台風19号は宮城県内で多数の死者を出したが、大郷町は多くの家屋が浸水しつつも死傷者はゼロだった。過去の水害経験を踏まえ、住民の9割以上が自主避難したことで命を守った。

 吉田川が決壊した中粕川地区は1986年と2015年の豪雨で水害を経験住民は自主防災組織を立ち上げて要支援者の把握を進め、旗で各世帯の避難状況が分かるようにし、年1回の訓練で万一に備えた。

 町は台風上陸前の12日午後2時すぎ、「避難準備・高齢者等避難開始」を発令。自主防災組織が全戸に避難を呼び掛け、災害弱者とされる高齢者のほとんどが避難を完了した。夜にも再び地域を巡回する念の入れようだった。

 80代の義父母を事前に避難させたパート職員の女性(60)は「過去の水害を知っているので、いざというときに動く意識があった」と話す。

 吉田川は13日午前7時50分ごろ決壊。約10人が早朝に自宅に戻って取り残されたが、無事に救助され、けがもなかった。

 区長の赤間正さん(68)は「地域の絆が強く、それぞれがやるべきことを分かっていた。死者が出なかったのは訓練のおかげだ」と振り返った。

 一方、決壊した堤防は他より約1メートル低く、危惧した住民が国に改修工事を繰り返し要望していた。赤間さんは「豪雨が増える中で悔しい。(国は)『想定外』で片付けてほしくない」と憤った。 

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避けられる被害は、避けたいものです。しかし、そのためには事前訓練が必須であることはいうまでもありません。そして、大郷町にはそれをしていたがゆえに、今回死傷者を出さずにすんだのです。見習わねばならないことだといえます。