「心不全の緩和ケア〜心不全患者の人生に寄り添う医療〜」が南山堂より出版されました。

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序文を紹介させていただきます。
~序文~
本書は本邦初の“心不全の緩和ケア”に特化したテキストである.“心不全の緩和ケア”という言葉を耳にすると,多くの方々は違和感を覚えるに違いない.事実,循環器領域では,移植医療や補助人工心臓などの先進医療により,これまで致死的であった重症症例が救命可能となり,今後も新たな治療の推進が求められている.一方で心不全は心血管疾患の末期像とされ,医療者,患者,家族を含めた周囲の人々は,その増悪,寛解を繰り返す経過に翻弄され,刀折れ矢尽きるまで闘い,患者は苦痛とともに人生を終え,医療者,家族にも精神的苦痛が残ることも多い.
このような現状の中で,本書の主旨は副題である“心不全患者の人生に寄り添う医療”のあり方を提言することである.緩和ケアとは,生命を脅かす疾患に直面している患者とその家族に対して,疾患の早期より全人的苦痛(身体的苦痛,精神的苦痛,社会的苦痛,スピリチュアルな苦痛)に対処し,QOLを改善するためのアプローチであると定義されており,がん患者のみならず心不全患者にも享受されるべき医療である.
前述の通り,心不全は増悪,寛解を繰り返す経過を辿るため正確な予後予測は困難であるが,適切な治療を行うとともに,医療者,患者,家族を含めた周囲の人々で経過を共有し,見直しを繰り返しながら末期に至るまで患者の意思決定を支え,全人的苦痛に対処することは可能であり,その過程が“心不全の緩和ケア”である.
そのような観点から,1章で心不全における緩和ケアのニーズを,2章で適切な治療を提供するうえで知っておくべき病態,治療,予後についての既知を,3〜6章までに心不全患者の人生に寄り添うための具体的な方策を,7,9章では実臨床での取り組みを,8章は多職種連携の実践について,10章では医療者の精神的苦痛へのケアを,11章では倫理的問題についてそれぞれ取り上げた.さらに,心不全診療には在宅から病院まで連続した医療の提供が必須であるとの観点から,在宅から病院関係者まで各領域の専門家の先生方に執筆いただいた.他書に類をみない内容であり,忙しい中ご尽力いただいた諸先生方への感謝の念に堪えない.
本書は臨床での実践知を含んでいる一方で,我々が正しいであろうと考えているが十分にコンセンサスの得られていない内容も含まれており,未完成で今後修正が必要であることは論を待たない.今後,本書が多くの方々に利用され,批判されることにより,版を重ねるとともにさらに充実した実践書となることを期待したい.
最後に,本書の発行に際し,南山堂編集部橘理恵氏,佃和雅子氏には貴重な機会をいただき,さらに辛抱強く編集いただいたことを心から感謝申し上げる.
2014年5月
大石 醒悟
高田弥寿子
竹原 歩
平原佐斗司

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序文を紹介させていただきます。
~序文~
本書は本邦初の“心不全の緩和ケア”に特化したテキストである.“心不全の緩和ケア”という言葉を耳にすると,多くの方々は違和感を覚えるに違いない.事実,循環器領域では,移植医療や補助人工心臓などの先進医療により,これまで致死的であった重症症例が救命可能となり,今後も新たな治療の推進が求められている.一方で心不全は心血管疾患の末期像とされ,医療者,患者,家族を含めた周囲の人々は,その増悪,寛解を繰り返す経過に翻弄され,刀折れ矢尽きるまで闘い,患者は苦痛とともに人生を終え,医療者,家族にも精神的苦痛が残ることも多い.
このような現状の中で,本書の主旨は副題である“心不全患者の人生に寄り添う医療”のあり方を提言することである.緩和ケアとは,生命を脅かす疾患に直面している患者とその家族に対して,疾患の早期より全人的苦痛(身体的苦痛,精神的苦痛,社会的苦痛,スピリチュアルな苦痛)に対処し,QOLを改善するためのアプローチであると定義されており,がん患者のみならず心不全患者にも享受されるべき医療である.
前述の通り,心不全は増悪,寛解を繰り返す経過を辿るため正確な予後予測は困難であるが,適切な治療を行うとともに,医療者,患者,家族を含めた周囲の人々で経過を共有し,見直しを繰り返しながら末期に至るまで患者の意思決定を支え,全人的苦痛に対処することは可能であり,その過程が“心不全の緩和ケア”である.
そのような観点から,1章で心不全における緩和ケアのニーズを,2章で適切な治療を提供するうえで知っておくべき病態,治療,予後についての既知を,3〜6章までに心不全患者の人生に寄り添うための具体的な方策を,7,9章では実臨床での取り組みを,8章は多職種連携の実践について,10章では医療者の精神的苦痛へのケアを,11章では倫理的問題についてそれぞれ取り上げた.さらに,心不全診療には在宅から病院まで連続した医療の提供が必須であるとの観点から,在宅から病院関係者まで各領域の専門家の先生方に執筆いただいた.他書に類をみない内容であり,忙しい中ご尽力いただいた諸先生方への感謝の念に堪えない.
本書は臨床での実践知を含んでいる一方で,我々が正しいであろうと考えているが十分にコンセンサスの得られていない内容も含まれており,未完成で今後修正が必要であることは論を待たない.今後,本書が多くの方々に利用され,批判されることにより,版を重ねるとともにさらに充実した実践書となることを期待したい.
最後に,本書の発行に際し,南山堂編集部橘理恵氏,佃和雅子氏には貴重な機会をいただき,さらに辛抱強く編集いただいたことを心から感謝申し上げる.
2014年5月
大石 醒悟
高田弥寿子
竹原 歩
平原佐斗司