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Re=response=応答、感応=物事に触れて心が動くこと。小田和正さんの大好きな曲からいただきました。

「かもめ」 観劇

2008-08-09 | 観る、聴く

「かもめ」
 作:アントン・チェーホフ 演出:栗山民也 翻訳:沼野充義
 出演: 藤原竜也 鹿賀丈史 美波 小島聖 中嶋しゅう
      藤木 孝 藤田弓子 たかお鷹 服部演之 麻美れい 他

  8月7日 13:00 愛知厚生年金会館 1階D列サイド

チェーホフは知らないけれど、
観る前からなんとなく苦手な匂いはしていた。
目の前に繰り広げられるストーリーにいっこうに馴染んでいけない。
風景にも、人物にも、その背景にも、台詞にも。
誰かに心を強く引かれたり動かされることもなく、
流れていくものを遠くから淡々と眺めていただけのような気がする。
面白くなかったわけではないけれど、全体的に印象の残らない感じ。
舞台であるロシアの、灰色の重い雲が垂れ込めた空のように、
どんよりとしたものだけが心に漂う。

片想いだったり、憧れだったり、妥協や惰性の関係だったり、
愛はあってもそれを素直に示せなかったり・・
望むものは手を伸ばすほど遠のいていく。
ふと立ち止まって足元を見れば、
そこには自分を望んでくれるひとがいるのに。
それでも彼らは、時に残酷なまでに、自分の想いだけにまっすぐ。
彼らの想いはそれぞれにすれ違うばかり。
ストーリーを通して、人が人と繋がることがまるでない。
永遠に行き着くところのない想いを頑なに抱きながら、
ある者は自ら命を絶ち、ある者は貪欲に求め続け、
ある者は流されるままに、
そうして彼らの日常が今日も明日も平凡に続いていくのだろう。
滑稽だとも哀れだとも、ましてや愛しいとも思わなかった。
ただ、人の世なんて案外こんなものかなと思った。
想いと想いが真に通い合って繋がってゆけるのは幸せなことだけど、
それは実はとても希少な産物であって、
そのはるか数百数千倍の数の想いは、この世界のあちこちで、
こんなふうにすれ違ったまま虚しく漂っているんだろう。

トレープレフ=藤原竜也くん。
違う演出家さんのもとでも彼は彼だった、かな。良くも悪くも。
このトーンの芝居のなかでは、時々行き過ぎ感があった気もする。
母親に素直に甘えてみせた唯一のシーン「包帯を替えて・・」は
とても良かった。あの母親でも思わず心動いたところだろう。
今回前方にもかかわらず、かなりサイドに振っていたせいか、
彼の台詞が度々聴きづらかった。
彼の舞台は名古屋でも観られる機会が多くて、特に好きな役者では
ないにもかかわらずなんとなく毎度足を運んで来たけれど、
う~~ん、もうしばらくはいいかな・・。

トリゴーリン=鹿賀丈史さん。
ミュージカルは好んで観ないほうなので、舞台では初見。
地味というか人間的にあまり魅力のない男の役を、
コミカルにシニカルに演じる一方、
希望に輝くニーナの眩しさの前で思わず作家としての
本音を吐露してしまうくだりでは、切なさのなかに
愛しささえ感じさせてしまう中年のオーラ全開(笑)
ちょっときゅんとしてしまった(←騙されやすいってか?)
翻訳劇に向いているというか、
翻訳劇でこそ抜群の存在感があるのではないかと感じた。

アルカージナ=麻美れいさん。
こちらの方も初めて観させていただいたが、みごとな
はじけっぷり。鹿賀さんとのバカップルなやりとりも
それほど過剰には見えないのが不思議。
大女優のプライドと私生活での不器用さ。どちらにも
十分な説得力あり。

ニーナ=美波さん。
「エレンディラ」での好演が印象に深いので楽しみだった。
彼女独特の輝き、すごくピュアなのに芯の強さを感じる。
この芝居のなかでニーナだけが、望むものと自らの手で掴もうと
最後まで前向きだったように思う。
このニーナという役も、彼女にはよく似合う。
声の調子で、時々キンキンするのがちょっと気になった。
また観てみたい役者さんだ。

マーシャ=小島聖さん。
舞台では初めてだが、この芝居でいちばんの好印象を得た。
立ち姿も綺麗だったし、低めにおさえた声も聞きやすく力があった。
どんなときもトレープレフを追っている粘っこい視線には、
決して言葉にはできない想いをゾクゾク感じた。
夫との関係に対する彼女なりの解釈にも納得。
彼女もぜひ舞台でまた観てみたいと思う。

ほかに、中嶋しゅうさん、たかお鷹さん、服部演之さん、
藤田弓子さん、、さすがにこういう舞台にしっくり馴染んでいる
感じがあった。多くが語られなくても、その人物の歴史を感じる
ような瞬間がそれぞれにあった。
いずれも声がいいし聴きやすかった。
古典的な翻訳劇で観せるには(チェーホフを古典に入れていいのか
わからないけど)、やはり役者としてそれなりの(つまりこういう
分野での)熟練が必要なのかなと思った。

あ!最後の演出・・あの光はいったい何なんだー?!
あんなことしなくてもいいのに。違う意味でびっくりしたわ・・
そして唐突に終わるのね。
「これ二幕ものだったよね??」と思うほど一幕が長くて、
あっという間の二幕。それにもびっくり。

カテコは3回くらい?
少なくともわたしの両隣は、休憩時間に「よくわからないね~」と
言ってたり、藤原くんの出ていないときはどうにも観ているよう
には思えない様子だったのに、カテコでは早々にスタオベ。
おいおい~~。
そんな彼女たちに、今回は珍しく抵抗してみた(笑)
最後まで断固として立たなかった。
見えなくて惜しい役者さんもいなかったし(うわ、やな奴だね~)

実は(個人的に)大きなハプニングがあって、
ただでさえ苦手意識を抱えているうえに、またもや集中力大幅欠如。
途中意識が遠のいたことも度々。
なので、あまりしっかり芝居を観られていないと思う・・。
こういうのは前もって戯曲を読んでおいたほうがよかったかな。
ちょっともったいなかったかも。


この会場には、まだ彼の人の残像が見え声が聴こえるようだった(涙)
しばらくここで別の芝居は観たくない、かも。

松竹大歌舞伎 巡業東コース 観劇

2008-07-31 | 観る、聴く

子どもたちの夏休みと酷暑にヘロヘロでアップがとんと進みません。
ほんとに今さらなんですが・・。

さあて真夏の4日連続観劇、どんじりにひけえしは、
よっ、待ってました!の亀ちゃん登場、
(社)全国公立文化施設協会主催 東コース「松竹大歌舞伎」だっ!

歌舞伎ビギナーは初めて知りましたよ、
歌舞伎に「地方巡業」なんてのがあるなんて。
その地方巡業で、お初の生亀ちゃんを豊橋で観られるって
いうんだから、嬉しいじゃあないですか。
「知らざあ言ってきかせやしょう」の弁天小僧だよ!
そいでもって、SS席6000円で観られるんだよ!
4日連続だろうが、37℃の酷暑だろうが、ドンと来いっ!
・・ってなわけで、喜び勇んで行って参りました。

(社)全国公立文化施設協会主催 東コース「松竹大歌舞伎」
   7月21日(祝)13:00 
    豊橋勤労福祉会館(アイプラザ豊橋)1階18列

      一、操り三番叟
      二、御目見得 口上
      三、弁天娘女男白浪~浜松屋より勢揃いまで 

    出演: 亀治郎 亀鶴 巳之助 
        大谷桂三 竹三郎 段四郎 ほか    


「操り三番叟」は、亀ちゃん&亀鶴さんのコンビで。
これ、楽しいですよね♪ 染ちゃんのを映像で観たことがあります。
「踊り上手」の亀ちゃん、人形なので無表情なのですけど、
とても愛嬌があって楽しそうに見えました。
後見役の亀鶴さん、ステキでした♪ 亀ちゃんとの息もぴったり。 
染ちゃんのときも後見の男女蔵さんがステキ~♪と思っちゃった。
なんでだろう~(笑)

