さて、、気合入れていきます(笑)
大阪松竹座「二月花形歌舞伎」昼の部、
2月23日1階3列からの観劇レポの続きです。
三、「女殺油地獄」
はい、わたし的にこの日の目玉です♪
目玉といえばこの花形歌舞伎、亀ちゃん六変化も外しがたいところですが、
夜の部なので泣く泣く諦めました。
さて、これもわたしにとっては大変思い入れの強い演目です。
初めて観たのは映像ですが、孝夫さん時代の仁左衛門さん(昭和59年歌舞伎座)。
それこそ感電したみたいにやられてしまったのです。(初告白♪笑)
たぶん後にも先にも、河内屋与兵衛はこの孝夫さんしかわたしには
ありえないと思っておりますが、この演目自体たっぷり見応えがありますし、
今回なんといっても愛之助さんが与兵衛ですから♪飛んで来ましたよ~(笑)
二部に遅れたので(恥)三幕はトイレとお買い物をちゃっと済ませて早目に着席。
すると幕のむこうで、ぶぉ~~~と掃除機の音(笑)
観るのはとっても綺麗だけど、おかたづけはとっても大変よね。
(こののち、三部のあとはもっと大変ですよね~~)
愛之助さんは根っからの上方人。ふだんの会話もふつーに関西弁なので、
上方の世話物で観るのはやっぱり嬉しいし期待もします。
かくいうわたしは関西人ではないので、上方言葉の上手下手がわかるわけでも
ないのですけど、とにかく好きなんですよ、愛之助さんの話すやわらかい
関西弁、上方言葉がね。とろけるとろける~~(笑)
この演目の見どころは、与兵衛の小心者で甘ったれのぼんぼんぶりと、
そのバカ息子に対する両親の哀しいほどにありがたい親心、そして
油まみれの修羅場。
まずは、愛之助さんの与兵衛っぷりに注目。
なんかこう・・元気いいですよね、健康的というか(笑)
たくましいやんちゃくれ。
も~っと「しょーーもなさ」が(でも育ちのよさが出ていないといけない)
全身に自然に滲み出ててほしいの。(←ここわたしとしては重要)
小心者で甘ったれという役づくりに、ちょっと力みすぎてないかなあと
いうのが、すんまへん・・偉そうですが正直な感想でした。(前半です)
でもね~、それが愛之助さんらしさなのかな、それはそれで楽しかったです♪
あの障子を破るところなんて、逞しい二の腕までずっぽり入れてグリグリと!
ぼんぼんというより、ガキ大将やん(笑)
対する豊嶋屋七左衛門女房お吉は亀ちゃん♪
わたしは亀ちゃん、お姫様や腰元よりこういうお役のほうが好きです。
お吉はしっかりもので世話好き、身持ちも堅く、お向かいで馴染みの
与兵衛に対しては年の離れた弟かともすれば子どもを見るがごとく。
齢27というから、与兵衛とそれほど年齢差はないと思うけど。
まだ若くて魅力的なのだけど、間違っても与兵衛と不義の仲になぞ
陥りそうもない雰囲気づくりがわたしはいいなと思いました。
それが「いっそ不義になって」という男の熱視線に一瞬たじろぎそうに
なりつつ、反撃とばかりに与兵衛の本気の懇願を嗤って嗜める。
このあたりの亀ちゃんお吉の女心の変化、うまく見せてくれました。
そりゃあ与兵衛の怒りの炎も一気に燃え上がるでしょうよと。
さて、与兵衛の両親、実の母おさわと元は河内屋番頭の義父徳兵衛。
義父は義父なり、実母は実母なりの葛藤もっともで泣けるし、
それを互いにわかりつつ思いやる夫婦の情にこれまた泣けます。
そのうえで最後はなにふり構わず注ぐ、愚息への親の情。
いつの時代でも、親の情とはとてつもなくありがたいものです。
「子は親の慈悲で立ち、親は子の孝で立つ」っていい台詞でしたねえ・・
こういうのをベタで観て何憚ることなく泣ける、
ああ歌舞伎ってすばらしい(涙)・・と思っちゃうわけです、毎度毎度(笑)
竹三郎さんのおさわがすばらしかったです。
もうなんだかあの老母の佇まいだけで泣けそうでした。
吉弥さんのおさわが好きだったのですが、今回それを超えました。
余談ですが、、わたし歌舞伎のお役のなかで、娘や姫役より
世話物に多いこういう年配のおばちゃん(笑)が上手い役者さんって
すごく好きなのです。ホンモノのおばちゃん女優では絶対出せない味がある!
徳庵堤の茶屋のおばちゃんにも注目しちゃいました。
そして豊嶋屋油店の場。
与兵衛に愛之助さんらしさが冴えた場でありました。
ああ、ここまで観にきた甲斐がありました~。
ほの暗い花道、頬かむりの影にのぞく、明らかにこれまでとは違う、
真に追い詰められた表情の与兵衛がゆっくりと歩み出てきたとき、
やっと愛之助さんの与兵衛を見た気がしました。
「よしっ、こっからイケルぞ~!」と一気にコーフン(笑)
つくづく、この日の良いお席に感謝です(涙)
愛之助さんの与兵衛、その眼の表情がすばらしかったですから!
