聴覚障害者制度改革推進中央本部ブログ

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(2010年4月16日付で、名称を変更いたしました)

【報告】いつでも、どこでも、コミュニケーションと生活支援の保障を!(厚生労働省講演2)

2005年12月28日 | 報告
4.聴覚障害者情報提供施設の位置づけ
 各市町村におけるコミュニケーション支援事業を言わばバックアップするという意味で、各都道府県でのお立場での情報提供施設の役割が今まで以上に重視されてくると考えています。そういう意味で、この付帯決議の中でも改めて各都道府県におきます聴覚障害者情報提供施設の設置の推進がうたわれておりますし、また情報提供サービスとしての新たなるネットワーク構築などもIT技術を活用した情報提供施設の機能として求められています。今後そういうことも含め市町村等の情報支援事業の具体的な担い手ということも含めて、運営の充実に努めていきたいと考えています。

5.質問事項に対する説明
 説明が長くなりましたが、集会にあたって、4項目について説明するよう提起頂いたものがあります。皆様方の資料の3ページです。
 まず1番目は、先ほども少し触れましたけれども、地域生活支援事業のサービス利用の際の利用者負担の問題について、各都道府県、市町村へ指導する件。コミュニケーション支援事業につきましては各都道府県、市町村におかれても、その重要性や聴覚障害者の実態等を踏まえ、最終的には市町村等の判断で決定されますが、これまでと同様、無料扱いになることも期待されます。私どもとしてはガイドラインを示すことを考えていますが、利用者負担の問題について、今のところは、市町村の判断にゆだねたいと考えていますので、ガイドラインに盛り込むことは考えていません。今後の事業全体の更なる検討、あるいは関係者のご意見を踏まえ検討を進めていきたいと思います。
 ただここでご注意頂きたいのは、指導という言葉を皆さんお使いですけれども、地方分権の考え方においては、国と都道府県、市町村、地方自治体というのは従来の上下関係ではありません。一つの福祉サービスなら福祉サービスを推進していく上での重要なパートナーという位置付けであり、現在は、指導ということは権限上出来ないので、言葉を変えるなら、技術的助言という言葉で代表されるように、国としての考え方を示し、それを受けて各自治体がその責任・裁量においてご判断頂くこととなっております。国が都道府県、市町村、自治体に対して指導するというのは、これまでと違うことを理解して頂きたいのです。
 2番目のご質問について、今後のコミュニケーション支援事業の省令での規定についてです。コミュニケーション支援事業に限らず地域生活支援事業にかかる政令・省令等については現在検討中です。これまでの身体障害者福祉法との整合性で言うと、はっきりしておりますのはコミュニケーション支援事業の手話通訳等で規定する省令事項は、要約筆記事業がまずもって掲げられると考えています。それ以外の事業については現在検討中ですが、おそらくガイドラインの中で示すことになると思います。
 3番目のご質問の中で都道府県の広域事業実施についての心配が提起されていますが、これについては自立支援法の地域生活支援事業の実施体制としては、コミュニケーション支援事業について、まず市町村が責任を持って実施することが法律の上においても、大原則です。ただし何らかの理由により市町村での実施体制がともなわない場合には、都道府県が代わって実施することが出来るとの規定があります。コミュニケーション支援事業の重要性について各自治体で、これまでの実績等を踏まえて十分認識してもらっていると思います。指導という場面ではありませんが、各地域でのニーズに応じたコミュニケ-ションサービスが適切に実施されるよう助言をしていきたいと考えています。
 4番目のご質問は、障害程度区分認定、あるいはモニタリング等の支給管理に関する部分のコミュニケーション支援について、予算を確保するのかどうかということです。この問題は根本的な問題と考えていますが、現段階では、従来の派遣事業、設置事業を円滑にならしめるための予算の確保、地域生活支援事業としての予算確保を第一に考えているので、このところに当面は全力をあげて取り組んでいきたいと考えております。そもそも論として、いろんな分野でコミュニケーション支援の態勢の確保は大変重要かと認識しています。国会においても皆さんのご要請等を受けて、国会の責任と負担において手話通訳者の配置が実現致しました。こうしたことを契機として様々な分野で、それぞれのサービスを提供する事業体が自治体は当然のこと、様々な事業体がコミュニケーション支援の態勢を確保し、社会全体に普及していくということが大事と思っています。今後の制度施行の過程で改めて取り組んでいきたいと考えています。
時間の関係上以上で終わり、更にご質問を受ける中で補足的に説明したいと思います。
 どうぞよろしくお願い致します。ご静聴ありがとうございました。