「御目見得口上」これも楽しかったですね~。
もともとお話が上手で楽しい亀ちゃん。
「大河ドラマ『風林火山』はこの名古屋地方がいちばん視聴率が
高かった」と言うと、客席に笑いと大きな拍手が。
そして、歌舞伎を決して堅苦しい、難しいものと思わず、
好きに楽しんでぜひ芝居に参加してほしいということ、
自分たちは客席からパワーをいただいているのだということ、
歌舞伎は三百余年の昔から「庶民による、庶民のためのもの」だと
最後に強調、大きな拍手。
巡業初参加の巳之助くん(三津五郎さんのご長男)はまだ10代、
一方竹三郎さんは70代。
巡業や今回の役の経験もさまざま、それぞれにユーモアを交えて
楽しくお話してくれました。
みなさん総じて、歌舞伎にとって巡業は大切な興行と位置づけ、
それをとても楽しんでいらっしゃるご様子がうかがえ、
地方モンとしてはとても嬉しく思いました。

さて、次の「弁天・・」までの休憩時間、
イヤホンガイドでは亀ちゃん&亀鶴さんの仲良しトークを
楽しむことができました。これも巡業ならでは?
アップが遅れてもうすっかり忘れちゃったのだけど(涙)
「(食べもの)何がキライ?」と聞かれて亀ちゃん、
すかさず「お菓子!お菓子大っきらい!」と強調してたのが
とても可笑しかったです。ま、知ってはいましたけど。
理由は「口のなかがパサパサするから」(笑)
ああ、、こんなことしか覚えていない自分が情けない。。
あ、弁天と力丸はボーイズラヴな関係、それを匂わすところが
ふたりの何気ないやりとりの中にあるのでお楽しみに、という
お話もありました。

「弁天娘女男白浪」
生で観るのは初めてです。映像で観たのは菊ちゃん@弁天。
亀ちゃんの弁天は、もっとやんちゃな感じでかわいかったです♪
カレでもあり(笑)兄貴のようでもある亀鶴さん@力丸との
コンビネーションもばっちりでした。楽しい~!
ほかに、忠信利平に大谷さん、赤星十三郎に巳之助くん、
そして日本駄右衛門は段四郎さん。
勢揃いの場は、もうゾクゾク来る面白さですね。
七五調の名台詞の、なんと気もちのいいこと!
日本人のDNAを刺激する何かがありますよね(笑)
心の中でいちいち「きゃあ♪」とか言いながら拍手拍手~。
うん、芝居に参加したゾ~(笑)ああ、楽しい!


いやあ、巡業って楽しいんですね~!
ごくごく平凡な地方のホールなんですよ、
花道なんてもちろんないし。
でも立派に歌舞伎仕立の舞台ができていて、
筋書もイヤホンガイドも歌舞伎グッズの出店もちゃんとあるし、
(筋書は、役者さんの紹介&インタがたっぷり。写真も
いっぱいの巡業用特別仕様、お得感たっぷりです♪) 
芝居好きな老若男女、いっぱいのお客さんが詰めかけてて、
立派な大向こうさんもいて、
当然のことながら歌舞伎座や松竹座で観るのと変わらない
正真正銘、本格歌舞伎を見せてもらえるんだもの。
そのうえ、このクオリティでこの公演スケジュールって凄すぎ!
いくら近隣とはいえ、毎日別の会場に移動してやっているんだもの!
日に昼夜2公演あったってですよ!!
もしかして、あの舞台セットは同じものがもう一式あって、
設営だけは先行してやっているのかしらん??
でも役者さんの身体はひとつだし。
ああ、、歌舞伎ってこんなところでもすごいんだわあ!と感激。

さて、来年の東コースは仁左衛門さんですっ!!
実はこの前日春日井の公演を観劇した友人の友人から速報が
届いていまして(「東コースに仁左さま♪」というのは前から
知っていましたが)「7月25日春日井」決定なのだそうです。
行くっ!絶対行くっ!上川さんと重ならない限り!(爆)
今年の7月25日が来る前に、来年のこの日の予定が
決まってしまいました。
もちろん、来年の観劇スケジュール1番乗りです♪
恐るべし、仁左さま(笑)
何を見せてくださるのか、今からとっても楽しみです。

ハーフタイムシアター2本立て 観劇(2)

2008-07-28 | 観る、聴く

『ハックルベリー~』を観て2本目まで小一時間の休憩。
この日は大楽で出演者のひとこと挨拶があったから、
40分くらいしかなかったんじゃないかな。
舞台転換はそれは大変だったろうけれど、
こちらはあまりに中途半端な時間に困った!
喫茶店にも入れない(名鉄百貨店の店はどこも満員!)
ウィンドーショッピングも興味なし、疲れるだけ。
ロビーはごった返してて(もともとだけど)居心地が悪い。
座席で爆睡もバツが悪い。(ほんとは一番したい。)
40分しかないけど、40分もある、苦痛の時間であった・・。

そしてやっと始まった2本目。
しかし、連日の4時おき、炎天下の応援、後方座席、
そして黒服の女の呪いが祟って(ウソ)集中力は急降下。
あまりしっかり観られてない、かも。

『水平線の歩き方』
  脚本・演出:成井豊
  出演 :岡田達也 岡田さつき 前田綾 左東広之 青山千洋
      小多田直樹 久保田晶子 鍛治本大樹

最近好評のW岡田起用ということで、大注目の新作。
・・だったけど、わたしはコレいまいちかなあ。
W岡田と何人かの役者さんは「うまいな」と思う瞬間が
たびたびあったけど、
ストーリーは平凡だし、ハックに比べて舞台を観る楽しさに欠ける。
2本立てなら、いっそ全然肌色の違う芝居を当てればよかった
のではないかな・・とも思った。

モモコさんが、達也さんのお母さん?!
幸一(達也)が12歳のとき突然亡くなった母親、
彼女がその当時のままの姿の幽霊として、
あるとき幸一の部屋に現れた、、という話。
母親が亡くなってからの20数年を語るうち、
彼が、彼なりの精いっぱいの努力と心あるひとたちに囲まれて
実のある人生を歩みつつあるなかで、
彼の心を頑なに縛ってきた「孤独」が浮かび上がる。

ひとを信じて、ひとを愛して、
ある日突然そのひとがいなくなったら。
そのとき、自分はまた「ひとり」になる。
だから、心からひとを信じてひとを愛することが怖い。
いっそ「ひとり」がいい。
ラグビーという、互いを信じパスを交し合ってゴールを目指す
スポーツに半生を懸けながら、彼は自分の心をほかの誰にも
パスすることなく生きてきた。

彼が死んだ母親と突然の再会をしたのは、
実は彼が事故で生死の間を歩いていたから。
母親は彼の人生を認め、今彼を待つひとたちにその心を開いて、
もういちどそのひとたちと「生きる」ことを諭す。

『ハックルベリー~』を観たあとなので、
また「ひとり」か、、という思いもあった。
それぞれの作品で、彼らが「ひとり」に固執する理由は
わからないでもないけど、「ひとり」に逃げる人間を観ている
のは好きじゃない。心を寄せられない。
はいはい、本気で「ひとりになりたい」とどん底まで堕ちた
ことなどない人間ですよ、アタシは。

しかし。
自分が死んでからのことは一切知らないという素振りだった
母親だが、生きる勇気を取り戻した息子の背中に、
「ほんとはね、ずっと見てたのよ。
 がんばれ~って、聴こえなかった?」
とそっと微笑んで去っていく姿に、涙腺は決壊した。
(あ、あと幸一が母の懐かしいおじやを食べるところもね)
ほれみろ~~(涙)
誰かがいつも君を見ている~
今日もどこかで君のこと思ってる~♪
って小田さんの『今日もどこかで』を聴いてみなされ。
「ひとり」で生きていくことはできないことじゃないかも
しれないけど、ひとは決して「ひとり」ではないのだよ。
「ひとりぼっち」になんてされないのだよ、きっと。

