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いい女よりもいい男の数は少ない

男の恋愛ブログです。
過去の記事は随時掲載していきます。
以前読んで下さっていた方、ありがとうございます。

キンモクセイ

2018-09-24 05:37:59 | 日記
好きな人ができる度に香水を変えるようにしている。ずっと好きなままでいられたら、きっと変える必要はないのに。

香水ではないがルームフレグランスとしてキンモクセイの香りを部屋に置いていた時期があった。遊びに来た彼が、珍しいね、と手に取って匂いを嗅いでいた。彼とはパンケーキの有名店に一緒に行った。何かの途中で寄ったマクドナルドで話が弾んで結局彼とのデートはマクドナルドになった事もあった。歌舞伎町の路地を彼と歩いた。いつものジムに彼を連れて行った。こうしてずっと一緒に歩いていられたら、と送ってくれた夜道で願った事があった。好きだった。彼の事が。

キンモクセイの香りを久し振りに置いてみたら、ずっと忘れていた記憶が蘇ってきた。

君と一緒に

2018-09-23 22:42:12 | 日記
22時過ぎのベローチェでアイスコーヒーを1人で飲んでいるとLINEのメッセージが届いた。

「遅くなってすみません、急いで向かいます」

「いいよ、ゆっくり来て」

彼とはアプリで先日知り合って、初対面ながらゲームの話で盛り上がった。また会おうという事になってこの日彼と待ち合わせた。どんな顔だったっけ、とスマホで画像を確認する。アプリのプロフィール画像の彼はこちらを見て微笑んでいた。若くて鍛えていて、とてもカッコいいなと思いデータフォルダを閉じた。

不規則な勤務の彼は仕事の終わり時間も未定なようで、「大体」という事で決めた待ち合わせ時間が夜22時だった。サラリーマンであればこんな事は考えづらい。場合によっては「帰りが未定」という事もあるのかもしれないが、少なくとも日常的ではないだろう。彼は毎日が未定なのだ。

「もうすぐ着きます、まだいますか?」

「もちろんいるよ笑」

若い時はお金が欲しかった。何万もする服が欲しくて、香水も欲しかったし腕時計も欲しかった。カッコいい服を着て遊びに行きたかった。もしかしたら彼もそうなのかもしれないし、何か事情があるのかもしれない。本当に本業だけで忙しかったらトレーニングなどできないはずだ。マッチョであるという事は、トレーニングに関しては時間の融通が利くという事だ。もしかしたらマッチョでなくては「副業」が成り立たないのかもしれない。

彼が一生懸命鍛えた体を、見知らぬ誰かがお金で好きに弄んでいる事を思うと少し心が痛んだ。とても自分勝手な感情だと思う。彼が経済的に潤う事を応援したい。しかしそれは、彼がそれだけ体を好きに使われて色々な事をさせられるという意味でもある。

「お待たせしました笑」

「お疲れ様ー!」

汗だくの彼が笑顔でリュックから財布とタオルを取り出した。

「オレも何か買ってきますね!」

すぐ席を離れた彼からはボディシャンプーの匂いがした。そして、なぜか財布がリュックの奥底に入っていた。

疲れたと言ってオレンジジュースを飲んでいる彼の笑顔が眩しかった。無い時間を割いて、こうしてオレと会ってくれているのだ。余計な事を聞く必要もないだろう。彼が何をしていようと彼の本質とは関係がないように思えた。信じた、と言ってもいいかもしれない。

「楽しいね」

「楽しい!」

こうして一緒にいられて、よかった。






同志

2018-09-19 14:19:24 | 日記
Twitterやアプリを眺めていると鍛えて真っ黒に焼けたヤリ目的のバリタチの煽り投稿が目に付く。とにかく徹底的に当て掘りするからガタイいいウケのみ募集といった、いつの時代でもよく見かける文章だ。総じてSEXマシンのようなエロいマッチョタチが性処理相手のマッチョ従順ウケを探し求めている様子が目に浮かぶ。実際にその通りなのだろうが、その性獣のようなタチも当然普段は普通の生活をしているはずだ。スーツ姿で会社に出勤しているのかもしれないし、サービス業でお客様に笑顔で接しているのかもしれない。そんな彼らがジムで鍛えた体と自慢の性器をフルに使って激しいSEXをしていると思うとかつては興奮した。しかし更にその先の、「でも普通」という部分にこそ今は興奮する。

自分もずっとタチなので彼らが対象になる事はないが、同志として気持ちが分かる部分はある。毎日ヤリたくて今日も明日もウケを探しているようなタチが、どこか愛おしいのだ。かつての自分がそうだったから分かるが、心が空虚だからヤリ目的に走るのだ。会社で活躍していて、ジムで鍛えていて、カッコいいヤリたいとチヤホヤされているようなタチもどこか寂しいのだろう。色々な人とSEXしたい。だから恋愛とか面倒。でも誰かと出会ってずっと一緒にいたい。そんな風に行先を失ったタチが路頭に迷っているように思える。自分は満ち足りていない時はアイスやポテトチップスをやたら食べたくなるので分かりやすいが、欲求としてはそれと同じだろう。満ち足りていないから何かを補おうとする。それが買い物かもしれないし、SEXかもしれない。

