【ソウル=川村律文】米グーグル傘下の英グーグル・ディープマインド社が開発した囲碁の人工知能「アルファ碁」と世界のトップ棋士である韓国棋院の李世●イ・セドル九段(33)の第3局が12日、ソウル市内のホテルで行われ、アルファ碁が勝利した。(●は、石の下に乙)

 5局まで行われる対戦で、アルファ碁は3連勝を果たし、最強棋士との対決を制した。チェス、将棋に続き、頭脳ゲームで最後まで人間優位とされてきた囲碁でも、「ディープ・ラーニング(深層学習)」という最新理論を取り入れたコンピューターが勝る時代を迎えた。人工知能の急速な進化は世界に衝撃を与えている

 対局は、碁盤のわきに置かれたディスプレーにアルファ碁が打った手が表示され、ディープマインド社の研究者がその通りに石を盤上に打つ形で行われた。

囲碁AI、韓国棋士に3連勝で勝ち越し 世界最強の一人
朝日新聞 2016年3月12日21時15分

 米IT企業グーグル傘下の英グーグル・ディープマインド社が開発した囲碁の人工知能(AI)「アルファ碁」と、世界で最も強い棋士の一人、韓国のイ・セドル九段(33)の第3局が12日午後、ソウル市内のホテルで行われ、アルファ碁が3連勝した。対局は15日まで全5局行われるが、2局を残してアルファ碁が勝ち越し、勝利を決めた。

 12日の対局は開始後4時間余りで、176手目の後にイ九段が投了。李九段が2時間の持ち時間を使い切ったのに対し、アルファ碁は8分31秒を残していた。

 AIは1997年にチェスの世界王者、2013年には将棋のプロ棋士に勝利したが、囲碁はチェスや将棋に比べて終局までの手順が桁違いに多く、AIがプロに勝つには10年はかかると言われていた。アルファ碁は対局時に全ての手を検討するのではなく、過去の棋譜などをもとに自己学習を繰り返して強くなり、これを克服した。

 イ九段は12日の対局後の記者会見で「どんな話をしていいか、分からない。無力な姿をさらして申し訳ない」と話した。対局が始まる前には「全勝する」と語っていたが、この日は「もう一度やっても、勝つことは難しい」とも述べた。

 ただ、アルファ碁の実力について「まだ完全な神の境地には到達していない。人間より優れていることを見せたが、明らかに弱点はある。今日の敗北はイ・セドルの敗北であり、人間の敗北ではないのではないか」とも語った。

 対局は世界中から注目を集め、開催地の韓国でも主要紙が連日、1面で報道した。イ九段は「こんなに負担や圧力を感じたのは初めて。乗り越えるための能力が不足していた」と、悔しさものぞかせた。

 一方、ディープマインド社のデミス・ハサビスCEO(最高経営責任者)は12日の記者会見で「イ九段との対局は、アルファ碁の限界を学ぶためだった」と説明し、「完全ではなく、改善する余地がある」と話した。さらに「究極の目標は汎用(はんよう)性のある人工知能の開発だ。社会が直面している困難な問題を技術的に解決したい」とも語った。(ソウル=牧野愛博)


井山名人「こんなに早く、ショック」 囲碁AIに脱帽
朝日新聞 2016年3月12日20時58分

 人工知能「アルファ碁」が、韓国のイ・セドル九段(33)に3連勝したことについて、日本の第一人者・井山裕太名人(26)は朝日新聞の取材に、次のように語った。

 第1局から第3局まで、インターネットの生中継で観戦しました。こんな結果になるのは想像できなかった。ただアルファ碁の実力を知るデータが少なすぎるので、ひょっとしたらという気持ちがあったのも事実です。ほんとに急に出てきた。こんなに早く、これほどの実力で打てるようになるなんてショックです。

 囲碁の長い歴史の中で、もしかしたら一番というくらいの棋士に勝ち越した。これはものすごいこと。人間を超えたと思われても仕方のない結果僕自身はイ・セドル九段が5連敗したら、そう判断します。残り2局に注目したい。

 正確無比とはいえないが、アルファ碁はとにかく大きなミスが少ない。また、人間は直前に打った手など、石の流れで打つ手を決めたり、流れを感じながら形勢を判断したりする。一方、アルファ碁は流れにとらわれすぎない大局観、形勢判断という部分が、どちらがすぐれているかは分からないが、人間とは違うと感じた。

 アルファ碁は人間の発想にない手を打つともいわれるが、僕はそこまでのギャップは感じない。トップ棋士が打つような手を選んでいると思う場面もあった。明らかに違和感があるような手はほとんどなかった。そういう意味では人間に近い部分が結構ある。これについては、イ九段がどう感じたか興味がある。

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こうなった以上、今度は人間がAIに挑戦する番です。井山裕太六冠に、アルファ碁を粉砕してもらったら、最高です。

同時に、もしアルファ碁が一般に使用可能になったら、このソフトを先生にして、より強くなる新人類が現れうるかもしれません。

ゆえに、韓国の世界チャンピオンがAIに負けたことを人類の悲劇と感じず、これを機に「韓国棋士、恐れるに足りず」の意気込みで、囲碁界に戦国時代が起き、日本の棋士がAIとタッグを組んで強くなって、世界を席巻してくれるように、日本棋院も対応を考えるべきです。

ともあれ、世界の囲碁界が、望んだものとはいえませんが、新時代を迎えたのは事実。新しい人間のヒーローの登場を、世界が待っています。