・・と、最後はぐっときたけど、
こうして振り返ってみても、全体の印象がとても薄い。
印象に残るのは、キャラメルとしては珍しい(お初?)
生活感たっぷり、とことんリアルに作り上げた幸一の部屋(笑)
キッチン、コンロ、冷蔵庫等々、これだけたくさんのモノを
舞台上に並べたことはないのでは?
そこで、いかにもそれが日常であるかのように母親が
お菓子を食べたり、おじやを作ったりする。
面白いといえば面白いけど、どうにも舞台の上でそのセットの
存在感がデカすぎる(笑)
おおかたの芝居は、幸一の回想部分(母親に聞かせている)で、
この立派なセットの前方で、寸劇みたいに見せられる。
(もちろん、それを見ながらモモコさんも演技しているんだけど)
芝居がちっちゃくて、舞台空間がもったいない感じがしたなあ。

モモコさんはやっぱりうまい。
なんというか、間の取り方がいいというのかなあ。
その絶妙の間をさらにうまく引き取れるのが達也さん。
このふたりの会話は、同年代の友人同士のようでありつつ、
ある瞬間にふと「親子」になる。どこまでも続いていきそうな
ふたりの会話をずっと聞いていたい気もちになる。
自分の「孤独」の真実に向き合って泣き、
母親のあたたかさに再会して泣く。
達也さんもうまくなったなあと思いつつ、、
この「幸一」という役、どうも彼では違うような気がして
ならなかった。
岡田達也という役者、「孤独」が似合わないとは言わないけど、
自分の心にひとが入り込むのを頑なに恐れ拒むような
「寂しさ」があまり見えてこないのだよねえ(ゴメンナサイ)
大内クンのほうが、この役にはしっくりくる気がするんだけどな。
それから綾ちゃんのアベチカコ。
う~ん・・幸一との間に愛が見えないぞ~?
くぼってぃこと久保田晶子さん、いい感じ!
これまでキャラメルになかった色を感じた。
対して小多田くん、難しくない?この役者さんて。
結局、W岡田以外はまだまだだなあと思ってしまった。

ずいぶん辛口に書き連ねてしまった。
この作品、良いコンディションでちゃんといい席で(笑)
もういちど観てみたら、また違った感想になるのかも。

最後に。
この日は大楽ということもあって名古屋ネタ満載だったけど、
この『水平線の歩き方』の主な登場人物の苗字、
岡崎、豊川、一宮、刈谷・・って全部愛知県の地名だよ。
なんでまた愛知県の?
まさか他の劇場ではその地方の地名ってことないよね?(笑)

この日いち早くクリスマスツアーの名古屋公演日程が
発表になりました。
11月21~23日、同じく名鉄ホールだそうです。
名古屋公演がこうして根付いてくれたら嬉しいです♪

ハーフタイムシアター2本立て 観劇(1)

2008-07-27 | 観る、聴く

まあね・・立て続けに何本も観ること自体、
自分のキャパからいっても無理があるのだけど。
せめて順番が違っていたらなあ・・とちょっとだけ恨む。
誰を?? う~ん、、誰が悪いんだろ、、アタシか(笑)

前日前々日続けて『ウーマン~』を観た時点で、
まあすでに心ここにあらず。
そのうえ、この日は(も)子どもの試合のため4時起き。
炎天下ぎりぎりの時間まで応援したあと劇場へダッシュ。
座席についた途端、ほ~~っと椅子に沈みそうになった。
そもそもこのまま沈んでても誰も気づかないような席だしさ~。

・・というわけで、
キャラメルボックスのハーフタイムシアター2本立て
ツアー大千秋楽を名古屋で観てきました。
(が、、たいした感想は書けそうもないです。今さらだし~)

7月20日(日)名鉄ホール  とっても後ろの方1番

『ハックルベリーにさよならを』 
  脚本演出:成井豊
  出演  : 大内厚雄 實川貴美子 岡内美貴子 篠田剛
        坂口理恵 井上麻美子 多田直人 阿部祐介

96年版を映像で観たことがあるけれど、
演劇的に(←エラそうだな)面白いお芝居だなあと思う。
主人公が、12歳の自分と10年後の自分、そしてそれらが
別れた父の再婚相手を認めたくない自分と認めたい自分として
同じ舞台に存在し、彼の心の葛藤が、彼らが兄弟として会話を
することで描かれるというのが、やや複雑だけど面白い。
水を使った舞台セットも、テーブルをカヌーに見立てて、
ケンジとボクが川を下るシーンを描くという演出も大好き。
蜷川さんが水を降らせたり、
先の『ウーマン~』では籐籠が馬車にもベッドにも変わったりする
という演出の面白さが高く評価されているけど、
キャラメルボックスも観てやって。たいしたものだと思う!
舞台演出を楽しめるという点でいえば、キャラメルのなかでは
屈指の作品だとわたしは思っている。
10年以上ぶりの今年の舞台も、水の使いかたなど少し変えては
いるけど、とても美しくてよりさわやかな舞台風景だった。

この作品は、ケンジ=伊藤ひろみさん、アベチカコ=石川寛美さん
という絶対に越えられないのではないかという最強キャストが
印象に強い(強すぎる)のだけれど、
今回成井さんが自信を持って機用したじっきーこと實川貴美子さん、
伊藤さんに決して劣らぬ、立派な12歳のケンジだった。
『太陽~』の時よりずっと「少年」してる、だけど
大人への扉にほんのちょっと手をかけた「12歳」であることを
しっかり感じられた。
アベチカコこそ心配されたが、まみゅーん井上麻美子さん、
さすがに及ばないけど健闘、かな。ただ容姿や役作りはいい線
だと思うけど、いかんせん声が・・。彼女、見た目のわりに
声がかなり大人っぽい。その違和感でいまいち面白がれなかった。

ところでこの作品、何度観てもよくわからないところがあるし、
毎度腹が立つ(笑)・・なので、演出の面白さを除いては
あまり好きではない、実は。
12歳のケンジが繰り広げるストーリーは、ボクのなかで
10年間ずっと澱のように滞りボクを苛み続けた12歳の記憶。
ケンジの父親もカオルもわたしは大嫌い。
「ケンジが一番大切だから、ケンジが認めないのなら結婚しない」
って、ケンジのことを思っているようで全然思っていない。
12歳は、いやもっと小さな子どもだって、
そんなふうに言われて「答え」を出すことなんてできない。
「答え」はどちらにしろ彼にとって「妥協」にほかならない。
なのに、さも自分の意思で選んだ「答え」のように押しつけられ、
その後の現実を受け入れていかざるを得ない。
勝手な大人の押しつけの思いやりから
12歳のケンジが逃げ出したくなるのは当たり前だ。
まあ・・だからこのストーリーは成立するのだけど・・
成井さんの書く家族モノって、どうにも腹の立つ親が多い。

結局、父親とカオルは結婚をしなかったわけで、
そのことでボクはずっと苦しんできたわけで・・。
ボクとカオルの交信は・・おそらく現実のものではないと思う。
ただ、ボクが成長したあるとき、
ボクはあの日のボクを許せる「何か」に出会ったのだろうな。
(・・と今回初めて気づいた。あいかわらず遅っ!)
そのとき「時が動き始めた!」
あれから10年のあいだ、ボクの時を止めていた心の澱が解け、
砂時計の砂が、空から静かに落ちてくる。
ボクは、滞っていた10年の時の砂を受け止める。
このシーンにはやっぱり感動する(涙)
ケンジ(ボク)、良かったねと思うと同時に、
これだけ子どもを苦しませ続けた親の罪を思う。
・・・と、最後にいつも後味の悪さを感じるんだな、わたしは。

ボク=大内クン。久しぶりに観た、かっこよかった♪
でも、、このボクはやっぱり西川さんのイメージが強い。
弟を見守る目の優しさ厳しさは、やっぱり一枚も二枚も上。
大内クンが悪いわけでなないけど・・人柄の違いかなあ。

『ウーマン・イン・ブラック』 観劇 (ネタバレあり編)

2008-07-24 | 観る、聴く

こちらは、観終わってから読んでくださいね~。
これからの方、絶対読まないでくださいね~!
観劇を終えて、その気があったら戻ってきてくださいまし(笑)
記事として上げるのをちょっと迷ったのですけど、
このお芝居、ネタばれなしにすると何にも語れなくて
やっぱり面白くないんだもの。
だから、観終わった方だけ対象にネタバレ全開モードで。

