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ダークフォース 第三章 中編 VII 下書き

2010年10月12日 20時51分29秒 | ダークフォース 第三章 中編(仮)
   Ⅶ

 ヤマモトは、至高の女帝(エンプレス)を前に苦戦を強いられていた。

 かつて、伝説の『剣皇』として世界の頂点に君臨したヤマモト。
 『剣神』とさえ、異界の神々に言わしめた、
 その実力には、微塵の陰りすらない。

 ヤマモトは、額に汗を流しながら、
 久しく味わうその高揚感に、身を震わせていた。

 ヤマモトは、両手に握りし太刀・第六天魔王に、
 渾身の力と魂を込めて、究極とも言える必殺剣の構えを取る。

 刹那にして、終わらせる。

 それがヤマモトの心境だった。

 ヤマモトとしては幸いな事だが、
 プラチナの髪を靡かせる女帝ウィルローゼは、
 必殺剣への錬気に集中するヤマモトに、
 一切の手出しをして来ない。

 ウィルローゼは、別にヤマモトを軽んじて手出ししないのではなく、
 目の前で展開されるその美しい錬気に、
 揺らめく光がシャープな一線へと研ぎ澄まされていく幻想的な光景に、
 ただただ、うっとりとした様子だった。

 ヤマモトは、本来なら、ここまでの錬気を太刀に宿らせたりはしない。
 名高き太刀である『斬刀・第六天魔王』は、
 その、限界をも超えた超絶的威力に、耐えうる刀身を持っている。

 並みの剣などでそんなことをすれば、
 光はブラックホールの質量の闇の中へと引きずられ、
 剣ごと戦士は、漆黒の闇へと消失してしまうだろう。

 ヤマモトが、その圧倒的な『力』の制御に使っているものこそ、
 『ダークフォース』と呼ばれる力であり
 人智を超越した、闇世界に封じられし禁忌の力だ。

 ウィルローゼは、言う。

「まあ、素敵な色の光だこと。
 どんな宝石を用いたとしても、こちら側の世界で、
 その艶めきを出すことは、難しいことでしょうね。」

「お前さんが、余裕を見せて、
 『守りの壁』など使っておるから、出せる芸当じゃわい。
 限定解除下でなくては使えぬワザを、
 それを要せずに、使わせてくれるのじゃからな。」

 ヤマモトの言う『限定解除』とは、
 戦士が一定値を超えた力を発現する為に使う、
 空間そのものを、世界から切り離す技である。

 ヤマモトほどの戦士が剣を振るうには、
 この世界はあまりにも脆すぎる為、
 その世界を破壊しない為に、それを行使する必要があった。

 この限定解除は、勿論、全ての戦士が行えるものではなく、
 むしろ、ごく僅かな、
 限られた、資質と才能を持つ戦士でないと発現は出来ない。

 その能力に長けている者の名を挙げるなら、
 この世界の主神であるセバリオスあり、
 セバリオスほどの完成度を持つ限定解除は、
 このヤマモトにすら発動させることは出来ない。

 それをいとも容易く、このウィルローゼはやってのけ、
 この嫌味なほどに飾られた室内を、完璧に世界から隔離している。

 限定解除下の圧力は、鋼鉄をもへし曲げ、
 あらゆる弱者の存在を許さない。

 ヤマモトは、その完璧とも言える、ウィルローゼの守りの壁の存在により、
 太刀・第六天魔王の刃に、
 ダークフォースの漆黒の煌めきを映し出せている。

 ヤマモトは言った。

「ワシの限定解除能力じゃ、ここまで安定させた状態で、
 異界の力を使うことは出来ん。
 不完全な限定解除による欠損により、
 世界をコンマ数パーセントほど闇に没させたことじゃろうな。
 ワシは、世界の存亡になどたいした興味はないから、
 勝算の高い選択肢を選ぶだけじゃがなっ!!」

「ウフフフフ・・・。
 ヤマモトさんと、私、気が合うのかも知れませんわね。
 私としても、この場所が、愛するお父様の、
 その愛に満たされた空間などでなく、他のどうでもよい場所でしたらなら、
 幾ら滅んでも、構わないと思っていますのよ。
 滅びたものなど、また新たに創り出せばよいのです。」

