ヒルネボウ

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2021-12-30 23:49:02 | 評論

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「こころ批判」と『夏目漱石を読むという虚栄』予告」を纏めました。

goto ミットソン〈夏目漱石批判予告2種〉Microsoft Word - 1óy$‹J2..docx (wakwak.com)


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腐った林檎の匂いのする異星人と一緒 28 受話器

2021-12-30 17:17:39 | 小説

   腐った林檎の匂いのする異星人と一緒

       28 受話器

久しぶりに夢を見た。

……飛ぶ夢。

でも、前のとは違う。前は飛ぶのが怖かった。夜更けの、あるいは夜明け前の、あの夢は怖くなかった。浮かぶようで、滑るようで、流れるようで、ほどけるようで、漂い、揺らめき、捧げ、溶けるようで、届けるようで…… 

嘘。

譬えは嘘。いつだって、そう。

飛ぶ夢なんか見なかった。飛ぼうとしたら電話のベルが鳴った。電話は夢じゃなくて受話器の感触は本物。

話を聞きながら眠り込んだ。何の話だったか、思い出せない。相手が誰だったか、思い出せない。

じゃあ、あれは夢? 

じゃあ、何、今、握っている、これは? 肘掛け? 靴? 幼い頃、斜面を下りるときに縋った、あの撓う横枝? 杖? もしかして、ピストル? 

軽くなりたい。薄くなりたい。消えてしまいたい。

眠りたい、夢など見ずに、光に花が運ばれるように。

(終)


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聞き違い ~お天気

2021-12-28 15:22:23 | ジョーク

    聞き違い

      ~お天気

血で血を洗う 地デジを笑う

おっとどっこい 夫どこへ

歯槽膿漏 思想朦朧

お天気お姉さん おできを治さん

(終)

 

 


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夏目漱石を読むという虚栄 目次

2021-12-28 15:22:23 | 評論

 

『夏目漱石を読むという虚栄』目次

 

