いい女よりもいい男の数は少ない

男の恋愛ブログです。
過去の記事は随時掲載していきます。
以前読んで下さっていた方、ありがとうございます。

言語化する日

2021-08-23 14:15:12 | 日記
若い方々と仕事をする機会が多い。もう少し自分が若かった頃は、「あなた達もさあ、もうちょっと頑張ってもいいんじゃないの?」なんて思う事も多かったが、自然とおじいちゃんのように優しく見守るようになった。年を取ったのは事実だが、単純にやるべき事が増えたからだと思う。人は暇だと他人を気にするものなのかもしれない。

20前半まで何の希望も目標も無く生きてきた私は、20代中盤から、今までやらなかった事をやり直していこうというプロジェクトを始めた。いい判断だったと今でも思う。胸がキリキリと痛むような「やるべきリスト」を10個作り、一番上から「明日までに実行開始」というルールを作って実行した。もしかしたら一生見て見ぬふりをして逃げ続けた可能性のある「こんな事今からとてもできない」という10個を、1位から潰していくのである。やってダメならそれでよいので言う程難易度は高くないのだが、開始する時点での心理的なハードルはめちゃくちゃ高かった。が、それをやるのだ。生きている間に。

それは、自分の人生を本当に変えた。顔も体も考え方もすべてを変えたが、やはり中身は変わらないのだということも分かった。そして、自分は間違ったプライドに縛られて若い時代を過ごしていたんだなという事も分かった。自分は何もしてこなかったダメな人間だと口にしていながら、ではなぜ「それら」を今から実行しないのか。いまさらできない、恥ずかしい、ある程度できてからじゃないと参加できない、などと思うから実行しないのだが、ダメな人間であればできない前提で参加すればよく失敗しまくったとしても恥ずかしいという感情はないはずなのだ。それを恥ずかしいと思うのは、まだどこか自分を高く置いているからだと思う。適切な例かは分からないが、例えば会社の行事で毎年ソフトボール大会があって野球ができないから何とか理由をつけて休むのが毎年苦痛だとする。昔の自分だったらそのままか転職するが、今なら自然と、初心者OKの社会人草野球チームに明日までに入部希望の詳細な問い合わせをする。え、と思われるかもしれないが、人生のTO DOリスト10個をさばくよ、と言っているのはこの次元の事である。

自分のできない事、やらなかった事、逃げてきた事を今から思い順に必ず実行していく事は、自分の感情を言語化する作業だと思う。もやもやした苦しい昔の思い出、どうにもならない逃げたい気持ちを言葉にして実行していく。何が嫌だったのか、どうしたら自分はうまくいくのか、そんな完璧なプランを練って参加する事になるのだから。経験で言うと最初の2週間くらいはうまくも行かず手ごたえも掴めず、恥ずかしい、みっともない、といった感情が湧く。もう既にTO DO10どころか100はクリアしているので、他人の目などどうでもいい。そんな事よりもスケジュール管理の方で頭がいっぱいなので、何曜日の夜はアレ、土曜の朝はコレ、と習い事や参加行事が大量に続いている。休みの日こそやる事が多いので、平日の勤務日の方が夜ゆっくりできる日がぽつぽつとあったりと逆転現象が起きているが、こうして若い頃に逃げてきたことを簡単に取り戻せる取り組みがライフスタイルに当たり前に組み込まれている人生は豊かだと思う。

言語化する日

2021-08-23 14:15:12 | 日記
若い方々と仕事をする機会が多い。もう少し自分が若かった頃は、下に対して「あなた達もさあ、もうちょっと頑張ってもいいんじゃないの?」なんて思う事も多かったが、自然とおじいちゃんのように優しく見守るようになった。年を取ったのは事実だが、単純にやるべき事が増えたからだと思う。人は暇だと他人を気にするものなのかもしれない。

20前半まで何の希望も目標も無く生きてきた私は、20代中盤から、今までやらなかった事をやり直していこうというプロジェクトを始めた。いい判断だったと今でも思う。胸がキリキリと痛むような「やるべきリスト」を10個作り、一番上から「明日までに実行開始」というルールを作って実行した。もしかしたら一生見て見ぬふりをして逃げ続けた可能性のある「こんな事今からとてもできない」という10個を、1位から潰していくのである。やってダメならそれでよいので言う程難易度は高くないのだが、開始する時点での心理的なハードルはめちゃくちゃ高かった。が、それをやるのだ。生きている間に。