「まるで、神のような言葉を吐くのぅ。」

 太刀を構えるヤマモトのその台詞に、微笑むウィルローゼ。

「私の創り出す世界は、このように慈悲で溢れてはいないと思いますわ。
 私がお父様以外に興味を持つとするならば、
 それは、星のような輝きを放つ美しい存在くらいなものでしょうね。
 でも、そんな光り物ばかりを集めた世界では、
 輝きは色褪せて見えてしまうのでしょうね。
 ですから、刹那の煌めきを見せてくれるヤマモトさんには、
 大変、期待しておりますの。
 ウフフッ・・・。」

 まるで天使のような笑みを見せる、ウィルローゼ。
 その性質は毒々しさに満ちてはいるが、彼女のその闇が深くなるほど、
 ウィルローゼは、清らかな光輝に満たされていくかようだ。

 オメガを握るウィルローゼのその姿は、
 まさに白金の髪の天使と呼ぶべき神聖な姿。
 エストは、彼女の生み出す守りの壁の外側で、
 目の前で繰り広げられる光景に圧倒されるしかなかった。

「綺麗・・・。」

 エストは一言だけそう呟いた。
 特定の何かを指してそれを口にしたのではなく、
 純粋に、戦士能力を持つエストには見える、
 孤高の戦いと呼べる戦場がそこにはあった。

 この二人の、ヤマモトとウィルローゼの姿を目の当たりにしたなら、
 どんな豪華な調度品で飾られた部屋も、色褪せたモノクロの背景にしか見えない。

 エストは、その奇跡に心奪われた。

 ヤマモトの、その人智を超えた戦士能力は、
 人生を二、三度生きたくらいで垣間見れるほど、容易いものではない。

 事実、ヤマモトがここまでの力を解放し、他者に見せたのも、
 過去を、五千年前の大戦時まで遡らなくてはならない。

 ヤマモトは、太刀・第六天魔王の練成を終える。

 太刀を両手で構えるヤマモトのその周囲から、静寂が広がる。
 耳が、キーンと耳鳴りするほどに無音の状態だ。
 壁の向こうにいるエストには、直接、音としての空気の振動は届かないが、
 そこに立つ、荘厳にして偉大なる者の姿は、
 まさに『剣神』としか、喩えようもない。

 そんなヤマモトに対して、ウィルローゼは言った。

「さすがは、私の見込んだヤマモトさん。
 もしかしたら、剣気だけならば、お父様の上を行かれているのではなくって?
 ウフッ、さすがに、全ての実力がお父様を上回るなどと、
 お世辞を言うつもりはございませんが、
 期待以上の力に、久しくこの胸の奥がザワザワと騒いでいますのよ。
 それを、ドキドキ以上にさせるワザを、
 この私に見せてくださいな。」

「フン、実力ならワシの方がまだバルマードより、ちょっと上いっとるからの!
 弟子に弱みは見せられんし、その娘なんぞに舐められてはたまらんわいっ。」

 ウィルローゼは、唇にその白く細い指先を這わせて、
 ヤマモトにこう返した。

「あらあら、
 その弟子の娘に手を出して、あわよくば妾にしようなどと考えていらっしゃる、
 渋い黒メガネのオジサマにそんなことを言われては、
 男性経験の未熟な私であっても、ワクワクと興奮させられてしまいますわよ。」

「げっ!?
 下心が読まれとる!!」

 そう言葉を交わすウィルローゼとヤマモトのやり取りは、
 壁の向こうのエストには聞こえていない。
 ウィルローゼは、その意思によってあらゆる情報を、
 大いなる戦士(天使)能力『守りの壁』により遮蔽出来る。
 彼女から、エストに与えられたのは、今のところ視覚情報だけだ。
 ウィルローゼとしては、自分の言葉を、
 エストからバルマードに耳打ちされるのは、少し困るような気がしたし、
 ヤマモトとの会話も命のやり取りも楽しみたいという思いが働いていた。
 命のやり取りという表現は、少し過ぎているのかも知れないが、
 ヤマモトにしろ、ウィルローゼにしろ、
 本気でやり合わなくてはならない次元に、互いを持っていっている。

 ヤマモトはともかく、
 ウィルローゼはヤマモトの事を本気で抹殺しても構わないとそう思っている。
 ウィルローゼの興味の対象にならない存在は、
 彼女にとっては『いらないモノ』だからだ。

