貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

スキャポライト(柱石)

2021-12-06 20:08:40 | 単品

「ちゅうせき」です。
「はしらいし」だと全然違う意味になります。それだと人間です。
少し間の抜けた名前で可哀そう。「ちゅうせき、です」なんて言っても「は? 今何か言ったか?」という顔をされる。中には「チューライトですか」と勘違いする人もいる。(いねーよ)
緑柱石(ベリル)とも紅柱石(アンダルサイト)とも違います。柱石でぐぐるとアクアマリンへ持って行かれる。
原語の scapol も柱という意味だそうで。細長い結晶を作るからだそうですが、細長い結晶を作る鉱物なんていくらでもある。センスない命名ですね。可哀そう。

スキャポライトそのものという石はない。(何か前に聞いたフレーズだな)
メイオライト(灰柱石 Ca4[CO3|(Al2Si2O4)6])と
マリアライト(曹柱石 Na4[Cl|(AlSi3O8)3])
が溶け合っているもの(固溶体)を総称してスキャポライトと言う。これ酸部分が違うのに固溶体ができるのかな。
カルシウム成分が多ければメイオライト、ナトリウム成分が多ければマリアライトとなるけれど、見た目では成分がわからず、分析しないとどちらとは言えない。「たぶんどっちかです」と言うのは格好が悪いので「スキャポライトです」ということになる。(そうか?)使えない分類用語なんてやめちゃえばいいのに。(乱暴だな)
色は様々で、マリアライトが紫、というわけではない。
でも、紫が人気で、マリアライトという名前も受けがいいので、紫の柱石イコールマリアライトとして売られていることが多い。らしい。
おお聖母様の石、と思いきや、マリアライトの名前はドイツの科学者フォン・ラス氏の妻マリアからつけられたもので、聖母様とは関係ない。こういう名前を付けるなよ、と日本人は思う。節子石なんて付けるか?
で、「紫色のマリア石」が人気のせいで、無色や黄色のスキャポライトはしばしば放射線処理をして紫に変えられてしまう。らしい。放射線処理って多いのですね。

どうも色々受難多い石だけれど、紫の「マリアライト」ばかりではなく、黄金色や鼈甲飴のような色のものなども売られていて、どれも美しい。立体派(アルミノ・テクトケイ酸塩鉱物)なので複雑な構造をしているからだろうか。立体派は長石と沸石という巨大グループがある。その中で単立しているのは偉い。(なんか変な理屈)
といいつつ、よくよく化学式を見ると、これ、炭カルとお塩にアルミノケイ酸塩がくっついたものじゃね? 素材的には平凡か。(ほめといて落とすな)

個人的な話で恐縮ですが、あちきは誠安天然石さんの1000円均一セールでブレスレットを見つけたのが出会い。黒っぽい、何か不思議な写真を見て、どんなもんかなと思ってぽちった。
手にしてみると、なかなか渋くていい。黒っぽい茶色。半透明でシラーが出る。重厚な質感があって、とても気に入ったのです。

じっと見ていて思った。ぱっと見で美しい色ではない。けれど、いい色。そしてこの色は、たぶんこの石だけの色。他の石ではあまり見たことのない色だし、人工的にこんな地味な色の商品は作らないだろう。唯一無二の色。だから余計美しい。
で、強い光を当てて見ると、またびっくり。
レインボームーンストーンのような多色のシラーが揺れるし、所々ではキャッツアイのようになるし。さらには細かい粒々の輝き、アベンチュレッセンスも出る。
いいですねえ、と。これで1000円はできすぎだろ、と。

で、柱石が気に入って、紫の結晶を買った。(やっぱミーハーじゃん)
けっこう高かったけど同種の中では安いほう。購入したセルフクリエーションさんは良心的なお店だから、マリアライトとは書いていない。あくまで紫のスキャポライトでした。マリアライトは買ってませんよ。(わかったよ)
少し頼りない紫だけれど、それが美しい。そして若干だけれど方向変色する。幻のような淡い紫が揺れて消えて、見ていると陶然となる。

その後、ゴールデンスキャポライトを見つけたので、小さくてお安めのものを購入。横浜のパーフェクトストーンという、なかなか勢いのある石屋さん。
色は淡いけれど単結晶に近くて美しい。放射線処理されずによかったね。ヘリオドールと区別がつくかというと困るけれど。

何となく地味で広く人気になる石ではないでしょうけど、スキャポライトはいい石です。
むしろ、変な黒茶色をした安いもののほうが面白いかもしれない、なんてね。


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