「よかったら今度一緒に食事しましょう!」

「はい。タチから誘われるの初めてですw」

体画像だけのエロいバリタチも気軽に誘うと割と会ってくれたりする。


チームメイト

2018-08-31 14:27:05 | 日記
新入社員だった23才の時に、25才の先輩を本気で好きになった。それをきっかけにゲイとしてデビューしたという、とても思い出に残る恋だったが、それが全ての始まりだったように今は思う。

ノンケの会社の先輩に告白する程バカではなかったので、その恋を諦める形でゲイ活動に邁進した。本当に手に入らないものの代替品を探す旅に出たのだ。

自分が本当に好きだったのは、学生時代にプロ野球選手を本気で目指していた男性だった。その道を諦めて先輩はこの会社に入ってきたのだった。中学時代に好きだった相手も野球部だった。自分は野球選手が好きという事でもないだろう。自分にはない何かを持っている男性に心惹かれるのかもしれない。

ゲイとして全くモテなかった時代を経て、それなりにモテるようになると、物事を選別するようになっていく。簡単に言えば、エロくて超カッコいい男と出会う事が全てだった生活から、そうではない生活へ変遷していくということだ。過去にイベントのフライヤーを見てカッコいいと思ったゴーゴーを何とも思わなくなったりするのが一例だ。この程度ならジムにいるノンケの方がよっぽどカッコいい。オレが目指すのはこのようなイケてる風ゲイではなく、ストイックなノンケだ。なれなくてもいい。目指していたいのだ。ああなりたい。それが自分の心を補完していく作業なのだと知っている。

自分が美しい女に生まれていたら中学時代の野球部はおろか25才の先輩も落とせていたかもしれない。しかし、そこに興味はない。それよりも自分がアスリートの男に生まれていたら彼らとチームメイトになれていたのかもしれないと思うと心が締め付けられる。柔道でも野球でも水泳でもいい、スポーツだけの人生でもよかった。ノンケの選手と付き合いたいのではなくチームメイトになりたかった。一緒に何かを目指してみたかった。できる事なら必要として欲しかった。なぜ、そういう人生を歩めなかったのだろう。

自分はいい男になりたいと思っている。最初はいい男と付き合う為だったが、今は人生をやり直したいからだと思っている。

失われた風景

2018-08-15 01:13:06 | 日記
すぐ好きになっていたのが20代で、簡単には付き合わなくなったのが30代。
何もかもがぐちゃぐちゃだったのが20代で、洗練された生活を送るようになったのが30代。
幸せだったのが20代で、色々なものを手にしながら不幸せなのが30代。

夜遅く丸の内線の駅を出ると、目の前に見たことがある男性が階段を上っていた。実際には他人だったのだが、昔付き合っていた男性にどことなく似ていた。こんなバッグをしょって、よく遊びに来てくれたっけ。今頃彼は何をしているのだろう。

平日のこの駅は住人以外はあまり使っていない。彼を見た事はなかったが、この辺に住んでいるのだろうか。手前の信号で待つ彼を、1つ先の信号で待つオレが上手に眺めている。スマホを見る姿勢もよく似ていた。もしかしたら彼もこれから誰かの家に向かっているのかもしれない。あの頃の彼のように。

好きになるのは早い。会った瞬間というと言い過ぎかもしれないがその日中には好きだと分かっている。そうして好きになって、初対面の帰り道に改めて気付くのだ。本当に好きかもしれないと。男はありきたりな事に慣れていない。おしゃれな場所でデート中に好きだと言うよりも、何でもない道端でそっと手を握ると驚かれる。え、とこちらを見た時に、好きだと伝えた。2回目のデートだった。まだ早いよ、と笑う彼に、そうだね、と答えて話題を変えた。また会いたいと連絡をしてきたのは彼からだった。

信号が青に変わったので歩き始めると、丸の内線の彼は真っ直ぐに歩いて行った。自分はもうすぐ右に曲がる。もうお別れだ。

好きだった。でも別れた。別れたばかりの頃は何も考えなかったが、なぜ後になって彼が優しくしてくれたこと、彼が言ってくれた言葉の1つ1つが思い出されるのだろう。未練はない。復縁しようとも思っていない。でも目の前の彼が本人だったらどうだっただろうか。人生とは自分が思っているよりも運要素が強いのかもしれない。自分はこうだと主張しても、結局状況が変われば考え方も変わるのだろう。未練はないのであれば、何も思う事はないはずだ。

