高橋靖子の「千駄ヶ谷スタイリスト日記」

高橋靖子の「千駄ヶ谷スタイリスト日記」

11月5日 濃縮ジュースを飲んだ日

2004-11-07 | Weblog
午後、赤坂のプリンスホテルで女優さんの撮影。
新館の27階で、メイクと着付けをして、旧館で撮影をする。 27階から赤坂を見下ろすと、TBSがまっさらの平地になっている。TBSは斜面に社屋が広がっていて、スタジオの行き来のとき、方向音痴の私はいつも迷子になっていた。
今回はその斜面を切り崩して地面がまっ平らになっている。 これでまた街の風景が変貌するのだな、と思う。 そこにどんな建物が建てられようと、私の頑固な方向音痴が 直るわけがないから、また迷うだろう。
本日の撮影中も、新館と旧館の行き来は、ヘアメイクの方のあとをしっかり追いかけた。 旧館は現在サロンやこじんまりした宴会場というかレストランになっているらしいが、昔は宿泊の部屋もあった。ファッション・デザイナーのザンドラ・ローズが初めてロンドンからやってきてショウをしたとき、ここに滞在した。(そのショウで山口小夜子さんが本格デビューをはたしたのだ) シフォンのドレスがあふれるザンドラの部屋を毎日訪ねて、 ショウの打ち合わせをしたことを思い出す。
サテンの輝きのブラウスと 小さな風を見逃さずにキャッチして揺れるシルクのプリーツスカート。情緒ある建物の前に立った女優さんは美しかった。

夜はカフェとらばーゆで「坂上みきさんと LiLiCoさんのトークショウ」だった。番台セミナーでは、私の知り合いにゲストを頼むことも、多い。スタッフの一員としてすべての成り行きに全身のエナジーを注ぐ。 そういうことに関しては、昼のスタイリストの仕事も、夜の期間限定のプロデュースの仕事も変わらない。
坂上さんとLiLiCoさんの弾丸のように飛び出す言葉は、早くて 内容も濃い。1時間半が、まるで濃縮ジュースをイッキ飲みした感じで過ぎた。
多忙な彼女たちが帰ったあと(9時の時点で、もうひとつ仕事が待っているようだった)、店の一番奥にある湯船コーナーで、聴きに来てくれた人たちやスタッフでおしゃべりした。引きかけていた風邪が直ったみたいに元気になったが、 興奮していたせいかもしれない。まだまだ気をつけよう。

家に帰って本物の湯船に入って新聞を読む。
毎日新聞の夕刊に「編集長に聞く」という欄があって、ファッション誌の「装苑」が取り上げられていた。海外ブランドを盛りだくさん紹介したり、着まわし術的な記事がない理由が書かれている。
「流行のピークのものだけを取り上げても先がない。すべてのクリエーションにおいて新しい価値を作っていく人の現場の姿を伝えたい」
私はそういう「装苑」のテーマが好き。