****************************

まず先の記事の最後にちょっと触れた「違和感」のこと。
実は初日の一幕でわたし、
「あれ、、思っていたのとちょっと違うな」
って思ってしまったんです。

まさか「黒い服の女」が姿を見せるとは露ほども思わずにいたから!
そりゃ驚きましたけどね、この日は上手センターの通路側だったので。
遅れてきた客の誘導員が来たのかと思いきや、
音もなくスゥーーっと「黒い服の女」がすぐ横にっ!!
思わずのけぞるくらいビビったあと、舞台に上がるその後姿を
目で追いつつ思ったこと。
「なんだ・・出てくるのかよ・・」
この女こそ、想像力で観るもんだと思って疑わなかったわけで。
そのあとも度々姿を見せるじゃないですか。
だんだん安っぽいホラーに思えてきた、、
極めつけは劇中劇ラストに下手で両手をぐわーってやった瞬間(怒)
・・・しかし、わたしはおバカさんでした。
この女、見えていないといけないんですね~!
ヤング・キップスには「若い女優」としてずっと見えているの
だから。初日、家に帰ってから気づきました(遅っ)
でも劇中劇ラストのぐわーっ!はキライ。

ほかにも意外だったのが、あの音響効果の数々。
う~~ん、、そういうのも含めて、全部想像に委ねられるのかと
思っていました。(って、無理な話ですか?)
あれも、ヤング・キップスが臨場感を盛り上げるために
用意したものとして受け入れられないわけじゃないのだけど、
想像世界に入り込めば入り込むほど、どうにも異質な感じがして。
前方の席で大きな音がかなりダイレクトに耳に入るというのも
あったかもしれないです。
列車や蹄の音はともかく、あの事故の音とか突然の悲鳴には、
飛び上がるほどびっくりさせられたのはたしかだけど、
次の瞬間には、黒い服の女が登場したとき同様、
「そういうので脅かすのって反則~!」
などとうそぶいておりました。
こういうお芝居を観ていて、黒服の女や悲鳴などという
「現物」にひどく驚かされているのがなんだか悔しい!(笑)
そうそう、手紙を読む声が突然女性の声に変わったのも
許せない。変な感情の入れ方に興ざめしちゃった。
こんなこと言ってるのはわたしだけかしらん。。

こんなふうに書いちゃってますが、
決して怖くなかったとか、面白くなかったと言っているわけ
ではありませんよ~、念のため。
ときおり小手先で騙されながらも(こらこら)
やっぱりその場のシチュエーションやヤング・キップスの
台詞、一挙手一投足に想像世界はぐんぐん深みに嵌り、
身体の芯からゾクゾクしていたもの。
そしてそんな状態にいながら、一方それを俯瞰している
自分がいて、すごく楽しんでいるんですね。
それに、この恐怖体験は再現されるとき、つまり
もう一度観るときに、さらに増長して待ち構えていました。
何が起こるかわかっているほうがよりいっそう怖い、
そういうことってありますよね。
さらにこの芝居は多くを想像力に委ねられるため、
昨日見えなかったものが今日は見えたりもする。
だから、わたしの正直な感想では、
初回はただただ「驚いた!」2回目がほんとうに「怖かった!」
時をおいて、繰り返し体験したくなります。

さて。
この芝居でほんとうに怖いのは、
キップスがあの館でその身に体験した現象そのものではなく、
それを引き起こしているのが、
人間の持つ激しい憎悪や嫉妬の心であるということ、
そして、それを見てしまった者の子どもの命が必ず奪われる
という悲劇の連鎖であり、
その忌々しい暗示を突きつけられた絶望。

老キップスの忌々しい過去の記憶を再現したのち、
ヤング・キップスは本物の絶望の恐怖に陥れられる。
ヤング・キップスには同情するし、
この最終展開は途中からなんとなく読めてきてしまうけれど、
この芝居のなかで、ラストにして最も怖いと感じたと同時に、
なるほど面白い!と思った瞬間です。
また、現に子を持つ身としては、芝居とわかっていても、
自分の心にも一寸の黒い影を落とされた気がして、
なんとも不気味な心地が残りました。いやあな感じ・・(涙)

こうなったら英国カンパニーの芝居も是非観てみたいですね。
カンパニーの違いによる芝居の「湿度」の違い?
非情に興味深いところだけど、わたしには想像すらつきません。
実際観たところで、わたしなんかにわかるものかも知れませんが。
でも、ロビンさんもそんな夢(「本当のエクスチェンジ」)を
語ってくださっていたから、いつか実現するといいですね。

ツアーは札幌を終え、いったん南下したのちふたたび北上。
その後パルコでみっちり1ヶ月ののち、
いよいよ最終地、本場ロンドンへ。
酷暑のなか、まだまだ道のりは長い。
でも芝居はまだまだ進化と深化を続けていくのでしょうね。
日々板の上の1分1秒を全身全霊で戦い、楽しみ、
充実の時間を過ごしておられるのであろうこと、
舞台での姿を観ればよくわかります。
どうか身体を大切に、病気や怪我をすることなく、
最後の最後の一瞬まで、演じることを思いきり楽しめますよう。
余談ですが、、
二幕、スパイダーを探して客席通路を走り回ったあと、
「来たっ!」と思った途端、すぐ目の前でダーーーンッ!!
(これ、ほんとに一部の人にしか観えていないと思いますが)
それはもうみごとな転びっぷりで目が点になりました・・
ダイジョウブですかぁ??(涙)
毎度あの調子でやっているのかと思うと、
要らぬお世話ですが心配にもなりますよ・・。
ほんとに怪我のないように。

はああ。。わたしの夏が終わったわ。せつな~~(涙)

『ウーマン・イン・ブラック』 観劇 (ネタバレなし編)

2008-07-23 | 観る、聴く

今日はもう北の地の公演ですね。
かの地の最高気温は、名古屋の最低気温にも満たない様子。
涼しくてほっとしてみえるでしょうか。・・いいなあ。

名古屋公演からあっという間に時が経ってしまいましたが、
ようやく振り返れます。すぐアップできなくて残念だったな。

『ウーマン・イン・ブラック~黒い服の女』
  愛知厚生年金会館 7月18日(金)19:00 4列センター
                 19日(土)13:00 3列サイド

わたしはこのお芝居を観るのは初めてです。
初日第一印象。
「怖い!」より「ステキ~~!!」(←いいのか、それで。笑)

先回の『きみ時間』もいい加減出ずっぱりだったけど、
今回は二人芝居だから、その比じゃない。
『きみ時間』では暗転の間に、さっと衣装を替えたり、
他の役者がセットや小道具を動かしたりしていたけど、
今回は、衣装を替えるのも小道具を動かしたりするのも、
すべて当人ふたり、すべて芝居のうち。
否応なく、その一挙手一投足、声、表情のすべてに
全神経が集中する。
そして、そのひとつひとつが、
当然英国紳士をイメージし、劇場サイズの明らかな「演技」で
あるにもかかわらず、実に自然でスマートで嫌味がない。
かつそこはかとなくセクシ~(←↑贔屓目全開御容赦)
今回もありがたいことに良席に恵まれたので、
それはもう・・(以下自粛)
はい、、そんなわけで、
初日一幕前半は、完全に芝居においていかれましたよ。
芝居を観ているようで観てない自分(笑)
次の日も押さえておいてよかったわ。

もちろん、かっこいいだけではないです。
得体の知れない恐怖に対する不安が増大していく様子には、
その姿を観ているだけで、彼と同じだけの恐怖を味わってしまう。
彼がびくっと動いただけで、心臓が飛び出るほどになる。
演出でもなんでもない、たぶん何かの加減による影や
紗幕のゆれにまで、びくびくするようになってしまう。
身体に相当力が入っていた証拠ですね、、
終演後、ものすごい疲労感でふらふらしました。
思い返すだけで疲れるし・・。
いやあ、、上川さん、よくコレ毎日やってられるわと思う(笑)

膨大な台詞、増幅する恐怖、、
怯える!走る!倒れる!叫ぶ!叫ぶ!!
「熱演」という言葉では物足りない、、いや、言葉が違う気がする。
もはや演技じゃなくて、そこが現実になってしまったかのよう。
そう感じさせる力はこれまでも映像では度々観てきたけれど、
生の舞台で目の当たりにすると、その圧倒的な力で、
自分までもが彼の恐怖に取り込まれていくような感覚になる。
芝居の恐怖とは別に、ほんとうに怖いくらいでした。
これほどの体験はあまり記憶にないと思います。
毎公演、おそらくほんの一瞬たりとも手を抜くことなく全力投球で、
臨界点まで自身を追い込んでいるのであろう姿を観ていて、
このひとの役者としての闘い方を見た気がしました。