それは、自分の人生を本当に変えた。顔も体も考え方もすべてを変えたが、やはり中身は変わらないのだということも分かった。そして、自分は間違ったプライドに縛られて若い時代を過ごしていたんだなという事も分かった。自分は何もしてこなかったダメな人間だと口にしていながら、ではなぜ「それら」を今から実行しないのか。いまさらできない、恥ずかしい、ある程度できてからじゃないと参加できない、などと思うから実行しないのだが、ダメな人間であればできない前提で参加すればよく失敗しまくったとしても恥ずかしいという感情はないはずなのだ。それを恥ずかしいと思うのは、まだどこか自分を高く置いているからだと思う。適切な例かは分からないが、例えば会社の行事で毎年ソフトボール大会があって野球ができないから何とか理由をつけて休むのが毎年苦痛だとする。昔の自分だったらそのままか転職するが、今なら自然と、初心者OKの社会人草野球チームに明日までに入部希望の詳細な問い合わせをする。え、と思われるかもしれないが、人生のTO DOリスト10個をさばくよ、と言っているのはこの次元の事である。

自分のできない事、やらなかった事、逃げてきた事を今から思い順に必ず実行していく事は、自分の感情を言語化する作業だと思う。もやもやした苦しい昔の思い出、どうにもならない逃げたい気持ちを言葉にして実行していく。何が嫌だったのか、どうしたら自分はうまくいくのか、そんな完璧なプランを練って参加する事になるのだから。経験で言うと最初の2週間くらいはうまくも行かず手ごたえも掴めず、恥ずかしい、みっともない、といった感情が湧く。もう既にTO DO10どころか100はクリアしているので、他人の目などどうでもいい。そんな事よりもスケジュール管理の方で頭がいっぱいなので、何曜日の夜はアレ、土曜の朝はコレ、と習い事や参加行事が大量に続いている。休みの日こそやる事が多いので、平日の勤務日の方が夜ゆっくりできる日がぽつぽつとあったりと逆転現象が起きているが、こうして若い頃に逃げてきたことを簡単に取り戻せる取り組みがライフスタイルに当たり前に組み込まれている人生は豊かだと思う。

この世の果てに

2020-04-03 00:47:33 | 日記
ゲイである自分がノンケを好きになる事は許されない事だと思っている。許される許されないという事ではなかったとしても、そもそも成就しない恋だ。そう知らされたのは23の時だったが、早くて良かったと思っている。その前にも後にもカッコいいノンケはいくらでもいたが、自分が恋したのは23才の時だった。思えば学生時代の頃から自分が幸せになるという実感がなかった。誰かに愛される、誰かから優しくされる、誰かを愛する、そういったものが欠落した人間だった。今もそうだ。だから、人生を諦めているというのとは決して違うのだが、自分には幸せは訪れないと悟っていた。だから23の時の恋心は淡く消え去ってしまったが、どこか分かっていた結末でもあった。

どうすればモテるのかを自分はよく分かっている。実践できるかどうかはともかく、どうすればゲイに対して、女性に対して愛されるのかを熟知している。しかし、付き合うというのがとても苦手なのだ。よく分からないといった方が正しいのかもしれない。そこで思ったのが、ゲイではなくノンケの男性や女性といる方が楽だという事だ。ゲイだと告白する気はないので多少の脚色は必要だが、一緒にいて居心地がいい。ゲイといればゲイの話ができるので魂の繋がりというか本当に心を開いて話せるのだが、その先はない。ではノンケはというと、最初から先はないのだから、余計な労力や無駄な色恋抜きで関係性を築ける。自分には幸せは訪れないと思って生きてきたからこそ、そちらを選ぶ。中学時代に好きだった野球部の男の子とは友達になれた訳でもなく一緒に野球をした訳でもなく、ただ他人として遠くから見つめるだけの存在だった。23で好きになった相手も野球部出身の男性だった。一緒の職場で一緒の電車で帰っていたが、好き過ぎて全てが空回りした。告白していなかったことだけが救いだったが、今あの時に戻れたら完璧な振舞いができただろう。では完璧な振舞いとは何かと言えば、好きになることなく仲良くなることだ。

相手を好きにならずに生きていく。自分が長い年月を経て手に入れたものが、それだった。
美しく生きていく、輝いて生きていく、そして誰も好きにならずに生きていくのだ。恋をしない、ということでもある。哀しくはない。コーヒーを飲むか飲まないかの違いくらいだと思うようにしたのだから。

不思議だ。そう思って生きていたのに、好きだと言ってくれる人がいた。最近仕事で知り合った男性だ。
心に光が差したような気がした。

アンインストール

2020-03-20 15:13:52 | 日記
その男は日常のツールとして出会い系アプリを利用していた。出会いに依存していた訳ではなかったが、誰かと出会いたいという願望があり、どこに出向く必要もなく見知らぬ男性と出会えることは大切なことのように思えた。

