花さそふ 嵐の庭の 雪ならで
ふりゆくものは わが身なりけり
入道前太政大臣
(訳)桜の花をさそって散らす、激しい風が吹く庭。そこに降るのは雪ではなく、古びてゆく私自身のことなのだ。
入道前太政大臣は官職名であって、入道とは出家のことを指し実の名は西園寺公経。この人が京都東山に建てた邸をのちの足利義満が譲り受け別荘としたのが金閣寺です。小倉百人一首の撰者藤原定家の従弟に当たります。
源頼朝の姪を妻にしたことか承久の乱では鎌倉方に味方し、その後太政大臣まで上り詰めます。
権力も財力も手にしながら、老いゆくわが身の行く末を愁いた歌と伝わります。
富の象徴のような桜の花吹雪に打たれながら、自らの老いを誰よりも憂いたことでしょう。
桜に纏わる表現はたくさんあるそうです。はかなく散るは『花吹雪』水面に映るは『花鏡』川に流るるは『花筏』
美しく咲くころに空が曇れば『花曇り』
花もわが身も儚いからこそ美しく、凛とした生きざまでありたいと思います。
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