「８／16」「１／１」を喜ばないスポーツ界の連中とは？

（水原勇気が実在したら、むしろ活躍すればするほど、心根の卑しい人間から不当な攻撃を受けることだろう）

一昨年のアテネ五輪では16個の金メダル中８個、先日のトリノ五輪では金どころかメダルじたいが荒川静香の獲得したゴールドメダルただひとつ。いまやオリンピックにおいて女性アスリートの存在はまさに不可欠なものである。先日、野球とソフトボールの五輪競技除外問題で、「東京新聞」からコメントを求められた。まあ、私はもともと野球は別に五輪競技である必要はないと思っているし、MLBのみならず、NPBでもWADA（世界アンチドーピング機構）が求める厳しい禁止薬物規制基準を守れない、あるいは遵守する態勢すらできていない状態では、MLBが五輪に参加しても「メダル剥奪」の危険性が増すだけだろう。少なくともプロ、アマを含めた世界の野球界全体でステロイドなどの禁止薬物を完全に排除する規定が定められない限り、復帰申請そのものをIOCに出すべきでないと私は考えている。

そのあおりを受けた形で除外されたソフトボールはまったく気の毒だ。とりあえずWBCが始まり、アマチュアにもワールドカップやインターコンチネンタル大会など別の目標がある野球に対し、ソフトボールは何と言っても五輪が最高峰の大会だった。競技人口も多く、女性の団体競技としてはバレーボールやバスケットボールと並んで人気のスポーツでもある。 日本にしてみても、メダルに常に近い位置にある競技が除外されるのはダメージが大きいはずだが、実のところ、JOCやその実質的上部団体である体協（日本体育協会）、さらにはIOCにさえ、五輪をはじめとするスポーツの国際舞台で女性が華々しく活躍していることを本当に手放しで喜んでいる人間ばかりかと言えば、決してそうではない。そういう考えを持った人間が、「野球のついでに、女子競技であるソフトボールも除外してしまえ」と内心思って、除外に賛成票を投じた可能性は大いにあるだろう。

「女ごときが」「女のくせに」……そんな気持ちを生まれてから一度も抱いたことがないなどと、言うつもりは毛頭ない。しかし、食事が終わったあと、椅子を立てばすぐ目の前にあるキッチンシンクに自分が食べ終わった食器を運ぼうとさえしない亭主どもが依然としてあとを絶たないのは、明らかに家庭と学校の教育に問題があるだろう。 「誰のおかげでメシが食えてると思うんだ！」と女房・子供に威張り散らすオトコ、ああイヤだねえ。じゃあ、アンタは奥さんにも子供にも何もしてもらっていないと言うのか？　冗談じゃないよ。カミさんや子供がいるからこそ、労働へのモチベーションが生まれて、何とか道を踏み外さずにすむんじゃないのか？　でなきゃ、テメエらなんかすぐに飲む、打つ、買うの三拍子で、挙句の果てに勤務先や顧客の金を使い込んで刑務所暮らしだよ。

たとえば、プロ野球界に「野球狂の詩」の水原勇気どころか、イチローのスピードや松井秀喜の長打力、あるいは松坂大輔の豪速球に引けを取らない実力を持った女性選手が登場したとする。もちろん、たちまち日本を代表するヒロインとなって、海外にもその活躍が報道されるだろう。しかし一方で、スキャンダル雑誌やネットファシスト掲示板を中心に、すさまじい個人攻撃の嵐にさらされるに違いない。なにしろ、イチローにしても松井にしても、あるいは野茂英雄にしても、「横並び」を美風とする日本の一般的な価値観から突出した動きを見せる人間は、それがいかにポジティブなことであろうと、いや逆にポジティブな働きであるからこそ、それを心の底から嫌い、憎悪する心根の卑しい人間が実に多い。谷亮子にしたって荒川にしたって、どれだけ「金メダルを取ったがゆえの」攻撃にさらされてきたか。

さらに、彼女たちを取材する側のメディアにおいても、なかにはこんな人間がいるかもしれないことをよく皆さんには知っておいてもらいたい。かつて私の「友人だった」ある新聞関係者（現職かどうかは、もう絶交して20年以上になるので不明だが）は、欧州に取材に行った際、「アムステルダムで女を買った」とわれわれ友人との飲み会で、まるで「釣果」のごとく自慢してましたっけ。おいおい、海外で美女をナンパしたり恋人にする能力もなく、そのくせ煩悩だけは人一倍だったもんで、「金で解決」したことは自慢にならないだろうって（笑）。それにしても、そいつの取材対象だった女性アスリートたちは、彼のそんな実態を知っていたのだろうか？　

私は男女の「性差」なんてものは、子供を産む産まないの機能以外は、ほとんど存在しないと考えている。しかし、残念ながらそう思っていない人間が主流派に巣食っているのが、日本におけるスポーツ団体やメディアの実態なのである。