皿尾城の空の下

久伊豆大雷神社。勧請八百年を超える忍領乾の守護神。現在の宮司で二十三代目。郷土史や日常生活を綴っています。

キヌヒカリの里

2021-10-16 00:20:17 | 食べることは生きること

十月も半ばを過ぎ、稲の刈り入れが進んでいる。台風の襲来もなく、順調のようだ。もちろん実際の農家にすれば出来映え、価格等気を揉みながら最後の脱穀出荷まで苦労を重ねていることと思う。我が家も四半世紀前まで兼業であっても稲作農家であって、収穫の喜びと苦労を味わって来た。残念ながら機械の維持継続断念を理由に廃業し、耕作委託をしながら農地を管理している。

委託先農家に作付してもらっている銘柄はキヌヒカリ。埼玉特有の米だ。あまりスーパーなどでは出回っていない。昭和の晩年より埼玉では多くの田んぼで作付が行われた品種だ。

平成28年度の統計によれば、全国作付面積では第七位となっている(作付比率2.5%)
米の銘柄は数多く存在し、年々交配も進み、新たな品種も生まれているが、圧倒的に多いのはやはりコシヒカリで作付比率36%.。続いてひとめぼれで9.6%.ヒノヒカリ、あきたこまちと続いて上位4銘柄で作付面積の6割以上を占めている。

昭和63年(1988)に農林290号キヌヒカリと命名され、もともとは関東地方で栽培されるために交配された北陸の品種で、一番の特徴は倒伏しないよう、稲の草丈が短いことだという。味はコシヒカリに近いが甘味や粘りが弱く、さっぱりしている。現在では主に近畿地方で栽培が盛んであり(兵庫・滋賀)、関東では埼玉が産地として知られる。北埼玉の米所では北川辺のコシヒカリが有名だが、行田地区ではキヌヒカリが多く作られる。県の推奨米として「彩のかがやき」の栽培も進んだが、当地ではキヌヒカリの方が人気があるようだ。北関東特有の空っ風に耐えられるよう、丈が短い品種を選んだというところに非常に当時の人たちの思いを感じる。収穫時に倒れてしまった稲を刈り入れるのは大変な思いをするのだろう。

令和大嘗祭に於いては京都南丹市のキヌヒカリが神撰として選ばれている。
絹のようなひかり輝く米
甘味や粘りは控えめで、他の食材との調和がとりやすく、いずれのおかずとも相性が良い米。
北埼玉の歴史や暮らす人たちの人柄が滲むようなキヌヒカリ。こうした銘柄が収穫されることを神の恵みとして感謝し、当社の神嘗祭に奉納している。
コメント (1)
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