好きだった。でも別れた。あの日、好きになったのは事実だ。この人の為にもっと鍛えてもっとお金を稼いで幸せにしたいと思った。でも別れたのだ。

右に曲がると、彼を振り向くことなく真っ直ぐ歩いて行った。


記憶の彼方

2018-08-13 21:26:58 | 日記
中学時代に隣のクラスにいた野球部の男の子が好きだった。まだゲイだと自覚していた訳ではなかったのだから、「好き」と明確に認識できていたかどうかも定かではなかったが、それでも思い出の中では「好きだった」事を覚えている。それはそれでいいのだが、今になって不思議に思ったのは、なぜ彼だったのかということだ。当時は既にジムに通っていてマッチョな大学生のスタッフがそれこそいっぱいいた。スイミングでも有名なジムでもあった為か、水泳関連のクラスもいっぱいあり、それこそイケメンスイマーも大勢いた。思い出補正でそう思っているだけで実際はそんなに皆イケてなかったとしてもまだ中学生だった自分には十分すぎる程粒揃いのメンツだったに違いない。なぜ彼らを好きにならず、何の接点も無い隣のクラスの野球部の彼のことが好きだったのだろうか。

全くモテずに1年半ほどヤリ目的のみに特化した時期があった。とにかく鍛えまくって掲示板と発展場でほぼ毎日ヤリまくっていたからこそ分かったことがあった。たまたま射精したいだけでやって来た本当にイケている男達は危険なプレイはしないという事だ。彼氏がいてもいなくても帰る場所があるという事でもある。会社かもしれないし、実家かもしれない。一人暮らしの自宅とは別に誰かに愛されていて、誰かから必要とされていて、そして何かに情熱を注いでいるのだろう。ああこの場所で一番はオレなんだろうと思う事は何度かあったが、それは最高2位までしかここでは相手は見つからないという失望でもある。タオルで軽く隠して通路に立っていると勝手にタオルをまくってチ〇コを握られまくり、一瞥して相手にならない男だと分かり押し退ける作業を繰り返していた。

情熱とは何だろう。仕事にそこまで自分は情熱と呼べるものを注げない。トレーニングがそうだろうか。そう思うと、その究極の状態というか根源に当たるものが部活ではなかっただろうか。自分は何の部活もやらずに就職した。それなりの幸せを手に入れて生きてきたと思うが、部活に明け暮れて就職する人生でもよかった気がする。野球をずっとやってきて、大した企業ではないけど就職しました、高校しか卒業していないけどスポーツばっかやっていたから消防士になりました、そういう人生でもよかったと思うのだ。キャリア、年収、そういった呪縛に囚われてずっと生きてきてしまった事を少し後悔する気持ちもある。でもまた矛盾するが、そう思って軌道修正してきた部分も実はあるのだ。途中で気付きながら諦めて生きてきた訳ではない。可能な限り修正して、今がある。あの時に消防士になっていたら今の生活には辿り着けなかっただろう。

野球に打ち込んでいる彼の姿が好きだった。他の部員ではなく彼だった理由はちょっと思い当たらないが、何か小さな接点があったのだろう。自分もそういう人生を歩めたはずなのに、あの頃は引っ込み思案でスポーツが苦手で何もチャレンジできなかった。だから彼の事が好きだった。憧れていた。なぜ自分は彼の様に生きられなかったのだろう。そんな想いの断片が当時の恋心だったように思う。イケててマッチョなら誰でもいいという訳ではないのは今も昔も変わらないようだ。発展場に行ってもやらないで帰る事が多かったし、やるだけの相手でも、「ここではなかったら好きになっていたかな」と一瞬思える人を選んでいた気がする。


イケメン達へ

2018-07-02 14:09:09 | 日記
中学1年の時に隣のクラスにいたイケメン野球部員の事が好きだったが、中学3年の時には後ろの席にいたヤンキーの事が好きだった。その他にも好きではなかったがカッコいい人達がいっぱいいて、その容姿に憧れた。彼らも年を取っていき、今頃は中年と呼ばれて生きているのだろう。そのうちの何人かはFacebook等で見掛けたが、微かに面影があるものの、よくいるおじさんになっていた。それでいいのだと思った。

自分は彼らに憧れた。実際の彼らに対してというよりも、世の中のイケメンノンケ達にだ。あの容姿だけでなく、そもそもストレートの男性に生まれていたらこんな人生ではなかったはずだ、と。では、こんな人生とはどのような人生なのか。ゲイの友人に囲まれて、ゲイの男性と恋愛をして、ファッションや香水に興味を持ちジムに通う人生のことだろうか。だとしたら、こんなに幸せな人生はないと思っている。ノンケに生まれていたらそれなりの、ゲイに生まれた今は今なりの幸せがあるものだ。仮定に過ぎない別の人生を羨む程バカらしいことも無いと思った。

ノンケとゲイ

2018-06-29 05:23:29 | 日記
ノンケとゲイの顔面偏差値の平均値を比較したら恐らくゲイの方が上回っていると思う。とは言ってもデータがある訳でもなく主観によるものだが、この意見にあまり異論も無いのではないだろうか。理由はいくつかあって、①結婚をしないから②女性的な感覚に近いファッションセンスを持ち、積極的にスキンケアを行なっているから、と、このあたりが該当すると思っている。①によって③自分にお金を掛けられる人が多いから、と波及して理由付けが多くなっていく。でも、少数かもしれないが、メンタルの強さも挙げられると思う。どういう事なのか。

