貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

スリーピングビューティ・ターコイズ

2023-04-02 10:51:33 | 単品

トルコ石。英語風表記の原則でいくとターコイズなんだけどやっぱトルコ石。「せき」じゃなくて「いし」。「いし」だけど岩石ではなくて鉱物。トルコでは採れない。ややこし。(また長々しい予感w)

CuAl6(PO4)4(OH)8・4H2O。リン酸塩含水鉱物。生成過程は不明で、銅の二次鉱物からできる「三次」鉱物っぽい。大きな結晶はほとんどない。
ちなみに銅のリン酸塩鉱物には、リベテナイト(Libethenite 燐銅鉱 Cu2(PO4)(OH))、ベゼリアイト(Veszelyite ベゼリ石 (Cu,Zn)3(PO4)(OH)3・2H2O)がある。どちらもレアですな。リン酸塩鉱物には美しいものがたくさんあるけど、銅は少数派。

正直、あんまり好きじゃなかった。昔からあったけどちょっと安っぽい感じで。
カミさんの話だと、
「昔、若い女子が買えるアクセサリーは、トルコ石と珊瑚くらいであった。ダイヤ・ルビーなどは高く、オパールやガーネットは地味。ラピスラズリが出回りだした時は驚いたものである。」(ずいぶん硬い文体だな)
ま、すいぶん昔の話。どのくらい昔かは内緒。(そうしておきなさい)
確かに男性用でもトルコ石のアクセサリーはあった気がする。後はブラックオニキス。
今みたいに安くてきれいなルースが溢れているわけではなかった。
そんな具合なので、トルコ石は古くさいイメージ。

その後、アリゾナの「スリーピング・ビューティ」という有名鉱山産のなかなか美しそうなものをあちこちで見掛けたけど、古いイメージのせいで食指は動かなかった。
ところが過日、Cute Stone さんで、えらく軽やかな色のものが割と安く出た。「まあやっぱりトルコ石も一度ちゃんと味わうのがよいのではないか」などと思ってポチっ。

無研磨、無処理。なのでマットな質感。それがとてもいい。なんか石ではない不思議なものを見ているような不思議な感覚になる。

トルコ石は多孔質で汚れやすいのでたいていワックス処理をされる。また樹脂で固める「スタビライゼーション」処理も多いらしい。そういった処理をすると、ピカピカになるけれど色は濃くなる。へたをすると何となく安っぽくなる。
これが本来のトルコ石の美しさなのでしょう。驚きでした。

     *     *     *

トルコ石は古来、様々な文明で装飾に用いられてきた。で、どうも掘り尽くした感じで、ハウライト(Ca2B5SiO9(OH)5)やマグネサイト(菱苦土石 MgCO3)を着色した代用品が出回っている。ハウライト使用と書いてありながら、実はマグネサイトでしたというものもあるとか。ハウライトもマグネサイトも同じくらいの稀少性らしいのに、ハウライトと言うほうが受けがいいらしい。ハウライトは「白水牛石」としてアクセサリーにもなるとのこと。見たことはない。
これはミニ標本のマグネサイト。黒い模様がなかなかいい味出してる。

黒い模様が入っているのは、ハウライトもトルコ石も同じ。

トルコ石は大きな塊になりにくく、母岩の模様が出ることが多い。スリーピング・ビューティ産は模様なしのものがよく出るので人気だったとか。ただし、白い模様が入るものもあって、それはわざと黒く染めて出荷したともいう。国によっては青と黒のコントラストが評価されることもあるらしい。

このスリーピング・ビューティ鉱山、美しいトルコ石が出るから「眠れる森の美女」なのかと思ったらそうではない。山塊自体の名前で、横たわった女性のように見えるのでそう名付けられた。mindat から拝借。まあそう見えなくもない。

もともとは金鉱山だったが次第に枯渇して、1960年頃からは銅鉱山になり、それとともにトルコ石も採掘された。70年代頃からは「スリーピング・ビューティ・ターコイズ」は大人気となったが、これも次第に枯渇して2012年に閉山。だから絶産、とよく言われるけれど、再開されたという噂もある。不確か。天然石業界の「絶産もの」は鵜呑みにしてはいけない。ロードクロサイトのスイートホーム鉱山も再開されたらしいし。
スリーピング・ビューティ産は白っぽいものからかなり青が濃いものまであったけれど、売りは模様無しというところ。欧州ではそれが好まれたという。けれど模様無しだと偽物が作りやすいという弱点もある。有名石には偽造問題が付きものということですな。

ついでに記しておけば、トルコ石の青は「コマドリの卵の青=ロビンズエッグ・ブルー」と表現されるという。
コマドリって何じゃい。三味線持った「こまどり姉妹」は朧げに覚えている。(古っ)
ネットで見てみたら、確かに似ている。実に美しい青。ツグミやムクドリの卵も青いらしい。鳥や蝶などがしばしば見せる極彩色というのも、鉱物と同様、実に奇妙なものですね。


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