貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

ムーンストーンはややこしい

2022-01-16 12:51:50 | 単品

(一部追記しました。)(さらに再追記しました。)

ムーンストーンというのは、いろいろとややこしい。わけわからんので整理。

半透明(見た目に透明のこともある)の長石で、カボッションやビーズにした時に青や白の「揺れる光」(アデュラレッセンスと呼ぶ)を見せるものをそう呼ぶ。本来は加工石に対しての命名ね。光の筋ではないからキャッツアイではないけど、揺れ方は似ている。レンズ効果なのでしょう。

のだけれど、長石で内部からの輝きを見せるものを広くムーンストーンと呼ぶようになって、名称が混乱している。
って、また長石のややこしい話になってしまう。前に出したこれ。

長石には、カリウム・ナトリウム・カルシウムの3つの「要素」があって、その構成比でいろいろな名前がついている。ひどく厄介。
真正ムーンストーンは、カリウム長石とナトリウム長石の固溶体。鉱物学的にはサニディンないしアノーソクレース。「アルカリ長石」。
「揺れる光=アデュラレッセンス」は青から白。ナトリウム長石層が薄いと青になるらしい。
なお、スリランカ産の透明で青発色のものを「ロイヤルブルームーンストーン」、オーストリアのアデュラー地方で産するものを「アデュラリアンムーンストーン」(透明なカリウム長石アデュラリアとは別)と呼ぶことがある。(話をさらにややこしくするな)

夕星庵さんという石屋さんで美しそうなスリランカ産を見つけて購入。セール品だけどちょとお高め。「同一ロットソーティング済み。天然フェルスパー、ムーンストーン、スリランカ産」とのこと。



見た目は透明。少し白みがかったアデュラレッセンスとオレンジの輝きが出る。光の位置をずらしていくと、あらら、いろいろな輝きが揺れ動く。オーロラのよう。動画はこちら。(またツイッターをようつべ代わりにするw) いやあ、ものすごく美しい石です。

で、一般にムーンストーンの名で売られているものには、「真正ムーンストーン」でないものもある。

・レインボームーンストーン=ホワイトラブラドライト。ナトリウム長石とカルシウム長石の固溶体。アルカリ長石ではなく斜長石に属する。アンデシン・ラブラドライトという表記もあるみたい。ラブラドライトは普通不透明だけどこれは透明度が高い。青だけでなく虹色の光を見せる。なんで本来のムーンストーンは青で、こっちは虹色なのかは知らない。
★追記 アンデシン・ラブラドライトには、青やオレンジ1色だけというのもあるようです。

・タンザニア産など一部の「ブルームーンストーン」=ペリステライト。アルバイト(ナトリウム長石)とオリゴクレース(ナトリウムに少しカルシウム)の固溶体。斜長石。
よく売っている原石は表面に青いシラーが浮かぶもの。けど、ムーンストーンというのは、基本的には「揺れる光=アデュラレッセンス」を見せる「加工石」に対しての命名であって、表面に青いシラーを見せるペリステライトの原石をブルームーンストーンと呼ぶのは、ちょっとやりすぎではないか、という意見もある。
★追記 インド産の「ペリステライト版ムーンストーン」の加工品(ビーズやカボッション)には、青いアデュラレッセンスを見せるものもあるようです。これと本家アルカリ長石ものとが外見で区別できるのかどうかはわかりません。

改めて整理すると
①真正ムーンストーン:アルカリ長石。青ないし白のアデュラレッセンス。
②レインボームーンストーン:ホワイトラブラドライト。虹色の光
③タンザニア産ブルームーンストーン:ペリステライト。青いシラー。
がごちゃごちゃにムーンストーンと呼ばれるようになっている。みたい。
★追記 これにインド産ペリステライト・ムーンストーンが加わってますますわけわからなくなっていますね。

まあそれぞれに美しいのですけどね。

【再追記】(2023/1/29)
長石の分類はどうも混乱していて、鉱物学ではもう「端成分の比率による分類命名」はやめてしまっているようです。アルカリ長石は、成分比ではなく結晶形で「サニディン・オーソクレース・マイクロクリン」の3つ。ナトリウム+カルシウム側はすべて「斜長石=プラジオクレース」で細かい名前は使用しなくなっている。実際の標本もいちいち成分比を分析してるわけではないから、細かい名前は当てにならないことも多い。つまり、長石の分類はほとんど「アルカリ長石」と「斜長石」の2つだけでいいだろ、みたいな感じ。あんまり細かく厳密に考えるのは無駄なようです。


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