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Re=response=応答、感応=物事に触れて心が動くこと。小田和正さんの大好きな曲からいただきました。

はじめての文楽♪

2009-03-11 | 観る、聴く

            
            文 楽 平成21年3月地方公演
      3月8日(日)昼の部 豊橋市民文化会館ホール 10列
      演目:『一谷嫩軍記』から 「熊谷桜の段」「熊谷陣屋の段」
          『紅葉狩』

文楽を初めて生で観てきました♪
昨年NHKで文楽の『曽根崎心中』を観て感動!
地方巡業もあると聞いて、この日が来るのをほんとに楽しみにしていました。
昨年の秋巡業は、せっかく隣市だったのに予定があわず泣く泣く見送りでした。

いやあ・・やっぱりホンモノを観てみるもんですねえ!
すっかり魅了されつくした3時間。
太夫さんも、三味線さんも、人形さんも、
ただただすごいな、すごいな~~♪と思うばかりでしたけど(笑)

近頃歌舞伎もときどき見るようになったので、
今回の演目「熊谷陣屋」も「紅葉狩」も映像ですが見たことがあるもの。
当時人気の人形浄瑠璃が歌舞伎で取り上げられるようになったのだから、
歌舞伎のほうがマネっこなのだけど(笑)わたしからすると、歌舞伎が先
だったので、あの歌舞伎舞台がそのまんまミニチュア化したような感覚が
まずもって面白くて仕方がなかったです。
台詞だってほぼ同じだし、何より歌舞伎役者がやっていた通りのことを
人形さんたちがしているのが、とにかく面白くて信じられないくらいで。
もちろん人形さんなので、実際のところ、表情は目が動く、瞑るくらいにしか
動かないし、手も足も人間のようにスムーズに動いたりしないのだけど、
これに、太夫さんと三味線さんと人形遣いさんの力が結集すると、
人形さんなりのゆたかな表情が顔にもしぐさにも表れて、そこに役の心情が
しっかりと感じられてきました。
なるほど、浄瑠璃・三味線・人形の3役あってこそのお芝居なんだな~!と
いうことを実感しました。

「熊谷陣屋」は、熊谷、相模、藤の方、それに義経、宗清と、それぞれが
心の動きをとても繊細に表現されるべき難しいお芝居だと思っていましたが、
いやあ、おみごとでした!人形さんたちが、ちゃんと人形さんたちの世界で
「生きている」という感じでした。そして歌舞伎では見得がすばらしく
キマるシーン、首実検に際し熊谷が制札で藤の方を諌めるところは、
とってもかっこよかったです!思わず「きゃ~」と鳥肌立ってしまいました。
ところでこのお芝居、熊谷や相模などが屋敷から庭に下りて出るときには、
階段が真ん中でばっと横に開いて、人形遣いさんたちが前に出てくるの
ですね。最初おお~っと驚いてしまいました(笑)
熊谷の主遣いは、「曽根崎心中」で徳兵衛をやっていた吉田玉女さん
だったので、それも感激でした♪

「紅葉狩」にはこれまた驚きました。人形さん、踊り上手っ!!(笑)
いやあ・・踊れるんですねえ!(当たり前か)おまけに二枚扇を扱い、
あるいは扇を投げてちゃんと受けたりもできるんですよ~~~。
人間のわたしにはできな~い(爆)もう拍手拍手です!もっかい見たい。
この舞を見せてくれるのが更科姫。真っ赤なお着物姿でとてもとても
かわいらしかったです♪
しかしこの更科姫は実は鬼女。のちに正体を見せて、惟茂と対決します。
これまたすごいすごい!ちゃんと火を投げるし、口から煙も吐く!
対する惟茂も剣で応戦、かっこいいっ!
思わず前のめりになるほどの迫力!驚きました~~。
ちなみに、この「紅葉狩」では、更科姫と惟茂の人形遣いさんだけは、
黒紋付や黒衣じゃないんですね。主遣いさんは立派な裃をつけていたし、
足遣いさんや左遣いさんもお顔をみせていました。そして更科姫が鬼女に
なって出てきたときには、主遣いさんの裃の色も変わっていたし、
足・左遣いさんたちは黒衣になっていました。へ~~~、、でした(笑)
なお、更科姫のすばらしい扇技をみせてくれたのは、雑誌「サライ」の
文楽特集で、人形遣いのコーナーを担当してくれた吉田一輔さん。拍手!

ロビーでは公演パンフレットのほか、人間国宝たちのDVDや著書、
文楽関連書籍、絵葉書、文楽の人形柄がかわいらしい一筆箋なども多数
販売されていました。
公演パンフレットは500円と安い!(そもそも、チケット代だって
4000円だなんてびっくり~)なのに、表紙・裏表紙の写真も
きれいだし、内容もけっこう盛りだくさん。昼・夜の演目をあらわした
切り絵がすてきです♪ なんといっても嬉しいのが床本。「熊谷陣屋」は
歌舞伎で見ているときも理解できなかった台詞が、これを読んでようやく
わかりました(笑)歌舞伎でもほしい・・

はじめての文楽は、ほんとうに楽しくて大満足。
夜の部が見られなかったのがとても残念です。前日だったら全部見られたのに。
ちなみに夜の部の演目は「二人三番叟」「御所桜堀川夜討~弁慶上使の段」
そして「傾城恋飛脚~新口村の段」(←く~、見たかった!)
鶴澤寛治さんと吉田文雀さんも出られたそうです。

次の巡業もぜひ見に行きたいと思います。
またいつかはきっと国立文楽劇場へも~~!

大阪松竹座「二月花形歌舞伎」 昼の部(2) 

2009-02-26 | 観る、聴く

さて、、気合入れていきます(笑)
大阪松竹座「二月花形歌舞伎」昼の部、
2月23日1階3列からの観劇レポの続きです。

三、「女殺油地獄」
はい、わたし的にこの日の目玉です♪
目玉といえばこの花形歌舞伎、亀ちゃん六変化も外しがたいところですが、
夜の部なので泣く泣く諦めました。
さて、これもわたしにとっては大変思い入れの強い演目です。
初めて観たのは映像ですが、孝夫さん時代の仁左衛門さん(昭和59年歌舞伎座)。
それこそ感電したみたいにやられてしまったのです。(初告白♪笑)
たぶん後にも先にも、河内屋与兵衛はこの孝夫さんしかわたしには
ありえないと思っておりますが、この演目自体たっぷり見応えがありますし、
今回なんといっても愛之助さんが与兵衛ですから♪飛んで来ましたよ~(笑)
二部に遅れたので(恥)三幕はトイレとお買い物をちゃっと済ませて早目に着席。
すると幕のむこうで、ぶぉ~~~と掃除機の音(笑)
観るのはとっても綺麗だけど、おかたづけはとっても大変よね。
(こののち、三部のあとはもっと大変ですよね~~)

愛之助さんは根っからの上方人。ふだんの会話もふつーに関西弁なので、
上方の世話物で観るのはやっぱり嬉しいし期待もします。
かくいうわたしは関西人ではないので、上方言葉の上手下手がわかるわけでも
ないのですけど、とにかく好きなんですよ、愛之助さんの話すやわらかい
関西弁、上方言葉がね。とろけるとろける~~(笑)

この演目の見どころは、与兵衛の小心者で甘ったれのぼんぼんぶりと、
そのバカ息子に対する両親の哀しいほどにありがたい親心、そして
油まみれの修羅場。
まずは、愛之助さんの与兵衛っぷりに注目。
なんかこう・・元気いいですよね、健康的というか(笑)
たくましいやんちゃくれ。
も~っと「しょーーもなさ」が(でも育ちのよさが出ていないといけない)
全身に自然に滲み出ててほしいの。(←ここわたしとしては重要)
小心者で甘ったれという役づくりに、ちょっと力みすぎてないかなあと
いうのが、すんまへん・・偉そうですが正直な感想でした。(前半です)
でもね~、それが愛之助さんらしさなのかな、それはそれで楽しかったです♪
あの障子を破るところなんて、逞しい二の腕までずっぽり入れてグリグリと!
ぼんぼんというより、ガキ大将やん(笑)

対する豊嶋屋七左衛門女房お吉は亀ちゃん♪
わたしは亀ちゃん、お姫様や腰元よりこういうお役のほうが好きです。
お吉はしっかりもので世話好き、身持ちも堅く、お向かいで馴染みの
与兵衛に対しては年の離れた弟かともすれば子どもを見るがごとく。
齢27というから、与兵衛とそれほど年齢差はないと思うけど。
まだ若くて魅力的なのだけど、間違っても与兵衛と不義の仲になぞ
陥りそうもない雰囲気づくりがわたしはいいなと思いました。
それが「いっそ不義になって」という男の熱視線に一瞬たじろぎそうに
なりつつ、反撃とばかりに与兵衛の本気の懇願を嗤って嗜める。
このあたりの亀ちゃんお吉の女心の変化、うまく見せてくれました。
そりゃあ与兵衛の怒りの炎も一気に燃え上がるでしょうよと。

さて、与兵衛の両親、実の母おさわと元は河内屋番頭の義父徳兵衛。
義父は義父なり、実母は実母なりの葛藤もっともで泣けるし、
それを互いにわかりつつ思いやる夫婦の情にこれまた泣けます。
そのうえで最後はなにふり構わず注ぐ、愚息への親の情。
いつの時代でも、親の情とはとてつもなくありがたいものです。
「子は親の慈悲で立ち、親は子の孝で立つ」っていい台詞でしたねえ・・
こういうのをベタで観て何憚ることなく泣ける、
ああ歌舞伎ってすばらしい(涙)・・と思っちゃうわけです、毎度毎度(笑)
竹三郎さんのおさわがすばらしかったです。
もうなんだかあの老母の佇まいだけで泣けそうでした。
吉弥さんのおさわが好きだったのですが、今回それを超えました。
余談ですが、、わたし歌舞伎のお役のなかで、娘や姫役より
世話物に多いこういう年配のおばちゃん(笑)が上手い役者さんって
すごく好きなのです。ホンモノのおばちゃん女優では絶対出せない味がある!
徳庵堤の茶屋のおばちゃんにも注目しちゃいました。

そして豊嶋屋油店の場。
与兵衛に愛之助さんらしさが冴えた場でありました。
ああ、ここまで観にきた甲斐がありました~。
ほの暗い花道、頬かむりの影にのぞく、明らかにこれまでとは違う、
真に追い詰められた表情の与兵衛がゆっくりと歩み出てきたとき、
やっと愛之助さんの与兵衛を見た気がしました。
「よしっ、こっからイケルぞ~!」と一気にコーフン(笑)
つくづく、この日の良いお席に感謝です(涙)
愛之助さんの与兵衛、その眼の表情がすばらしかったですから!

