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ライブ インテリジェンス アカデミー(LIA)

日本の伝統文化の情報を国内外に配信していくための団体です。 その活動を通じ世界の人々と繋がっていく為の広報サービスです。

春といえば「鶯」

2018-03-21 13:58:35 | 一茶庵「易社」
昨夜の稽古は少し遅れて入った。
着くなり、宗匠から、あのお軸は何が描かれていますか? 速攻に聞かれても、私の知識では答えようがない。回らない頭を振ると、昨年くらいに見たお軸を思い出した。

あの鳥は"鶉(うずら)"だ。宗匠や仲間からの笑いが漏れている。宗匠から鶉なら季節はいつ頃?という質問が飛んできた。
えぇ〜と、またまた頭を振らなければと、必死。大伴家持の、鶉を詠んだ悲哀の和歌を思い出した。
この春に悲哀はないでしょう、と宗匠に突っ込まれ、そりゃ、そうだ!と納得。
なら、表装の色は何色?
薄いブルーである。
この色から連想すれば分かるでしょ!とさらに突っ込まれた。春の鳥といえば、この鳥をまず連想しない、と。
ホーホケキョと鳴く鳥は? といわれ、そうか!と。やっとここで"鶯(うぐいす)"が頭に登場した、情けない話から始まった。

この鶯を見ながら、昨夜は「雁が音」を淹れた。まろやかで優しい、春の味である。

テーマは"鶯"。となると、昔から国語の教科書にも登場した「江南の春」である。
もちろん頭からすっかり消え去っている。
ご存知の方も多いと思うが、「杜牧」の詩である。晩唐の政治家・詩人 。天才詩人と世に知れ渡ったのが20代のとき。26歳で進士となり、江蘇省の楊州に赴任した時代には名作を多く残している。その代表作が「江南の春」である。

その詩を宗匠の後に続き朗読。声を出して読むと不思議なものであるが、情景が浮かんでくる。江南地域の村や山々の古里に酒屋の旗が春風にたなびいている。そこに多くの仏教寺院が点在する。そして鶯の鳴き声が聞こえてくる。こぬか雨でその風景は霞む。懐かしの古里を思い出させるような風景だ。

千 里 鶯 啼 緑 映 紅
水 村 山 郭 酒 旗 風
南 朝四 百 八 十 寺
多 少 楼 台 煙 雨 中

千里鶯啼いて 緑紅に映ず
水村山郭 酒旗の風
南朝 四百八十寺
多少の楼台 煙雨の中

せんりうぐいすないて みどりくれないに えいず
すいそんさんかく しゅきのかぜ
なんちょう しひゃくはちじゅうじ(はっしんじ)
たしょうのろうだい えんうのうち





梅の葉に包まれたお菓子


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一枝の春

2018-02-21 16:58:34 | 一茶庵「易社」
仲春に咲く花、白梅。雨水の頃には紅梅が香る。梅は香りを楽しむ。
一方、桜は匂う。色映えを楽しむ花である。

昨夜の稽古では梅がテーマ。梅は中国の花、江南地域が原産地とされている。その地で詠われた詩がいまの世にも継がれている。

その詩は「一枝の春」。
                  
折花逢驛使 ひと枝折って 駅使に託す
寄與隴頭人 隴山(ロウザン)のふもとのあなたへ
江南無所有 江南に良きもの無し
聊贈一枝春 ただあるは「一枝の春」、いま贈らん。

作者は、江南地域に住む陸凱(リクガイ)という人。この詩だけで名が残っている人のようだ。北方にいる友人のもとに、何か贈り物をしたいが、何もない。そこで思いついたのが梅の花を折って、この詩とともに贈った。
それを「一枝の春」と表現した、といまに伝えられている。

そんな話を聞き、春の陽射しを心待ちにしながら煎茶を楽しませてもらった。



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視覚的イメージが強い蘇軾の詩。

2018-01-28 11:05:30 | 一茶庵「易社」
煎茶の稽古で蘇軾の詩はよく登場する。前回の稽古は参加できなかったが、蘇軾の詩を紐解いていく内容だったよいだ。

その詩は、蘇軾の詩の中でも最も有名なもののひとつ。視覚的なイメージで色気をかもしだし、花に声をかけるかのような風流さがユーモアを感じさせるものである。
そんな解説が記述されていた。

東風渺渺泛崇光
香霧空濛月転廓 
只恐夜深花睡去
故焼高燭照紅粧

東風がはるか彼方から吹いてきて星影がゆらぎ、花の香りが立ち込めて月が庇に傾く、夜が更けて海棠(かいどう 写真)の花が眠ってしまうのが心配だ、だから蝋燭の火を明るくともして花を照らしてやることにしよう

という意味になる。
蘇軾は、自分の身の挫折をきっかけに仏教的な内省に親しむようになっていった。そんな蘇軾の周りに多くの人が集まってきた。
その当時に書いた詩がこれである。海棠の花への優しさを、つまり官人としての人民への思いを花に例え記した。





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宜男花、って⁉︎

2018-01-20 10:12:33 | 一茶庵「易社」
初稽古に掛けられていたお軸の漢詩に「宜男花」という言葉があった。
花の名前だろうと想像はつくが、聞いたことのない名前。中国 元の時代の詩に登場するくらいだから昔から存在する花のようだ。

聞くと、「宜男花」は中国原産のユリ科の多年草で、夏、オレンジ色か赤黄色の花を咲かせる、ということらしい。

煎茶にはたまに登場する花のようだ。それは、素敵な男性を意味する。詩によく使われ、良き男性に巡り逢いたい気持ちを、この「宜男花」で表すことがある。

また、薬効として食べると憂いを忘れるといわれ、「忘憂草」という別名もあるよいだ。

写真にある茶托に描かれているのも「宜男花」である。







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文人趣味の粋

2018-01-19 10:24:41 | 一茶庵「易社」
深宮飽食恣猙獰,臥毯眠氈慣不驚。
卻被卷簾人放出,宜男花下吠新晴。

宮殿の奥深い一室にどう猛そうな大きな犬が絨毯の上に寝そべっている。
簾を跳ね除け、宜男花の咲く青空に向かい吠える。

という訳になろうか。
この詩は、宮殿の一室で犬と暮らす皇女(側室)が皇王を待つ侘しさ寂しさを犬の遠吠えで表したいものとなる。

初稽古の席に、戌年に因んでこのお軸が掛けられていた。昭和九年に一茶庵である方が描いたものである。

お正月にしては少し違和感のあるお軸と思いながらも、宗匠の意図を読み取るまでには至らない。
が、これもお遊びと解けば文人趣味の粋な計らいなのだろう。










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