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「税務署員はわざとウソをつく」元国税調査官YouTuberが教える税務調査の脅しの手口

2022年03月05日 06時43分44秒 | 税金

企業や個人事業主の確定申告に対して、税務署は申告内容を詳しく調べる「税務調査」を行うことがある。元国税調査官の根本和彦さんは「税務署員もノルマを抱えたサラリーマン。ノルマ達成のために、調査時にウソをつくことがある」という――。

※本稿は、根本和彦『元国税調査官が捨て身の覚悟で教える「節税」の超・裏ワザ』(SB新書)の一部を再編集したものです。

税務署員には「ノルマ」がある

「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」

このあまりにも有名すぎる『孫子』の言葉どおり、まずは、税務署および税務署員の手の内を明らかにすることから始めましょう。

税務調査とは、毎年行われている企業や個人事業主の確定申告に対して、申告された内容が正しいかどうかを税務署がチェックすることです。

おもに株式会社などの法人が事業活動で得た所得にかかる税金が、法人税です。法人税は申告納税制度になっており、申告する人が、自分の会社の所得と税額を計算して納付します。

申告の内容が正確であれば問題ありません。しかし、単純なミスや、税制を理解していないことによる間違い、さらには、意図的な虚偽の申告などが存在します。そこで、税務署が調査をするわけです。

じつは、この税務調査には「ノルマ(=目標)」があることをみなさんはご存じでしょうか?

もちろん、税務署や国税庁に「ノルマがあるんですか?」と聞けば、はっきりと「ないです」と答えるでしょう。さすがに、誰にでもわかるような形で示されることはありません。

ところが、税務調査には実質的なノルマがたしかに存在しているのです。

税務調査の件数、納税額を上積みさせたい…

税務署では、年度当初に事務計画というものを作成します。その中で、税務調査に割り当てる日数が発表されます。

その日数を合計して、「この期間があれば、税務調査はこれくらいできるな」という判断のもと、税務署の各部門に税務調査の件数を提示します。

この件数が、実質的なノルマになります。上から提示された件数ですから、当然、その件数をこなさなければ、直属の上司の人事評価は下がりますし、何より自分たちの評価も下がります。

したがって、最低限、その件数を達成しなければなりません。これが、ノルマたるゆえんです。

また、税務署員にとって、件数だけが重要なのではありません。税務調査によって、納税額が増えるかどうかもポイントになってきます。

件数だけをこなして、「今年は大きな問題はありませんでした」では済みません。「会社に修正申告をしてもらって納税額を増やしてもらう」「所得隠しを見つけて追徴課税をする」などといったこともやらなければなりません。

この金額の部分のノルマについては微妙です。件数ほどはハッキリしていません。ただし、基準らしきものはあります。

たとえば、その部署の前年度の実績がわかりやすい目安になるでしょう。できれば、前年度の金額は超えたいところです。下回ってしまうと部署の評価が下がりますし、逆に上回れば、評価は上がります。

また、他の税務署の金額より、大幅に下回ることも避けたいところです。これは、税務署全体の評価につながってしまいます。そうした事情を勘案すると、「これくらいは納税額を上積みしたい」という、大体のラインは見えてきます。

したがって、税務署員は件数をこなすとともに、納税額を上積みするというノルマが課せられることになります。まず、この大前提を覚えておいてください。

これが、税務署員の弱点にもなってくるのです。

「税務署員もサラリーマン」税務署員の意外なホンネ

先ほど、わざわざ“ノルマ”という言葉を使ったことには理由があります。

「税務署員もサラリーマンである」ことを強調したかったのです。

「経営者ではない」という意味で、サラリーマンは、つねに上司から評価され、その上司もその上の上司から評価されるという構造になっています。「自分の出世なんてどうでもいい」という人以外、自分の評価を気にして行動することになります。

税務署員もあくまでサラリーマンであることを踏まえて、税務署員が上司から評価されるポイントを整理してみましょう。

①税務調査の割り当て件数(=ノルマ)をしっかりこなすこと

 

②税務調査をしたときは、修正申告を取って、追徴税額を出すこと

③意図的な所得隠しを発見し、多くの追徴税額を出すこと

④納税者とはトラブルを避けスピーディーに調査を完了させること

つまり、税務署員はこの4つのポイントの逆のことを嫌がることになります。たとえば、税務署員にとって、わざわざ税務調査に入って何も見つけられずに帰るなんてことはあってはならないことです。

