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春日部郷は下総国葛飾郡下河辺荘に属した中世の郷で、戦国時代には「粕壁」「糟ケ辺」とも表し、鎌倉時代には紀氏系春日部氏が拠点とした。延元元年(1336)後醍醐天皇は「下河辺荘内春日部郷地頭職」を春日部滝口左衛尉重行に宛がっている。
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当社はこの春日部郷の中心地であった浜川戸に鎮座し、境内の北東側の高台は春日部治部少輔時賢の館跡と伝わり、周辺の発掘調査で平安から鎌倉時代にかけての住居跡が発見され春日部氏一族の遺跡として考えられている(浜川戸遺跡)
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「武州春日部八幡宮縁起」によれば新田義貞の家臣春日部治部少輔時賢は日頃より鶴岡八幡宮を厚く信仰し弓馬の武運を祈っていた。元弘元年(1331)鶴岡八幡宮に参篭して祈願していたところ、満願の夜明けに不思議な容姿の老翁が現れて「汝の城周辺に清浄な地があるので、彼の地に鎮座して繁栄を守るであろう。よってその土地を示す霊木を生やす」と教示した。
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また鶴岡八幡宮の御神木の銀杏が社前に飛んできて一夜のうちに繁茂して大樹になったとも伝わる。それが現在の社殿前に生える御神木だという。
このように当社は春日部治部少輔時賢が元弘元年ごろ鎌倉鶴岡八幡宮を勧請し以来春日部郷の総鎮守となっている。本殿裏には桃山時代の建造とされる一間社流造の旧本殿があったが(市指定文化財)
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境内地全体が中川低地の河畔砂丘群となっている。これは榛名山、浅間山などの火山灰が由来する大量の砂が平安から室町時代ころにかけて強い季節風によって利根川の旧河川沿いに吹き溜められた内陸性の砂丘である。(埼玉県天然記念物)
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参道入り口には「都鳥の碑」が立っている。在原業平が武蔵国と下総国との境である隅田川の渡しで詠んだ句であり
名にしおはば いざ言問はん都鳥 わが思う人は ありやなしや
という名句である。
船の船頭が「早く船に乗らないと日が暮れる」というので船には乗ったが、わびしい気持ちになって都に思う人がいなくもないことを思い出す。そこで都では見たことがない鳥を目にしたので船頭に尋ねると「みやこ鳥」というのだ。都を離れた遠い旅路での内面を浮かび上がらせる歌たとして業平の代表作とも伝えられる。
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春日部の総鎮守を参拝するにあたり美しい御神木の紅葉を目の当たりにし、御神徳を一層感じられる旅路であった。
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