はじめに~文豪伝説の終わりのために

第一章 イタ過ぎる「傷ましい先生」

第一節 文豪伝説

1 正直な感想から始めよう

   〈意味〉の意味/SとKと静とPを紹介しよう/Sはスネ夫のS

2 読むと貧弱になる『こころ』

   超短編の羅列/アララな人/『こころ』批判も意味不明

3 わかったつもり

   浅い理由と深い理由/「明治の精神」は時代精神ではない/痩せ我慢

4 恣意的な読み込み

   文豪伝説の主題/ありすぎる主題/間違いだらけの翻訳のよう

5 「恐ろしい影」

   もう一人の自分/さもしき玩具/「自分の頭がどうかしたのではなかろうか」

第二節 語り手は嘘をつく

1 夏目語

  「意味は、普通のとは少し違います」/「みんなは云えないのよ」/自分語と個人語

2 理解について

   「私を理解してくれる貴方」/「解釈」と「理解」/『やまなし』

3 作者と作品と語り手

   読者に擬態/鶏と卵/作品と異本

4 怪しい語り手たち

  「奥さんは今でもそれを知らずに」/「誤魔化(ごまか)されて」/「解釈は頭のある貴方に任せる」

5 自己完結的

   二重思考/丸投げ/「殉死」の「意義」

第三節 あらすじすらすらすらと読めない

1 「上 先生と私」のあらすじ

   解けない謎はない/「恋に上(のぼ)る階段」/仮面夫婦

2 「中 両親と私」のあらすじ

   「本当の父」/「立場」/看取りと読み取り

3 「下 先生と遺書」のあらすじ

   自殺の動機は不明/詐取は被害妄想/三角関係はなかった

4 異本のあらすじ

   「これが先生であった」/常識としての美談/「自叙伝」の真相

5 不図系

  「思い出した序(ついで)に」/複数の〈自分の物語〉/「不図(ふと)した機会(はずみ)」

第四節 ありもしない「意味」を捧げて

1 支離滅裂

   統合失調症あるいは精神分裂病/二種の隠喩/「矛盾な人間」

2 作家ファーストで何四天王

   何四天王を紹介しよう/太宰治/芥川龍之介/宮沢賢治

3 慢語三兄弟

   小林秀雄/江藤淳/吉本隆明

4 忖度ごっこ

   昭和のいる/野口さん/井戸茶碗

5 夏目宗徒

   読めない「人間の心」/読めない『Kの手記』/読めない聖典

第五節 さもしい「淋(さび)しい人間」

1 尻切れ蜻蛉

   自殺の美化/小説のような夢/『壷坂霊験記』

2 Sの「死因」

   主人公はK/「寂寞(せきばく)」/「失恋」と「死因」

3 隠者ハッタリ君

   窮状の露呈/中途半端な人/逆さまの隠者

4 「覚悟」とか「主義」とか「人生観」とか

   「私の眼に映ずる先生」/「強い事実」/「人世(じんせい)観(かん)とか何とか」

5 淋しい夏目語

   「貴方も淋しい人間じゃないですか」/「淋しい笑い方」/パニック障害

 

第二章 不純な「矛盾な人間」

第一節 冒頭から意味不明

1 「私(わたくし)はその人を常に先生と呼んでいた」

   「私(わたくし)」は意味不明/「その人」と「常に」/「呼んで」は二股

2 「先生」は意味不明

   「先生先生と呼び掛けるので」/「若々しい書生」/「先生先生というのは一体誰の事だい」

3 夏目宗

   若者宿/「見付出したのである」/最上級の尊称

4 「此所(ここ)」はどこ? 

   「ただ先生と書くだけで」/「受け入れる事」/「自分で自分の心臓を破って」

5 「本名は打ち明けない」

   「先生」はあだ名/「名もない人」/P的人間

第二節 不自然な「自然」

1 第一段落を読む

   「世間を憚(はば)かる遠慮」/「筆を執っても同じ事」/「呼び起すごとに」

2 不確かな「記憶」

   「記憶のうちから抽(ひ)き抜いて」/夢のような「記憶」/「ところがその晩に」

3 「良心」

   「私の自然を損なったのか」/「良心の命令」/「自然」と混乱

4 「私の自然」

   「平生」と「自然」/意志系/自然派と写生文

5 「記憶して下さい」

   複数の「その人の記憶」/「こんな風に生きて来たのです」/見捨てられそう

第三節 「恋は罪悪ですよ」

1 姦通罪

   『厭世詩家と女性』/不義はご法度/『みだれ髪』

2 「先生の罪悪という意味は朦朧として」

   「冷評(ひやかし)」/「恋の満足」/「黒い長い髪で縛られた時の心持」

3 「恋」

   「たとい慾を離れた恋そのものでも」/『ロミオとジュリエット』/『男組』

4 被愛願望

   女性崇拝/『罪と罰』/被愛妄想的気分

5 「本当の愛」

  「罪悪」かつ「神聖」/『近代の戀愛觀』/「信仰に近い愛」

第四節 「精神的に向上心がないものは馬鹿だ」

1 「精神的に向上心がないものは馬鹿だ」

   「向上心が」「精神的に」「ない」/立身出世/「精神的に」しか「向上心のないもの」

2 「馬鹿」の含意

   「さも軽薄もののように」/「恋の行く手」/「単なる利己心の発現」

3 「馬鹿」と「軽薄」

   「人間のどうする事も出来ない持って生れた軽薄を」/死刑宣告/文豪は「馬鹿」だった

4 「ぐるぐる」

   不合理な二者択一/ドラマティック・アイロニー/「子供扱い」

5 継子いじめ

   『弱法師』/母性喪失症候群/『摂州合邦辻』

第五節 明示できない精神

1 謎めいた『こころ』

   「自由と独立と己れ」と「明治の精神」/「家庭の事情」と「オタンチン、パレオロガス」/   『ペ』

2 明治はまだ終わっていない

   「天皇に始まり天皇に終わったような気」/死ねば? /ボッチの夢

3 和魂洋才

   言文二途/分裂病的/造語

4 「継続中」の「精神」

   「どうかこうか生きている」/「外発的」/「不安」

5 「主人(あるじ)」

   「父」と「叔父」とK/倭文子と静子と静/ナオミズム

 

