貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

那智黒

2024-03-20 18:32:50 | 国産鉱物

水曜水石。(まだやるの?) そろそろネタが尽きます。

有名。もっぱら碁石の黒として知られている。飴玉にもなってる。(飴にはならん)
けど、黒碁石に那智黒が使われるようになったのは明治中期だとか。「近代の伝統」なんですね。
「那智」黒と言われるから那智の滝と関係があるのかと誰もが思う。けど、産地は熊野市神川町で、那智の滝とは全然離れている。
この熊野市も熊野だから和歌山県かと思うけど、三重県。熊野市が熊野市になる時には和歌山方面から抗議があったらしい。しかし昔の熊野区役所(違う)は熊野市にあったのだから強奪というわけではない。
と、いろいろ誤解の種を抱えている石です。



真っ黒。とりつく島もないほど真っ黒。ムラもない。
黒い堆積岩の塊として産出するという。これはそれをかち割ったものでしょう。
黒曜石のガラス質とは違う。黒水晶の質感とも違う。堆積岩らしい微細な層構造のような模様が見える。それがなかなかいい味わいを醸し出している。



一応「水石」なんでしょうけど、こういうかち割りは水石ではあまり高く評価されないようで。「人工」だからかな。
けれどこの一途な黒と荒々しい姿は迫力あるし、柔らかな肌も美しいのではないかと思います。

三重県総合博物館の説明によると、
《細粒の砕屑物からできている泥岩で、黒色不透明の微粒な有機物粒子が散在しています。長石片のような砕屑粒子の方向は、ほぼ層理方向にそろっていて、有機物片も同様な配列になっています。このような組織のために、岩石は弱いへき開を持っています。新第三紀の泥質堆積岩としては、例外的な緻密さを持っています。》
「泥」というと語感が悪いけど、単に粒子の大きさを表わす概念で、16分の1ミリ以下の粒子を言う。それ以上は、シルト岩、砂岩となる。

堆積岩というのは、多い。
《地表に露出する岩石の80~90%は堆積岩である。しかし、地殻全体に占める堆積岩の体積は8%程度である。》『岩石と宝石の大図鑑』
しかしあまり鑑賞石の対象にならない。何せ「ゴミが固まったもの」だから。ゴミというのは失礼だけど、要するに火成岩や変成岩が砕けて砂埃になり、それが集まって圧縮されたもの。石灰石や苦灰石なんかも堆積したものが変成したり、一度水に溶けて再結晶したりしたものでないと、美しいものは出ない。
平野部の普通の川原に行っても面白い石がないのは、堆積岩ばかりだからでしょう。
もっとも堆積が色の層になっていたり、それがうまく削られたりすると、ちょっと面白い石ができたりする。前に挙げた好間川の虎石なんかはそういうもの。派手ではないけれど。

那智黒も堆積岩で華麗なものではないけれど、そのひたすらな黒さでスターとなっている、ちょっと特別な石ではないでしょうか。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