そのため、どんな小さな金額であっても、せめて修正申告だけは取ろうとします(国税庁が公表している直近のデータでは、税務調査に入った先の約8割が、何らかの修正申告をしています)。

コスパ重視…短い時間で修正申告を出させる

また、税務調査したものの、追徴税額が少なく、しかも、納税者ともめて時間がかかってしまった――。これも、最悪の状況といえます。

もし、納税者ともめて裁判になってしまうと、膨大な労力を裁判に割かねばなりません。こうなると、他の税務調査はストップしてしまいます。

したがって、税務署員は、1件当たりの調査にあまり時間をかけず、件数をこなしながら、効率よく修正申告をさせ、追徴税額を積み上げていく、という工夫が求められるのです。

簡単にいってしまえば、「コスパ重視」なわけです。そのため、いったん税務調査に入れば、修正申告をなるべく早く取るために、あの手この手を使って経営者を説得しようとします。この説得の過程で、しばしばトラブルが発生するのです。

きちんとした証拠を示して、説得をすれば何も問題ありません。しかし、ときには、納税者や税理士の税制に対する無知につけこんで、ウソの説明をすることがあります。

また、結果を急ぐあまりに、このまま調査が長引くと、その会社の取引先に悪影響が及ぶことをほのめかすこともあります。それは、「脅し」といってもかまわないものです。

納税者を惑わす「ウソ」と「脅し」のテクニック

税務署員がウソをついたり、脅しをかけたりするなんて、にわかに信じられないという人も多いでしょう。ですが、これは真実なのです。

たとえば、次のようなやりとりも、それほど珍しいことではありません。

【調査員】社長、この領収書は、経費の二重計上になっているんですよ。この経費って、クレジットカードで支払われていますよね?

【経営者】はい。

【調査員】それで、クレジットカードの明細書で、また別の日に経費処理がされているんですよ。ほら、ココ。

【経営者】いやー、そうでした。すいません、うっかりしていました。

【調査員】それ、本当ですか? 別の領収書でも、二重計上をやっていますよね?

【経営者】本当に単純なミスで、お恥ずかしい……。

【調査員】これね、ミスで済ませられる金額じゃないですよね。これくらいの額になってくると、わざとやったとしか思えないんですよ、社長。

【経営者】いえ、わざとということはありません。

【調査員】みなさん、そういうんですよね。これね、金額が金額なだけに、私も見過ごすことはできないんです。これは、重加算税の対象になってしまいます。

【経営者】本当に、故意じゃないんですよ!

【調査員】重加算税ということで、承諾していただけませんか?

【経営者】……………………。

【調査員】もし、承諾していただけないということであれば、次は「査察」が来るかもしれませんよ。それでもいいですか? 新聞やニュースに出ちゃう可能性もありますけど。

【経営者】査察だけは勘弁してください。わかりました、重加算税を払います。

実際にこのようなやりとりをしたことがある人にとっては、おそらく悪夢のような思い出になっていることでしょう。

このやりとりには、「ウソ」と「脅し」が含まれています。

「査察が来るぞ!」とは言わない

まず、査察は、事前に通告されることはありません。

査察とは、悪質な脱税を摘発することが目的の強制的な調査です。事前に通告してしまうと、脱税の証拠などは隠滅されてしまいます。そんなお人好しが査察に来るわけがないのです。

したがって、「査察が来るぞ!」というのはウソなのです。

そして、査察に入られた場合、地方都市であれば、ほぼ間違いなく地元の新聞やテレビのニュースとして取り上げられるので、その会社のイメージはガタ落ちとなってしまいます。これは、経営者にとって、放置することは絶対にできません。

そうなるくらいなら、重加算税を受け入れることになります。これは、脅しといって差し支えないでしょう。

また、そもそも二重計上が重加算税の対象になるかどうかは、決まっていません。重加算税の要件は、「隠ぺいまたは仮装」とされる行為です。簡単にいうと、知っているのにわざとやった場合に重加算税の対象となります。