6.質疑応答
(司会)厚生労働省からの報告頂きました。今度は皆様からのご質問をお受けしたいと思います。ご質問の方は県名とご自分のお名前をおっしゃってからご質問お願いします。

(兵庫・山下)手話通訳者の養成についてです。今回、都道府県事業の中に入っておりますが、大都市特例がなくなっています。今まで市でやっていた養成の部分がどうなるのか凄く不安に思っております。

(田村)先ほどお示ししました事業の構築においては、都道府県事業として養成研修事業を引き続き、充実強化をしていこうと考えています。政令指定都市等で実施して頂いている事業については、まず法律上の制度の建前から申し上げると、人材養成というのは都道府県域において一定の水準を確保した担い手の方たちを、各市町村でお仕事をして頂く為に必要な数を確保して頂くことが大原則になるわけです。しかしそうは言いましても大都市、政令指定都市でこれまでやって頂いた養成事業について、自立支援法に基づき再構築するにあたって、私どもとしましては、すぐ止めて頂く必要がありますと申し上げるつもりはございません。都道府県、及び政令指定都市の範囲で今後のコミュニケーション支援サービスの提供、あるいは利用を考えて頂いて、その上で継続的に政令指定都市の方で実施して頂くことが有効であるということであれば、私どもとしてはニーズに対応する体制の整備という意味においては大事なことではないかと考えています。国としての補助についてどうするのかということは、その他の事業の更に必要な事業として補助の道があるかどうかを検討していきたいと思います。要は、先ほど申し上げました計画作りということもありますので、コミュニケーション支援の利用を適切に実施するための、それぞれの地域におけるニーズはいったいどのへんにあるのか、量的にもどうなのか、いろんな生活分野でどのへんにあるのかということを、これを機会に各都道府県、政令指定都市、中核市、その他の市町村において、ご議論して頂いた上で、その地域において効率的・効果的な事業体制を整えて頂き選択して頂きたいのです。そのニーズをきちっと共通認識としてもって頂ければ、養成研修事業を経てその直接的な担い手をその地域内において、どのように確保していくのかということに繋がるのではないでしょうか。それを可能ならしめる為の養成研修事業の取り組みについて、これまでの政令指定都市のお立場で果してきた役割を踏まえ、改めてどういう体制で取り組んでいくのか、一定の方向性を示して頂くことを私どもは、ぜひ期待しております。
   
(東京・中島)二つお伺いしたいことがあります。一つは先ほどコミュニケーション支援事業の担い手として手話通訳者のご説明がありまして、その中に「手話通訳士」を含むと、「士」以外の今の現在の奉仕員に関しても一定のレベルを確保することが必要だとのお話があったと思います。その一定のレベルというのは全国的に何かを決めるご予定があるのか、あるいは市町村にお任せするのか、そのあたり具体的な方向があるのかということと、もう一つ、予算配分について。「統合補助金であるから個別事業の補助金の所要額に基づく配分は行わない」と言われながら、先ほどから細かい説明があるのですが、その統合補助金できた場合、その個別支援事業の中のどの部分をやるのかは、まったく市町村任せになるのか?ということと、もう一つお金のことだが人口に基づく、全国一律の基準、更に、現在の事業実施水準を反映した基準による配分で、現在の水準を維持する為にある程度考慮すると伺ったが、そうすると現在ない所に対しては不利なのではないかと。新しい事業を作ることを促進する為には、今、手話通訳派遣事業がない所が起こせるような支援がもっと必要ではないかと個人的に思うが、このあたりをどう加味されているか説明お願いします。