「いっそ不義になってくだされ」と言うときだったか、その直前だったかの
あの眼!なんと表現したらいいのだろう。その眼の鈍い光が別人のような
与兵衛を浮かび上がらせた瞬間。鳥肌が立ちました。
孝夫さんの与兵衛はこうではなかったと思ったのでびっくり。
簡単にいうと、、わたしの孝夫さん与兵衛の記憶はもっと甘えたお願い
調子(笑)愛之助さん与兵衛は力づくでモノにしちゃうゾみたいな(笑)
愛之助さんの与兵衛は、甘ったれぼんぼんだけど、どこか強がりでない
男っぽさが見え隠れする(しちゃう?)ので、こういう一瞬の豹変に
違和感もなくて・・むしろ愛之助さんの与兵衛らしさとしてよかったかなと
思います。
さて、男の色で迫って突っぱねられ、その後は本気の懇願さえも嗤って
嗜められるとあっては、与兵衛のプライドはずたずた。
そのとき梵鐘の音が不気味に空気を震わせ与兵衛の心に焦りを生じます。
そして三味線がジャンッ!ど~んよりしていた空気が一瞬にして緊迫。
そこにたまたま脇差があってしまったわけで。
思いつめたような与兵衛の眼がその脇差を見据える。
ああ、わかっちゃいても手に汗握る展開。きゃあ。。。

「おまえが娘をかわいがるほどに、
 おれもおれをかわいがる親父が愛しいーっ!」
うう、またもや名台詞。親父徳兵衛に聞かせてあげたいねえ(涙)
しかし・・だからあなた死んでちょうだいよってのはどうよ??
切羽詰った状況に、素直な愛が究極のエゴに歪むのが悲しいですね。

そして、いよいよ油まみれの修羅場。
愛之助さんも亀ちゃんも、毎ステージまさに体あたり迫真の芝居ですね。
太夫と三味線がこれでもかと臨場感を盛り上げてくれます。
これには現代のどんなBGMや効果音も敵いませんよ。
いやはや・・ナマで観るとものすごいですね~~!!
なのですが! 実は油まみれの格闘は床に這いつくばることが多いので、
前の人の頭で、特に顔の表情などはほとんど観えなかったのです~(涙)
そのうえ、与兵衛とお吉が揃ってずるっと油に滑るたび「あ~あ~~」
なんと客席から笑い声! え”--っ!そこ笑うとこですかっ?!
なんだか急に興ざめしてしまいました・・。
てなわけで、いいとこでありゃりゃ~~でした(涙)。

しかしめげません(笑)そのあとはちゃんと観届けられました。

瀕死のお吉の髷を掴み、とどめの刀を振り上げ、
大きく見開いた眼の与兵衛の顔が、そのとき一瞬にやりと笑ったように
見えました。
現代演劇やドラマなどでも、そういう瞬間を時おり見ます。
獣がいよいよ獲物を捕らえて喰らいつこうという瞬間の昂り。
人間も、人を殺すその瞬間には獣のような本能が甦るのでしょうか。
その直後にみごとに極まった見得。
人を殺めるその瞬間を、リアリスティックに、シンボリックに見せつけていく。
それを美しいと感じてしまうことに・・ちょっと戸惑い。。

お吉を絶命させ、金を奪い、
赤ん坊の泣き声、時を告げる梵鐘、犬の遠吠えなぞに怯えながら、
震える身で豊嶋屋を飛び出す与兵衛。路地ですっ転ぶ。
花道、ほとんど眼の前に油まみれの与兵衛がダーーンって。わあおおお♪
暗闇にぬらぬらと光る白い肌が~~!!!
上がる息に大きく上下する肩、胸、震える手。
全身の力を振り絞って右膝をドンと立てる。
ぬめぬめの着物がまとわりついてぬらぬら光る白肌の逞しい足~~♪♪♪
そして両の手をその膝にバシッとついたその瞬間。
パシャッッ!!!
おわーっ!与兵衛の油(水糊だけど)をついに浴びてしまいました~♪
それも顔にっ!
第三部開演前に念のため油よけの毛布を渡されていて、
花道に与兵衛が倒れこんできたときにはちょっと警戒はしていたのだけど、
顔まではね~~。っていうか、観たいし浴びたいじゃんっ♪(爆)
心舞い上がるも、ここは与兵衛を見届けねばなりませぬ。
膝に手をつきゆっくりと重い身体を起こしながら、
与兵衛の眼は、さきほどまで後ろを振り返り振り返り怯えていた眼から、
行く末の闇に向かって挑むような眼に変わっていました。
そして、大きく身体を揺らし憑かれたように闇に去ってゆきました。


初めて歌舞伎の主役で愛之助さんを生で観ることができ、
それも眼の表情までしっかり観られる場所でたっぷりと堪能し、
油までひっかけていただくことができました(笑)
もう大満足でした♪♪ ありがとうございました!

だからというわけではないですが(ほぼそのつもりで行ったので)
愛之助さんの写真集、松竹座にて購入いたしました♪♪
人生3冊目の写真集(笑)
ほほほ・・・照れますが、ときめきますねえ(笑)す・て・き♪
やっと大すきなやわらかいウェーヴの髪に戻ってるのも嬉しい。
ロングインタビューとか100の質問もとても楽しかったです。
関西弁そのままで、それもまたうれし。
最初の見開きに直筆サインがあってびっくり。またまたうれし~。
頁の左下がうっすら白く粉っぽくなってたのは、
もしかして白粉の指の跡かしら?(きゃ♪)
せっかくの握手券をムダにすることだけが残念ですぅぅ。
この先もどんどん続く魅力的な舞台、しばらく観に行くことが叶いませんが、
7月の松嶋屋さんご一行の巡業を楽しみにしております♪

ここまでがんばって読んでくださった方、ありがとうございます。
長くて長くてごめんなさい。お疲れさまでございました。

大阪松竹座「二月花形歌舞伎」 昼公演 (1)

2009-02-25 | 観る、聴く

一度観てみたかった花形七人衆。
昨年のように浅草、博多は遠けれど、大阪松竹座なら♪
おまけにこの魅力的な演目、配役とくればもう見逃すまい!
なお、この日やっとやっと本年の初観劇。遅っ!だけどうれし~~。
 

「二月花形歌舞伎」昼の部  大阪松竹座
  2月23日(月)11:00 1階3列

一、「毛 抜」     
これは、わたしの記念すべき歌舞伎初観劇の演目。
一昨年10月の御園座吉例顔見世、弾正は尾上松緑さんでした。
そのときは楽しいというより、もう何もかもにびっくりだった印象が。
二度目の今回は、たっぷり楽しめました♪ いやはや痛快、痛快!
獅童さんは初めて観ましたが、このお役(粂寺弾正)みごとモノに
されているのではないでしょうかね。実に気持ちよく楽しそうに
演じているのが印象的でした。間近に見る立ち姿も堂々立派!
とても良いお席に恵まれ、幾度となく目線が合っている
気がして(←単なる思い込み)楽しさ倍増でございました(笑)
愛之助さん♪は小野春道。ほぼ無表情、ほとんど動きなし、見せ場なし(笑)
でも凛々しいお声と金のぴらぴら~(笑)がステキなお殿さまでした。
亀ちゃん♪は腰元巻絹。いつも手の動き、指先まできれいだなあと
思って観ています。腰元でも「びびびびびっ」って、かわい~~(笑)
これって他の役者さんでもやるのかしら?一昨年のはまったく記憶なし。
そして、この演目でわたし的イチオシは・・壱太郎くん!
錦の前。春道の娘で、髪の毛が逆立ってしまう渦中のお姫様。
かわいいっ!めっちゃかわいい!!真っ赤なお着物のよく似合うこと!
奇病に恥ずかし悲しの表情がまたなんていじらしいこと。
お声はまだまだ出ていない感じがしましたけどね。
藤十郎さんのお孫さんですね。
昨年映像で観た近松座『鏡獅子』での弥生がとってもかわいらしくて、
聞けばその時まだ高校生。でも「踊るのが大好き」と眼を輝かせていたのが
とても印象的でした。これからが楽しみです。
それから八剣玄蕃の薪車さん、わたし初めてかしら?
立ち姿もお声もとてもとてもステキでした~。
今回の観劇は、たっぷりと楽しむことができました。