第三章 窮屈な「貧弱な思想家」

第一節 死に後れ

1 『だくだく』

   『粗忽長屋』/『千早振』/神経病

2 自己嫌悪

   『金明竹』/「アカチバラチー」/『昭和維新試論』

3 「直感」とか「直覚」とか

   「近づき難(がた)い不思議」/「馬鹿気ている」/論より証拠

4 窮屈な思想家

  「貧窮問答歌」/空っぽの「思想問題」/「世間に向って働らき掛ける資格のない男」

5 いんちきな「思想家」

  『貧困の哲学』と『哲学の貧困』/『国家制度とアナーキー』/自分の影

第二節 「近づく程の価値のないもの」

1 「一種の失望」

   「何処かで見た事のある顔の様」/「相手も私と同じ様な感じを持って」/認知的不協和 

2 正体不明の「先生」

  Dの代役/「先生の顔が浮いて出た」/「一人の西洋人を伴(つ)れて」

3 『運命論者』

  額縁であるべきP文書/「運命の恐ろしさ」/みゆき現象

4 「その妻を一所に連れて行く勇気」

  「代表者」/『みれん』/教訓の色眼鏡

5 隠蔽体質

  パシリ・メロス/「教育相当の良心」/「トチメンボー」

第三節 明示しない精神

1 逆説的勧善懲悪主義

  『文芸と道徳』/『坊っちゃん』の誤読/ゲゼルシャフトとゲマインシャフト

2 スタイル

  「奇々怪々の妖魔文章」/「よいどれ語」/スキゾフレニア

3 受動‐攻撃性格

  「いや考えたんじゃない」/言外の意味/素読の弊害

4 「覚悟」宣言の前後

  『転失気』/「現代一般の誰彼(だれかれ)」/『茶の湯』

5 「覚悟」宣言

  暗流の「その人」/『猫の皿』/「金魚売らしい声」

第四節 「自由と独立と己れ」の交錯する「現代」

1 「自由」について

  自由・平等・博愛/人間は自由か/「自他の区別を忘れて」

2 「独立」について

  「インデペンデント」/傲慢/「オリヂナル」

3 「己れ」について

  『プライドと偏見』/利己主義と利他主義/許容使役

4 「自分を呪(のろ)うより外に仕方がないのです」

  現代病/『イロニーの精神』/「二人の間にどんな用事が起ったのか」

5 『山月記』

  「我が臆病な自尊心と、尊大な虚栄心と」/人虎伝ブーム/カニバリズム

第五節 日本近代知識人のエゴイズム

1 いけない「イゴイスト」

  つるしあげ/エリート/エゴチスト

2 日本近代個人主義思想の限界その他

  個人主義と利己主義/エゴイズムと私情/空き巣狙いの個人主義

3 個々人の主義

  「撲殺し合う」/民本主義論争/ポピュリズム

4 「現代」は意味不明

  現代あるいは近代/近代精神/「母のない男」

5 「義務」と「権利」

  「個人主義の淋しさ」/「追窮する勇気」/『権利のための闘争』

 

