いい女よりもいい男の数は少ない

男の恋愛ブログです。
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見知らぬ駅

2017-01-23 01:00:24 | 日記
見知らぬ駅の構内で目当ての出口の表示を見つけ、足早にその方向へと向かって行った。今日からここが自分の勤務地となる。美味しいお店やちょっとしたドラッグストアなどあるだろうか。たまには帰りにちょこっと寄れるカフェなんかがあったらいいななどと考えながら新しい職場のビルを探して歩いていた。

「仕事帰りなんだ。飯田橋駅で待ち合わせてもいいかな。」

それから数ヵ月が経った。商店街のポイントカードを作ってもらったりお弁当屋さんの店長に顔を覚えられたり、なかなか溶け込んでいた。何一つ見覚えのない街のはずであったが、時々何かが心をかすめる事があったが、気のせいだろうとすぐ忘れていた。

「そこから何駅かで着くから泊まっていきなよ。」

この駅の名前くらいは知っている。降りた事はなかったが都内の地下鉄駅として認識はしていた。でも妙に駅名に聞き覚えがあったような気がするのはなぜだろうか。

お金持ちのお客様が続いたので上司に世間話として振ると、ああ、この街は金持ちが多くてね。弁護士やTVマンとかばかりだよ。と笑って話してくれた。へえ、そうなんですね、とコーヒーを片手に聞き入っていたが、弁護士という言葉に何かが心に触れた。弁護士が何だというのだろう。そんな知り合いは周りにいないし、お茶でこの前会ったのは弁護士を目指している学生だったくらいか。いや、もう1人いたかな。随分と大昔に。

「好きだよ。」

たまたま寄った飯田橋駅前のイルミネーションがとても綺麗だった。カメラを持って来ていたらもっと綺麗に撮れたのに、と後悔しながら歩いていると、大昔の彼の笑顔が蘇ってきた。スーツで待ち合わせ場所に現れた。そして少しだけ歩いて地下鉄の階段を下りていった。ただそれだけの飯田橋だったが、今でも覚えているのはなぜだろうか。そして、その向かった先がこの地下鉄駅だったのだ。

「いつか一緒になれたらいいね。」

見知らぬこの駅で自分は恋に落ちて、10年以上の時を経て今またやって来た。運命や縁などという程のことでもないが、昔通って来た道が今に繋がっている気がした。