二、「鷺 娘」
昨年七月大歌舞伎のとき、かずりんさんと地下の食堂で食事をのんびり
しすぎてもう少しで二部に遅れるところだったので、先回の教訓に学び
今回はふたりとも急いで食べたはず・・だったのが・・二部開演時間を
しっかり確認していなかったのね・・急いで戻ったけど時すでに遅し(涙)
幕が上がって数分後にやっと入れていただけました。ああ、、恥ずかし。。
次からはもうお席にていただくべし。
玉三郎さんのあの有名な『鷺娘』 シネマ歌舞伎ですら、まだ観たことが
ないんですねえ、わたし。名古屋に早くまわってこないかなあと熱望中
のところ、まずは七之助さんで初鑑賞ということになりました。
「舞踊」って詳しいことは全然わからないのですけど、わたし大好きです!
なにも考えることなく、ただひたすら綺麗だな~~とうっとり夢見心地に
なれるのがまず好き。イヤホンガイドはちょっと迷うところですが、
お着物やお道具の説明とか、何を表現しているのか(これは自分で感じとれば
いいことですけど)教えていただけるのはやはり嬉しいので聞きます。
衣装の引き抜きや早替えにはそのたびため息が出ましたし、
(今回舞台に近いお席だったので衣装の美しさを堪能できました)
歌舞伎の舞台の雪って、ホンモノの雪よりずっと切なくて綺麗。
そしてあの太鼓の雪音がまたいいんですよね~、大好き!
先日観た映画『Beauty』の影響でしょうか(笑)
舞台全体、観るもの聴くものみな日本の「うつくしいもの」
「日本っていいよなあ」としみじみ感じてしまう鷺娘の舞台でした。
七之助さん個人の感想を書いてないですね(笑)
とっても綺麗で、なにより一生懸命さが伝わる舞でした。
これを観てますます玉三郎さんを観たいと思ってしまった・・ゴメンナサイ。


第三部「女殺油地獄」は長くなるので(笑)別エントリーとします。

映画「Beauty」 観てきました

2009-02-16 | 観る、聴く

2/14、映画「Beauty」がいよいよ名古屋にて公開となりました。

せっかくいの一番の名古屋、早く観たいのはやまやまなれど、
あいにく週末はずっと予定が詰まっていて月末まで我慢のつもりでしたが・・。
やっぱり行ってきてしまいました、それも初日♪
午後2時半からの上映があったので、午前中の授業参観のあと急げば、
午後の市P連の講演会をパスすれば(コラ!)行けるじゃん♪と。(笑)
幸い子どもたちも友だちのお家へ遊びに行ってくれたから安心。
12月の「表裏源内~」以来、観劇や映画はもちろん、
名古屋にさえ出かけることがなかったというストイックな日々(笑)を
送っておりましたので、この日の突然の思いつき→即行動♪に
うきうきわくわく、とーっても心躍ったのでありました。

名古屋での上映は、錦通り東新町にある「名演小劇場」  
 
名古屋では年に1、2度とても小さな映画館に行くことがありますが、
一昨日観てきた名演小劇場の1階シネサロン2の席数は49席、だったかな。
これまでの記憶ではたぶんいちばん小さいと思う。もちろんスクリーンも。
それでも、さっぱりと小奇麗で落ち着いた印象でした。
14:30、この日3回目の上映ですがほぼ満席、
50~60代の方が多かったように思います。

まだご覧になっていない方のほうが圧倒的に多いと思いますので、
映画の内容にはできるだけ触れないようにしておもな感想を書いてみます。

こうしてスクリーンで観られるのが嬉しい、
美しい日本映画だったなと思います。
自然、時代、村の風情や文化、とても美しく撮れていることに感動しました。
音楽も、その使われ方もあわせ、ひさびさにいいなあ!と思える作品でした。
昨年秋に観た「私は貝になりたい」でどうにもいただけなかった点が
この映画ではことごとく(わたし的には)クリア。胸のすく思いがしました。

ただ、画の落ち着きに反して、実は話の展開はものすごく速いです。
事が唐突で、その経緯や詳細にはほとんど触れられずということが
何箇所もあり、正直ちょっとびっくり。
「これはダイジェスト版か?」と思えてしまったことも。
そのあたりのさじ加減は、監督の撮りたい<うつくしいもの>に対する
斬新で思い切った取捨選択なのかもしれませんが・・。
しかし、それならば、半次の雪夫に対する思い同様、戦争のために
廃れてしまった村歌舞伎を復興させようとする熱い思いとその日々は、
もう少し丁寧に描いてみせてほしかったなと思いました。

監督の撮りたい<うつくしいもの>とは、おそらく
今もこうしてささやかにも愛され守り続けられている
日本の原風景のような自然と、伝統文化と、
またそういうものに育まれた素直で温かくて強い心、
といったところでしょうか。
たいせつな心の部分を描ききれていないような気がして少し残念です。
(わたしが感じ取れなかっただけかもしれませんけど)

「うつくしいもの」のひとつ、村歌舞伎のシーンはとてもよかったです。
映画のなかで、村歌舞伎がしっかりと活きています。
この映画で観る歌舞伎のシーンは、ただ「村歌舞伎を演じている」
「村歌舞伎が上演されている」という画の一部ではありません。
実際この地方だけに伝わる村歌舞伎独自の演目もありますし、
本歌舞伎で有名な演目もいくつか出てきますが、それぞれのシーンに、
登場人物の切ない運命や心情がオーバーラップして見えてくることに驚き、
とても感動しました。
特に、先日孝太郎さんがNHK名古屋の番組に出演されたとき話題に上った芝居
『六千両』(この村にだけ伝承されているそうです)のとある場面には、
心底痺れました~!
また、この映画のために創作され、クライマックスで孝太郎さんが
渾身の舞を見せる『天竜恋飛沫』もすばらしいです。泣けます・・。
なお、村歌舞伎のシーンには、実際に地元で村歌舞伎を継承している
役者さんたちも熱演していますし、その舞台も江戸時代から村歌舞伎が
演じられている神社をお借りしているそうで、リアリティ満点です。
個人的には、冒頭『神霊矢口渡』でびっくり。
「源内先生~」と思ってしまうのは、
すんません、、わたしだけです(笑)最近またハマってしまったので。

出演のみなさんもとても良かったです。
どなたも、あの時代、あの村にしっくり馴染んで見えることで
とても安心感をもって観ることができました。
いい役者さんばかりですね。
孝太郎さん、愛之助さん。たしかに歌舞伎以外のシーンでは、
ほかの役者さんならもっとうまく見せられたかもしれないですが、
やはりこのふたりの役には、梨園のいとこ同士でふだんから
立役と女形として芝居することもあるふたりだからこそ見せられたもの、
(絆みたいなものかなあ)それが必要だったのだなあと感じました。

孝太郎さんは、主役としてそして幅広い年代と村歌舞伎をみごと演じきり、
孝太郎さんらしさが溢れています。
愛之助さん、切なすぎです(涙)きれいです(笑)後年の舞台シーンでは
晩年の十三代目仁左衛門さんのことが頭に浮かびました。
嘉島典俊さん、「風林火山」の武田信繁が印象的でした。それ以来ですが、
やっぱりうまいなあ!と思いました。
麻生久美子さん、不思議とこういう時代に違和感のない美しさと佇まいが
いいなあと思っていつも見ています。さすがに老年には無理がありましたが。
北村和夫さんはこの作品が最後になったそうです。
そして、仁左さまが特別出演、あんなところに~~♪(笑)
お父様の十三代目もそうしてご覧になっていらしたそうですよね。
しかし、エンドロールで見つけた秀太郎さんのお名前に汗・・。
ご出演とは知らなかった・・。ど、どこに~~?
パンフレットを見てわかりました。ああ、ごめんなさいです。

先日の番組で、NHK名古屋の鈴木アナ(男性)が
「何度泣いたかわからないくらい」と話していたこと、これ、ホントでした!
彼らの運命の切なさにだけではありません。
山里の自然の美しさや、村の古い建物や暮らしぶりに感じる
古き良き時代の日本の在りようにさえ、知らず知らずのうちに涙が
零れていました。
そしてあの美しいテーマ音楽とともに流れるエンドロールには、
この映画の制作や村歌舞伎の継承に情熱を傾けた人びと・・
思わずまた涙。舞台なら精いっぱいの拍手で讃えるのに。


なんとかもう1回、観ておきたいと思います。
たいせつにしたい、この日本のうつくしいもの。
今週末からは「歌舞伎役者 十三代目片岡仁左衛門」も上映されます。
週替わりで二巻ずつなので、残念ながら全部は観られそうもありませんが、
いくつかはぜひ観に行きたいと思います。
また、南山大学の安田文吉教授によるセミナー「地芝居の魅力」も
開催されるそうです。やるなあ・・名演小劇場!!
でも短期間にあまりにてんこもりすぎて、さすがにどれもこれも
というわけにはいきません。残念だなあ。


さて、来週はいよいよ松竹座です。
花形七人衆が、それはそれは大活躍で大盛り上がりだそうな。
さぞうつくしかろ~うつくしかろ~~(笑)