第二部 恐ろしく恐ろしげな「意味」

第四章 『吾輩は猫である』から『三四郎』の前まで

第一節 笑えない『吾輩は猫である』

1 「吾輩は猫である」は意味不明

  五つの意味/「吾輩」は意味不明/モザイク

2 「名前はまだ無い」

  猫かわいがり/「文学者」は僭称/「どこで生まれたか」

3 「書生」はダミー

   泣き真似/「ニャーニャー」/「家族的生活」と父権

4 「吾輩は死ぬ」

   「有名」/「理性」がない/口封じ

5 「太平」を求めて

  喫茶去/「大和魂」/「ヴァイオリン」

第二節 本当は怖い『坊っちゃん』

1 「親譲りの無鉄砲」は意味不明

   「弱虫」の武勇伝/「親譲り」の「親」は誰か/「ろくなものにならない」

2 養子妄想

   「駄目(だめ)だ駄目だ」/「おれを製造して」/「御婆(おばあ)さん」と「御母(おっか)さん」

3 複数の物語を跳び回る

   「あんまりないが」から「今考へても」/妄想的な語り手/映像化に不向き

4 俳文のようなもの

   狂気と自虐/鏡像としてのD/聞き手不在

5 「うらなりとはなんのことか」

   「しろうるり」/「うらなり」は自分語/自分語の共有演

第三節 臭い『草枕』

1 ばらける知情意

   「智(ち)に働けば角(かど)が立つ」/「情(じょう)に棹(さお)させば流される」/「意地を通(とお)せ   ば窮屈(きゅうくつ)だ」

2 ウケ狙いの名文もどき

   「屁をいくつひった」/「探偵(たんてい)」はいない/「屁」のような「罪」

3 「非人情」は非自然か

   漂流する思考/「神経が過敏なのかも」/「芝居」と「技巧」

4 「着想」のみ

   「どこへ越しても住みにくい」/「詩人という天職」/「胸中の画面」

5 夢のような伏線

   俳句は意味不明/「出(しゅっ)世間的(せけんてき)」/直訳的語法

第四節 『二百十日』など

1 会話の基本

   『ボッコちゃん』/「私を愛してくれるものと」/イヤミの同類

2 脳内会議

   デーモンたち/「迷信の塊」/『ホームレス中学生』

3 こじらせタイプ

   『ダイナマイト節』/「深い原因」/「単純でいい女」

4 寛容と横暴

  「思想とか意見とかいうもの」/「意見」について/「同じ孤独の境界」

5 『虞美人草』

   「病気」の甲野/「恐ろしい悲劇」は妄想/「真面目」は意味不明

第五節 ボッチは恥

1 「還元的一致」

   「意識の連続」は意味不明/仲良しごっこ/「一を聞いて十を感ずる人」

2 「失恋」は恥の「象徴」

   英文学者か/象徴と暗示/「赤い本」

3 真善美荘

   独特の手法か/「荘厳に対する理想」/生半可

4 何様?

   コノテーション/愛の定義/『大衆の反逆』

5 恐れ系

   「断られるのが恐ろしいから」/恐れなど/「何らの理由なくても感ぜられる恐怖など」

 

第五章  一も二もない『三四郎』

第一節 「母」と「あの女」

1 「新しい女」

   あこがれの近代的自我/塩原事件/陰険な専横

2 「現実世界だとすると」

   「大変な動き方」/「三四郎の自信」/「自分の世界」

3 物語のない「世界」

   「異性の味方」/「母」と「花」/エクソシスト広田

4 「囚(とら)われちゃ駄目だ」

   「ベーコンの二十三頁(ページ)」/「別の世界の事」/「亡びるね」

5 「偉大なる暗闇」

   「のっぺらぼう」/教養主義/セクトごっこ

第二節 三四郎の「世界」

1 「三つの世界」

   「母」の墓/「立退(たちの)き場(ば)のようなもの」/冬彦さん

2 「第二の世界」

   「現世を知らないから」/広田式「翻訳」/「婦人席」

3 「第一の世界」

   「囚われちゃいけませんよ」/「主人公であるべき資格」/白抜きの「主人公」

4 綯い交ぜ

   「世界を掻き混ぜて」/『ゴドーを待ちながら』/「彼女の夫たるべき唯一の資格」

5 「ピチーズ アキン ツー ラッブ」

   『オルノーコ』/「失われたる人の子」/「露悪家」

第三節 BLっぽいのが好き

1 男色文化

   「友愛の敵」/『人を恋ふる歌』/男らしさの証明

2 男組

   東西のゲイ/男性恐怖/『ヰタ・セクスアリ』

3 硬派と稚児

   ゲイ・バー/『稚児之草子』/『幸せのポートレート』

4 潜在意識の共有

   副次的自我/「あッ悟った」/『エンジェル・ウォーズ』

5 隠れ軟派

   「羽二重(はぶたえ)の胴着(どうぎ)」/「何でも話し合える中」/「個性の一致」は観察不能

第四節 「ストレイ シープ」

1 「迷える(ストレイ)子(シープ)――解って?」

   和製英語や学生言葉/「一種の屈辱」/「解らないようでもある」

2 どっちもどっち

   「我が罪は我が前にあり」/「迷(ストレイ)羊(シープ)」/『東京ラブストーリー』

3 「迷える(ストレイ)羊(シープ)」と「迷(ストレイ)羊(シープ)」

   「森の女」/蒟蒻問答/野狐禅

4 小生意気な女

   天探女と天邪女/女菩薩と女夜叉/「ポアンカレの説によると」

5 原典『眼医者の女』

   井上メイサ/被愛願望と自惚れ/メイサと再会

第五節 「偉大なる心の自由」

1 「表面にあらわれ易い事実」

   「昔の事」/「政治の自由」/リバタリアン

2 「麦酒と珈琲」

   「自由」の価値/「囚われたる心」/第四の世界

3 「自由行動」

   「無分別に」/気ままとわがまま/「たいへんなまちがい」

4 個人の主義

   「自我とか自覚とか」/入我我入/空想的個人主義

5 「現実よりたしかな夢」

   積極的自由と消極的自由/『不如帰』/「他(ひと)本位」対「自己本位」

 