ほかに特筆すべきは、
上川さんがひときわ大きく見えたこと!
『SHIROH』や『きみ時間』も同じような近い席で
観ているけれど、これまでにない感覚でした。
多くの経験を積み文字どおり「大きくなって」3年ぶりに
舞台に戻ってきた『きみ時間』ではしかし等身大に見えていた。
自信?余裕?自由度? う~ん、なんなのだろう??
声もひときわデカいですしね(笑)
さらに、あの膨大な台詞量に完璧な台詞術。
早口でまくし立てるような場面でも、
背を向けていても、幕に引っ込んでも、実にクリア。
ほんとにすごい。

もちろん、上川さんだけが素晴らしいのではなくて、
このお芝居にはこの上川さんに斉藤さんという
名キャッチャーがいてこその豊かさや楽しさがあるのだと、
感じました。
互いにゆるぎない信頼関係があるから、
舞台はとても自由でいきいきと楽しそうにさえ見えます。
カテコでは、互いに向き合い礼をして、感謝し称え合う
ふたりの姿が微笑ましくもあり、印象的でした。

さて、このお芝居をほんとうに怖い!と感じたのは、
実は2日目です。
何が起こるかわかっているのに、いやわかっているからかな、
余計に怖かった気がします。
終演後の疲労度も、初日を上回るヨレヨレぶり。
そもそも、初日はずいぶん集中力に欠けていましたから。
上川さんに舞い上がりっぱなしだったし(笑)
カタカナの名前や地名なんかにおろおろしたし、
何よりある違和感を感じ続けたからでもあります。
それについては、のちほど「ネタバレあり編」で
書こうかなと思います。

あは・・結局上川さんのことしか書いてないですねえ(笑)

大阪松竹座 『七月大歌舞伎』昼の部(2)

2008-07-10 | 観る、聴く

こたび観劇のメインでありミーハー感覚バリバリ、とんでもなく
長くなりそうなので、別エントリーとしました。
耐えられる方だけ読んでくださいませ(笑)

三、『伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)』
  
  以前録画しておいたものを予習のため観たら、あまりに
  面白くて大ハマり。笑えて泣けて惚れ惚れして痛快!
  何度DVDをリピしたことか。帰ってきても観てます(笑)
  とにかくコレが観たくて大阪まで飛んできたのよ~♪
  (あらすじは長くなるので略。詳しくはこちらへ

 一幕「花水橋」
     足利頼兼:菊之助  絹川谷蔵:愛之助
  菊之助さん、愛之助さん共にいきなり「きゃあ♪」でした(笑)
  頼兼という人、もともとは立派な御仁(武人)なんですね。
  呆けているようでも、佇まいには品があり一寸の隙も見せない。
  紫の着物もよくお似合いで、菊之助さん、ほんとにお綺麗でした。
  ↑紋様の「竹に雀」(だっけ)で、この物語が仙台伊達家の話
  であることを暗に示す、歌舞伎の遊び心なのだとイヤホンガイド
  で聴きました。ほほぅ!イヤホンガイドさまさまです。
  愛之助さん、歌舞伎で初めてお目にかかります~(遅っ!)
  頼兼お抱えの相撲取り。これがまたかっこいいお相撲さんで。
  悪党を蹴散らしたあと、頼兼に逃れ先への道を教えるところも
  楽しいですね。  
  そうそう・・これ言っちゃってもいいかなあ・・
  愛之助さん、、白のタイツ(とは言わないだろうけどなんだ?)
  もうちょっとしっかり上げたほうが・・(笑)
  それじゃあどっかの幼稚園児、すんごい象足だった(爆)
  そうゆうものかと思ってDVD見直したけど、そっちは
  ちゃんとしっかり履けてきれいな白い足だったの。
  
 二幕一場「御 殿」  
     乳人政岡:藤十郎  栄御前:秀太郎 
     松 島 :孝太郎  沖の井:魁 春 
     弾正妹八汐:仁左衛門
  この前の「竹の間」がないのはとても残念!楽しいのに・・。
  しかし、ここが前半の見せ場。
  乳人政岡は、女方屈指の大役だそうです。
  映像で観た菊五郎さんの政岡も良かったと思うのですが、
  藤十郎さんの政岡、たーっぷりと演じられ(文楽に近いやり方
  だとか)わが子の死を嘆くシーンはすごい迫力、圧倒されました。
  お主(しゅう)鶴千代を守るため、目の前でわが子がなぶり殺しに
  されても決して動じない烈女であり続けた政岡。
  死んだわが子とふたりきりになれたとき、やっと堪え続けた感情を
  あらわにできたのです。あの感情の爆発ぶりは、それまでどれだけ
  その苦しい心もちを押し留めてきたか、その反動の大きさでしょう。
  「でかしゃった、でかしゃった、でかしゃった・・」
  政岡は狂ったように、わが子に向かってそのひと言を繰り返します。
  そして、撫でてやった頬の冷たさにあらためて死を悟ります。
  それまで政岡が千松を褒めるのは必ず、鶴千代の競争心を煽り
  辛抱や熟慮を促すため。お主鶴千代を前に心からわが子を
  褒めることは、乳人としてすべかざること。
  それがこのとき、かねてより教え諭してあったとおり、
  千松が自らの機転でお主の身替りとなってその命を落とした。
  母として初めて心から褒めてやることができたわけですが、
  その言葉も抱きしめる温もりも、もう千松には届かない。
  なんと苦しく虚しいことでしょう。
  幼いわが子を思いきりかわいがることさえ叶わなかったこと、
  かわいいわが子なら毒を避けよというべきところ、
  (お主のために)その毒を自ら食べよと教えてきたこと、
  目の前で八汐なぞになぶり殺しにされたこと、
  そして、死ぬることが忠義だとされること。
  なんという非情な世界。
    
  一方、待ってましたの八汐!
  いいねえ、いいねえ!そのスタイルの良さに憎憎しい面構え(笑)
  「竹の間」がないから物足りなさが残るのだけど、
  その猛女っぷりはサイコー!
  千松をなぶり殺しにしたあと毒入り菓子を証拠隠滅のため
  持ち去る際「してやったり」といわんばかりに不敵の笑み!
  ううう・・八汐さまの猛毒にやられました・・満足。。
  このあと政岡に刺されるわけですが、貴女の毒牙は永遠に不滅ですっ!

  子役ちゃんたち、鶴千代と千松、かわいいのにすごいねえ!
  長~~い間の正座も平気。ほんに見上げたもんです。
  千松の名台詞「お腹が空いてもひもじゅうない!」健気です(涙)

 二幕二場「床 下」
     仁木弾正:仁左衛門  荒獅子男之助:松 禄
  幕を引かずに暗転したまま舞台転換がされる「居所替え」
  そして舞台中央に黒幕ではなく朱の幕が広げられて、
  その後ろでも準備が進みます。こうして朱幕を使うことは珍しく、
  これはまさに次に登場する荒獅子男之助の勇壮さが朱幕同様
  たいへん稀有なものであることを表しているとか。
  一場の「御殿」の舞台装置がセリ上がってその「床下」となる
  という、面白い転換となりました。
  男之助は、松緑さん。
  風貌からしてもこういう荒事の役を得意とするのかな。
  でもこういうのが多くて、たまには違うタイプが観たいです。
  夜の部「羽衣」の伯竜、観てみたかったな。 
  さて政岡が八汐を刺したとき落とした鬼面・弾正一味の連判状を 
  くわえ去った鼠が登場。学芸会みたいでちょいと笑えます。
  御殿の床下で密かに鶴千代を守護していた男之助、
  この鼠を捕らえたにもかかわらず結局逃げられてしまう始末。
  ここからが見せ場、待ってましたっ!
  鼠が逃げ込んだすっぽんから、
  仁左衛門さんの二役目、妖術使いの仁木弾正が登場~!!!
  連判状の巻物を口にくわえ、両目を閉じ手は印を結んでいます。
  白塗り、額には男之助につけられた傷。
  名優五代目松本幸四郎に敬意を表して四ツ花菱の着物。
  面明かりに(スポットライトのように黒子が蝋燭で照らしている)  
  照らされて、なんとも妖しげかつセクシ~~♪
  そして「してやったり」と不敵の笑み、決まった~~!
  この瞬間のためにこのお席が用意されたかのような場所で
  あの毒牙を受けてしまい・・倒れそう・・ああ、満足(爆)
  そのあと向きを変えて、ゆっくりと花道を去ってゆかれました。
  妖術使いだから雲の上を歩いているのだとか、、
  間近でたーーーっぷりお姿堪能させていただきました。はああ・・。