ただ、出会ってはみても手元に残っていく人の数は極端に少なく、正直出会う意味もあまりないのかなと思うことも多くなっていった。とは言ってもゲイのイベントや飲み屋に行く気にはならないし、他のSNS、特にTwitterで出会うのも気が重かった。効率が悪くてもやはり誰かのホームパーティや海、バーベキューなどに参加して出会う方が結果としては良いとは分かってはいたが、大学生の時ならまだしも「今さら」と思ってしまう。二の足を踏んでいるというよりかは、出会いたいと思っている割にどこかどうでもいいと思っていたのかもしれない。

出会いと恋愛は違うものだと知った。出会いがあって恋愛がある、というような認識でいたので、まずは出会いが欲しいというようにセットで考えていたのだ。しかし違う。恋愛に繋がった出会いというのは、振り返ってみると、恋愛を意識していなかった出会いだった。誰かの友人で、とか、ジムで知り合って、とか、あくまで恋愛とは関係のない知り合い方をして、いつしか好きになったのだ。恋愛の入り口として出会っている限り恋愛は遠いのだろう。

その男はスマホゲームをインストールする際に容量オーバーの表示が出て、アプリ一覧を開いてみた。こういう時に、たまに行くファストフード店のアプリとかは消すのに迷う。そんな事を考えながら、出会い系アプリのアイコンが目に入り指が止まった。長年利用してきたアプリだった。立場を超えて見知らぬ男性達とメッセージのやり取りをしてきたものだった。ここ最近では利用頻度も下がっていって、正直こんなもので良質の出会いなどないのではとさえ感じてきていた。でもこのアプリがなかったら、出会っていなかった人が大勢いる。彼らとの縁が切れる訳ではないが、このアプリをアンインストールする事は、この先の出会いを削除するということだ。ちょっと寄ったカフェで何となくアプリを開いてみる、そういった暇つぶしがもうできなくなるという事でもある。

出会いはどこにでもあると思う。自分がゲイだから制限があるような気がしていただけで、Instagramでもジムでも友人からの紹介でも、割と出会えるはずなのだ。それをアプリに頼ってきたのは、「あなたも出会いたいんでしょ?」という甘えだったのかもしれない。

一瞬迷ったが、その男は見慣れたアプリをアンインストールした。

ニューゲーム

2020-03-14 18:53:36 | 日記
人生をやり直したいとよく思う。高校時代からやり直して、一流大学に入学し、医者でも弁護士でも目指したら今よりきっと幸せなはずだ。

では、もしそれが本当に可能になったとしたら、自分は目の前にあるリスタートのボタンを押せるだろうか。自分が歩んだ道を取り消せるだろうか。社会的に何一つ成功していない人生だとしても、キラキラと輝く思い出を消せるだろうか。

過去に戻れたとしても今より幸せだという保証はない。同じ選択肢が現れれば答えは分かるが、そうではない場合、自分で選択するのだ。それでミスしたらまたリスタートするのだろうか。それは幸せな人生だろうか。

人生をやり直したいとよく思う。そして、すぐに考え直す。素晴らしい人生だったと。

迷わない

2020-03-12 23:54:24 | 日記
自衛隊の話を以前聞いた事がある。新隊員が隊長を好きになって告白した。隊長は新隊員を傷付けまいと、恋愛ではなく好きだと答えたそうだ。ノンケとゲイ。相容れる事はない関係のように思えるが、兄弟や親友が後からゲイだと分かったら関係は破綻するのだろうか。知らなかっただけで、それとは関係なく一緒に過ごした思い出を破棄できるだろうか。ゲイだったんだ、と知る事はショックだっただろうが、ゲイ本人はもっとつらかったのだ。そう思えば縁を切ることはしないだろう。

上っ面の話をすればこういう風になるが、実際の例を書くと少し違った話になる。
ノンケ側も薄々は気付いているものだ。女っぽいな、とか、女性に興味がないのかな、とか、そういったきっかけから色々と察していたりするのだ。それを敢えて聞くこともなく仲良くしてくれるのは、男側の愛情だと思う。このままでいいのかどうかは分からないけど、だからといって何かを改善するようなものでもない。ゲイじゃなかったらいいなとは思うが、変なことを聞くわけにもいかない。例えそれが親友だとしても。そんな風に思いながら大学時代を一緒に過ごしてくれた親友は多いのではないか。