第六章 『それから』から『道草』まで

第一節 『それから』の「減らず口」

1 『君たちはどう生きるか』

   『私たちの望むものは』/日馬富士と貴ノ岩/八紘一宇

2 アンパンチ! 

   詭弁/バベルの塔/『向上心』と『人はなんで生きるか』

3 「国家社会のために」

  『正義派』/「頭の中の世界と、頭の外の世界」/社会のような家族

4 スローガン

   ヒステリック/おんぶに抱っこ/『ドイツの悲劇』あるいは『茶の湯』/威張って使う代用品

5 恋愛と友情

   「議論はいやよ」/「愛の炎を見出(みいだ)さない事はなかった」/『泣いた赤おに』

第二節 門外漢の『門』

1 必要な罪悪感

   空っぽの物語/「厭世(えんせい)的の影」/『真景累ケ淵』 

2 落花狼藉

   コキュあるいは神/「尋常の言葉」/困難な—恋愛小説

3 相互監視

   不倫は文化/『テレーズ・ラカン』/「天罰」

4 『門』と『道草』

   破れ鍋に綴じ蓋/『道草』の原型/『現代人は愛しうるか』

5 「父母(ふぼ)未生(みしょう)以前(いぜん)本来(ほんらい)の面目(めんもく)」

   「少しばかり学問をしたもの」/『兵法家伝書』/「チーン」

第三節 僻み過ぎたまでの『彼岸過迄』

1 「意地の強い男で、また意地の弱い男」

   自意識/自意識過剰/「母が僕を生んでくれた事」

2 長すぎる春

   須永市蔵の物語/「必死の緊張の下に」/「自分らしいもの」

3 〈嫉妬〉の二つの意味

   「私よりは優勢に」/意味不明の「嫉妬(しっと)」/「血属」

4 「技巧なら戦争だ」

   「僻み根性」/コケットリー/惚れたら負け

5 「黒い長い髪で縛られた時の心持」

   正体不明の「叔父」/髪のパワー/「奥さん」と「母」

第四節 どこへも行けない『行人』

1 呪術的あるいは超心理学的

   嫉妬妄想/「夫に責任の大半を譲(ゆず)るつもりか」/『趣味の遺伝』

2 「看護婦」たち

   「興味」/「わがままと嫉妬(しっと)」/略奪婚

3 「露骨に云う事」

   「義侠(ぎきょう)心(しん)」/「色情狂」/「物を偸(ぬす)まない巾着(きんちゃく)切(きり)」

4 パオロとラーンスロット

   「自然の法則」/フランチェスカは語る/エレーナとグネヴィア

5 被愛感情

   『狂気の愛』/妄想ではない被愛感情/『エディプスの恋人』/勘違い野郎

第五節 近道の『道草』

1 毒親

   「何だかちっともわかりゃしないわね」/「鷹揚」と「寛大」/「心得のある人」

2 「行きづまり」

   蘇る虐待の記憶/「自分の生命を両断しよう」/「家というものの経験と理解」

3 「独(ひと)り怖(こわ)がった」

   「緋鯉(ひごい)」/「焼け出された裸(はだか)馬(うま)」/「すかしておいて」

4 「他人の生活に似た自分の昔」

   テニス・ボール/「愛想(あいそ)を尽かされて」/「自分の事とは思えない」

5 男の「理窟」と女の「発作」

   「忌(い)み嫌う念」/「同じ道」/「緩和剤」

第三部 「明治の精神」あるいは「影像(イメジ)」の「精進」

第四部 検閲より校閲

(以上)

 

 