 三幕「対 決」
     細川勝元:菊五郎     山名宗全:團 蔵
     渡辺外記左衛門:左團次  渡辺民部:愛之助
     仁木弾正:仁左衛門 ほか

  幕府問注所。
  管領山名宗全は弾正たちの一味、まるで公正に欠く態度。
  外記持参の証拠書状を焼き捨てる始末。
  これを焼いた火が意外に大きくてなかなかおさまらず、
  團蔵さん芝居しながら気になってしかたがない様子でした。
  順序が違うけど、ここで焼かれていない最も大事な証拠となる
  密書(半分に破れている)を手に入れ、問注所に駆け込んだのが
  外記の息子民部、愛之助さん。
  「父上、父上~~!」さわやかだ~(笑)
  
  さて、弾正。
  黒紋付の裃姿、渋い。声もずっと低く太く渋い、でも聴きやすい。
  仁左衛門さんの弾正は、映像で観た團十郎さんのそれより
  人間臭い印象を受けました。表情やしぐさがわかりやすい(笑)
  それが弾正という、妖術を使うような得体の知れない不気味さを
  持つ悪党という役として、良いか悪いかわかりませんが。
  團十郎さんのほうは最後まで人間でないような雰囲気がありました。
  わたし、團十郎さんがちょっと苦手というのもあって、
  仁左衛門さんの人間臭い弾正のほうが、最後にはなんだか憎めない
  ようなところもあって好きです♪
  
  弾正らの悪事を訴えたのが、国家老渡辺外記左衛門。
  左團次さんだったのですが・・う~~~ん、わたしはなんか違う
  感じがしました。元気すぎるんだもの(笑)
  團十郎さんに対したのは段四郎さん。これがすごく良かった!!
  特にあとに続く「刃傷」の場では、あの死にそうなヨレヨレ度が
  あってこその緊迫感、のちの感動があると思うわけですよ。
  外記に見応えが足りなかったのが残念です。

  そして細川勝元、菊五郎さんですね。
  仁左衛門さんの勝元がもうしーーっかり刷り込まれていますから、
  ぜひ生でそれを観てみたかったのですが、仁木弾正を観られる
  ということで我慢。菊五郎さんのお手並み拝見ということで・・。
  実際、菊五郎さんでもかっこいいだろうなとは思っていたんですが、
  通してずいぶんあっさりとした感じで、やや(だいぶ)拍子抜け。
  仁左衛門さんの勝元、いちいちキメキメでしたからね~(笑)
  それがたまらなく爽快でかっこよかったんだけど。
  弾正、宗全をぎゃふんと言わす、勝元超長台詞の独断場。
  同じものを求めてはいけないかもしれないけど、
  菊五郎さんらしい重厚感のあるキメキメを観たかったのです・・。
  残念ながら対抗馬にならなかったので、
  仁左衛門弾正VS仁左衛門勝元、脳内妄想で戦わせることにします。
  ああ、、一度観てみたいがや。。
   
 四幕「刃 傷」 
     細川勝元:菊五郎     山名宗全:團 蔵
     渡辺外記左衛門:左團次  渡辺民部:愛之助
     仁木弾正:仁左衛門 ほか

  往生際の悪い弾正、評定のあと外記に対して刃傷に及びます。
  腹を刺された外記が花道を逃げてきます。
  それを悠々と追ってくる弾正。
  か、かっこいいーーーーっ!!!(本日最大級の叫び)
  黒の上衣を脱ぎ下げ、白の着物の下には戦闘に備え素網を
  着込んでいます。髪は乱れ勇ましく荒い息遣いが聴こえてきそう。
  荒々しく怖いほどの形相だけど、どこか品があって綺麗。
  屋敷内からひとりふたりと斬りかかってきますが、
  それを軽くいなして最初の見得。すてきっ♪
  ここから外記との格闘を独特の様式美に富んだ殺陣で見せます。
  衝立に隠れた外記を見つけてまた見得。
  外記に足をはたかれ「あいてて・・」
  鷺の見得。しかしこれがグラグラして不十分、惜しい!
  外記を組み伏せると、外記が手に持った扇子で弾正の目を攪乱。
  仁左衛門弾正、これがいかにもうっとうしい!という表情しぐさ。
  ようやく外記の両の手を押さえ込み、最後の見得。
  そこへやっと愛之助民部たちが助けに登場(遅っ)
  笹野才蔵たちに羽交い絞めにされた弾正、足で必死に抵抗。
  これがまたなんともおかしくてかわいかったりする(笑)
  息子民部に助けられ、外記自らの手で弾正を成敗。
  お決まり、断末魔の苦しみの舞?のあと、バッタリ。
  ああ・・死んじゃった・・と、ご贔屓ゆえ一抹の寂しさ。
  
  そこへ襖がばあーーーっと開いて千畳敷の広間が表れ、奥から
  勝元が進み出ます。
  お亡くなりになった弾正は、その身体を高々と掲げられて
  退場。その瞬間思わず「おお~!」と歓声が上がりました。
  このさき、外記が哀れなほどのヨレヨレになっていないので、
  最後の盛り上がりに欠けちゃった感じなのですよねえ。
  その傷では歩いては帰れぬだろうということで、勝元が自分の
  駕籠を外記に勧めるのだけど、この外記歩いて帰れそうだし(笑)
  いちばん気になったのは、勝元から、鶴千代家督相続の墨付を
  戴くとき、段四郎さんは最初素手を差し伸べたあと、
  血で穢れた両手にはっと気づき、裃を以って恭しく戴く。
  この一連の行動がいかにも忠義に篤い人柄を示していてすごく
  いいなあと思ったのだけど、左團次さんは最初から裃を使ってた。
  それがあまりにさらっとしたので、それがしごく当たり前のこと
  のように見受けられてしまって残念でした。
  そのあとも勝元に言われ、痛みを堪え一さし舞うのだけれど、
  これも哀れなほどの痛々しさに乏しいので、感動に薄い・・。
  段四郎さんの外記の刷り込みが強すぎて比較しまくり、、
  ちょっとごめんなさい(汗)
  最後もね、勝元の「めでたい、めでたいいい~っ」
  やっぱり仁左衛門さんのあのハイトーンなお声で爽快に決めて
  いただきたかったなあ。
  たしかに、千松という悲しい犠牲のうえの御家安泰、
  手放しで喜ぶことのできぬ重々しさはあるのだけれど、
  逆にその千松・政岡親子のためにも、スカーッ!と目出たさを
  表して欲しかったなと思いました。

  
先入観や贔屓目バリバリで観たので、多少?エラそうなことも書き
ましたが、全体としてたっぷりと楽しめました。
やっぱり面白いです、見応えがあります。
ありがたいことに良いお席で、ご贔屓さまを舐めるように堪能させて
いただいたことも、この演目を忘れられないものにしてくれそうです。 
書きまくったなあ!!
でも、楽しかった♪♪

大阪松竹座 「七月大歌舞伎」昼の部(1)

2008-07-10 | 観る、聴く

「今日は何がよくて来たん?」
いつもの待ち合わせ場所で待っててくれたかずりんさん。
・・・だ~よねえ(笑)翌々日には同じ大阪で上川さんの舞台が
あるってのに、それではなくてわざわざ大阪まで、だもんねえ。
答えは、
「仁左衛門さん!愛之助さん!松嶋屋オールスターズだよ~♪」
沖縄夢世界から現実世界へリハビリ中のかずりんさんと、
数日前からドキドキわくわくが止まらないわたし。
かくて、ふたりは梅田をすっ飛ばし(降りたところで何もないが)
なんばは大阪松竹座へ。昨夏の『蝉しぐれ』以来かな?