思えば世の中はいい人が多かったかもしれない。振り返れば自分に優しくしてくれた人は多かった。中にはゲイだと察したうえで態度を変えずに仲良くしてくれた人もいたはずだ。例え今が困難な人生だったとしても感謝すべきではないだろうか。

そして、ノンケがゲイを好きになる事もあった。人を好きになった、と言ったらいいだろうか。タイプじゃなかったけど結婚したみたいな話と同じなのか分からないが、一緒にいて好きになった、それが男だったという事なのかもしれない。自分にも経験がある。

カップルとまではいかないが、はたからは分からない2人の関係がある。ノンケがオレに会いたい一緒にいたいと連絡をしてくる。恋人同士なのかと錯覚するほどに親密な関係になるが告白されるわけでも肉体関係に発展する訳でもない。向こうはただ親友としていちゃいちゃしてきているのだったらそれはそれでいい。特に勘違いするような「あわよくば」という気持ちは本当にないので、下心や変な気持ちがないのであればそれでよい。よく考えれば分かる事だが、どんなに好きな男でも相手がノンケであるのなら女性と結婚して幸せになってもらいたいと思う。本当にオレの事が好きで同性婚をしたいと言ってくるのなら嬉しいが、こちらからそれを望むことはない。考えていないので行動に出ないという事だ。ゲイはノンケを好きになるべきではない。

ゲイで良かったと思う。また生まれ変わったらゲイに生まれたい。


【広告】 Male Model TOKYO

2020-01-26 20:09:58 | 日記
日本人男性モデル写真集のシリーズ最新刊が発売中
現役のアスリートやボディビルダー、フィジーク選手、パーソナルトレーナーが毎号モデルを務める
すべてのモデルがイケメンでマッチョ
Amazonにて好評発売中

https://www.amazon.co.jp/kindle-dbs/search?_encoding=UTF8&author=KYOSUKE+KOGURE&searchAlias=digital-text&page=1&sort=DATE_DESCENDING&didRefine=1

イケメンノンケとブサイクゲイ

2019-12-31 19:47:34 | 日記
そのノンケは大学進学の為に東京に訪れた。入学式の為に一緒に来てくれていた両親と東京駅前で食事をして、どこかのカフェに移動した。段々と口数が減っていき、彼らの新幹線の時間があっという間にやって来た。笑顔で手を振ると母親は少し泣いていた。

ずっとモテてきた彼は大学に入るとよりモテた。都内のクラブに行ったり、コンパに顔を出せばその日にヤレる相手はすぐに調達できた。東京で彼女ができ、それとは別にSEXする相手も大勢いて、大学生活は本当に楽しかった。

大学にジムがある事を知り、特に興味もなかったが暇な時は通うようになった。

そのゲイは、仕事である男性と知り合った。打ち合わせの段階から割と気が合い、話が弾んだ。世の中には2種類の人間しかいない。気が合う人間と、気が合わない人間だ。目の前にいる男性は凄まじいイケメンだとは思うが、だからどうという事もなく、容姿の劣る自分でもこうして仲良くなっていくのだから人間というのは不思議なものだ。

「ぜひ、また。」

社交辞令ではなく挨拶を交わすと、スーツケースを1つ持ってあげて途中まで送った。

そのノンケは就職後も本格的にトレーニングを続けた。目標は特になく、カッコよくなりたいとかモテたいだとかそういう事も無かった。大学卒業後は実家に戻り、地方でこうしてのんびりとした生活を送っている。彼女とは疎遠になり別れてしまったが、仲間たちは時々連絡をくれる。旅行を兼ねて遊びに来いよと誘ってみると実際に何人かが遊びに来てくれて嬉しかった。大学時代の面々と会って話していると学生時代が遠い昔のように感じる。このメンツで都内のクラブに行ったものだった。自分は女関係は派手に遊んでいたとは思うが、東京の生活に馴染めなかったからこうして地元に就職したのだ。仕事関係で都内には時々行くが、新宿駅等を使う時はうんざりする。あのまま東京で就職していたら自分は幸せだっただろうか。そんな事を日々感じながら、アポイントが入っていた件で再び東京に向かう事になった。

「わざわざお越し頂いて申し訳ありません。」

先方が立ち上がり、挨拶をしてくれる。

「いえいえ、とんでもございません。」

スーツケースを2つ傍に置きながら頭を下げた。何かいい人そうだなと直感で思った。

そのゲイは駅まで送りながら、道行く女性が割と彼をちらちら見ている事に気が付いていた。確かにこの男は芸能人以上の容姿をしている。しかもスーツでいるから完璧なカッコ良さだ。聞くまでもなく実生活ではモテているだろう。自分はこうして当たり前に一緒に歩いているが、この男に恋した女性は何人いただろうか、とふと思った。

