貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

デーナライト(デーナ石)

2024-06-03 19:10:34 | ややレア

硫黄鉱物の記事で、珪素と硫黄がくっついている11の稀有な鉱物で、「知ってるのはヘルヴィンだけ」と書いたけど、「Danalite=デーナ石」「Genthelvite=亜鉛ヘルビン」というのもネットで見たことがあったのを思い出した。
で、「この『デーナ』って、あの鉱物分類の人? へえ」と思ってネットを探ってみたら、なんとクリスタルワールド御徒町さんに国産の現物がある。クリオカさん(その略はないだろ)は時々とんでもないレアストーンを隠している。(隠してはいないだろw) 安くはないけど高くもないので、ポチっ。
山口県岩国市喜和田鉱山産。今は閉山した重晶石鉱山で江戸期には銅や錫も採れたらしい。


おやピカピカきれいじゃない、と思ったらそれは水晶で、本鉱は赤褐色の小さな粒とのこと。うわ、「本鉱」なんて言葉使っちゃった。ベテランみたいでかっこいい。(あほ)
小さいけどなかなかいい色。一応ベリル鉱物ですから。

Danalite、Be3Fe2+4(SiO4)3S。テクト珪酸塩、等軸晶系。え、テクトなの?
Dana は正しくは「デイナ」でしょうけど、まあデーナで定着しちゃったからしょうがないね。(うざい)
mindat には「pink, grey, yellow, reddish brown, red」とあるので黒いのは違うみたい。エジリンだろうか。

デーナライトはヘルヴィン、亜鉛ヘルビンと共に「ヘルヴィン・グループ」に属する。
 Danalite Be3Fe2+4(SiO4)3S
 Genthelvite Be3Zn4(SiO4)3S
 Helvine Be3Mn2+4(SiO4)3S
 Tugtupite Na4BeAlSi4O12Cl

おいなんでトゥグトゥップ君がそこにいるんだい? 硫化鉱物じゃないじゃん。珪素の数も合わないし。わけわからん。こういうグループ分け、嫌い。(素人は黙っていなさい)
トゥグ君を除く3つは「鉄か亜鉛かマンガンか」という違い。Genthelvite を亜鉛ヘルビンとするなら、デーナ=鉄ヘルビン、本ヘルヴィンをマンガンヘルビンとすればわかりやすいのにね。
Genthelvite はゲントヘルヴァイトと読んでしまいそうだけど Genth さんという米国人名由来なので「ジェンセルヴァイト」でしょう。Genthite にすればよかったのにシャレのつもりか Helvine に引っ掛けて elv なんて入れちゃったからわかりにくい。Helvine は英米語圏では Helvite と呼ばれることもある。うざいね。

で、デーナさん。
ジェームズ・デーナ(James Dwight Dana、1813 - 1895)は、アメリカの地質学者、鉱物学者。様々な調査・研究を行った(手抜きw)が、1848年刊の『Manual of Mineralogy』は大学の標準テキストとなり、現在まで改訂・更新が繰り返されている。日本語の鉱物関係の文章でも「デーナの分類では」という言及がよくある。ラピスラズリが一鉱物種であるという奇説もこの分類のせいですけどね。
そういう偉人の名を冠したにしては少し地味な石ですな。mindat のフォトギャラリーでもあまりぱっとしたのはない。

ちなみにもう一つの有名な鉱物分類のシュトルンツに関しては、ウィキの「シュツルンツ分類」で多少言及されているだけ。最初「シュトルンツ」で検索して何も出て来なかったのでびっくり。今どき「ツルン」なんて(そこだけとるなw)古風な表記しますかねえ。「エピジジム石」とか「ツグツパイト」とか、鉱物界隈だけ明治のままみたい。「鉱物学者シュトルンツ」で検索する人のためにちょっと別メモにしておきましょうか。

テクト珪酸塩というのは長石や沸石と同派閥の立体結晶構造。その隙間に逃げ遅れた硫黄が取り込まれたということでしょうかね。まあ変な石です。
と、ちいちゃな石なのにえらくややこしい記事になりました。(ややこしくするの好きなんでしょ?)

【追記】Xの日本の鉱物.COM@miikun3201さんから次のようなご教示がありました。
《母岩の金属のラメ色に似た光沢の雲母状結晶はスティブノメレンです。 ここの11鉱体標本には錫石の単晶も伴いますから注意深く観察してみて下さい。》
すごいですね。じっくり観察してみましょう。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