経費の二重計上をしていても、単純なミスであれば、重加算税の対象にはならないのです。つまり、税務署員による金額に基づいた判断というのは誤りです。

当然、税務署員は百も承知。わざとウソをついているのです。こちらのほうは明確な故意ですが、何のおとがめもありません。

手ぶらで帰れない…税務署員が「重加算税」を狙う理由

税務調査に入ったら、税務署員は手ぶらで帰れません。ですから、会社に何らかの修正申告をしてもらうことになります。このとき、税務署員は重加算税を狙うのです。

確定申告で届け出た納税額と、修正申告で算出された税額の差を「追徴税額」といいます。また、その差分を徴収することを「追徴課税」といいます。

追徴課税をする場合、おもに次の4つの税金があります。

①過少申告加算税

 

②無申告加算税

③重加算税

④不納付加算税

ここでは、1つひとつの税について詳しくは述べません。この4つの中では、重加算税がその名のとおり最も重い税金であるということを覚えておいてください。それが、税務署が重加算税を狙う理由だからです。

それほど追徴税額が大きくならなくても、重加算税にしたほうが税務署では高い評価になります。2000万円の単純な経理ミスを指摘して修正申告してもらうよりも、200万円の所得隠しを指摘して重加算税にするほうが評価される、といった具合です(ちなみに重加算税は通称「ジューカ」と呼ばれています)。

---------- 根本 和彦(ねもと・かずひこ) 元国税調査官YouTuber 1976年生まれ。東北大学大学院修了、政策研究大学院大学修了。在学中、研究者の道から路線を変え、大学院修了後はキャリア官僚として文部科学省入省。数千億円規模の予算獲得、大規模な法改正に担当者として従事。文部科学省退職後、民間の勤務を経て、国家公務員として国税局に再就職。国税調査官として会社の税務調査を行う。税務調査では、主に悪質・困難な納税者を担当し、様々な脱税手法、脱税心理、欲に溺れた人間模様を目の当たりにする。2016年に国税局を退職。YouTubeチャンネル「元・国税調査官【税金坊】」を開設し、中小企業の経営者や個人事業主向けに税とお金についての情報発信を続けている。 ----------

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日本企業の「実力」は1970年代並みに低下、投資先として薄れる魅力

2022年03月05日 06時27分11秒 | 経済

日本企業の株価は

国際比較で見て昔に戻ったか?

 日本企業の時価総額を国際的な比較で見ると、1988年にピークになっており、その後、長期的に低下を続けた。いまに至るまで、バブル崩壊直後の水準に戻っていない。

 これは日経平均株価の推移とは異なるものだ。

 アベノミクスが始まった2013年以降、株価は上昇した。年初終値で見ると、1990年が2万3848.71円だったが、19年にこれを超えた。

 これで見る限り、日本の株価はバブル崩壊直後の水準に戻ったといえる。

 では、国際比較で見た場合に、日本の株価は昔に戻ったといえるだろうか?

 そうはいえない。なぜなら、世界の各国で企業利益が増え、株価が上昇しているからだ。

 したがって、円表示の日本の株価が昔の水準に戻ったといっても、それは世界の中での日本企業の位置が1990年代初め頃の位置に戻ったことを意味するものではない。

国際標準での日本企業の位置

時価総額はバブル崩壊の落ち込みから回復せず

 図表1は、日経平均株価の年初終値の推移を示したものだ。

 これに対して図表2では、日本、アメリカ、中国の国内企業時価総額の合計値を、ユーロ圏を1とする指数で示した。

 これは、各国の国内企業時価総額を市場為替レートでドルに換算し、それをユーロ圏の値で割った値だ。

 この指数で見れば、その国の企業が世界の中でどのような位置を占めているかが分かる。

 時価総額は株価を発行済み株式数に掛けたものだ。そして、株価は企業利益、割引率、そして将来の成長期待を反映している。

 本コラム『日本は「先進国」から脱落目前、2022年は歯止めの正念場』(2022年1月6日付)では、1人当たりGDP(国内総生産)で同じような指標を作った。

 時価総額は、GDPとは異なり、現在の状況だけでなく、将来の予測をも反映していることになる。

 図表1と比べて図表2の顕著な違いは、日本を示す線が1989年から下落して以来、ほとんど回復していないことだ。

 図表1で見たように、単純に株価だけを見れば回復している。しかし、時価総額をドルに換算し、それをユーロ圏との比較で見れば、つまり、国際的な相対評価で見れば、日本の株価はバブル崩壊で落ち込んでから回復していないのだ。

