回文
~庫出し
備蓄米 混ぜては手狭 今口火
(びちくまい まぜてはてぜま いまくちび)
関税か 倍買い飼い葉 改善化
(かんぜいか ばいかいかいば かいぜんか)
快男児 庫出し堕落 甚大化
(かいだんじ くらだしだらく じんだいか)
コミカルね 淫行懇意 寝るか巫女
(こみかるね いんこうこんい ねるかみこ)
(終)
回文
~庫出し
備蓄米 混ぜては手狭 今口火
(びちくまい まぜてはてぜま いまくちび)
関税か 倍買い飼い葉 改善化
(かんぜいか ばいかいかいば かいぜんか)
快男児 庫出し堕落 甚大化
(かいだんじ くらだしだらく じんだいか)
コミカルね 淫行懇意 寝るか巫女
(こみかるね いんこうこんい ねるかみこ)
(終)
漫画の思い出
花輪和一(36)
『つむじ風』
面白くなくはない。原典があるのかもしれない。
『狗尻(いぬじり)』
ある男の尻に犬の頭部が生えては消える。これは「尻狗」と呼ばれる。「尻狗」が男根の象徴であることは明らかだが、男根も何かの象徴だろうから、象徴に象徴が重なって解釈は困難だ。
少年が何かを盗み見る場面から始まる。この少年は、主人公の「幼い姿の亡霊」とされる。男は生きているのだから、「亡霊」には意味がない。「亡霊」は〈嫌な記憶〉のことだろう。
*
……しかし なぜ 己自身の亡霊につきまとわれねばならぬのだろう……?
(『狗尻』)
*
因縁は語られる。だが、真因は不明だ。
*
この人だろうか…?
あの人が 亡霊をうむような あやまった育てかたをしたからかも知れん
(『狗尻』)
*
「この人」は女のように見えるシルエットとして登場するだけだ。勿論、彼の母だが、その事実は明らかには表現されない。「うむ」の主語は「己自身」だ。「あやまった育てかた」の実態は語られない。
やや突然に、両開きの逆光の風景が描かれる。意味不明。この絵は、『朱雀門』のカバーに用いられている。
作者は、いくつかの物語を手当たり次第に繋いだのかもしれない。
*
こんな日は昨年 狼狩りに行った時の事を思いだす
夕刻の帰途、寺にでも 詣でるらしい親子に 出合った
冷たい風を さけるように 身を寄せ合って歩く姿はあまりにも 見苦しかった
幸いあたりに 人影もない
母親の 見ている前で、童の足を つけねから 一本切りおとし(ママ)やった
これで 少しは こりて 見苦しい ふるまいは つつしむであろう
これまでいかに 見苦しいふるまいを 気づかずに 続けてきたか
今はじめて 気がついたのであろう
二人は狼のような 声でうめいていた
しばらくして 足を切られた子供など いらんと言って
母親が風のように 逃げ去っていく姿に
やはり親子ならではのことと 己はうたれたのであった
家に持ち帰った狼と童の足の肉を 下部(しもべ)に料理させ
菜とともにゆでて あの人に食らわせてやったのだった
「たいそうよき味に」
などとのたまって 喜び食べまいらせたが
実はかくかくしかじかとて 骨など見せるに
「ウゲゲェッ」
などとのたまって
このようなむごい 仕打ちをなさるとは 人とも思えぬなどと
たいそう落胆したようすで……
これまでの信仰生活が まったくむだになってしまった なさけないなどと
申されて庭に とびだした
知らなかったとは申せ このような穢(けがれ)多きものを 食らろうてしまっては
仏のおしえにそむいたことゆえ もはや極楽浄土にはゆけん そなたの尻に出てやる
などとのたまって 乱れた
「うくくくっ おもいしったか! これでもう 亡霊に なやまされなくてすむのじゃ」
あの人は毎日毎日 かたかたと ふるえていたが しばらくして 死んだのだった
なきがらは 鳥部野に捨てた
夏もさかりのことゆえ ことのほか 虫が多く ふと梢には 地獄ぐもがいるではないか 五色の糸のかわりに この地獄ぐもの糸を手に…… この糸にみちびかれ きっと地獄にまいられよと 祈ったのだった
ああ…… よきことをした 心もちも晴れ晴れ 虹が出ても おかしくない心もちだった なぜならこれで 亡霊と縁が切れたからなのだ