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夏目漱石を読むという虚栄 5550

2021-12-27 23:40:59 | 評論

   夏目漱石を読むという虚栄

5000 一も二もない『三四郎』

5500 「偉大なる心の自由」

5550 「現実よりたしかな夢」

5551 積極的自由と消極的自由

 

自由には二種ある。積極的自由と消極的自由だ。両者は、〈「自由」対「かってきまま」〉のように、〈一方がブラスで、もう一方がマイナス〉という関係にあるのではない。

 

<みずからが思いどおりに主体的選択をしようとすること。「~への自由」として定式化することができる。

(『ブリタニカ国際大百科事典』「積極的自由」)>

 

「~への自由」の反対は〈~からの自由〉だろう。

 

<と云って、進まぬものを貰いましょうと云うのは今(きん)代人(だいじん)として馬鹿気ている。

(夏目漱石『それから』十三)>

 

「進まぬものを貰いましょう」と言わないのが消極的自由だ。

 

<多くの自由主義思想家たちは、この自由の概念こそが唯一の「自由の名による自由の抑圧」につながらない最小限の自由の本質であるとみなしているが、自由が他者の自由と衝突し放埓に堕落しないために、どこまで強制を認めるかで見解が分れる。

(『ブリタニカ国際大百科事典』「消極的自由」)>

 

「自由が他者の自由と衝突し」ないための公式みたいなものは、ないはずだ。

 

<フランス革命によって平等は自由と並んで民主主義の基本理念となり、19世紀中頃までは自由と平等は矛盾しないと考えられてきた。なぜならば、ブルジョワは自由を経済活動の自由と考え、平等を概念的平等ないし権利行使の平等と考えていたからである。しかし次第に、このような自由は社会的、経済的不平等をもたらすことがわかってきたため、19世紀以降社会の不平等是正が先進国の大きな政治的課題となった。

(『ブリタニカ国際大百科事典』「平等」)>

 

「大きな政治的課題」を軽視するN式個人主義への隷従は個人の自由だ。

 

<戦争は平和なり

自由は隷従(れいじゅう)なり

無知は力なり

(ジョージ・オーウェル『一九八四年』)>

 

〈「罪悪」は「神聖」なり〉と宣言したつもりなら、Sは自己矛盾に陥っている。自己矛盾ですらないのなら、「気が狂った」(下五十六)と見なすべきだ。

 

 

 

 

 

 

 

5000 一も二もない『三四郎』

5500 「偉大なる心の自由」

5550 「現実よりたしかな夢」

5552 『不如帰』

 

「偉大なる心の自由」は意味不明だが、解釈は考えられる。それは〈愛する義務からの消極的自由〉だろう。〈誰かを愛するための積極的自由〉ではない。

明治になって〈恋愛結婚〉という考えが輸入された。だが、恋愛結婚が主流になるのは、いわゆるトレンディー・ドラマが流行した1980年代ではなかろうか。やがて、結婚を前提としない恋愛が普通になった。〈初恋の人同士で結婚する〉なんてのは、二十一世紀の日本では、困難というより、世間知らずみたいに思われているのかもしれない。

〈自由恋愛〉という言葉は明治にもあった。しかし、それは「恋愛を放縦なものとして言った語」(『広辞苑』「自由恋愛」)であり、〈淫乱〉の同義語だった。性行為を伴わなくても、道徳的には「罪悪」だ。昭和の恋愛は、いくら奔放のようでも、結婚を前提としたものだった。そうではない恋愛は、『同棲時代』(上村一夫)で描かれたように、異常なものと思われていた。〈元カレ〉などという言葉を女性が平気で口にするようになったのは、二十一世紀に入ってからではなかろうか。

 

<片岡陸軍中将の娘浪子(なみこ)は、海軍少尉川島武男(たけお)と結婚したが、結核にかかり、家系の断絶を恐れる姑(しゅうとめ)のお慶(けい)によって武男の留守中に離縁される。2人の愛情はとだえなかったが、救われるすべのないまま、浪子は、もう女なんぞ生まれはしないと嘆いて死ぬ。

(『日本大百科全書(ニッポニカ)』「不如帰 ほととぎす」吉田正信)>

 

明治の常識では、自由恋愛は不良のすることだった。しかし、三四郎は、そうした常識のせいで恋愛に踏み切れないのではない。彼は、自分のために準備されている「第三の世界」から拒まれているように感じているのだ。不合理だろう。

