高橋靖子の「千駄ヶ谷スタイリスト日記」

高橋靖子の「千駄ヶ谷スタイリスト日記」

11月6日 お祭りの箱

2004-11-08 | Weblog
「カフェとらばーゆ」終了まであと2週間、なにかお祭りをしたい、というアイデアが盛り上がってきて、それにサンディーがのってくれた。

「サンデイー&サンセッツ」の頃、インクステイック(ライブハウス)へ 行ったり、写真家の鋤田さんが、今で言うPVのような撮影をしたり、 鋤田さんの事務所に彼らが出入りしていたりするのを見ていて、何となく知りあいだった。インクスティックで彼女が歌っているとき、来日中(83年)のデヴィッド・ボウイがいちばん後のお忍び席に座っていて、ころあいを見計らって自分から身を乗り出して「サンディー!」なんて声をかけたことがあった。
もちろんそこにいた若者達は後ろを振り返り、ぎゃっと歓声を上げる。デヴィッドにはそういう俗な、お茶目なところがあって、みんなを驚かせて悦に入っていたっけ。

いまやサンディーはサンデイーズフラスタジオの主宰であり、NHKのフラ教室でも大活躍。
まずは番台に座って、フラそのものが生き方、というフラスピリッツの話から。(私は思いっきり心が傷ついたとき、「サンディーズ・ハワイ」という CDをくりかえし聴いた覚えがある。サンディーの声そのものに癒される何かが宿っているのは間違いない)
ピースなお話の後、彼女がはにかみながらひとりで踊りはじめた。するとそこに、真っ赤な羽根がいっぱいついた衣装で、ダンサーたちが乱入し、所狭しとカフェのなかを踊りまくる。
サンディーは、と見れば、番台の上、それもさらに細い仕切りの台のうえで、天井に頭をくっつけながら踊っている。
すごいなーというのと、落っこちないでよ、というハラハラが一緒になって手に汗を握った。

いっときのお祭り騒ぎが終わった。
私たちはサンディーのCDにサインをしてもらった。彼女は一枚一枚、ていねいにメッセージを添えてサインしてくれた。
サンディーが帰ったあと、観に来てくれた女友達ふたり(あんりとしんこちゃん)と、カフェの斜め後ろにある居酒屋へ。ここでおいしいものをつまみ、ちょっと飲み(私はウーロン茶)、おしゃべりをする。
期間限定のこのカフェが始まった当初は、なるべく縁の下の力持ちになろうとした。仕事としてお手伝いしていることは変わらないんだけど、ふと気がつくと、私ってパーティーの采配をふるっていないか?
そこで、がーんと思いあたった。
60年代、原宿に出てきてまもなく、私はいつのまにか、毎週土曜日、パーティーをひらいていた。最初はデザイン事務所の週末のお遊びで、私は準備の使い走りをしていた。ポップなミニドレスをつくって、ツイストを踊りくるって、純粋に楽しんでいた。
でも、ある日気がつくと、パーティーを任され、「表参道のYacco」などと名乗って、 200人ぐらいのお客さんを取り仕切っているではないか。あの20代の頃の私と、変わらない熱心さで、私は今お祭りをやっている。

居酒屋で、自分自身をクールダウンさせたあと、 3人で居酒屋をでた。駐車場の一角にある、こじんまりとした「カフェとらばーゆ」が目に飛び込んできた。
さっきまで活き活きとしていたカフェは、夜の景色のなかで無機質な銀色のプレハブの箱となって、静かに眠っている。
このお祭りの箱はあと2週間で消える。