(田村)一番目のご質問でございますが、担い手としての手話通訳者の範疇及びそのレベルの問題かと思います。特に改めてこれまで奉仕員というお立場でやってきて頂いた方の水準・レベルの問題について、国として一定レベルを決めていくのかということを考えているのかということでございます。これは、これまで皆さんからのいろんなご意見を頂戴しており、また要約筆記でも同じ問題があるわけです。私どもと致しましては、先ほど申し上げました通り、公的福祉サービスの担い手は、社会的にもきちんと明確になったレベル・水準をお持ちの方に担って頂くことが今後どうしても必要じゃないかと考えるわけです。そういう意味でボランティア的な要素の強い奉仕員という言葉自体を使うこともやめたいのです。そうしますと、これまで奉仕員として担って頂いた方々が新たな制度の枠組みで、手話通訳者の範疇に属する担い手としてサービス提供をして頂くことに関しては基本的には、何らかの社会的認知を受けた一定の方向性を提示する必要があると考えています。それを経過措置の中で担い手としての力量・技術があるかどうかの認定をする「認定事業」として統一的にやるかどうかということになるわけですが、要約筆記の問題もございますので、これについては更なる協議・検討を進めていきたいと思います。
 予算配分については、統合補助金として総体として補助をさせて頂くことになりますがここの意味するところは、各地方自治体(都道府県・市町村)が、先ほど掲げさせて頂いたような事業を満遍なくすべて実施するということが理想ですが、現在の様々な状況によって幾つかの事業を選択して実施する場面もあると考えます。これは社会参加のメニュー事業と同様、地域におけるニーズをふまえて、どの部分を優先的に行っていくかについては、各地方自治体のご判断にお任せしたいと思っているのです。その結果、それぞれの各地域において予算的に事業規模がこれくらいであるという言わば総合計が出てきますので、その総合計に対して、人口に基づいた指標、あるいは事業実績をもちいた指標で、総体的な総額として配分、補助をさせて頂くというふうにしていきたいのです。
 そういう意味で、掲げております各事業の選択は、都道府県・市町村のご判断にお任せをするということです。
 それに関連し今、未実施の所の自治体における事業取り組みにインセンティブを働かせる意味での支援も必要かということです。私どもの立場で言いますと、先ほど申し上げた各自治体が改めて各地域のニーズを踏まえた上で、こういう事業をやりますと明確にしていただいた上で、それに必要な事業費はこれだけになるので、これに対応する国の補助金を交付して頂くという位置付けにならざるをえないので、まずは、これまで未実施の自治体において、まず利用者のニーズを踏まえ、あるいは各自治体における社会資源の整備状況等を踏まえた上で、事業を実施するか否か、実施する際にはどういった体制を確保するのか、それに要する費用はどうなのかを、まずもって明確にして頂きたい。これを是非お願いしたいと考え、その上で国としての補助配分が決まるということです。

(鹿児島・山口)2点ご質問したい点があります。1点目、コミュニケーション保障について。今まで国会のいろんな委員会でも、聞く権利、知る権利、コミュニケ-ション保障は生きる為の保障であるという議論があった。福祉の範疇ではなく、言語的な取り組みが必要ではないかと思いますし、憲法25条に、最低の保障をすべきという所があり、言語的な考え方であると私は思っています。それに対しての厚生労働省の考え方を示して頂きたい。
 2点目、先ほど都道府県に対して指導は出来ない代わりにパートナーとしてというお答えがあったと思いますが、現実としては都道府県また市町村におきまして職員のレベルは、まだまだです。厚生労働省のレベルには、まだまだ追いついておりません。そういう所が、ほとんどだと思います。それについて、どんなふうに対応していかれるのか、またガイドラインの位置付けをはっきりして頂きたいと思っています。