ああ・・やっと春が来た。(寒さはぶり返しましたが)

「表裏源内蛙合戦」 大阪公演 前楽&大楽

2008-12-16 | 観る、聴く

あ~、とうとう終わっちゃっいました。
でもほんっとに楽しかった♪
コクーンで一度だけ観劇してから3週間余。
大阪では、運よく前楽と大楽を観ることができて最高~!
お泊りして前楽と楽日を観るって、、一度やってみたかったんだ~(笑)

大楽の様子はすでにレポもいっぱい上がっているようなので、
(遅筆のあたしにゃもう間に合いません、笑)
貴重な(?)前楽レポを中心に書くことにします。
ま、賞味期限切れには変わりありませんが、
自分的にもと~っても貴重な観劇でしたので♪

「表裏源内蛙合戦」大阪公演
12月13日(土)18:30 シアターBRAVA! 1階A列

「表裏~」は念願の蜷川さん×上川さんの舞台。夢がひとつ叶いました。
もひとつの夢は、一度でいいから上川さんの舞台をいっちばん前で観たい
ってこと。なんと、これもこの舞台で叶えていただいちゃいました。
それも、どまんなか~~~! それも前楽~~~!
この先10年分の運を使い切った気がする・・。 

東京で一度観ているので、たいていのことはわかっているのだけど、
いやわかっているだけに、開演直前は期待と緊張で心臓バクバク。
(先日のナゴヤドームの一件が頭をかすめる。シャレにならんで~。)
最後の析の余韻が消えるか消えないかのタイミングで、ばあっと舞台照明が
入った途端、うわお。。。

お顔が・・真ん前。

あの・・嬉し~とかしあわせ~とかいう前にとにかく恥ずかしい(笑)
まあ視線はほとんど彼方へ飛んでるからいいんだけど~、
自意識過剰と笑われて全然構わないけど~、こちらの目のやり場に困る。
じぃーーっと見つめているのもめっちゃ恥ずかしいし、
下向いちゃうのはもったいないし(爆)きょろきょろするのはおかしいし・・
で、と~ても挙動不審な目で観ていた・・と思う、自分。
(といいながらも、お顔から指先までしっかりちゃっかり見てきた、笑)

さて、以下、最前viewからいくつか。

・高松城内お庭の場。
裏源内がまず下手側舞台下に降りて、腰元の遊ぶ手毬を楽しそ~に操作(?)
ちょうどそのあたりに座っていた年配の男性に
「ほらほら、おとうさん、見てあげてくださいよぉ~」って(笑)
そうこうしてるうちに、目の前に頼恭どの、続いて四方吉くんも降りてきた♪
客席通路をよく使う蜷川芝居にあって、残念ながら今回の芝居はそれがない。
なので、ここが一部のお客限定、通路=極近で見られる唯一のチャンス。
わお~、目の前でお芝居してるよ~♪=本日の最短距離(←バカ)
一方裏源内のほうも楽しそうなのだけど、贅沢なことに近すぎて、
この面白いシーンをひとつの視界に収められないから、目があちゃこちゃ。
そうしてる間に、四方吉くんがひょいっと両足揃えて舞台に飛び乗る。
おお~~。着物を着込んでいても変わらぬ軽い身のこなし♪
そしてひとりで上ってこられない頼恭どのを引っぱり上げながら、
四方吉くん困り顔でぼそっと「なんで上がれないんだよっ」と。

・安天連、磔の場。
えへ~♪ 裏源内さんに話しかけてもらっちゃったよ~~!
このへんに来るだろうとはわかってたけど、
ほんとに目の前に座って話し始めたのでもうびっくり~!!
「あのひと(六平さん)ね、いつもああなのよ。
 稽古んときも言うこと聞かなくってさ。いいと思ってんのかねえ。どう?
 あのいかつい顔で人気あるみたいなんだけど、いかついだけで・・・」
あんまりびっくりするやら面白いやらで、ここまでしか覚えてませ~ん。
というのも、そのとき笑いながらまくし立てるように喋る裏源内さんの
お口からよだれが袴にぽとり(笑)それでも喋る喋る~。
すると最後に裏源内さん、
「ほらあ、よだれ垂れちゃったよぉ」
って恥ずかしそうに袴を擦りながら、笑って舞台に戻って行ったの~。
もう、おかしくておかしくて。
はあ、すっごい体験してしまいました(笑)
あ~、でもだからといって勝村さんに乗り換えちゃったりしませんよ(爆)
このお芝居でますますいい役者さんだなあ!とは思ったけどね~。
ところで、このときは表源内さんはどうしてたのかなあ。

・表源内×一学×ヤン・ガランス、交渉の場。
通訳の表源内が、一学やヤンの身振り手振りまで厳密に伝えるのだけど、
一学最後の一発(笑)は、完全に豊原さんのアドリブ(日替わりかな)
上手の柱にぴょんと飛びついてから、手足をあれこれしてバーン!って。
それを見た表源内さん、笑って小首を傾げながら小さな声で、
「むっずかしいなあ」 ・・聴こえちゃったよ(笑)
で、いざ果敢にチャレンジ。う~~ん、なんかどっか違うよ?(笑) 
そのあと、上川さんはヤンの両手を引きずりながら、
(そのときはもう完全に袖に入ってしまっているのだけど)
足を持ってる豊原さんに「難しいっ!」と言っているのが見えちゃった(笑)
ちなみに、大楽はさらにすごいワザになってましたね~。
躊躇する上川さんに、思わずみんな爆笑だったもんね。

・青茶婆、笹森お仙と。
あは~、これは目の前にすると、その眼のからみ具合とか指の動きとか、
たまらないですね(笑)色っぽ~~♪
お仙とは、東京の時よりもっともっとアツアツのい~い感じで。
この日は角度的に見にくかったけど、大楽の日はまたもやよく見えたわ・・。

・二人の源内のデュエット。
あはあは~、こっちもめっちゃ色っぽ~~♪♪(笑)
東京のときは、上手側の席だったからあまりよく見えなかったのよね。
きゃあ~~、表源内が座って膝に手を掛け、こっちをじーっと見据えて
歌ってる~~♪ めっちゃかっこいい~~(涙)
しかし、微妙に視線は隣のおばあちゃんだし・・。

・表源内、「山師」といわれて激昂の場。
東京で観た時にくらべて全体に、ここぞというシーンでの溜めが両人とも
たっぷりだったところに見応えがあったと思う。思わず息を呑む。
表源内が大衆に対しての怒りをぶちまけるシーンの直前、
源内の眼は、客席のひとりひとりを舐めるようにゆーーっくりと
睨みつけていった。(その時間は大楽よりずっと長かったと思う。)
何百人すべてを敵にまわしたその眼の異常な光と、
源内との間に初めて感じた突き放されたような隔たりに、
鳥肌が立つほどの怖さを感じた。

・腑分けの場。
まず、青茶婆斬首のあと並んだ生首が「美しい明日」を歌うシーン。
青茶のほぼ歌いだしから、ほとんどの生首の目が涙を湛えているのを見た。
そして歌いだすとともに、どんどんその眼から涙が溢れていった。
なんだか受け止め切れなくて、逃げ出したいような気分で固まってしまった。
そして二人の源内による腑分け。
間近に観たせいなのか、以前よりずっと進化しているのか、
とにかく、この日はもの凄いモノを見てしまったような感じで途中から
震えが来てしまった。
これまで一度も感じたことのないような感覚で、自分自身に驚いた。
神々しくさえある光のなかで、贓物にまみれ生首を貪るように抱き、
トランス状態の二人の表情には今もって言葉がない。
ただ、あれをこの眼に焼き付けられたことはこの上ない幸運。

・米を喰う狂い虫の場。
明らかに東京で観たときよりも凄みを増していた。
なおも焚きつけようとする裏源内の話をじっと聞く表源内の眼が
ちょうどこちらの方に向けられているように見える。
空ろなようでいてひどく鋭いものを感じた。視線を外せなくなる。
それでも、横目でちらっ、ちらっと裏源内の様子を覗ってみた。
高まる緊張感、闇と一寸の沈黙が怖い。
そのとき、こんな近くで観ていても太刀筋の見えぬほどの速さで、
表源内の刀が裏源内を斬った。はっと現実に戻ったように思えた。

久五郎を斬ってしまったことで狂い始める表源内。
表情がどんどん変わっていくのを見るのはほんとうに怖かった。
その眼はうつろかと思えば、ぎらぎらとし、突然泣き出しそうで、
汗と涙とよだれとがだらだらと、、凄まじい。
まわりの空気が源内に呑まれていくような感じがしてきて、
鳥肌が立ち、再び震えが来た。これがこのひとの芝居だとそのとき思った。
へたっと座り込んだ源内。眼は完全にイってしまっている。
そして、静かに泣き出した。
肩をぎゅうっとすぼめ、ぎゅっと握りしめた両手に顔を押し付け、
小さく小さくなって、泣き始めた。
その泣き声は、哀れなほど弱弱しくまるで子どものようで、
そんな源内があまりに寂しくそしてたまらなく愛おしく思えた。
でも、わたしが東京で観たときこんなふうに泣いていた記憶はないし、
次の日の大楽でも、源内はへたっと座り込んだだけだった。

