大林宣彦監督は、私の好きな監督の一人です。大林宣彦さんと言えば、ご自身の出身地である尾道を舞台に描いた「尾道三部作」(「転校生」「時をかける少女」「さびしんぼう」)が有名です。
その大林監督が「転校生」の舞台を長野市に変えてメガホンをとった作品があります。「転校生 さよなら あなた」(2007年)です。公開直前に映画のトレーラーを観て、長野市が舞台なら観てみたいと思っていた作品です。映画に登場する善光寺界隈の風景や権堂商店街は、学生時代から馴染みの場所だったからです。公開から4年が経ってしまいましたが、ようやくDVDで視聴することができました。
「転校生」の原作となった山中恒さんの「おれがあいつで あいつがおれで」を読んだのは中学生の頃だったでしょうか。小林聡美さん、尾美としのりさん主演の「転校生」も観ていたので、おおまかなあらすじは分かっているつもりでしたので、単なるリメイクだと思って視聴したのですが、原作や尾道が舞台だった「転校生」とは異なる展開に、画面に釘付けになってしまいました。単なるリメイクではなく大林監督の心がそこに込められている作品でした(DVDの特典映像でそれは明らかにされています)。久しぶりに「泣ける」映画に出会いました。
もちろん地元が舞台ですから、地理的な矛盾はいっぱいでてきたのですが(実は、それを書こうと思って購入した部分もあるのですが^^;)、そんなことどうでもいい~と思える作品でした。
と、言いつつ あら捜しを(^^;)
一美と一夫の家の位置関係など、書きたいことは山とあるのですが、あえて一つだけ。「さすが映画だなぁ」と思ったシーンです。
長野電鉄から降り立ったアケミ
尾道から一夫の彼女のアケミさんが長野にやってくるシーンです(上の写真)。周りの風景や長野市民病院がロケに使われていることを考えれば柳原駅でしょうか。
アケミが乗ってきた電車は長野行き。尾道から長野に来るにはありえない設定なのですが、このシーン、さすが映画だなぁと思った小道具があります。
長野電鉄を降りたアケミの後ろには行先表示の掲示があります。一番線は「善光寺下、長野方面」、二番線は「本郷、湯田中方面」です。現実には善光寺下駅と本郷駅の間には駅がありませんから、このような表示がありえるはずがありません。さらにこの写真をよくみると「しなのみわ」という駅名表示が見えます(漢字で書くと「信濃三輪」になるでしょうか―手前から二本目の柱)。架空の駅なんですが、地名としては善光寺下と本郷の間にあっても不思議はない駅名になっています。映画をみている観客がほとんど気にしないであろう細かいところまで造り込むなんて・・・。「あら捜し」マニアも脱帽です。
ちなみに、この電車、画面奥から駅に入線。画面手前へと消えていきます。左側通行の日本の鉄道ではありえないシーンです。写真の左手に停車する電車は画面手前から奥へ走っていくのが道理(仮にここが柳原駅でロケされたとすれば、写真の左手は湯田中方面で、画面手前から奥へ列車が走ります)。前後のシーンとの関わりではこうするしかなかったのでしょう。それでも違和感なく見られたのは、大林監督のカメラ・ワークのなす技なのでしょうか。
※写真は大林宣彦「転校生 さよなら あなた」より
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