(田村)手話に関しての言語的な考え方について、いったい貴方はどう考えているのか?というご質問かと思いますが、再三申し上げています通り、私どもの立場としましては、手話を初めとするコミュニケーション支援は、保障的な意味において大変重要だと考えています。そういう意味では、この日本という社会、世界のどの社会でもそうだと思いますが、きちっとしたコミュニケーション保障の支援体制が、それぞれの分野における、各事業体の責任において確保されることが大変重要かと思っています。その方向性を可能ならしめるよう考えていきたいと思っているところです。現在、福祉サービスという位置付けで派遣事業・設置事業の対応をしていますが、実は利用者とは何かということを考えると、私は直接的に聴覚に障害をお持ちの方は当然のことながら、国会を初めとして様々な社会サービスを提供する事業体全てが、場合によっては利用者というふうに考えても、おかしくないのではないかと考えます。ただ、その際にかかるコスト、費用をどういう形で負担するかは別問題で、福祉サービスという位置付けで国民的合意を受けたものに対して公費が投入されて皆で支え合うという位置づけになるわけです。その他の様々な生活分野でのコミュニケーション保障の体制確保に対する費用は、それとは違う形でまかなわれるべきものになるであろう、これをどういう形で進めていくかということになります。こういった考え方を持ちますと、その担い手は、もっともっと今以上に高いレベルをも持った方たちが相当程度必要になってくるであろうと考えているので、その確保のためには、どういう方策をどういう費用負担に基づいてやっていくのかということを考えていかなければいけないと考えています。そういう意味では私自身は、正におっしゃる通り基本的な人権確保の一つのあり方と思っているので、それを社会的に広めていく、これまでの福祉サービスの実績を踏まえて、これまでの考え方で方向修正を行なうことが出来れば、今以上に良い社会状況になると考えるのです。
 2番目にガイドラインの意味する所は何かについて。これは国として、事業実施にあたっては、こういうことに留意し、こういうところをきちっと押さえて事業実施して頂きたいという骨の部分を示すという意味合いです。国と地方との行政権限においては、技術的助言という言葉に代表される権限で整理されているので、そういう意味でのガイドラインという名称を用いているということです。そこに盛り込まれる内容、骨にふさわしい内容がどの程度のものなのかについては、他の様々なガイドラインの内容を考慮して、今回、考えていきたいと思っています。
要は、第一次的実施責任を持つのは、国ではないというわけではございませんが、三位一体という議論もあるわけで、地方分権の中においては地方自治体ということです。それを十分考えた上で私どもの立場としては骨になる部分をお示しする。そして、骨に改めて血を通わせ肉を付ける、そういう役割を地方自治体に担って頂くという行政体制・構造になっているということを十分ご理解頂き、再三申し上げている通り、各地域での体制作りに向けて、これまで以上に共同という考え方で議論を深めて頂くことを是非、お願いしたいのです。

(福井・吉田)ご質問が2点あります。先ほどのお話の中には含まれておりませんでしたが、コミュニケーション支援事業は、例えば身体障害者手帳を持っている人たちが対象なのか、障害者の程度区分に含まれている方、聴覚障害で、そこでコミュニケーションが難しいというところに該当するのか?それから2点目、設置事業について。現在、市町村、市役所それから県などに手話通訳の設置はなされていますが、今後、私たち聴覚障害者が福祉施設をスムーズに円滑に利用するためには、手話通訳が民間の施設にも設置される必要があると思うが、その為の補助金というものは含まれるのか、どのようにお考えなのか、以上お聞きしたいと思います。

(田村)手短にお答えするつもりなのですが、どうしても私の気持ちを込めて詳しく説明したいと思うものですから、時間を取ってしまいます。
1点目、地域生活支援事業の利用は、個別給付と違うので、今後、新たに明確にされる障害程度区分の認定に基づく制約を受けることは基本的には考えておりません。ただ、一つの利用の場面においては、障害程度区分の情報も含めて、市町村なら市町村あるいは委託を受けた事業体でその必要性を充分に確認して頂くことを考えています。
 2点目の設置事業の民間への普及と、それに対する補助のお話について。これは先ほど申し上げました通り、民間への普及については、私どもと皆さんが一緒になって声を大きくして進めていくべき問題だろうと考えます。ただ民間事業所への設置事業的な体制整備について公的給付、公的助成の対象にするかは議論のあるところです。
福祉サービスとして、設置事業等を自治体を中心としてすすめて頂くことは優先的に考えなければならない体制作りで、公的な助成を用いて更なる普及をはかりたいが、それぞれの分野に対して、言わば民間企業活動的な分野にまで税金を投入していくのは、今日のあるいは今後の社会状況の中で国民的合意をえられるかどうかは私は別問題だと考えています。そういう意味で、別の普及対策、人材の確保も含めて考えることは重要だと思っています。
まだまだ、ご質問あると思いますが、この場でご質問頂けなかった方に対しては事務局で取りまとめをして頂いて、この集会における質問事項という事で私どもの方にお寄せ頂ければ文書でご回答させて頂きます。今後こういう機会があれば私ども参りまして十分時間をとってご説明させて頂きたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い致します。ありがとうございました。

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