三四郎が「ラッブ」をどのようなものと考えているのか、よくわからない。「細君一人を知って甘んずるのは、進んで自己の発達を不完全にする様なものである」(『三四郎』四)という文が意味不明だからだ。この「細君」はお光と決まっていて、〈結婚後も、妻以外の女性と自由恋愛をしたい〉という含意がありそうだ。しかし、独身の三四郎にこんなことを考える余裕はなかろう。〈複数の女性と自由恋愛をしてから、その中の一人と結婚したい〉というように誤読できなくもないが、この場合でもまだ余裕がある。普通の若者なら、〈相手は誰でもいいから、とにかく一度は自由恋愛をしてみたい〉と願うのではなかろうか。

 

<先月大磯へ行ったものに両三日前東京で逢うなどは神秘的でいい。所謂(いわゆる)霊の交換だね。相思の情の切な時にはよくそう云(ママ)う現象が起るものだ。一寸聞くと夢の様だが、夢にしても現実より慥(たし)かな夢だ。

(夏目漱石『吾輩は猫である』六)>

 

頑張れば、夢は現実になる。だが、「現実より慥(たし)かな夢」をあえて「現実」に変える動機はなかろう。「第三の世界」が拒んでいるのは〈夢よりも不確かな現実〉の誰かだろう。

 

 

 

 

 

5000 一も二もない『三四郎』

5500 「偉大なる心の自由」

5550 「現実よりたしかな夢」

5553 「他(ひと)本位」対「自己本位」

 

「自己本位」は夏目語らしい。いや、自分語らしい。Nにとって特殊な意味があるのではなくて、確かな意味がないようだ。

 

<その時の彼は他(ひと)の事を考える余裕を失って、悉く自己本位になっていた。

(夏目漱石『門』十七)>

 

「他(ひと)の事を考える余裕を失って」いるだけであり、悪意や害意はなかろう。

 

<私はこの自己本位という言葉を自分の手に握ってから大変強くなりました。

(夏目漱石『私の個人主義』)>

 

〈「言葉を」~「握って」〉は意味不明。「自分の」は不要。どう「強く」か。

 

<吾々の書生をしている頃には、する事為す事一として他(ひと)を離れた事はなかった。凡てが、君とか、親とか、国とか、社会とか、みんな他(ひと)本位であった。それを一口にいうと教育を受けるものが悉く偽善家であった。その偽善が社会の変化で、とうとう張り通せなくなった結果、漸々(ぜんぜん)自己本位を思想行為の上に輸入すると、今度は我意識が非常に発達し過ぎてしまった。

(夏目漱石『三四郎』七)>

 

広田が語っている。三四郎が聞かされている。読者は読まされている。私はつらい。

「他(ひと)を離れ」は意味不明。

「他(ひと)本位」は意味不明だが、この逆が「自己本位」だ。

「それ」は「他(ひと)本位」か。「教育を受けるものが悉く偽善家であった」は〈「教育を受けるものが悉く偽善家」になってしまうの「であった」〉の略と解釈する。

「社会の変化」の内容は不明。「思想行為の上に輸入すると」は意味不明。「輸入すると」とあるから、「自己本位」を英語に戻すと、〈エゴイズム〉だろう。しかし、〈エゴイズム〉にはいろんな意味があるので、この語を睨んでも埒はあかない。「我意識」は意味不明。

広田は「自己本位」を批判している。では、彼はNの論敵か。不明。

英国留学中、Nにコペルニクス的転回が起きたように思われる。だが、「主観が客観に従うのではなく、逆に客観が主観に従い、主観が客観を構成する」(『広辞苑』「コペルニクス的転回」)というふうに変わったのではない。三四郎の「世界」は、「現実」を空想する三四郎自身のために仮設されたものだ。

「我々は西洋の文芸に囚(とら)われんが為に、これを研究するのではない。囚われたる心を解脱せしめんが為に、これを研究しているのである」(『三四郎』六)という意味不明の宣言によって、作者は虚偽の暗示を試みているはずだ。〈「文芸」は享受者である自分を「解脱せしめんがために」発信されている〉という被愛妄想を下手に語ったものだろう。

(5550終)

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