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きんもくせい。

2013-10-04 16:05:40 | なごみもの。


それはある日突然はじまるのです。


「甘くて歯が痛くなりそう」


オリーブに連載されていて高校生のときに読んだ山田詠美さんの小説、
『放課後の音符(キイノート)』のなかに出てきた特に思い出もなにもない台詞を、
その香りのはじまりに毎回心のなかでつぶやく。


朝はなんの香りもしなかったのに、夜、仕事からの帰り道に突然香ってくるのです。


それは桜よりもひっそりとしていて、桜よりも儚くて、桜よりも甘い、小さな蜜柑色の花の香り。


唐突に香り、雨上がりのひとときむせかえるように強烈になり、
それはすぐに消え、あっという間に忘れられてしまう。



    金もくせいの匂いがする
    甘くて歯が痛くなりそう
    秋には恋に落ちないって決めていたけどもう先に歯が痛い
    金もくせいを食べたの?
    金もくせいも食べたの
    だから 歯の痛みにはキス



甘くて歯が痛くなりそう。




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