手頃な場所まで案内すると握手を求めてきた。
その後、彼は別の要件で東京に来た時も気軽に連絡をくれて東京駅でよくお茶をするようになった。
新幹線がくるまでの時間は長いようで短かった。

「さようなら、またいつか。」

「はい。」

笑顔で手を振ると、彼は手を振り返し階段を昇って行った。


好きでいて

2019-10-27 03:33:31 | 日記
仕事の打ち合わせで都内のカフェに出向くと、その選手は先に席に着いていた。オレに気付くとすぐに立ち上がり挨拶をしてくれた。体育会出身特有の礼儀正しさがあった。

彼が以前に写っていたポスターやPRの動画などを見せてもらいながら話が進んでいく。仕事の話が一通り済むと、自然と世間話になっていった。見れば見るほど、とてつもなくいい男だなと思いながら会話を楽しんだ。

それから何度か仕事で会う機会があった。あくまで仕事での関係なのだから楽だった。昔であれば好きになっただろうし、女性に生まれていたらこの男と付き合えたかもしれないと妄想したはずだが、今はもうない。ノンケを好きにならないというのがスキルだとしたら自分は難関資格を手にしたようなものだと思う。手に入らないものは望まない、それが幸せになる為のスキルかもしれない。

車で送ってくれた時があった。悪いなと思ったが先方から言って下さったことなので遠慮なく送ってもらう事にした。恋愛の話などしてはいなかったが、こうして何人の女性が彼の助手席に座っただろうか。自分が女性に生まれていたとしても、こうして隣に座れたかどうかは分からない。むしろ男に生まれたから今こうして送ってもらえたのではないだろうか。信号が赤の間、缶コーヒーを飲みながら彼が何か話していた。近くにミンティアがちょっと置いてあったり、後ろの席に雑に着替えが置いてあったり、そういった情報の1つ1つに、いいなって思ったりしていた。

数か月間のうちに数日こうして会う機会があり、仕事としては終了した。連絡先は知っているが特に連絡することもない。こちらが会いたいと思えば何とでも理由をつけて会う事ができる立場ではあるが、そういう気もない。彼がゲイだったらいいなと思った事もない。彼と付き合ったらどんなだっただろうかと妄想する事もない。自分は、何かが枯れてしまったのかと一瞬心配したが、答えが分かった。年齢とともに自分を好きになったのだ。いい男ばかりに価値を置いてきたが、自分にもそれなりの価値があるのだという事だ。向こうがこちらと一緒にいたいと思う瞬間もあるはずで、美しい月を見上げるばかりではなくなったのかもしれない。

時を超えて

2019-09-10 21:34:49 | 日記
「一緒に帰るか?」

Facebookで検索したものの、結局先輩を見つけることはできなかった。Instagramでも同じだった。オレが新入社員の時に25才だったあの男性は今どこで何をしているのだろうか。

「ちょっと待ってて、パン買ってくるわ」

野球をずっとしてきたと話してくれた。背が高くてマッチョでイケメンで、そして優しかった。ガムをくれたりコーヒーを買ってくれたり、電車を待つ間ホームで一緒に食べようとパンを買ってくれたこともあった。好きだった。苦しいほどに好きだった。だから諦めた。告白などして彼に迷惑をかける訳にはいかない。精一杯の愛だった。いや、まだゲイだと自認もしていなかった時期だから、何をしていいか分からず単に何もしなかったというのが答えかもしれない。好きだった。だけど諦めた。そしてゲイとして歩き始めることにした。先輩と同じくらいカッコいい相手を見つけることが自分にとっての幸せだと思うしかなかった。だから、全てはこの時に始まったと言えた。

「コーヒ飲むか?」

それからは体を鍛えてマッチョになって、SEXをしまくって、そして恋愛もいくつも経験した。振り返ればどれも闇に輝くブラックライトのような妖しくも美しい思い出ばかりだが、それがあっての今なのだろう。あの頃の1つでもなかったら今の生活には辿り着けなかったと思うほどに、危うい道を歩き続けて1つの成功を手にしたと思う。手を伸ばしても決して届かなかった美しい月。それを諦めたのが23才の時だとしたら、その後の人生はその代替物を探し求める旅だったように思う。月、いやノンケのイケメンなど決しては自分は望んではならないものなのだ。それを知った23才からの人生も思ったほどは悪くはなかった。イケメンと呼ばれる層は実際にはピラミッドの第2階層に位置している。本物のいい男というのはその上に座しているものだ。地上に降りてくることはない。こちらに微笑むこともない。その男たちを自分は「月」と呼んだ。