東京で初めて観たときは、観劇後「面白いもの観れたなあ!」という
高揚感でいっぱいになって帰ってきたのだけれども、
この日は、そのあと眠るまでずーっと、その寂しい小さな源内の姿が
頭から離れなかった。
上川さんの泣く芝居は映像も含めて数え切れないほど観ているけど、
あんな弱弱しく泣き崩れることはなかったからかもしれない。
(この夏「ウーマン~」の名古屋初日はこれに近いものがあって
=開かぬドアの前にすがりつき泣き崩れた=確かにちょっと驚いた。
 この場で泣いたのを観たのは、わたしが観たなかではこの日だけ。)
さらに身体のどこかがまだ震えているような感覚が残っていた。
最高のものを観ることができた満足感は確かにあるものの、
高揚するものはなくて、思いは言葉にならず茫洋としていて、
わが身をなんともしがたい心地に戸惑った。


以上、前半楽しくて舞い上がり、後半圧倒されて放心の、
前楽レポ&感想でした。
なんだかひどく拙くてすみませ~~ん(汗)

大楽については、別途少しだけ書き残しておくつもりです。


☆東京公演観劇記:「表裏源内蛙合戦」 観劇 (1)
             「表裏源内蛙合戦」 観劇 (2)
             「表裏源内蛙合戦」 観劇 (3)

映画「私は貝になりたい」 鑑賞

2008-12-05 | 観る、聴く

平日の上映は11:00からしかない・・それじゃあ仕事に間に合わない。
かといって週末は、年末までみごとに埋まってる。
というわけで、もうレイトショーに行くしかない!
23:00だというのに、土曜日のせいかけっこうな人数。
(あは。先週末のことです。相変わらずアップが遅っ。)
やっぱり話題作なんだなあ。

と勇んで出かけたものの・・。
う~~ん、予想通りというか、またか、というかなんというか、
わたしの好みではないなあ。物足らない。
悪い予感を裏切ってくれることを期待してたが、残念。
う。パコに続きまたもや非国民的孤立、か?(笑)

この作品が今新たな命を授けられて、
もはや旧作も戦争も知らない世代にまで広く観てもらえることは、
それなりの意義があると思う。
この作品は、この問題は、とにかく観て感じて、
なによりそこから考えてもらうことが大切だと思うから。
以下、ちょっと辛口意見も含めて長くなります。
ご贔屓さん感想は、下~の方に(笑)。


同じ種のうちで群れをつくり縄張り争いをするのは、
人間も鳥や魚や獣も同じ。
そのなかで考えるという高度な能力を持っていながら、
人間は、ほかのどの動物よりも醜い争いをする。
人間は愚かだ。
愚かだからこそ、人間は人間を許し愛することで、
人間を生き続けなければならない。生かし続けなくてはいけない。
神様は人間に、その愚かさを補うために愛を与えたのだと思う。
わたしは、生まれ変わっても人間になりたい。
人として生まれ、人を愛し愛されて生きていきたい。
生まれ変わったとき、誰もがそう思っている世界であったらいい。

BC級戦犯裁判のことはほとんど知らなかった。
映画パンフレットにある田中元防衛大学校教授の解説はありがたい。
職業軍人はともかく、戦時とはいえ少なくとも殺し合いから無縁な生活から
突然駆り立てられ、唯一絶対の命令を拒む術もなく、
はたしてそこに個人の倫理責任を突きつけられる。
戦犯裁判も結局は戦争の延長なのだ。
大義名分のもと理不尽を通すのが戦争。
「戦犯は一般の刑事犯でなく、命令した軍(国)に代わって、
 刑罰を受けた犠牲者である。」(田中教授)
しかし、そんな理解も戦後日本では長く浸透せず、
映画ではたとえば、嘆願署名に訪れた家族を忌み嫌うようにして拒むなど、
受刑者とその家族を二重に苦しめた。
真実を正しく知らない、知らされないことの怖さや罪深さを思う。

「嫌な時代に生まれ、嫌なことをしたものです」
タイトルとなった「わたしは貝になりたい」という台詞よりも
むしろ、この台詞のほうが心に重く残った。
以来60余年を経て、今はいい時代になっただろうか。
わたしたちは、ほんとうにいい時代を創っているのだろうか。

不朽の名作と称されるにふさわしい題材の映画だと思うけれど、
今回のリメイク版は、何か違うような気がしてならなかった。
物足りない。軽い。真意を逃しているような気がしてならない。
「わたしは貝になりたい」という言葉が、最後にして唐突に感じられた。

物足りなさの大きな原因は、
自然は撮れたけど、時代や心情を撮れていないと感じたことかもしれない。
苦心のほどは窺えるけれども、どうにも作り物っぽさの拭えない画面と
空気、妙な明るさは如何ともしがたかった。
メインのふたりにしても、役者としては悪くないけれど、どうしても
時代を感じられないのが残念。なんとなく空気が違う。
(個人的には、豊松を香川照之さんで観てみたかった。
 妻役は今ぱっと思い浮かぶ女優さんがいない・・)
心情については、豊松が巣鴨プリズンで精神的に追い詰められていくさまを
もっとじっくり丁寧に描いてほしかった。
もっともっと、怒りややるせなさ、寂しさや悲しみ、焦りや恐怖が
彼のなかに渦巻いていたはずである。
今回家族愛にも目を向けさせようとしたことで、肝心の戦争や戦犯裁判に
おける理不尽さへの感情がぼやけてしまったような気がしてならない。

また、アップや短いカット割の多用はどうにも気分を削がれる。
アップは時に感情を押しつけらる感じがするし、短いカットで
シーンがぶち切りになるのは、こちらの感情までぶち切りになる。
妻が豊松の頭を刈るシーンなんて、せっかく長回しで撮ったというのだから、
夫婦の若き日の回想をブチブチと映像ではさんだりせず、
ひたすらそのままじっくり流せばよかったと思った。
夫婦や子どもの表情と手動バリカンの乾いた音だけで、
伝わるものは余りあると思うのだけれど。
客が画面から感じ取ることに、もっと信頼と余裕がほしいと思う。
それから、音楽が劇的に入るすぎるのが逆に興を殺ぐ感じがした。
そのせいか、せっかく久石譲さんの音楽だったのに、
あまり良かったという印象がない。

以上辛口に言いたい放題したが、以下言いたい放題にミーハー感想(笑)
ご勘弁・・。

ご贔屓おふたりはとてもよかった。
いずれも短いながら、さすがにいい仕事だった!

まず片岡愛之助さん♪
大好きなやわらかいウェーブの髪が、この映画のために丸坊主。。
わたしの初生愛ちゃん(舞台外)が丸坊主。。
いや、それはそれでなかなかすてきだったけど。
坊主にされたエピソードはご本人から楽しく聞かせていただいていたが、
どんな役でどんなふうに絡みがあるのかはまったくわかっておらず。
尾上部隊第一中隊長・日高大尉。
豊松らに、米兵捕虜の処分を厳しく命じた、言ってみれば事の張本人?(笑)
思いのほか重要な役でした。
す、すてき~~! 登場の瞬間、思わず座り直しちゃった(笑) 
ふだんのやさしい目元が、あんな冷たく厳しい目に。
すっと伸びた背筋、軍服と共にまとった厳格な空気、
そして低く響く威厳のある声。(もう上手く言えない~)
日高が絶対の命令を下し、躊躇する豊松らが米兵を衝くまでの息を呑むシーン、
これはこの映画にして、非常に良かった!!
で、この日高大尉は敗戦後戦犯として捕らわれる前に割腹。
う~ん、今の感覚からするとちょっとズルイか。
生きて戦犯となっていれば、小宮教誨師との出会いがあったんだがなあ・・
と残念でならない。(そこかっ?!)

上川隆也さん♪
こちらも非常に重要な役、小宮教誨師。
こちらは坊主だけど坊主でなく。(笑)
やさしい声が・・やわらかな口調が・・まとう空気が・・
もうカンペキ教誨師。(わけわからん)
冗談はさておき、とても難しい役をよく演じてくれたと思う。
戦犯とされた人たちの最期を看取る、たったひとりの日本人。
彼らの心の声に耳を澄まし、そっと寄り添う。
彼の仕事はそれだけでなく、
処刑を前に、本人に戒名を授ける。
処刑の後のこと、つまり遺体は遺族の元に返されないこと、
埋葬場所も秘されることを本人に伝える。
残酷な仕事にも思える。しかしそのひとつひとつに、小宮教誨師は
彼なりの真摯な思いを込めて受刑者に向かっている。
戒名には、その人の人生の真実を詠み込んでひとり敬意を表し、
処刑後のことをきちんと本人にも伝えるのは、遺してゆく者と
遺される者への彼の誠意。そして髪や爪を遺すことを促すのは、
せめて彼らの心をつなぎたいと願う彼の愛情。
きっとこうしてひとりひとりを、静かに大切に見送ってきたに違いない。
豊松との最後の晩餐のシーン、とてもよかった。
監督は、撮影直前の上川さんに「泣けますか」と聞いたそうだ。
それでいて監督は小宮の涙を映していない。
ただ、咽び泣く豊松の両肩に置かれた彼の手を映すだけ。
その手は、それまでに描かれた小宮という人物像からすると意外なほど、
大きく、力強く豊松の肩を抱いていた。
その手は、間違いなく、泣いていた。
それが、上川さんの小宮教誨師だと思った。
教誨師という役割の重さ、
若くてもそれをしっかり受け止め、その重みに耐えられる役者として、
彼は選ばれたと思った。けっして期待は裏切っていないと思う。


・・・以上っ!

