散歩がてら近くの古本屋さんをよく利用するのだが、先日寄ったらなんと8月いっぱいで閉店とのこと。この地に引っ越ししてから20年近くお世話になった本屋さんだけになんとも残念。本が売れなくなり、コロナの影響そして物価高。厳しい時代である。
ささやかな本屋さんへのお礼にでもと本を選ぶ。選んだのは糸川英夫氏の「日本創成論」(講談社 1990)。先月だろうか国分寺に用事があって行ったときに早稲田実業の前に糸川英夫さんの記念碑を見たのが遠因だったかもしれない。そして、パラパラと目次を読んで買うことを決めた。第一章がナルキッソスの話(人類の歴史は自己愛の問題の歴史ともいえる)、第二章が科学者の話(ハイゼンベルクをはじめ世界的な科学者の寄っているもの、理系のケンブリッジ大学の詳細)、第三章が日本に必要な第3のポイントについて(これは哲学というか宗教というかそういう領域)・・・最後は拝金主義との決別であった。30年前のわたしと言えば、きっと同じように目次を読んでも絶対買わない拝金主義者であった。そして今の世の中は30年前には想像もできない状態。バブルは弾け、コロナやウクライナ紛争で大変な時代。若者の自殺者がこんなに多い国は世界にあるのだろうか。読んでみると。そんな時代の処方箋がすでに30年前に書かれていたようだった。根源的なことを考えることの大事さというのだろうか。甘えの構造で思考停止するのは・・・
ところで、この数週間私は縄文時代の土偶。子抱き土偶を中心にいろいろ思索をしてきた。縄文時代は平均寿命が30歳程度という生きるのが大変な時代。この時代にハイヌヴェレ型の宗教があったようだ。日本ではオオゲツヒメとかウケモチノカミで有名。日本ではどういうわけか精霊信仰のように捉えられている。そこでエリアーデ世界宗教辞典を引いて調べてみると、これは先史宗教の項目ではなく密儀宗教として扱われていた。・・・神の殺害は、原初的時間から歴史的時間への移行を表し、死、植物の摂取、さらに男女両性によって子供をつくる必要性によって歴史的時間が特徴づけられる。犠牲となる神は「最初の死者」であり、この神はあらゆる有益な植物と月に変身する。・・・(エリアーデ世界宗教辞典 ミルチャ・エリアーデ ヨアン・P・クリアーノ 奥山倫明訳 せりか書房 1997 92-93ページより)
人は何故、生命をいただき生きるのか?これは今でも大事な哲学的な問いかけだが、現代ではそんなWhyを発する人はほとんどなくテレビを見ればおいしいものを食べる番組が実に多い(私も見てしまうが)。しかし、5000年前などの日本列島ではこうした問いかけによる祭儀が何百年も行われてきたのだ。わたしたちの祖先は今と違って哲学的だったのである。それゆえに生き抜いたのだろう。糸川英夫さん、現代日本を嘆くことはないかもしれない、強烈な哲学のDNAが我々に残されてる。
縄文時代の子抱き土偶についてAMORにも投稿しました。リンクはこちら
縄文世界を感じるとき② 9/10
「縄文小説 森と海と月 ~五千年前の祖先の愛と魂~」
縄文中期の関東・中部地方を中心にした愛と魂の物語です。
入手方法
1.紙の本の入手については・・・
四ツ谷サンパウロさんへ 定価(1,500円+税)送料別。
電話:03-3357-8642(書籍・視聴覚)
住所:〒160-0004 東京都新宿区四谷1-2
なお、国会図書館、八王子市図書館でも閲覧できます。
2.電子書籍版はアマゾンさんで、1000円で購入できますが、
Kindle unlimitedなどの特典で無料でも読めます。
森裕行