学生時代に既に自分がゲイだと認識していながら、簡単に肯定できるはずもなく、結局そこは「変な自分」としてフタをして生きてきた。社会人になってゲイであると自己を肯定したとはいえ、学生時代に恋愛ができなかった事、恋愛の話が誰ともできなかった事は今でも心に大きな歪みとして残っている。だから変わろうと思った。今からでも取り戻そうと。今からカッコよくなって、凄いカッコいいゲイの男性と恋愛をして、お互いの学生時代の話をいっぱいして共感し合って、皆そうだったんだ、でもこれからは幸せに生きていこうね、と笑い合えたその瞬間に自分の人生は浄化されると信じたのだ。それを自分は、「希望」と呼んだ。どんな手段を使ってでもカッコ良くなろう。それだけが全てだったように思う。その「希望」に向かう事が自分の魅力を引き上げていった。これはあくまで自分の話だが、このような想いがあれば自然と平均値は上がっていくだろう。

ノンケ神話というものがあって、ノンケの方が全てにおいてカッコいいという考え方だ。例えばどこかのジムに行って凄いカッコいい人を数人ピックアップしたら、ほとんどがノンケだろう。そういう意味ではこの考え方は間違ってはいない。カッコいい人だけを並べて比較審査したらゲイはノンケよりは確実に劣るのだ。しかし、平均値となるとゲイの方が圧倒的に上なのだと思わざるを得ない。ジムや駅で見掛けた最高ランクのノンケだけが印象に残るので、どうしても「ノンケはイケる」という話になりがちだが、ノンケの膨大な総数に対していえばレア中のレアであるイケてるノンケだけがゲイに対抗できていると言える。ゲイに関して言えば、見た目がイケている程度であれば割とそこら辺に転がっているのだから。


オンラインゲーム

2018-01-29 22:49:17 | 日記
「オレが守るから下がってて」

「はい」

彼女は、100 VS 100 のバトルが売りのゲームでソロで戦っていた。実はオンラインゲームは初めてだった。マウス操作も慣れておらず中々敵を倒せない事が多かった。スキルや戦略は頭に入れていたが、指が追い付かないのだ。向いてないのかな、とも思ったが好きな世界観のゲームだったので、気を取り直してモニターを眺めていた。

「こっちに来て、回復するから」

「いつもありがとうございます」

初心者ギルドに入ってみた。ゲームよりもギルドでチャットをしているのがまた楽しかった。毎日ログインしているとこんな仮想空間でも友達ができてくる。意地悪な人もいれば面倒見がいい人もいて個性があった。ゲームだから楽しまなくちゃと気楽に勝ち負けを楽しんでいたが、チームプレイである以上上級者が彼女のような初心者のサポートをしてくれて成り立っているのだと少しずつ分かってきた。私がもっと上達すればギルドマスターは楽になるんだわ。そう思うと彼女は真剣にゲームに取り組んだ。

「オレ、違うギルドに行こうと思うんだ」

一番話しかけてくれた男性ユーザーがギルド移籍をすることになった。もっとガチなところでやっていきたいと。心に一筋の風が通り抜けていった。どうでもいいと思っていたゲームの世界で、私自身が少しずつ真剣に取り組むようになっていって、楽しいと思うようになった今、彼が抜ける。フィールドでよくフォローしてくれた事が思い出される。気付いたら彼女も彼の後を追って移籍することになっていた。

中級のギルドに2人で移籍した。人間関係ができていたからアウェイの環境の中でも2人の息はぴったりと合っていたと思う。しかしそんな楽しい日々も長くは続かず、彼は段々とログインをしなくなっていった。スマホゲームをよくやっていたから分かる。もう彼はこのゲームは続かないだろう。なら私が、そう決心し彼女はトップギルドの1つに移籍することになった。

罵倒や煽りを受け、たかがゲームで何をここまで、と思う毎日だったが我慢した。しかしギルドチャットでは名指しで罵倒されるようになり、とある負けた試合では私のせいだと古参の1人から非難された。私とは一緒に出撃したくないと言うのでそれではチームとして成り立たないので私がギルドを抜けることにした。何か情熱というかゲーム愛みたいなものはもう消えてなくなっていた。思えば初心者の私がよくここまで来たものだ。マウス操作もよく分かっていなかったのに今では攻略サイトが作れる程だ。上位ギルドでは通用しなかったが、自分のせいだけでもなかったと思いたい。またソロに戻ってしまったが、時々知らない人達に戦場で声を掛けられるのでさみしくはなかった。また昔のギルドに戻ろうとは思わない。色々な事を思い出しながらプレイしていると、1人で始めたゲームだったのに孤独を感じた。

「オレが守るから下がってて」

あの彼は、結局ログインしなくなって引退した。大学生だったのだろうか、それとも社会人だったのだろうか。もし実生活で出会っていたら、ゲーム以上の何かが始まっていたかもしれない。