うれしくて家に帰ると風も出て来て 几帳(きちょう)があおられた すると まだやっぱり 亡霊はいたのだった
(『狗尻』)
*
このあたりの物語が漫画になっていない。作者は「あの人」の姿を描けないのだ。
この後、不意に語り手が変わり、「狗尻」を見てしまった少女が語り始める。
結末はない。
(36)
書評
『シン読解力 学力と人生を決めるもうひとつの読み方』(東洋経済新報社)
著者 新井紀子
7 「第1章 チャットGPTの衝撃」(1)「読画」
新井はソ系語を濫用する。
*
それは、私にとっても衝撃でした。
(p18)
*
「それ」の指す言葉が見つからない。
「とっても衝撃」とある。「も」が怪しい。他の誰にとっても「衝撃」だったのか。
次の段落に含まれた「ここは無理だから」(p18)の「ここ」が指す事柄は不明。
その次の段落の「そこ」(p18)の指す事柄も不明。
もしかして、「とっても」は〈とても〉の強調か。
こんなふうに一々指摘していたら、きりがない。
「衝撃」の原因は、チャットGPTによる「イラスト理解」(p19)だ。
しかし、「イラスト理解」は読解力だろうか。思考力や判断力などではないのか。もしかしたら、思考力などは「シン読解力」の一部なのかもしれない。
*
このような進歩は、AI研究の進展だけではなく、「教師データ」があってこそ達成されます。
(p19)
*
「このような」は〈「イラスト理解」「のよう」〉と解釈しておく。
*
[図1-1 大学入試センター試験英語リスニング問題]
2人が話し合っています(実際の問題では、以下、英語)。
「新しいアニメのキャラクターを考案しないと」
「そうだね、野菜なんてどうかな」
「悪くない。でも、より強い印象を与えるために翼をつけよう」
「いいアイデアだね」
この会話の結果できたキャラクターを次の4つから選びなさい。
(p20)
*
そして、イラストが並ぶ。下手な絵だ。
*
「教師データ」とは、文字通り、AIの先生役となるデータのことです。
(P21)
*
「文字通り」は意味不明。
「教師」と「先生」の関係が不明。「教師データ」と「先生役となるデータ」が同じなら、〈「教師」=「先生役となる」〉ということか。だったら、日本語になっていない。
「AIの先生役」は、勿論、意味不明。
次の文で少しだけ説明してあるが、わからない。
*
たとえば、写真とそこに写っているものの名称のペア(例:りんごが写った写真と、「りんご」という名称)をたくさん集めたものが教師データになります。
(p21)
*
「写真とそこに写っているもの」の例が「りんごが写った写真」だとすると、「りんごが写った写真」は〈「写真とそこに写っている」「りんご」〉と記すべきだろう。この程度の相違は無視してよいのか。よいとしたら、なぜか?
なぜ、「たくさん集めたもの」なのか。一個の「ペア」は「データ」にならないのか? ならないとしたら、何個から「データ」になるのか。
この「なります」は接客商売用語か。例えば、できたコーヒーを置きながら、〈これがコーヒーになります〉というときの〈なります〉と同じ意味か? つまり、「教師データになります」は〈「教師データ」です〉と同じ意味か。
*
ですから、AIの精度向上のカギとなるのは教師データの質と量、さらにその膨大なデータを学習するための計算資源、つまり「コンピューターの性能と台数」です。
(p21)
*
「カギ」は「事を解決するのに必要な要素」(『広辞苑』「かぎ」⑤)という意味とは、少し違うようだ。
「さらに」は唐突。
「計算資源」は専門用語だから、まったく解説になっていない。この「資源」は「供給源」(『リーダーズ英和辞典』「resource」)という意味らしい。
〈「教師データの質と量」=「計算資源」=「コンピュータの性能と台数」〉とまとめていいのか? いいとしたら、私には何のことか、さっぱりわからない。
この次も理解できない。
*
医療現場では、放射線科医の不足に常に悩まされていますから、AIを開発するインセンティブが医師の側にも、医療機器メーカーにも、AI研究者にもあるので、莫大な投資が行われてきました。つまり、画像認識の精度向上は経済学的に「自然」なことだったのです。