「いっそ不義になってくだされ」と言うときだったか、その直前だったかの
あの眼!なんと表現したらいいのだろう。その眼の鈍い光が別人のような
与兵衛を浮かび上がらせた瞬間。鳥肌が立ちました。
孝夫さんの与兵衛はこうではなかったと思ったのでびっくり。
簡単にいうと、、わたしの孝夫さん与兵衛の記憶はもっと甘えたお願い
調子(笑)愛之助さん与兵衛は力づくでモノにしちゃうゾみたいな(笑)
愛之助さんの与兵衛は、甘ったれぼんぼんだけど、どこか強がりでない
男っぽさが見え隠れする(しちゃう?)ので、こういう一瞬の豹変に
違和感もなくて・・むしろ愛之助さんの与兵衛らしさとしてよかったかなと
思います。
さて、男の色で迫って突っぱねられ、その後は本気の懇願さえも嗤って
嗜められるとあっては、与兵衛のプライドはずたずた。
そのとき梵鐘の音が不気味に空気を震わせ与兵衛の心に焦りを生じます。
そして三味線がジャンッ!ど~んよりしていた空気が一瞬にして緊迫。
そこにたまたま脇差があってしまったわけで。
思いつめたような与兵衛の眼がその脇差を見据える。
ああ、わかっちゃいても手に汗握る展開。きゃあ。。。
「おまえが娘をかわいがるほどに、
おれもおれをかわいがる親父が愛しいーっ!」
うう、またもや名台詞。親父徳兵衛に聞かせてあげたいねえ(涙)
しかし・・だからあなた死んでちょうだいよってのはどうよ??
切羽詰った状況に、素直な愛が究極のエゴに歪むのが悲しいですね。
そして、いよいよ油まみれの修羅場。
愛之助さんも亀ちゃんも、毎ステージまさに体あたり迫真の芝居ですね。
太夫と三味線がこれでもかと臨場感を盛り上げてくれます。
これには現代のどんなBGMや効果音も敵いませんよ。
いやはや・・ナマで観るとものすごいですね~~!!
なのですが! 実は油まみれの格闘は床に這いつくばることが多いので、
前の人の頭で、特に顔の表情などはほとんど観えなかったのです~(涙)
そのうえ、与兵衛とお吉が揃ってずるっと油に滑るたび「あ~あ~~」
なんと客席から笑い声! え”--っ!そこ笑うとこですかっ?!
なんだか急に興ざめしてしまいました・・。
てなわけで、いいとこでありゃりゃ~~でした(涙)。
しかしめげません(笑)そのあとはちゃんと観届けられました。
瀕死のお吉の髷を掴み、とどめの刀を振り上げ、
大きく見開いた眼の与兵衛の顔が、そのとき一瞬にやりと笑ったように
見えました。
現代演劇やドラマなどでも、そういう瞬間を時おり見ます。
獣がいよいよ獲物を捕らえて喰らいつこうという瞬間の昂り。
人間も、人を殺すその瞬間には獣のような本能が甦るのでしょうか。
その直後にみごとに極まった見得。
人を殺めるその瞬間を、リアリスティックに、シンボリックに見せつけていく。
それを美しいと感じてしまうことに・・ちょっと戸惑い。。
お吉を絶命させ、金を奪い、
赤ん坊の泣き声、時を告げる梵鐘、犬の遠吠えなぞに怯えながら、
震える身で豊嶋屋を飛び出す与兵衛。路地ですっ転ぶ。
花道、ほとんど眼の前に油まみれの与兵衛がダーーンって。わあおおお♪
暗闇にぬらぬらと光る白い肌が~~!!!
上がる息に大きく上下する肩、胸、震える手。
全身の力を振り絞って右膝をドンと立てる。
ぬめぬめの着物がまとわりついてぬらぬら光る白肌の逞しい足~~♪♪♪
そして両の手をその膝にバシッとついたその瞬間。
パシャッッ!!!
おわーっ!与兵衛の油(水糊だけど)をついに浴びてしまいました~♪
それも顔にっ!
第三部開演前に念のため油よけの毛布を渡されていて、
花道に与兵衛が倒れこんできたときにはちょっと警戒はしていたのだけど、
顔まではね~~。っていうか、観たいし浴びたいじゃんっ♪(爆)
心舞い上がるも、ここは与兵衛を見届けねばなりませぬ。
膝に手をつきゆっくりと重い身体を起こしながら、
与兵衛の眼は、さきほどまで後ろを振り返り振り返り怯えていた眼から、
行く末の闇に向かって挑むような眼に変わっていました。
そして、大きく身体を揺らし憑かれたように闇に去ってゆきました。
初めて歌舞伎の主役で愛之助さんを生で観ることができ、
それも眼の表情までしっかり観られる場所でたっぷりと堪能し、
油までひっかけていただくことができました(笑)
もう大満足でした♪♪ ありがとうございました!
だからというわけではないですが(ほぼそのつもりで行ったので)
愛之助さんの写真集、松竹座にて購入いたしました♪♪
人生3冊目の写真集(笑)
ほほほ・・・照れますが、ときめきますねえ(笑)す・て・き♪
やっと大すきなやわらかいウェーヴの髪に戻ってるのも嬉しい。
ロングインタビューとか100の質問もとても楽しかったです。
関西弁そのままで、それもまたうれし。
最初の見開きに直筆サインがあってびっくり。またまたうれし~。
頁の左下がうっすら白く粉っぽくなってたのは、
もしかして白粉の指の跡かしら?(きゃ♪)
せっかくの握手券をムダにすることだけが残念ですぅぅ。
この先もどんどん続く魅力的な舞台、しばらく観に行くことが叶いませんが、
7月の松嶋屋さんご一行の巡業を楽しみにしております♪
ここまでがんばって読んでくださった方、ありがとうございます。
長くて長くてごめんなさい。お疲れさまでございました。