君と一緒にいたい

2018-01-27 04:40:04 | 日記
恋愛ではない部分で繋がっている相手とは、こちらの感情の起伏がない分、長く付き合っていけるように思う。ノンケなんかがそうだ。好きになってはならない相手を好きにならないし、なっても理性で諦められるということだ。それは、哀しい物語だとも思う。本当であれば誰を好きになってもいいはずなのに、それが叶わない人生を歩んできたから、そうなったのだ。そんなに好きではない相手と毎日楽しく過ごしているとも言えるかもしれない。

誰かを好きになる事は、とても苦しい。誰も好きにならない人生であれば、もっと自分のキャリアを追えたと思う。誰かと初めて待ち合わせた日、結局上手くいかないまま終わったとしたら、その帰り道にこう思うだろう。出会いなんか求めていなかったら、今日こんな無駄な時間を使わなかったはずだ、と。1人で強く生きていけるはずなのに、なぜか相手を求めてしまう。上手くいかなかったのに、またいつか、誰かを探してしまう。人はもし物質的なモノ全てを手に入れたとしても、最後に求めるのは一緒にいてくれる誰かなのかもしれない。

恋愛が始まった時、いつも思う。ああ、いずれ終わるのだろう、と。好きだけど終わる、終わるべくして終わるようなそんな予感がいつもしていた。今度こそとは思わなかった。地震が起きたら頑丈な家屋が簡単に倒壊するように、抗えないもののようにいくつもの恋愛が崩れ去っていった。でも思う。誰かを好きになれる人生で良かった、と。

新卒者

2018-01-24 13:14:18 | 日記
まだ若いその男性は体育会出身だった。スーツを着て営業マンをしていた。就職するというのは大変な事だな、と事あるごとに感じていたが、まさかこんなにすぐ退職するとは思っていなかった。

大学時代の後輩とは仲が良かった。後輩も就職してサラリーマンとなり、会えばお互い仕事の愚痴を話した。時々会って食事をしていくうちに後輩の見た目の変化にすぐに気付いた。どんどんマッチョになっていったからだった。聞くと、スポーツクラブに通い始めたとのことだった。途方もなくイケメンでありながら体は細かった後輩。同じ部活で知り合った。体だけが自慢のマッチョな先輩は、絶対的に格下だった後輩が体を鍛え始めた事に動揺した。

後輩がコンテストに出場して入賞した。それを知り、激しい嫉妬に襲われた。後輩であり友人がこうしてinstagramで華々しい大会写真を掲載しているのを苦々しく見つめていた。何も成し遂げていない自分。そもそも何も目指してもいない人生だ。なりたかったのかどうかも分からないサラリーマンになって、日々過ごしている。マッチョでイケメンだと大学時代は言われていたが、有名選手でも何でもない自分が世間で話題になる事などない。あくまで身内内でチヤホヤされていたに過ぎないのだ。しかし後輩は違う。有名選手でも何でもない存在だったが、こうして有名になっていった。今や体は自分よりもマッチョだ。おめでとうと思ったし、凄いと尊敬もした。だが許せなかった。くやしかった。彼がというよりは自分に対してかもしれない。ただただ面白くなかった。

「トレーニングを本格的に始めることにしたから、時間あまりないよ。」

ずっと付き合っていた彼女とは疎遠になっていった。週末はデートしていたのに、トレーニングをしたいと思ったからだ。心が明らかに離れていった。女性が好きだし、女性とSEXしたい。でも、トレーニングの方を優先したい。自然な流れで彼女と別れ、会社も退職した。トレーニングを安定してする為には残業が多い正社員生活は邪魔だった。学生時代のようにアルバイト生活を始めたものの一気に貯金は底をついた。

元々マッチョだった彼はあっという間に現役時代の体に戻すことができた。顔も後輩ほどではないが世間ではイケメンの部類だ。割と自由に時間はあるので夏は海に行ったりジム帰りにタンクトップで街中をふらふらしているとたまに色々な人から声を掛けられた。変な勧誘や体目当ての痴女みたいなのが大半だったが、その中でも有名なクラブ関係者には連絡先を渡した。そして、いつしか女性向けというかノンケの普通のクラブイベントにスタッフとして不定期で働くようになっていた。

何人かの後ろで賑やかしとして半裸でステージに上がるようになった。パフォーマーという程でもなかったがマッチョな若い男が脱いでいるだけで話題にはなった。手が空いている時は観客がいるエリアに行ってもいいという事になっていたので半裸でふらふらしていると、気さくに客から声を掛けられちょっとした有名人の気分に浸れた。半裸でマッチョを誇示する事でチヤホヤされる。服を着ていたら普通の男だが脱ぐと女性が群がりシャッターを浴びるのだ。instagramでいつも脱いで自撮りを上げている男達の気持ちが少し分かる気がした。