 現在の水準は1970年代後半と同じだ。日本の企業の相対的な位置はその頃の水準にまで低下してしまったということができる。

 アベノミクスで株価が上昇したのは事実だが、他の国の株価も上昇しているので、日本が相対的に上昇したというわけではない。

 アメリカや中国の顕著な上昇に比べれば、後れを取っている。

 しばしば、「アベノミクスは株価を上昇させたが、賃金は上昇しなかった」といわれる。しかし、株価についても、ここで示した指標で評価すれば、他国に比べて後れを取っているのだ。

ピークは株価や地価のピーク前、

衰退はバブル崩壊前から始まっていた

 図表2で見る日本の指標は山形で、ピークは1988年だ。87年から89年まではアメリカを超えた。

 これは、株価や土地価格がピークに達する以前のことだ。

 つまり、日本経済の衰退はバブル崩壊の前に始まっていることになる。一般には、バブルの崩壊によって日本経済衰退が始まったと考えられているのだが、そうではない。

 80年代には、日本企業の時価総額が世界ランキングでトップを占めた。これには確かにバブルの影響があった。しかし、87年から88年にかけての上昇(これは明らかにバブルによるものだ)がなかったとしても、日本の地位はアメリカに近づき、ユーロ圏の2倍を超える高い位置を獲得していたのだ。

 なお、本コラム『日本の輸出国としてのシェアは80年代中頃がピーク』(2022年2月17日付)で示したように、この時期に世界貿易における日本のシェアが最高になっている。これは偶然の一致ではないと思われる。

競争力低下させた円安政策

企業は技術革新を怠る

 1人当たりGDPに関して日本のピークは1990年代の中頃だ。ところが、企業活動ではそれより10年ほど前にピークになっている。

 企業活動が低下して国際競争力を失い、それを補うために90年代の後半以降、円安政策がとられるようになった。

 円安で利益が回復したので日本企業は技術革新を怠ることになった。それによって経済が衰退し、さらに円が減価した。

 日本が90年代以降、成長しなくなったのは、バブルの崩壊によるのではなく、このようなメカニズムによる。

2013年に日本を抜いた中国

新たなビジネスモデル生んだ米国

 中国やアメリカはどうか。

 図表2を見ると、2010年頃から中国の指数が顕著に上昇し、13年に日本を抜いていることが分かる。

 2010年頃までは、中国の産業は低賃金労働に依存する軽工業だったが、この頃から現代的な企業活動による成長が始まったことを表している。

 なお、中国がルイスの転換点といわれる地点を通過したのは、この頃だったといわれる。これは、農村の過剰労働力が解消して賃金が継続的に上昇する時期に入る時点のことだ。ちょうどこの頃から、中国で世界的企業が成長し、これによって賃金の上昇を実現できたのだ。

 図表2でアメリカの指標が上昇するのは、2008年頃からだ。

 1995年にインターネットが使えるようになったのだが、それから10年少々たってから、アメリカIT産業の本格的な成長が始まったということになる。

 なお、この少し前から、アップルがファブレス(工場なし)方式を導入し、世界的な水平分業を始めている。

国際的レベルで考えれば

日本への投資は賢明でない

 アベノミクスの期間、図表1で示した日経平均株価ベースでは、2012年から18年までに株価は1.93倍になった。。

 ところが、図表2に示す時価総額での国際比較では日本の指数は同期間に1.68倍になっただけだ。(アメリカは1.80倍)。

 1990年代からの期間をとれば、日本の指数の伸びはマイナスになっている。

 したがって、国際的なレベルでの投資を考えた場合、他の国に比べて日本が投資先として優れているかどうかは大いに疑問だ。

 どんな形態の投資であれ、日本に投資をするよりは、他国(とりわけアメリカ)に投資をするほうが賢明だ。

 そして日本が投資対象として適切でないとみなされれば、円に対する需要が増えず、円安がますます進行する。投資先としての日本の魅力がさらに失われるという悪循環に陥りかねない。

 こうした状況から脱却するために必要なのは、ひとつには円安政策から脱却することだ。そしてもうひとつは、日本企業が新しい技術とビジネスモデルを開発して利益を増やすことだ。

(一橋大学名誉教授 野口悠紀雄)

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