「今度の休みドライブに連れてってやるよ、客先周りともいうけどw」

先日、仕事である男性と知り合った。完全な仕事だったが多少話す機会はあった。なぜか初日から気が合い、話が弾んだ。聞けば25才でずっと野球をしてきたと話してくれた。あまりそういう目で見ていなかったが、よく見ると精悍な好青年だった。

「一緒にい過ぎかな?」

先輩とは背丈も違うし顔も似ていなかった。強いて言えばマッチョで黒く焼けているところぐらいだったが、話していくうちにもう1つ共通点を見つけた。優しいところだ。女にモテるのは間違いないが、男とのどうでもいい約束をきちんと守るのだ。帰りも見送ってくれて、ちゃんと着いたか連絡もくれた。全然似ていないのに、あの頃に戻って先輩といる気がした。ただ違うのは、オレが好きにならなかったところかもしれない。

美しさ

2019-05-12 13:47:00 | 日記
カッコ良くなることは簡単だった。なれるかどうかは別として、方法だけは単純明快だった。自分が心の底から恋焦がれる男を模倣して、そうなるだけで良かったのだ。そう気付いてからの人生は、新しい人生となった。

大会に出る訳ではないので体作りは気が楽だった。ただただ大きくして部分部分をカスタマイズして、Tシャツがパンパンでケツがプリっとしていれば痩身の自分にとっては上出来だったからだ。元々が痩せやすいのだから食事制限などする必要もなく、ただ鍛えて、ただ食べて、デカくなっても腹筋さえ割れていれば良いとさえ思えた。脚が細いと思えば脚の日を増やし、腕が細いと思えばメニューを見直して、自分をデザインしていく作業はコンプレックスの強さの反動ゆえか堪らなく魅力的なものだった。あまりSEXに興味がなかったせいもあり、「やるためにエロい体にしよう」という事は思わなかったが、ピーク時には、スパッツ姿でロッカー内を歩いていれば後をつけられ、スウェットを腰履きして街を歩いていればAVに勧誘される日が続いた。とは言え、自分にとってのゴールは程遠く、いるのかさえ分からない理想の相手と出会う事も、まだなかった。

それから15年が経った。生活は何も変わっていないがトレーニングの強度は下がった。ジムで話す大学生達はマッチョなだけでなく肌もつやつやしていて眩しいほど輝いている。かたや自分はどうか。20代の時にピークを迎えた肉体は下降線を辿り、いまや型落ちした。若い人達と張り合って痛々しい振舞いをしたいとは思わないが、もう一手が必要ではないだろうか。もう少し強度を上げて、もう少し肌つやを取り戻す必要があるのではないか。ああ、かつての20代の時を思い出す。カッコよくなりたい、マッチョになりたい。そう切望したあの頃とまるで同じだ。

また新しい人生を歩んでいこうと思う。

君を想う

2019-04-01 01:46:41 | 日記
その男はネットでとある画像を目にすると絶望した。カッコいいカッコいいと言われて生きてきたが、「彼」が100だとしたら自分は1にも満たないかもしれない。キラキラと輝くような笑顔で通販サイトの下着モデルはこちらを見つめていた。

「ゲイの世界には全く興味がないが、下着モデルになりたい」

そう思うと、その男は別の下着サイトに応募してみることにした。明らかに格下のブランドで、モデルも大した事はなく、思った通り即採用となり色々と学ばせてもらった。素人の自分が一応はモデルになれたのだと思うと自尊心がくすぐられた。例え売れないゴーゴーでも下着モデルでも、AVにちょっと出演しただけであったとしても世間が思っている以上に反響は大きい事を知った。こんな素人モデルでもSNSからはちらほらとオファーがくる。中には愛人契約のDMが届いていて笑ってしまった。

カッコいいと言われてきた人生は、それはそれで幸せだった。何不自由なくとまでは言わないものの、愛に溢れた人生だったと思う。しかし、第一線にはなれない人生でもあった。鍛えまくって研究と努力を重ねた普通顔の男の方が上には行けるのだ。カッコよくなりたい。モデルになって初めてその男はそう思った。少しして彼は期待の新人モデルとして活躍の場を広げていった。