「夢、というのは特にないですけど、マッチョにはなりたいですね。」

若くてマッチョで純粋な彼が多くの人に愛されて有名になっていく気がした。

診察

2018-01-21 14:13:23 | 日記
その男は中学校から帰宅するといつものスポーツクラブに向かった。夕食を済ませてから行くので館内は割と混んでいた。いつものアナウンスや洋楽のBGMが流れる中、水着に履き替えると上下ジャージに着替えてストレッチエリアに移動した。某大学の体育会系大学生が大勢アルバイトしているジムでプールのコーチも皆大学生だった。中学生の彼にとって大学生は大人であり遠い存在だった。鍛えていてカッコいいのもあって憧れた。

選手コースと一般コースとあり、彼は一般コースだった。選手コースというのは幼少時から選手を目指す者達が対象で中学から入るようなところではなかった印象だった。何なら幼少期から選手コースに入っていたら人生が違っていたのかなと思ったこともあったが、選手がコーチに怒鳴られている過酷な練習風景をいつも見ていたので、入らなくてよかったとも感じていた。一般コースは更に上級、中級、といった風に細かく分かれて練習するのだが、ジムの方針で全員一同に介してストレッチを受けることになっていた。なので、本来であれば全く接点のないコーチや会員とも毎晩顔を合わせることができた。着替えはジムロッカーの方が設備が整っていてほとんどの大人がそこで着替えていたが、高校生未満とプール会員はプールの更衣室やジャグジーしか入館が許されていなかった。ロッカーで何となく大勢と一緒になる普通のジムと違い、プールの更衣室は3人くらいしかいつもいなかった。1人は泳ぎが上手いおじいさんで、もう1人は娘さんがいる50歳くらいの話好きの医者だった。全コースを通して中学生は彼だけであり、その上は23歳くらいの社会人元スイマーという状況で、彼は大勢から可愛がられた。

プールは楽しかった。選手を目指していたら苦しかっただろう。休日にスイムキャップを見に近所のスーパーに行ったり、館内で「Tarzan」を立ち読みするのも楽しかった。通っているうちにMサイズの競泳用水着が少しきつくなってきたのが嬉しかった。早く高校生になってマシンエリアも使えるようになりたい。鍛えてカッコよくなりたい。まだ中学生だった彼はそう決心していた。

プールは温水とはいえお風呂とは違う。水から上がれば途端に冷え込む。プールサイドにある温水のシャワーで体を流してから男女共用のサウナで温まってプール会員用の更衣室に戻るのがいつものパターンだった。チン毛は既に生えていて仮性包茎のチ〇ポもジャグジーで温まった後はふやけてちょっと大きくなる。ふやけている状態で競泳用パンツを脱いで着替えているとチ〇コだけは大人だった。勃起したらもっと大きくはなるが、半勃ちにすらなっていない、ちょっと温まって血流が良くなったチ〇ポの時が自然な感じで丁度いいと思っていた。皮の先からちょこっと亀頭が見えて仮性包茎じゃない感じもよかった。着替える時はいったん全裸になるので、皆に見られるのはジャグジー後にしたいと思っていた。

いつものおじいさんが先に帰って、医者と彼は10分くらい話していつも帰っていた。娘の話もたまにしてくれたが、大体は水泳の話でマスターズに出たいとか、君も何か出た方がいいんじゃないかとかそんな話が多かった。割と皆近所なので中学生じゃなかったらご飯とか飲みにとか色々誘われそうな雰囲気は感じていた。たまにお医者さんらしく体の事をアドバイスしてくれたので助かった。

ある時、ちゃんとちんちん剥いて洗ってる?と聞かれて、洗ってますよと答えた事があった。彼が競泳用水着を下ろした姿を観て思いついたようだった。オナニーをよくしていたので普段からちゃんと剥いて洗っていた。話しながら剥いて見せたら、ちょっといい?ごめんね、と言って医者は彼の仮性包茎を指先でぐっと剥ききった。すると垢がたくさん出てきたのだ。ここまで洗わないと。そう言って、医者のおじさんは洗面所で手を洗い、じゃあまたね、と言って先に帰っていった。自分のチ〇コがこんなに汚かったとは思いもしなかった。そして、こんな奥までチ〇コの皮が剥けるのか。ここではなく早く帰って家でしっかり洗おう。何よりじっくり見てみたい。1度ズル剥けになってスースーしたチ〇コを気にしながら帰宅し風呂場でしっかりと洗った。初めて触る亀頭のカリ首の根本をしっかりと洗っていたらすぐさま勃起してしまいその日も射精した。

練習が終わって更衣室に戻るとおじいさんと医者が後からやってきた。3人で話しているとおじいさんが先に帰宅し、2人きりになった。静かになった空間で静かな時が流れていく。中学生の彼は体を拭きながら医者の元へ歩いて行くと、競泳用水着をめくってチ〇コを見せた。医師である男性は当たり前のように彼のチ〇コの皮を剥くと、綺麗だね、と褒めてくれた。そして、なんか診察しているみたいだなと言って笑っていた。医者と患者の様な関係になっていたが、実際は親と子の関係に近かったのかもしれない。