「君の心臓の鼓動が聞こえる場所」 観劇

2008-12-02 | 観る、聴く

観劇レポ遅っ。東京公演始まったっつの・・。

演劇集団キャラメルボックス 2008クリスマスツアー
「君の心臓の鼓動が聞こえる場所」
脚本・演出:成井 豊
出演: 黒川智花 西川浩幸 大森美紀子 岡田さつき 菅野良一
    大内厚雄 前田 綾 岡内美貴子 温井摩耶  三浦 剛
    筒井俊作 實川貴美子 阿部丈二
11月22日(土)14:00 名鉄ホール 2列センター

この日の3日前に源内を観てきたばかり。あちらは完全アウェー(笑)
キャラメル歴が長いわけでもないけど、おなじみの劇団員の顔々を
舞台上に観て、とっても懐かしい気もちでいっぱいになりました。

昨年のこの季節、『トリツカレ男』で4年ぶりの名古屋公演のあと、
夏のハーフタイムシアター、そしてまた今年のクリスマスツアーで
キャラメルボックスを名古屋で観ることができました。
10月末で愛知厚生年金会館が閉鎖となった今、演劇等の名古屋公演は激減
の模様。そんななか、キャラメルボックスが名鉄ホールを名古屋のホーム
として定着しつつあることは、とても嬉しく思われます。
劇団のみなさんも、名古屋をとても気に入ってくれているようです。

お菓子のキャラメル。
大好きだったわけじゃないけど、子どものころはよく食べたなあ。
今も昔からいっこう変わらぬ甘さ。
いくつも食べると甘ったるくてイヤになるけど、
たまに食べるとその甘さがやさしくて懐かしくて、
こんなに美味しかったかなと再発見したような驚きと嬉しさ。
キャラメルボックスのお芝居って、まさにその名の通りのものを感じます。
年2回の名古屋公演が嬉しくて、必ず観に行こうと胸躍るのは、
そんな懐かしい甘さとやさしさをまた味わいたいからかな。
今回も、キャラメルの変わらぬ味がとっても美味しかった♪

しかし。まったく成井さん、離婚家庭がお好きねえ・・
とぶっちゃけ言いたくなるほど、ストーリーのベースはおんなじ(苦笑)
大人の都合で片親から引き離された子どもの気もちとか、
意地っ張りで自分や子どもに対して偏愛傾向のある元妻とか、
主要人物の職業が作家とか役者とか、幽霊(職業じゃない!)とか・・
今回もあらすじを読んだときちょっとがっかりしてしまったのだけど、
ちっ、すっかりもっていかれちゃった(笑)
西川さんに弱すぎ・・(爆)

「主人公の根室典彦は、間違いなく僕だ。・・」
と、劇場でもらう公演リーフレットで成井さん自身が書いているけど、
・・・間違いなく西川さんでしょ・・と思ったけどな(笑)
アテ書きだからそう思えてしまうのかな。
西川さんの人柄が滲み出る芝居でした。

典彦(西川浩幸)のもとに、14年ぶりに突然会いにやってきた
最愛の娘いぶき(黒川智花)。
家に上がりこんで「小説家になりたいから出版社を紹介して」だの、
手作り豪華弁当を職場に届けに来るなどなど、真意を量りかねる娘の
強引さに典彦は辟易の体。
一方、若いときから作家志望だった典彦は、テレビ脚本家とはいうものの
世のイメージとはかけ離れて、ひたすら目の前の仕事を地味にこなす毎日。

いぶきがまだ幼かった頃典彦は出版社をクビになり、仕事に出るように
なった妻亜希子(温井摩耶)のかわりに専業主夫となる。
思いのほか家事や育児を楽しむ典彦。
ままごとが大好きないぶきと一緒に台所に立ったり、
公園で心ゆくまで鬼ごっこをして遊んだころ。
典彦の心のなかに残っているいちばん幸せだった頃の思い出を
身振り手振りを交えて典彦が語ります。
このお芝居のいちばん素敵なシーンです。
幼いいぶきのはしゃぐ姿が見えるようです。
西川さんがパパだったら、ほんとにこんなふうに子どもと遊ぶんだろうな、
なんて目を細めてしまいました。

14年ぶりに会う娘。
あのころと同じ、いやそれ以上の愛情でまるごと受け入れたい、
しかし、そんな気もちに典彦は溺れない、溺れまいとしているかのように
見えました。
典彦は不注意から幼いいぶきの身体を傷つけてしまった。そして
それが最後の引き金となって亜希子と離婚。それはいぶきの心まで
傷つけることになっただろう。典彦にはそんな負い目がある。
以来、典彦には「ものを書く」ことしか残っていない。
「書く」ことにこだわり、その喜びや厳しさを誰よりも知っているから、
「小説家になりたい!」といういぶきの願いに手厳しいし、
いぶきの対して冷たいと感じるくらい、目の前に迫った仕事に走る。
そんな不器用で切ない姿が、父親だなあ、男だなあと思いました。
西川さん、さすがの好演です。

いぶきは、ドラマ版『雨と夢のあとに』で雨ちゃん役を好演した
黒川智花ちゃん。初舞台だとか。上手いとはいえないけど、
娘役として新鮮だし好感が持てました。
いぶきの謎は、キャラメルらしいスイートななかのスパイスの
入れ方だなと思いました。なかなか面白かったと思います。
いぶきがお父さんに会いにいくに当たって掲げた「7つの目標」だっけ・・
ほんとうのことがわかってくると、いぶきのけなげな思いに泣けます。
お父さんがほんとに好きだったのだよね、会いたかったのだよね。
大人の都合で大好きな親と引き離される子どもが抱き続ける思い、
胸が痛みます。・・・成井さん、こんなんばっか。。

こんなんばっかといえば、典彦の元妻。
大好きな温井さんですが、「はあ?なんですとっ?!」と思わず
突っ込みたくなるすごいヤな嫁(笑)典彦はいぶきの身体を傷つけて
しまったけれど、このひとはそれよりもっと深い傷を心に負わせたと
思えてなりません。
こういうの多いんですけど、成井さん、トラウマでもあるのん?

みっこさん(大森美紀子)や虫くん(菅野良一)、あつをくん(大内厚雄)
とってもいいキャラでいい味を添えてくれました。
クリスマス公演らしい温かさが嬉しかったです。
彼らのなにげないひとことがとてもいいのです。
おじいちゃん(虫くん)
「何もしてあげられなかったら、せめてずっとそばにいてやりたいんだよ」
(・・のようなセリフ)
別の場だけど、おばあちゃん(みっこさん)
「ええ、ここにいるような気がするのよ」
(と言って向かったのが、おじいちゃんの反対側。笑)
いぶきの作った弁当に、典彦が結局まったく手をつけぬまま、
北海道へ飛び出していったことを残念がる岩見沢(筒井)に対して
砂川(大内)、典彦の背を笑って見送るように
「またすぐに食べられるさ」(のようなセリフ)
あ、みっこさん、書店の店員の役、グ~~!でしたっ(笑)
あつをくんも、この砂川の役がとっても良かった!
見た目も役柄もとてもスマートでかっこよくてやさしいんですよね♪
虫くん、、あいかわらずコロコロだし(笑)

今回、女優さんたちがみんなとっても綺麗だなあ~と思って
観てましたが、典彦の妹役、前田綾ちゃん、足長っ!!
綾ちゃんらしい、いいキャラでした。とても西川さんの典彦と
兄妹には見えないけど(笑)、その両親が虫くん&みっこさんである
ことを考えるに、これはアリかと。ある意味ベストキャスティング(笑)

筒井くんと三浦くんのキャラは、まあお決まりで想定内。
キャラメルとしてはこういうのもないといけないかな、と。
しかし彼らも含め、ここにありがちな面白くないギャグの連発は
今回ほとんど見られなくて、その点よかったです(辛口)
「火斗美(ひとみ)ふたたび」の悪ふざけも、・・まあ許しましょう(笑)

物語のラストは、まさにキャラメルらしいあったかい涙うるうるの
ハッピーエンド。
「どうしても今書きたいものがあるんだ」
待望のドラマ脚本執筆を断わってくれと頼む典彦の明るい表情が
ほんとうにすてきでした。
作家としても父親としても、明るい未来が待っているようです。
涙が止まりませんでした。


カーテンコール。
これにまた弱い・・(涙涙)
芝居を終えて、とっても嬉しそうに慈しむようなまなざしで
客席全体に目をやる役者さんたちの表情を見るともうダメだ・・。
ほかのお芝居のカテコでここまで泣けることはあまりないのだけど。
それにこの日のあいさつは、みっこさん。
「観に来てくれてほんとうにありがとう」の気もちがすごく伝わる。
やさしいんだよね、あったかいんだよね、みっこさんの声、笑顔。
うるうるが止まらない。
「ありがとう」を言いたいのはこちらのほう。

そして最後のあいさつは、やっぱり西川さん♪
「僕たちはいつもここにいます」
ひとことだけ搾り出すようにして言った西川さんの目が潤んでいました。
とうとう涙腺大決壊でございました・・。
やっぱりそのひとことが、西川さんから聴きたくてね。
ありがとう。とてもとても嬉しい。