地方企業に勤める会社員の男はネットやSNSでゲイの情報を集めるのが趣味だった。フォルダは拾い画像や動画で溢れ、タイプの男性のInstagramやTwitterを眺めているのが日課だった。いつも通り色々なサイトを眺めていると新しい下着モデルが追加されていて衝撃を受けた。まだ粗削りな感じではあったが、本当にタイプだった。イベントに出演すると書いてあったのでスケジュールを確認すると唯一東京に行けそうな日があったのでその日に決めた。いい年をして下着モデルに恋をしてしまったかもしれない。そう思うと胸が締め付けられた。

何回もサイトを確認してイベントの情報を確かめた。小さなお店のようだったので荷物はほとんどホテルに置いて新宿に向かった。会ったら何て言おう。長話する度胸もないが、そんな状況にもならないだろう。握手くらいは無理やりにでもしてもらわないと交通費の元が取れないよな。そんな事を考えながら歩いていると新宿2丁目にあっという間に着いてしまった。緊張するけど、どうでもいいような、変な気持ちのまま店に入る事にした。

モデルの男は早めに店内に出ることにした。色々な客から声が掛かる。大体が一緒に写真を撮ってくれと言ってくるが、逆に声を掛けられなさそうにしている客にはこちらから声を掛けた。人気というのはあっという間になくなるものだと知っている。いつの日か自分もそうなるのだ。その最後の時まで支持してくれる人を1人でも多く作るのが今だと思っている。ちやほやしてくれる人が真っ先に手のひらを返すのだろう。薄情な大多数の人間によって人気というものが作られているのかもしれない。

何回か目が合った男性がいた。自分目当ての客ばかりではないので違うモデルやゴーゴー目当ての客かもしれないと思ったが、一言声だけ掛けてみることにした。

「こんばんは。楽しんでいますか?」

「〇〇さんですよね?一度会ってみたくてきました。」

会社員は、まさか自分に向こうから話しかけてくるとは思っていなかったから咄嗟に切り返せなかった自分を恨んだ。もっと気の利いた事が言えたら彼の印象に残ったはずだ。こんな事ならプレゼントでも持ってくればよかった。自分はその他大勢の1人で、こんな1対1になる機会は訪れないと思っていたので何の準備もしていなかった。おしゃれだねって笑顔で褒めてくれたのも不意打ちだった。何もかもがグダグダの会話になりながらホテルへの帰路についた。モデルの彼との会話の一言一句全てを反芻し自分の会話力のなさを後悔しながら思ったことがある。彼の事が好きだと。





上司

2019-02-14 00:20:40 | 日記
その男はフリーランスとして働く傍ら、企業でアルバイトとしても働く日々を送っていた。俗にいうWワークだ。お金が欲しくて始めたのだが、時給で選んでもいなかった。自分でもできそう、あまり電車に乗りたくない、そんなワガママを通せるのも本業があっての事だろう。生活がかかっていたら文句を言える立場ではないのだから。

実は最初はスキマ時間に近所のセブンイレブンで週2で働いていた。レジをやりながら肉まんを作ったりして意外と楽しかった。オフィス街だったこともありサラリーマンやOLが多く、自分もスーツを着て働いていたよなあ、と時々昔の事を思い出していた。そんな想いが高じてオフィスでアルバイトをすることにしたのだった。

久し振りにスーツを着て面接を数社受けてみることにした。早めに着いたら別室に案内されるものだと思っていたがエレベーターホールで立って待たされた企業や法曹関係の事務所はこちらからお断りした。一流企業と言ってもピンからキリまであるのだなあと思い知らされたものだ。求人広告と全く内容が違う提案をしてきた企業も辞退した。こちらが選ぶ側なのだ。企業側ではない。恋愛だってそうだった。ブサイクでガリガリだったなりに、無い物をこねくり回して、「ある」事にしてきたのだ。最終的に選んだのは通いやすくて自分でも活躍できそうな職場だった。

初日に挨拶されたのが上司となる男性だった。一目でゲイだと分かる男性で、ちょっと好きな顔だった。手を出そうとは思わないが、ずっと見ていたい顔だと思った。

「ちょっと記入してもらいたいものがある」と、上司が資料を渡す手に指輪はなかった。お昼休みに弁当を持参している様子もない。誰かが毎日渡してくれそうなハンカチやタンブラーもなく、結婚していないにしても同棲もしていないだろうと思わせた。くだらない駆け引きや恋愛指南にありそうな事を仕掛けるつもりはない。テクニックを駆使して興味を引かせるよりも、ただ自分が美しい存在であればおのずと向こうからやってくるだろう。ジムに通いながらWワークに励む日々だったが、新人アルバイトにしては役職者である上司から声を掛けられる機会は多かった。「何かあれば相談してきて」と言われたのは、単なる社交辞令ではないだろう。単なる仕事の話ではあっても話してみたい、と、それくらいは相手から思ってもらえただろうか。

