「互性循環世界像の成立 安藤昌益の全思想環系」 東條榮喜 著
本書は昌益の思想方面を集中的に、しかもその全分野を対象にして、その特徴と内在論理性を明らかにするべく、しかも整理された認識として締めすことを目標として纏められた。 これまでの昌益思想研究では、一部に昌益の原意からはなれて、著者の恣意的な解釈で昌益がまるで正反対の思想家であるかのように記述される、といった事態も起っている。
例えば一方に昌益を世界に先駆的な平等思想家として高く評価する研究者がいれば、それと正反対に昌益を差別思想家だと論断する研究者が現れたり、 昌益の社会思想に「自然世」への過度社会構想を認める狩野亨吉氏以来の見解を否定して、 昌益をユートピア思想家だと、論ずるなどの動向があった。
こうした極端な食い違いを正すには、何よりも原典を克明に読み、しかも著作全体を通じてその内在論理性をあきらかにすることが、 不可欠であり、そううすることによって、 多くの誤解や恣意的解釈を一つ一つなくして行くことが望ましい。 (「まえがき」)
発行所 東京都文京区本郷5-30-20 御茶の水書房 定価8500円+税