・・というわけで、キャラメルらしいお芝居を楽しめました。
これはこれでいいのよ。。(笑)
さあ、来年も名古屋でキャラメルボックスが見られます。
夏はあの『風を継ぐ者』!そして来年もクリスマスは新作だそうです。
昨年暮れ『トリツカレ男』で衝撃(?!)の名古屋進出、
次の夏公演にはハーフタイムという独自のスタイルを披露、
そして2度目のクリスマスをキャラメルらしい成井オリジナルで。
そしてそしてお次は人気のキャラメル時代劇を。
「おぬし、やるな」と名古屋に思わせるなかなか戦略的ラインナップ。
はたして勝負は来年のクリスマス公演かな。
ここでさらに面白いと思わせられるか、そろそろ飽きられるか(笑)
秘密兵器出しちゃいますか?(まだ無理~?)
がんばってほしいものです。ちゃんと応援してますから♪


さて公演後、恥ずかしいほど涙目で名古屋駅にダッシュ。
名鉄ホールはエレベーターを降りるとすぐ改札口だからありがたい。
ふだんはJRを使うけど、この日は帰りを急ぎたかったから名鉄を利用。
そしたら!!!
なんと人身事故(自殺だったらしい)のため不通になってるーーー!!
ひょえーーーー。まただよ・・。
どうする、あたし・・。
いつ運転再開するかわからない。子どもは待ってる。
JRで帰れないこともないけど、JRの駅からどうするよ・・?
結局名鉄はアテにならないので、JRに乗ることにしてその先はタクシー。
バーローーー。夕方の渋滞であんな距離に1800円も払ったし(涙)
せっかくのいい気分がぶっ飛んだのでありました。

「表裏源内蛙合戦」観劇 (3)

2008-11-30 | 観る、聴く

役者さんについて。

今回の出演者38人、
発表当時の戯曲では登場人物延べ200人とあります。
今回の舞台で何人になっているかはわかりませ~ん。
メインの上川さん、勝村さん、そして高岡さん以外の役者さんは、
すべて2役以上を担当。
舞台を観ていると「あ、あの人が今度はこんな役を」ってわかりますが、
パンフの配役表を見るとほんとうにびっくり!もう誰が誰やら(笑)
こんな役者泣かせ?の舞台なのに、どの役者さんもとっても楽しそうで
活き活きといくつもの役をこなしていることに感動してしまいます。
もうみんなすごい、すごい、すごい!! 
カーテンコールでは、出演者全員、スタッフ全員の大奮闘に
めいっぱいの拍手を送りたくなること間違いなしです。

それでは、上川隆也さん(表の源内)から。
もうね~、「こんな役観てみたかった!」から「そんな姿まで~」と
ファン心をくすぐりまくりです。
ひとりの人間の一生を演じる芝居は数多くあれど、
生まれた瞬間から死ぬまでをひとりで演じるって「本邦初!」?(笑)
年齢を経ていくさまを、声、表情、しぐさで微妙に変えていくのが
実に巧いなあと思います。
赤ちゃんの表情、しぐさがすっごくかわいい♪抱っこした~い(笑)
少年時代の源内がこれまたとってもかわいくて大好き。
青年期は明るくてイキイキしています。思いきり楽しんでますよね。
壮年期は男前度全開(笑)ちょっと才能に溺れて傲慢ぽいところも
いいし、お仙との絡みはどきっとするほど艶っぽいし、裏源内との
掛け合いはほんとにかっこいい!
そして晩年、精神を病み狂気に陥るさまは、一度舞台で観てみたいと
思っていたもの。客席すべての意識がただ一点にギュッと集中する、
あのぞくっとするような静寂と濃密すぎる空気。さすがの求心力。
ここまでのは久しぶり。藤原くんの『弱法師』以来かなあ・・。
歌もとてもいい感じ!
全体に、キーが『SHIORH』より上川さんには歌いやすいレベルだった
のじゃないかなと感じました。安定して気持ちよく聴こえました。
聴かせるシーンでは、音としても台詞としてもしっかりと響いてきます。
待望の蜷川舞台で、期待以上のものを見せてもらえて大満足です♪

勝村政信さん(裏の源内)
ご本人のおっしゃる通り、まさに蜷川組のキャプテン的存在感。
硬軟自在、お客との駆け引きも抜群、「僕のやりたいことを
いちばんわかっている」という蜷川さんご本人からの厚い信頼。
スター選手を輝かせ、若手を叱咤激励し、自らの押さえどころも
怠らない。強豪チームに名キャプテンあり。
「コリオレイナス」以来、上川さんが蜷川舞台に呼ばれるときには
ぜひガチでぶつけてほしい役者さんのひとりでした。
最高の楽しみかたができ、ほんとうに嬉しかったです。
今度は唐沢さんも含め3人で・・は無理かなあ(笑)

高岡早紀さん(青茶婆=花扇)
う~~ん、予想通り青茶婆には物足らない感じが否めませんでした。
歌声だけで選ばれた?わけではあるまいが・・。
もっと毒気と妖しい年増(笑)の色気が欲しかったのよねえ。
秋山菜津子さんとか余貴美子さんとか、、若くても松雪泰子さんとか。
(するとあれだけの出番じゃもったいない気もするけど)
源内が一瞬にして取りつかれ、はたして逃るるに逃れられず、
しかし刻まれた屍にさえなおほとばしるものを掻き立てられる女、のはず。
「腑分け」のシーンはふたりの源内の熱演で見応えはあるけど、
青茶と源内の関係に劇的な印象が薄いので、感情的にはさほど
動かされませんでした。

篠原ともえさん(雲井太夫、笠森お仙ほか)
高岡さんよりむしろこちらのほうが印象が強いくらい。
もうシノラーなんて呼べないくらい、きれ~いな女優さんでした。
(でもブログ見る限り、やっぱシノラー。笑)
それでもって雲井といいお仙といい、表源内独り占め(笑)
はいはい、雲井とのいちゃいちゃは目の前でしたよ・・
全然いやらしい感じはないのだけど、頬に肩に手手にすりすりすりすり。
源内もな~んかとってもいい感じでさ~。
この芝居、長すぎっちゃ、あのシーンが長すぎっ(爆)

六平直政さん(源内父、安天連、鳥山検校、田沼意次、入墨者い)
みごとな五役演じ分け。それもいずれ劣らぬクセモノで。
さらには歌もお上手、あっぱれ!!
このひとも、実にのびのびと楽しそうに各役を演じていました。
上川さんとは次の舞台『その男』でも共演、楽しみです。

豊原功補さん(大久保一学、鈴木晴信)
舞台では初めて観ます。ドラマなどでみかけるクセのある男ぶりは
今回封印されてましたが、なかなか喜劇もいいではないですか。
少年期高井塾の場、源内との息のあったシーンには大笑い、好きだなあ!

大石継太さん(高井塾頭、杉田玄白、徳川家治ほか)
高橋 努さん(松平頼恭、司馬江漢)
蜷川舞台でのこれまでの印象から、
大石さんの家治、高橋さんの頼恭にはぶっ飛びました。
ほかにも、蜷川舞台でよく見かける役者さんたち、
かなり個性的で覚えのある役者さんも何人かいますが、
多くはパンフのプロフィールで気がつくくらい。
今回もまだ全員を認識するまでには至らないけど、
ひとりひとりの役をちゃんと観てあげられたような気がします。
蜷川さんの舞台では、顔や身体、容姿に見られるあらゆる個性も
役者にとっては武器になり得るのだと今回も痛烈に感じました。
「民衆」が大切な要素になっている芝居ほど、たくさんの個性を
集めているように思います。

たくさんの役者さんをたくさんの役で観られて、
たくさんの魅力に出会えました。
そして、役者さんたちの「楽しい」がいっぱい伝わってくる舞台
だったと思います。
もういちど、みなさんに拍手!!

2週間後、また大阪で会いましょう~♪ 
もっともっとたくさんの楽しみ方ができそうな気がしています。

「表裏源内蛙合戦」 観劇 (2) 

2008-11-28 | 観る、聴く

時の経つのは早い! あれからもう1週間以上・・(汗)
でも、舞台の印象は鮮明に残っています。

言葉とモノと人が4時間、これでもかと溢れかえる舞台です。
全出演者が、それぞれ何役もこなしたり、衣装も持ち道具も頻繁に
とっかえひっかえ、大小の場面転換も数知れず。
それでいて、テンポが非常に良く、役者さんたちがみなのびのびと
演じているように見受けられました。
隅々までよく計算され、よく練られ、よく鍛えられた結果だと思われます。
脚本・演出の意図をしっかり叩き込まれた、
役者・裏方ひっくるめての「総力戦」が、みごとです。

この総力戦のエネルギーや面白さは、
夏に観たスーパー歌舞伎『ヤマトタケル』に大興奮したときと同じです。
手を変え品を変え、あんなこともこんなことも!
歌舞伎の可能性ってすっごーーーい!!と、目を見張りました。
再演が繰り返されていることもあり、実によくできていた。
計算されつくし、よく練られた総力戦はすばらしいものでした。
あのときの驚きと楽しさと美しさと感動は、わたしのなかで最高峰。
今回の舞台、幕開けからわかるように、蜷川さんは歌舞伎の手法を
数々取り入れています。歌舞伎風、も含めて。
歌舞伎はまだ観始めたばかりですが、
敢えてかたちで見せ尽くす美しさや面白さにとても惹かれます。
いわゆる「型」だけでなく、情緒、風情、自然をデフォルメする
独特の感性がすばらしい。
視覚からだけでも得られる情報量は圧倒的で絵巻物のよう。
これが日本の伝統的な手法でありながら、現代演劇に取り入れれば
実に独創的で斬新に映るものです。
なんとなく源内のイメージにぴったり。その一生を描くのに
うってつけの演出だったなと今さらながら思います。
しかし、こういう古典的なやり方には人の手が掛かるうえに、
なにしろ尋常でない登場人物の多さ、場転の多さ。
役者・裏方とも、舞台上はもとより、その裏でも想像以上の奮闘を
していることでしょうね。
蜷川組の底力とチームワークに拍手。