射精管理

2018-01-18 15:47:43 | 日記
その男は女性が好きだった。大学を卒業し、就職した関東での一人暮らしにも慣れてきていた。帰宅すればコンビニ弁当を食べるような毎日で、時々彼女が欲しいと思ったりはしたが、実際はどうでもよかった。顔は男っぽい普通顔にそこそこ鍛えた体は、25歳でありながら童顔にも見えた。ゲイからしてみたらそこそこモテる容姿だが、女性にはあまりモテてはいなかった。学生時代からイケメンとは言い難い自分の容姿のことは理解していた。女性とデートするよりも男友達とゲームやったりカラオケ行ったりしている方が圧倒的に多い学生生活は気付けば終わっていた。

その女はSMには興味がなかったが、性的嗜好を辿っていくうちにSMサイトに辿り着いた。彼氏がどうのとか恋愛がどうとか、そういう普通の事とは全然別のところでMの男をいじめたいと思っていた。いじめる、と言ってもやはりSMとは違った。ちょっと触ったり脱がしたり、そういう事がしたいと思っていた。それを問題なく実施する為には、相手もそうされたい側でなくてはならない。過激な書き込みや気持ちの悪い投稿に辟易しながらも、その日もまたお気に入りのSMサイトを閲覧していた。

男は、自分の性欲が異常に強くドMであることに気付いていた。女性に命令されてオナニーを強要されたいと常々妄想していた。SEXをしたいというよりも、女性に管理されたかった。検索サイトで調べるうちにSMサイトに辿り着き、そこで自分の同志のような書き込みを目にしてホっとしたのを覚えている。自分だけじゃないんだ、とか、自分の頭がおかしい訳ではなかったんだ、とか、そんな安心感を得られた。それからはそのサイトに頻繁に書き込み、年上の痴女に勝手にチ〇コをしごかれて射精を楽しんでもらうだけの「出会い」を繰り返してきた。自分のチ〇コがデカいと喜ばれ、何回もイカされたりバイブ扱いされて跨られ、チ〇コにしか用がないと言わんばかりの扱いを受けるのがドMの男には快感だった。動画もよく強要された。知らない女性に勃起した性器の画像や自宅でオナニーをした時に撮った動画を送るのが日常だった。見ず知らずの女性達に自分のチ〇コのサイズやチン毛の生え方、射精する様子を閲覧されると思うと興奮した。

女が帰宅すると、音楽を聴きながらコーヒーを淹れた。いつもの習慣で見ているYoutubeを一時停止すると、別タブでSMサイトを開いていた。

「私も好きね」

にやにやしながら投稿を見ていると、1人の男性の書き込みが目に入った。デカいチ〇コを好きにしていい、そんな内容の書き込みだった。SEXをしたいというのなら理解ができるが、自分のチ〇コを女性に弄ばれたい男性というのはどういった心境なのだろう。実際にいじらせてもらいたいという興味もあったのでメッセージを送信することにした。すぐに返事が来る類のものではないので、またYoutubeの動画を再開した。そのうちメッセージしたことも忘れてお風呂に入ることにした。髪を拭いていると知らない相手からメッセージが届いていた。彼からだった。

「連絡ありがとうございます」

「いえいえ、こちらこそ」

SMサイトには似つかわしくない挨拶のやり取りだったかもしれない。ちょっとした他愛もない話をした後本題に入ると、相手は気さくに返事をくれた。「ちょっと待ってね」そう言うと動画が届いた。ボクサーパンツ一枚で顔は見えない男性が全裸になっていく30秒もない動画だった。「どうだった?」と聞かれたので、大きいですね、と言ったような返事をした。実際に勃起した彼のチ〇コは自慢するだけあって本当に大きかった。これを知らない女性に触らせているのかと思うと興奮した。ダメ元でオナニーしてと送ると、しごくだけならいいよ、射精は直接見て欲しいんだ、と返事が来た。たまたま一人でオナニーした時の動画なら送れるけど、とも。送ってと言うとすぐに動画が届いた。顔は分からないが体はそこそこ良くてあそこが大きい彼。女性限定とはいえ人前で射精ができるのだからノリも良さそうだ。良い人かどうかは分からないが、こうして毎晩やり取りをしていると良い人に思えてくる。好きにはならないが、こうして毎晩やり取りができる相手というのは人生に何人いるのだろう。この日も全裸の動画を進んで送ってくれた。彼の性器の細部まで私は把握できているのだと思うと自尊心みたいなものがくすぐられた。

オレはどうしたのだろう。最近やり取りしている変態の女のコから返事が遅いと催促してしまうことが多くなった。今までそんなことはなかった。こんなSMサイトを信用しているわけではない。都合よく会って射精できればそれでよかった。動画だけ送らされて無視されることもよくあったがそれはそれでいい。そんな事を気にしない者が楽しめるのだ。だから返事がこなければ次に行けばいいし、やった女のコとはそれっきりでも構わない。そう理解できている自分は頭のいい男だと思っていたが、そうでもなかったのかもしれない。なぜかこのコからの返事が待ち遠しい。チ〇コを見せてと言われるのが嬉しいし、いっぱい見て欲しかった。こんな男でも突然にやってくるのだ。誰かを好きになるという事が。好きというにはまだ遠い感情だったが、それでも好きには違いなかった。