『七月大歌舞伎』昼の部  
7月8日(火)11:00~15:30 大阪松竹座 1階8列花道近く♪

一、『春調娘七草(はるのしらべむすめななくさ)』長唄囃子連中
   曽我五郎時致:松 緑  曽我十郎祐成:菊之助 
   静御前   :孝太郎 

  この夏の盛りになぜ七草?という幕開け。
  五節供のひとつ「七夕(しちせき)」を過ぐる夏興行に
  節供のめでたい演目を、ということでしょうか。
  この舞踊劇の筋は、工藤館にあって亡父の恨みを晴らさんと
  気色ばむ曽我兄弟とそれを諌める静御前、といささか
  穏やかではない場面のようですが、
  血気盛んな兄・五郎と穏やかで優美な弟・十郎の対比が
  微笑ましくもあり、静御前はそれを楽しみつつ七草粥の
  支度に精を出すといった感じで、ほのぼのとしたなにげない
  春の一光景に映りました。
  
二、片岡十二集の内
  『木村長門守(きむらながとのかみ)』血判取
   木村長門守:我 當  郡主馬之助:進之助
   本多忠友 :家 橘  酒井左衛門尉:團 蔵
   徳川家康 :左團次 ほか
  
 (あらすじ)
  大阪冬の陣、勅命により豊臣家と徳川家の和睦が結ばれること
  となり、秀頼名代として家康本陣へ和睦の神文を受け取りに来た
  木村長門守。敵本陣でいささかも臆することなく家康の血判を
  取りつけ、みごと大役を果たし帰陣します。
  
  家康も欲しがったという若く潔い勇将、木村長門守。
  はつらつとした若々しさを感じられたかというとやや首を
  捻りますが、秀頼名代としての威厳、老獪な家康相手に
  冷静沈着な賢明さと、家康に対して敬意を表する潔さ、
  敵将までも魅了する仁としての要素はさすがの大ベテラン、
  みごとに表現されていたと感じました。
  一方、左團次さんの家康。こちらもさすが曲者の味。
  大役を果たした木村長門守、花道を去るときの我當さんの表情が
  素晴らしかったです。秀頼公の顔が浮かんだのでしょうか、
  万感の思いに涙ぐんでいるように見えました。

このあと『伽羅先代萩』は、予想通りとっても長くなりつつあるので、
ここでいったん締めます。 


シネマ歌舞伎 「ふるあめりかに袖はぬらさじ」 

2008-07-04 | 観る、聴く

仁左さま&愛ちゃんのため早々にお休みを確保した7月。
こんな月に限って、学校行事が突然入った。
「大規模災害時児童引取り訓練」
2時半に大規模地震発生の警報が発令されたという想定のもと、
児童引取りの登録をしてある保護者などが、3時20分までに
児童を学校に迎えに行くという訓練。
え~~?仕事お休みしなきゃ迎えにいけないじゃん・・。
というわけで、仕方がないので正々堂々とした理由で(笑)
お休みをいただいた。
しかし、ご縁とはこういうもんである。
都合が合わず、諦めかけていたシネマ歌舞伎。
名古屋での上映は4日(今日)まで。上映時間も11:00~14:00ときた。
らっき~~~。観に行けちゃうじゃん♪♪

というわけで、観て来ました。
シネマ歌舞伎「ふるあめりかに袖はぬらさじ」
         ミッドランドスクエアシネマ 7月3日 11:00
作 :有吉佐和子・演出 :戌井市郎 2007年12月歌舞伎座
出演:玉三郎 獅童 七之助 彌十郎 橋之助 三津五郎 勘三郎ほか
思ったよりお客さんがいたなあ。5、60人は間違いない。
7、8割がた、もみじマークないし一歩手前のみなみなさま。
ちなみにわたしの両脇は、歌舞伎フリークなおばちゃま。
携帯の待ちうけが勘三郎さんの「くどき」だったもの(笑)
この日のお客さんは、先日の御園座や中日劇場のお客さんに
比べたら、ずっと静かでよろしかった。隣のおばちゃま以外。

芸者姿の艶っぽい玉三郎さんのチラシを見て、
しっとり色っぽいお話かと思った・・が、ちょっと違った。
これは楽しかった♪
いや、哀しくもあるのだけど尾を引かない。  
幕末、尊王だ佐幕だ、攘夷だ開国だと不穏な時勢に翻弄されつつ、
自らの意志を貫く者あり、抵抗する者あり、流される者あり・・。
時に死んだ者までがその死を崇められたりも辱められたりもする。
そんな時代のなかで逞しく生きようとする人たちの姿が、
哀れというより、むしろ活き活きとして見えてくる。
おまけに、玉三郎さんを座頭としてなんとまあ豪華な面々。
ついこないだ「ヤマトタケル」で麗しき姿を見せてくれた方々も
たくさんご出演。あんな姿こんな姿にまたまた興奮しちゃった♪

なにより、玉三郎さんがすてき~♪
お富さんを映像で観て以来、こういう世話物を演じる玉三郎さんが
とっても好き!
今回の芸者お園も、表情、声、指先に至るまで神経の行き届いた
しぐさのひとつひとつまで、とにかく観ていて楽しかった。
不遇の半生、苦労しながら酸いも甘いも乗り越えてきたお園だから、
亀遊と藤吉のちいさな恋を見守る目はほんとにやさしいし、
急場をしのぐ咄嗟の機転?はさすが。それが災いするのだけど。
4月の『刺青奇偶』ではたんと泣かせていただいた勘三郎さんとの
掛け合いは、これまた絶妙。こたびはたんと笑わせていただいた。
さらに、芸者連中を従えて三味線を弾く姿には、
年嵩の芸者としてのプライドや気高さも感じさせる美しさ!
そして最後、ひとりになっての長台詞。
亀遊の寂しさを思い、
それを誰にも理解されずにその死を弄ばれた哀しさを思い、
それがわかっていながら翻弄された自分のふがいなさを思い、
「ふるあめりかに袖はぐしょ濡れだよ・・」
とひとりさめざめと泣く。
「袖はぬらさじ」と己のプライドを守り抜くため自害した
花魁桜木との違いを、このように表したところがとても面白い。
たしかにお園のしてきたことは褒められたものではない。
けれども、あの暗く先の見えぬ時代のなかで、
こんなふうにしか生きられない、生きていくしかない女もいるのだ。
「ああ、、怖かった」「畜生・・」
ふと漏れた言葉に、弱くて強い女のしぶとさ、たくましさを見た。

この作品を歌舞伎でやるならと、揃いに揃った面々がまたすてき!
獅童さんと七之助さんのいじらしさには胸がきゅうんとなったし、
特に七之助さんは初めて綺麗だと思った!
彌十郎さんのイルウスのハマリ具合にはびっくり。
勘三郎さんはあいかわらずこういうの巧い!!
どこから見ても海老蔵さんの浪人はなぜか笑えたし、
タケルの影も形もないきちゃない浪人右近さんにはびっくり、
だけど段治郎さんのほうはタケヒコを彷彿とさせるかっこよさ。
橋之助さんは爽やかに、門之助さん、三津五郎さんは渋~く
オイシイところを持ってった。
『ヤマトタケル』でも美しかった笑三郎さんや春猿さんは、
やっぱりここでも芸者姿がほんとにお綺麗。
なのにぃ、あのとき一番惚れた笑也さんは・・メリーちゃん。
いやいやこの唐人口のおねーさんたちが最高♪
原型をとどめぬ面白さ、いや美しさよ(笑)
マリヤ福助ちゃんもすごいけど、
なんといってもチェリー吉弥ちゃんがぶっちぎり。
楽しそうだよね~。化粧のときから盛り上がっていそう(笑)
ちなみに、唐人口のおねーさんたちが出てくるたび、
隣の歌舞伎フリークはおばちゃまは、
「あ~、福助さんね」「あ~、吉弥さんだわ、あはは」
といちいち解説。劇場でもこうなのだろうか。

