JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)

なんの役にも立たない事を只管シコシコと

西村賢太 「苦役列車」

2012-08-19 | BOOK


劣等感とやり場のない怒りを溜め、埠頭の冷凍倉庫で日雇い仕事を続ける北町貫多、19歳。将来への希望もなく、厄介な自意識を抱えて生きる日々を、苦役の従事と見立てた貫多の明日は――。現代文学に私小説が逆襲を遂げた、第144回芥川賞受賞作。後年私小説家となった貫多の、無名作家たる諦観と八方破れの覚悟を描いた「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」を併録。解説・石原慎太郎。

西村賢太氏を世に送り出した芥川賞受賞作、やっと文庫になりました。(否、もうなったというべきかもしれないが待ち望んでいたので)

ある程度想定していたけれど、芥川賞作が彼の最高傑作では無いんですよね。ま、ああいうのは巡りあわせでしょうから。どれか一本で受賞というよりも一連の作品が評価されたわけで。評価した方も良くぞ評価したもんで、まだまだ日本文学も置き去りにはしないんだな、といった所。
それでも受賞というのはやっぱり大きくて、これ、映画化までされちゃいました。大丈夫なんでしょうか。やっぱり、見ておかなきゃ、いけないのかな。
映画化するなら同棲時代のエピソードも面白いんだろうけど、芥川賞受賞作じゃなきゃ、商業的にバリューが違うんでしょうね。
そして、芥川賞作としてこの作品は他の作品とは別格に扱われ残って行くんでしょうね。

北町貫多がまだ若く、藤澤清蔵にも、同棲相手にも巡り合っていない時期のお話で、その後の貫多の性格、生活の片りんが覗けるところがポイント。
後に借金をしに遠方まで出向く事になる郵便局勤めとなる日下部と、ここで出会って・・・。
その彼女と3人で野球に誘う段、試合後の居酒屋から美人でもない日下部の彼女を犯す妄想のあたりが見せ場ですので、映画もそこ中心なんでしょうか。大丈夫かな。
相変わらず、ある種の欠陥を抱えた貫多の持つ極めて真っ当な常識の概念が自己中的に表出する素晴らしさが堪りません。

石原慎太郎が、皆の心配を代弁して、当たり前の事を解説しています。
私も、それがとっても気になるし、心配です。
小説家として成功し始めた「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」を併録しています。
「腋臭風呂」を読む限り、心配は無用と思うのですが・・・。
ぎっくり腰をに見舞われた悲惨さの滑稽にな表現はそれなりに面白い。
西村さんは、もう結婚願望など無いと言ってました。稼げるようになって、その金を女房子供に分け与えるのが勿体ないという吝嗇な理由で。その判断は人として正しいかもしれませんが、もっと行って欲しい、そして犠牲者を出さなきゃ。犠牲者たる女性を目一杯、自己中心的に愛する処が西村さんの好きな処です。

映画はどうしましょう。DVDまで待ちますか?
主演の若手男優は、なかなか良いと思う青年なので、行ってみようかな。

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