ゲイは出会いの総数が少ない。だからノンケは恵まれていると皆思っている。だが、ノンケはノンケで出会いの総数が多いだけで幸せにはほど遠い。選択肢が多ければ多い程、人は迷い幸せを選べなくなっていくのかもしれない。そう思うと、こうした出会いも大切なように思う。

警察官

2017-10-28 12:30:05 | 日記
初めて一人暮らしをした家に、その男性を招待した。新宿駅東口交番前で待ち合わせたのは25歳の時だった。彼も25歳。学年は1つ違ったが誕生日の関係で同い年だった。

「コーヒーを飲みに行こうか」

「いいよ」

お互いにやり目的のアカウントで体の画像だけでこうして待ち合わせておきながら、会ったその場で普通のデートに切り替えた。今はもうないアパレルの店を見ながら歩き、もうなくなってしまったカフェでケーキセットを注文した。オレ全然分からないから同じのでいいよ、と彼が言うので笑いながら2つ同じセットを注文した。何でそんなにガタイがいいの、と質問すると意外な答えが返ってきた。警察官だったからかな、と。

その直後にオレが初めて一人暮らしをすることが決まって、色々とアドバイスをしてくれた。

「麺類くらいは自炊して、コンビニじゃなくてスーパーで買いなよ。」

そんな彼に部屋を見てもらおうと招待すると、予定を空けて泊りに来てくれることになった。次の日は帰る事になっていたが中抜けしてまた戻ってきてくれ、3日間ずっと一緒にいることになった。黒くてマッチョな若い身体が何度も射精するのを弄んだ3日間だったように思う。

よく彼はオレの顔を触れてきた。凄いプルンプルンの肌だとか好きな顔だとか言って指で頬を突っついたり両手で挟んだりして気に入ってくれていたようだった。だからというわけではないが、スキンケア自体はその当時からしっかりとしてきて、そんなに老けてはいないと思っている。あの頃のままというのは無理だが、誰かに好きだと言ってもらえるくらいの肌は保ってきた自信はあった。

それから10年以上が経ち、ジムで時々彼と出会う。向こうには向こうの人生があり、オレはオレで違う人生を歩んできた。彼の笑顔は変わらないが、老けたなとは思う。体型も緩んできているし、でもお互い様なのかなと思うと他人の事ばかり言ってもいられない。この前までは年下の相手と付き合っているようだったが、今はどうなっているのだろうか。

ロッカーで彼に声を掛けられた。久し振り、と話が弾んだ。ロッカールームという事もあって深い話はできなかったが、近況報告をし合って大体の現状を知ることができてよかった。そして、その時ちょっとだけ気になったがすぐに忘れてしまっていたある事を一人帰り道に思い出した。なぜか、彼がずっとオレの頬を見ていた事を。

低空飛行

2017-10-20 23:21:38 | 日記
過去に出会った男というのは、もう上手くはいかない気がする。あの時はそうだったかもしれないけど今なら、と考えるかもしれないが、そう人は変わらない気がするのだ。自分も相手も。だから、20代の時に出会った物凄いいい男達と再び出会えても素通りする事が多い。

20代の時、西新宿のカフェで待ち合わせた現役の選手がいた。なぜオレと会ったのだろうと思える程のいい男だった。真っ黒で爽やかで本当にカッコいいと思った。しかし、あまり話が盛り上がる事もなくそのお茶は終わった。

20代の時、渋谷のエクセルシオールで待ち合わせた男性がいた。マッチョでスーツ姿が似合っていた。同じジムだという事が分かって話は盛り上がったが、タイプじゃないからと早く切り上げられてしまった。

20代の時、自分はこういう事を繰り返していた。やり目的であれば80点くらいの男がいくらでも見つかるが、普通の出会いでは65点も難しかった。いい男と付き合いたければ全てが必要なのだ。顔と体と雰囲気と話し方と、あれもこれもが合格していなければならない。幸せになりたければ、全部揃えるか、全部諦めるかどちらかだろう。

そのどちらでもない状態がオレだ。何も揃えることもできず、諦めきれてもいない。自分に価値があるとも思えないが、それなりの幸せは欲しい。そんな30代を幸せだとは思わない。20代の時ほど輝きたいという情熱もないが、何か小さいところで他の30代よりはマシだという自尊心だけはある。これでいいのかもしれない。いつものジムでスタッフと話して、他の会員も知り合いが多くなってきて嬉しい。仕事はといえば無かったら困るけど増えても困る。キャリアアップなんか最初からどうでもいい。夜遅くまでコーヒーを飲みながらネットを見て、さっさと寝る。そんな低空飛行の人生がなぜか幸せのような気がする。