それから特筆すべきは、海を臨む窓辺から差し込む光の
美しいこと!!
これ・・舞台のセット、照明とは思えないくらい。
いやあ、驚いた。


シネマ歌舞伎ってのもいいものだなあ!
続々と次の作品が公開を待っているらしい。
それももちろん楽しみだけど、『鷺娘』を観てみたいなあ。
いつか・・ね。

そしてそしてミッドランドスクエアシネマといえば、、
早く決まらないかな、秋のゲキ×シネ祭り。
決まったら決まったで、大いに悩みそうなんだけど。
さ、どうなるんでしょ。

スーパー歌舞伎「ヤマトタケル」 観劇

2008-06-27 | 観る、聴く

うるわしきタケル、タケヒコ。
帰りた~い、帰りた~い、、感動の中日劇場。
4ヶ月にわたるロングラン。
そろそろ最後の最後のステージが始まるころ。
わたしにも翼が生えて、タケルのもとへ飛んでいけたらなあ。。。

「わかった!おもしろかった!感動した!」
まさにコレでしたよ~、右近さんのおっしゃった通り。
すばらしい!これぞ最高のエンターテイメント!!
3月に舞台稽古と囲み取材を収録した「デジカメニュース」
録画してあったものを、この1週間何度リピートしたことか~。

いろいろあって1週間も前の観劇レポです(汗)
でもしっかり脳裏に心に焼きついているもん♪
愛ちゃんはいったんおいといて(笑)書くぞ~~!
↓長いです、とても。

スーパー歌舞伎「ヤマトタケル」
6月18日(水)11:00  中日劇場 1階12列中央
梅原猛=作 市川猿之助=脚本・演出
右近(タケル)段治郎(タケヒコ)
笑也・笑三郎・寿猿・春猿・猿弥・門之助・金田龍之介ほか  

何から書いたらいいか迷うけど、やっぱりコレでしょ。
名古屋スペシャル、白鳥タケルの最長飛翔、32メートル!
「天翔ける心。それが私だぁ!」(書くだけで涙出るな・・)
中日劇場では、この台詞を舞台の最上手で。
そしてそこから2階席の中央やや下手寄りまで、ぐーーんと
斜めに飛びました。そりゃ長いですわ♪
その間、ちょうどわたしたちの目の前(斜め上)あたりで、
行きつ戻りつしたんですね。
さあっと行き過ぎるものと思っていたから、
きゃああ、戻ってきたあ、止まったああ♪と興奮。
とても良い席だったので、舞台もいい加減近いけれど、
白鳥となったタケルがこんなに、最も近くで観られるなんてっ!!
照明に照らされたその姿は、白くキラキラ輝いて、
「神々しい」ってこういうことね~!と感動しまくり。
そのとき、目に映ったタケルの表情に思わずこみ上げてるものを
押さえ切れませんでした。
客席を広く見下ろすその瞳が、なんだかとても哀しそうに見えたから。
どうしてそんな哀しそうな目をしているの??
白鳥になってやっと大和に帰れるタケル。
もっと穏やかで安らかな表情をしているのかと思っていました。
(そんなふうに哀しそうな表情に見えたのはわたしだけ~??)
そうしてタケルは飛び立っていきました。
わたしたちの真上を!!
これ以上首が後ろへは倒れないってくらい反りくり返って・・
わたしたち、プラネタリウム状態(笑)
白い羽がはらはらと舞い落ちてきました。
正直言って、宙乗りにこんなに感動するとは思わなかったです。
ああ・・すごい体験してしまった~。

もう、なにもかも面白かった、お目目まんまるっ!!
ストーリーもすっごくわかりやすいのに、奥は深~い。
蜷川さんだろうが新感線だろうがとても敵わない、これには。
こんな舞台を観られて、ほんとに嬉しい♪♪

とことん見せるタイプのお芝居。
目に見えるもの、見えないもの、この世にあるもの、ないもの、
そして猛火や荒海、富士山まで、すべてを造形し見せ尽くす。
敢えて何ものにも形を与えず、ひたすら観客の想像力に
委ねる芝居の面白いと思うけれど、
こういう、見せ尽くすことに挑戦した芝居というのも、
ほんとうに面白い!

焼津の猛火のなかの闘いや、走水での嵐なんて、
もう、もう、スゴイスゴイ!!涙出そうになったもの。
(ボキャ貧丸出しだけど(恥)この凄さは実際観てみなきゃ
わからないと思うなあ。観てない人、後悔しまっせ~、笑)

早替わりや殺陣も、すっごい面白かった~!
小碓命と大碓命のもみ合い→早替わりには、ほんとにびっくり!
この瞬間に心すべて持って行かれたって感じだなあ。
殺陣も、ほんとはリアルな剣殺陣が好きなんだけど、
ツケ打ちさんの大熱演と、クルクルクルクルよく飛び回る
雑兵さんたちやらナイスコントロールで蹴飛ばされる樽だとか、、
まるでスピード感のない剣さばき、足運びが、
エライかっこよく見えてしまうので、またびっくり。
伊吹山の白猪もすごかったなあ。
出てきた瞬間には思わず笑ったけど、タケルと闘い始めると
怒った山神の化身たるがごとく、神秘さと猛々しさをその全身に
感じたもの。

それから、衣装も役者さんもほんとに綺麗、素敵!!
あまりの豪華さに、目がきらっきらっしてきちゃう(笑)
やたら笑えるのもあったし~。
役者さんは書き出すとキリがなくなりそうなので、
ほんとに一部だけ。
・わたしが観た回は、右近タケル。
段治郎タケルを観ていないので、これはこれで良しと見る
しかないですね。思ったよりちっちゃかったのと(笑)
声が高いので最初はやや違和感があったのは事実。
でも感情ががーっと盛り上がってくる場面には、見応えが
ありました。走水の別れには涙ボロボロ。。
でも、わたしにとっては何よりフライング・タケル。
忘れられないあの神々しさ、あの瞳・・。
・段治郎さんがタケヒコ。
凛々しくてかっこよかった!!
やっぱり上背があるのはいい、、と思ってしまいました、
ごめんなさい、右近さん。
タケル版を観る機会を作れなかったのがとても残念(涙)
・笑也さんにうっとり、ほれぼれ~♪
実は笑也さんをよく知らず、春猿さんを楽しみしていったのだけど、
堕ちました・・笑也さんの美しさに。
あとでパンフを見るまで、みやず姫も笑也さんだとは全く
気づきませんでした~(爆)かわいかったよね~。
・ヘタルベは弘太郎くん。
ダブルキャストなんですね。この回は弘太郎くん。
ちっちゃくてコロコロしてて、元気いっぱいのヘタルベでした。
パンフで見ると、もうひとりの猿紫くんはずいぶん違うタイプ。
観てみたかったなあ。
・・・やっぱり、このくらいにしておきます(笑)

ストーリーについて。
ヤマトタケル、最古の英雄と呼ばれる男の、
闘いと苦悩の半生のお話。
タケルはなぜ、なんのために、
独自の生活、文化を愛し平和に暮らす人々を皆殺しにし、
愛する人を犠牲にしながらも、
闘い続けたのか。
大和に抵抗し続ける部族を平定するというのが
大義名分であるけれども、
父である帝に、兄を殺したことを許してもらい、
自分を認めてもらいたい、それが真の理由。
目を見張る舞台に感動しながら、
滅ぼされた先住の民たちを思うと、
ただそのひとつに、なんとも虚しい気がしてなりませんでした。
タケルは自らその虚しさに気づき悩み苦しむわけですが、
最後は、己の傲慢ゆえ、故郷の大和の地に帰ることなく
その命を落すことになりました。
こうしてタケルの半生を観ながら、
大和朝廷の傲慢と古来先住の民の尊さを思いました。
・・・と、そういうことでいいのかな??(笑)

おまけ。
舞台を観ていて、なにしろ予備知識があまりないので、
スメラミコトとか、ヒツギノミコト、エヒメ、オヒメ・・
わかりにくかった~(笑)
あとからパンフで、漢字で理解してすっきり♪
最初に見ておけばよかったわ。


やっぱりすっごい長くなってしまいました(笑)
ここまでたどり着いてくださった方、ありがとう。お疲れさま。
とにかく面白かったなあ!!
またいつの日か、何年後でもいいので、
この舞台、絶対観たいです。

今ごろ舞台は、どのへんかなあああ。