今来たこの道 戻りゃんせ 戻りゃんせ」

(44終)