仮に2人が付き合う事になったとしても、この恋愛が上手くいかなかった時の損失は大きい。そもそも相手がゲイなのかどうか、恋人がいるのかさえ知らないまま何かが進展するとは思えないが、毎日同じ職場で顔を合わせているというのはかなり大きい。ジムで毎日見掛ける会員だからと言って用もなく話しかけられるものでもないが、職場となると「いい」のだ。「コーヒー、お好きなんですね」や「おはようございます」等、何とでも話しかけられる。しかも同じ会社なのだから、何でも割と好意的に受け止めてくれる。

「好きだとしたら、どちらが先だろうか」

窓の外に目をやりながら、ふと考える。こちらからしてみたら向こうから来てほしい。しかし、上司が新人に手を出してくるとは思えない。むしろ向こうこそ、こちらに興味があるとしたらだが、来てほしいと思うはずだ。相手からくることを望んで、来やすいように振舞っていると、他の人からもよく話しかけられた。いつの間にか模範的な新人に自分はなっていた。




初恋

2019-01-17 22:33:21 | 日記
その男は高校時代はラグビーに明け暮れた。彼女もいた。地方での生活は順調だった。ラグビー部の先輩の事を好きになるまでは。

「オレは、男が好きなのか?」

戸惑いはあったが毎日部活はあり、毎日好きな先輩と会えて幸せだった。チームメイトとして抱き合ったし、ふざけてキスできた。幸せだった。そして東京の大学に進学した。

彼女とは遠距離になり別れた。東京での一人暮らしは寂しかった。東京でもラグビーを続けたが、高校時代のラグビーの方が楽しかった。先輩がいたからかもしれないし、東京の人とはあまり合わないからかもしれない。寂しさを紛らわす為にゲイのアプリに登録してみたが馴染めず放置した。

新宿2丁目に行く事もなくゲイのイベントに行く事もない。ただ毎日が大学かラグビーか、そんな感じで過ぎて行った。時々やりたくなった時だけアプリで近場の相手を漁ったが、会う相手のほぼ全員から好きだと告白された。

「ずっと1人でいいかな」

セフレと呼ぶような相手を作る気もなく、彼氏も作れなかった。ゲイの世界にどうしても馴染めなかった。地元に帰りたいとよく思っていた。カッコいいと言われてもあまり嬉しくはなかった。ラグビーに明け暮れて、ただただマッチョな彼はその存在を知られることなく生きていた。彼を世に知らしめたのは何となく始めたInstagramだった。ゲイだけでなく女性フォロワーも増え、なぜこんな男性が今まで気付かれずにいたのだろうと不思議がられた。

「どう、気分は?」

「分からないです、ジムでも声かけられるようになりましたし」

誰もがインスタで見た事がある有名なイケメンは、現在は社会人になった。相変わらず彼氏はいないが東京に染まっていないところが凄いと思う。のんびりした感じというか、地方から来たまま変わらず大人になった感じだろうか。一緒にケーキを食べに行って彼の話を聞いていると、何だかオレも幸せになった。




夕日を浴びて

2018-11-21 08:45:26 | 日記
アプリを開くといつも出てくる広告、そこに映っている男性の事がいつしか気になり始めた。「売り専なんて使った事ないからなあ」、そう諦めていつも眺めていたが、意を決して予約する事にした。

思ったよりも簡単だった。特に余計な事をあれこれ聞かれる事もなく歯医者の予約よりも早く電話は終わった。狭いホテルで安く済ませることもできたが仕事で良く利用する一流のホテルにしたいと思った。何だかそわそわする。いい年して何だかなあと照れ笑いをしながら、その男はウェブサイトを閉じた。

ノックをされてドアを開けると、「え、」と大きな声を上げて「彼」が立ち尽くしていた。気になって気になって、ずっと好きだなと思って呼んだボーイは元彼だった。

彼の事が好きだった。一緒に過ごした日々を忘れることはないだろう。他の恋人に対してももちろんそうだが、ずっと永遠に憶えて生きていく。一緒に日曜の朝マックに行った。夜メシ作るの面倒だと言っていたので近所のバーミヤンに行った事があった。正月に無理を言ってミスドに付き合ってもらったことがあった。好きだった。全てが。自分が死んだら、もう思い出す事もない。1日でも多く生きていけたら、1日多く彼を思い出して生きていける。だから生きよう。そんな恋愛ができる人生で良かった。

「久し振り、ネコ達はまだ元気かな?」

「うん」

涙で彼の瞳がキラキラと輝いていた。