(p21)
*
「インセンティブ」の意味は「激励、刺激、誘因、動機;奨励金、発奮材料、励みとなるもの;《俗》コカイン」(『リーダーズ英和辞典』「incentive」)のうちのどれかな。どれでもないのかもしれない。前後関係から意味を推測することさえ、私にはできない。
「奨励金」と「投資」の違いを、私は知らない。
「経済学的に」は〈経済的に〉の間違いではないのか。「経済的に、節約して、経済(学)的には」(『リーダーズ英和辞典』「economically」)の混同か。留学して日本語を忘れたのかもね。
「自然」は止せよ。ほぼ嘘だ。鉤で括って格好を付けたのは、いけないことだと承知の上でだよね。真意は〈好都合〉あたりだろう。
(GOTO 『夏目漱石を読むという虚栄』2200 不自然な「自然」)夏目漱石を読むという虚栄 2220 - ヒルネボウ
*
でも、イラストを「読画」してテキスト化するインセンティブが、いったい誰にあるというのでしょう。
(p21)
*
「読画」は造語だろう。困るよ。
この「インセンティブ」の意味は、私には想像すらできない。だから、「誰にあるというのでしょう」と問われても戸惑うしかない。
*
さきほどのリスニングの問題を正答するには、まず、この4つのキャラクターがそれぞれ「りんご」、「にんじん」、「きゅうり」、「ぶどう」を基にしていることを認識した上で、野菜か果物かを判断し、それらに翼が生えているかどうかを区別しなければなりません。
(p21)
*
「問題を正答する」は、〈「問題」に「正答する」〉が普通だろう。しかし、AIの校閲は見逃すのかもしれない。
「判断し」は、おかしい。「野菜か果物か」は、生物学の知識がないと解けない。
「翼」は「生えて」いない。「つけよう」と言ったのだから、〈ついて〉いるのだよ。
*
2001年代の私は「そんなの絶対無理。そんな教師データを数十万規模で構築しようという酔狂な人がいるわけがない。いたとしても誰も資金提供しない」と思っていました。
……でも、いたんですね。
2024年5月に公開されたチャットGPT-4oはこの問題をさらっと解いて見せました。しかも、こんな解説つきで。
(p21~22)
*
「酔狂な人」に「資金提供」すると「この問題」が「さらっと」解けるの? 違うよね。でも、どんなことが起きたのか、私には想像できない。
「いたんですね」って、誰が? 「酔狂な人」と「資金提供」する人の、どっち? どっちもだったら、舌足らずだ。
〈「チャットGPT-4o」が「教師データを数十万規模で構築」した〉といったような記述はない。
「解いて見せました」はチャットGPTを擬人化した表現だろう。では、さっきの「いたんですね」の主語には、チャットGPTも含まれるのかな。
(7終)
萌芽落花ノート
44 酷寒
ああ わたくしはおまえの谷間へと雪崩込む一握りの石炭殻だ
おまえは一度だってわたくしの母であったことがあったか
風ではなく 葦笛のように
おまえは飛ぶ鳥を真似ている
飄々と
わたくしは小指を立てる
おまえは人差し指を
あはは 鬼だ 鬼だ
一度も聞いたことのない協奏曲にかぶれたおまえは
わたくしを産み直す 何度も 何度も
おまえの父は遠い北国の荒れ地を耕している
わたくしの父は遠い北国の荒れ地のようだ
別の季節 冬ではない季節になれと
おまえはわたくしにねだる
だが わたくしは おまえの父にはなれない
そして おまえは わたくしの母になれない
おまえは おまえに似た娘を欲しがっている
その娘は 水車小屋で春を待つ
折り目正しい娼婦だ
娘は 紙幣のような愛をねだる
世界中で通用する紙幣のような愛を
それは 腐った紐帯だ
ああ わたくしは耕すことを知らない農夫だ
夕暮れには おまえの背にしがみつき 家路を辿る
「お家が どんどん 近くなる 近くなる
今来たこの道 戻りゃんせ 戻りゃんせ」
(44終)
MISHEAR
~carnation
escalator へえ疲れた
cognac 蒟蒻
carnation 可燃使用
granola 倉の裏
(end)