さて、この芝居の肝である表と裏の源内。
表と裏。これは人間の二面性、本音と建前とか、善と悪とか、
そういうものの表現ではないですね。
人間誰しも自分のなかに「もうひとりの自分」がいると思います。
常に冷静、客観的であるかは別として(いや、必ずしもそうである
とも思えない)いつも主と思われる自分にぴったり寄り添って、
やることなすこと、感じること考えることを、じーっと見つめては
極めて勝手におしゃべりする(笑)主と思われる自分に対し、
批評もするし文句もいう、一緒に喜んだり励ましたりもするし、
拗ねたり泣いていたりもする。
そして主たる自分はいつもそいつの声に耳を澄まし対話している。
そいつに従うこともあるし、頑として聞かないこともあるし、
ぐずぐず悩むこともあれば、肩を組んで歩きたくなるようなことも。
そんなもうひとりの自分って感じませんか。
わたしはすっごく感じるのだけど。
だから、この表と裏の源内のやりとりってものすごくリアルだなあと
思えてしかたないのです。
ひとりの人物を人間の二面性として単純にふたつに分けなかったことが
この芝居の面白さですね。井上さん、さすがです。

人の心というのは、自分ともうひとりの自分で成り立っている。
その対話があるからこそ、人間らしく、人間臭く生きていられるのでは
ないかな。
晩年の源内は不遇が重なり失意のうちに、だんだんもうひとりの
自分との健全な対話ができなくなってきた、敵意さえ抱く。
自分ともうひとりの自分とのバランスを大きく崩したとき、
最も身近で不可分な存在であるだけに、相容れない苦しみや恐怖は
計り知れないものがあるように思われます。
そうして人は精神を病んでいくのかもしれません。
苦しみ果てた表の源内が、とうとう裏の源内を斬ります。
このとき、源内は、表の源内も死んだのだと思いました。
肉体は生きていても、源内の精神は死んでしまったのでしょう。
狂える屍となり、やがて虚無のうちにその肉体も滅びました。
人として、とても哀れで悲しい最期に見えました。

裏の源内が、ぽつり呟きながら幕を引いていきます。
「なにも死ぬことはねえじゃねえか・・」

表の源内はどう答るのでしょうか。
「そうだよな、死ぬこたあなかったよな」と苦笑しているか、
「そうするしかなかった」と力なくこぼすのか、
はたまた「おめえのせいだよ」とうそぶいているか。
いずれにせよ、あの世でまた表と裏が対話を始めていたらいいなと
思いました。


あ~~、また役者さんに触れられずに締めてしまいました。
でも、そのくらい、役者さんをどうこう言うより先に、
作品、演出そのものが面白かった、興味深かったという印象です。
たぶん、、続くっ。(それでもやっぱり役者編、書かなきゃね、笑)

「表裏源内蛙合戦」 観劇 (1) 

2008-11-24 | 観る、聴く

大阪、あるんですけどね、、行っちゃいました♪
コクーンって、一度観てみたかったんだもの。
夏に初めて体験したパルコ劇場に同じく、ここもいいなあ!
名古屋にできる新しい劇場もこんなふうだといいな。
さて、その初のコクーンで初の蜷川さん×上川さん。うふふ♪
しばらく試験モードで極力考えないようにしてきたけれど、
この日ばかりは朝から「源内、ゲンナイ、げんない~~」
観劇自体も2ヶ月ぶり。
なんだか、ものすごく嬉しい(笑)
そんな気もちを表すかのように、この日の天気はすばらしい快晴!
東京の高い空も真っ青! ・・寒かったけど。

「表裏源内蛙合戦」
11月19日(水)12:30 Bunkamura シアターコクーン 1階D列
 作:井上ひさし 演出:蜷川幸雄 音楽:朝比奈尚行
 出演:上川隆也 勝村政信 高岡早紀 豊原功補 篠原ともえ
    高橋 努 大石継太 立石涼子 六平直政 ほか

楽しかった~! 4時間なんてあっという間。
そして、思いのほかズシンと来ました。
ここまで観にきて良かった~。
1ヵ月後の大阪は、ますます楽しみです。

やや下手(どこ行ってもわたしの定位置、笑)ですが、
ここは舞台がそれほど大きくないので全然平気。
D列=6列目だから舞台が近い。
役者さんの表情も、舞台全体もよ~く観えました。

蜷川さんの舞台はいつも劇場に入ったそのときからドキドキしますが、
今回はそのどれよりも意表をつかれた感じ。
なるほど・・これまでにないとんでもないモノを観せてくれそう。
ドキドキ・・わくわく・・ きゃ!この感じが嬉しい!
そしてそのとおり、これまでにない幕開け。
今回は戯曲を読んであるのでわかっていたことですが、
目の当たりにすると、やっぱり「おおっ!」てなりますね(笑)
これからの方、お楽しみに。
大阪ではもちろん変わるでしょうし。

やっぱり蜷川さん、凄いです。
井上ひさしさんのあの本を、あの世界を、
余すところなくかたちにしてみせた。ものすごいエネルギー!
長い、エロい、グロい、やりすぎ・・
そんな評価が出るのはお見通し。むしろ、してやったりなのでは?
だってそういう芝居なんだもの。
平和な時代に溢れる物、もの、モノ・・
そしていつの世も人の心の底に渦巻く愛欲、金銭欲、出世欲・・
平和ボケ日本人は、内も外も大洪水!(でもどこか枯れてる!)
芝居も「過剰」だけど、実際この社会は「過剰」なんですよ。
過剰な社会のなかで、
「美しい明日を みんなは持っているか
 美しい明日を 心のどこかに」(劇中歌より)
それを問われていると思います、ひとりひとりが。
美しい明日。自分の未来、みんなの未来。
そのためにどう生きるか。
溺れていないか。流されていないか。
自ら感じ、自ら考え、自ら動くことを忘れてはいけない。
それが「ほんとうに生きる」こと。

今回の舞台にも鏡が設えてあって、折に触れ客席を映し出します。
蜷川さんは鏡をよく使います。
その意図は作品によっていろいろだと思われますが、
わたしが実際に観た作品のなかでは
「コリオレイナス」「カリギュラ」の鏡は特に印象的で、
これらの作品において鏡は、まさに観客を映す鏡であり、
「あなたたちはどうなんですか?」と
突きつけられたような気もちがしました。
力とか風評だとかに流されがちな大衆のひとりとして。
今回の鏡も、同じ意図だと思われます。

言葉の大洪水のなかでも、
印象的な台詞がいくつか心に留まりました。
なかでもこれが思いのほかズシリときました。
戯曲を読んだときには気づかなかった自分って・・(笑)
錦絵誕生の場、源内に対して(司馬)江漢が言った台詞です。

「新しいことはそんなにいいことですか。」
「新しいものは必ず古くなる。だからあなたは休む間もなく
 次から次へと新しいものを求めてさまよい歩く。・・・」

新しいモノが次から次へと出ては、
モノがどんどん捨てられ忘れ去られてゆく。
人に対してさえ、そう思えなくもない。
現代社会の、最も嫌いな風潮のひとつです。
江漢の言葉は、井上さん自身の心情かなと思います。
60~70年代、高度成長を遂げた日本の有り様を、
井上さんはすでに憂いの目で見つめていたのではないでしょうか。

源内って、現代日本そのものだったりするのかな、と思えました。
ものすごい潜在能力があるわけですよ。
うまく使えば、きっともっと多くの幸せを広められるはずの。
でも、それを上手く活かしていくことができない。
新しいものを次から次へと生み出すことばかり。
そして大衆も、源内の時代のそれと同じ。
その力を、そして自らの力を、
真に理解しない、使おうとしない、大切にしない。
おおかた、目先の欲や悦楽ばかりに利用する。
源内言うところの「下らない見世物、下司な好奇心」
溢れんばかりの能力は、
その多くが埋もれ、あるいは廃れ、あるいは外へ流れる。
そしていつか、、源内のように狂って死んでゆく?!

パンフのなかで、井上さんがこう語っています。
「愛国者には二色ある。理由もなく日本はえらいとただ威張るだけの
 愛国者と、このままでは日本はえらいことになると心配する愛国者。
 むろん源内先生は、後者のほうである。」
井上さんももちろん後者。
源内が愛したように、井上さんも当時の日本を愛し、ゆえに憂いて、
この源内一代記を書き上げたのではと思いました。
残念ながら、日本はその当時よりさらに悪い方向へと流れています。
今回の上演、蜷川幸雄・井上ひさしという大御所タッグが、
「現代日本にモノ申す!」といったところでしょうか(笑)

舞台から感じたとてつもないエネルギーの大きさは、
この作品に込められた熱い思いゆえに違いない。
その熱い思いを汲み、それを舞台上で豊かに表現してくれた
役者と蜷川組の功績については、またあらためて。