 必殺の奥義を発動出来る状態のヤマモトが、
 一向に仕掛けてくる気配を見せないのに、ウィルローゼは退屈する。

「ヤマモトさん、はやく私を攻めていらっしゃって。
 タイミングや間合いを計っているなどという、いい訳などは、必要ありませんので、
 私に、その漆黒の刃が魅せる光の軌跡を見せて下さいな。
 指をくわえて待つだけならば、私の方から攻めて差し上げてもよろしくてよ。」

「当てるのが難しい奥義なんじゃから、せかすでないわい!!」

「ヤマモトさんが、その威力で私を消し去ってしまうなどと心配しているならば、
 それは無用のことです。
 例え、この私が消え去ったとしても、
 ウィルハルトの方にはダメージゼロなものですので。
 ウフフフフ・・・。」

「!? どういう意味じゃ!!」

 ウィルローゼの言葉に疑問を抱いたヤマモトは、一瞬戸惑う。
 その隙を、ウィルローゼは攻めた!!

  シュンッ!!

 ウィルローゼは、電光石火の一撃をヤマモトに繰り出すが、
 ヤマモトはそれを寸前でかわす。
 エストには、そのウィルローゼの攻撃が見えなかった。
 光とほぼ同じ速度で繰り出されたウィルローゼの一撃は、
 視覚に頼っていては、遅れて目に届く。
 エストには、その意味を体感するだけの実力はないが、
 光速を超えるような次元で戦う戦士にとっては、
 一秒という時間を、一年よりも長く身体で感じることが出来なければならない。
 ヤマモトは、立ち位置をわずかに変えてこう言った。

「先制するなら、先に言わんかいっ!!
 ワシ、装甲は紙のように薄いからして、
 どんな手ぬるい一撃とて、もらえば即、あの世行きじゃわい!!」

 ウィルローゼは、対峙するヤマモトの顔を上目遣いで見つめて、彼に言う。
 ウィルローゼの背丈は、バルマードに引けを取らぬ体躯の持ち主である、
 ヤマモトよりもかなり低い。

「あら、せっかく散り際に華を持たせてあげようと思っていましたのに、
 その華も見ることなく冥府へと送り届けるところでしたとは!?
 ヤマモトさんも、体力的に年には勝てないのですね。
 初顔合わせで、知ったような口を利いている小娘だと思われるかも知れませんが、
 私、年寄り相手でも手加減は致しませんわよ。
 ウフフ・・・。」

「脆いのは、年のせいじゃないわい。
 もう、勘付いておるじゃろうが、ワシの戦闘スタイルに防御はない。
 ひたすらにかわし続けて、攻撃のみに特化する、
 いわゆる『攻撃型』の戦士タイプじゃ。
 お前さんの親父である、バルマードも似た戦いをするが、
 オリジナルは、ワシの方じゃからのっ!!」

 ヤマモトがそう口にする間も、
 ウィルローゼは、時折、その手のオメガを振るっていた。
 エストには、二人が止まって何かを話しているようにも見えたが、
 その間にウィルローゼが行った攻撃は、計503回に達する。
 ヤマモトは、その全てを移動による回避のみで避けており、
 その手の太刀による受け流しは、一度も行っていない。
 ウィルローゼは言った。

「その太刀をオメガで叩いてみたら、どんな素敵な音がするか興味がありますのに、
 触れさせてもくれないのですね。」

「そんな事が出来るか!!
 ワシは今、この手にブラックホールすら切り裂く刃を持っておるのじゃ。
 受け流しなどして、手元が狂ったら、
 ダークフォースの漆黒の闇の中に、ワシなど消え去ってしまう。
 絶対の戦天使能力である守りの壁を、いつでも纏えるお前さんなら、
 そんな異界の闇さえ、耐え凌ぐことが出来るじゃろうがの!!」

 ヤマモトはそう返したが、本音は違った。
 受け流しは可能だったし、むしろその方がスタミナを減らさずにすむ。
 ヤマモトが恐れたのは、触れられることでその威力が計られる事にある。
 ヤマモトの想像通り、
 ウィルローゼが絶対的な戦天使能力であるその壁を操っていたのなら、
 それは魔王ディナス、いや、戦天使セリカのものと同等の力ということになるからだ。
 セリカのその力は、異界の門を封じるほどに強大である。
 いくら、ヤマモトが優れた攻撃力を持つ戦士とはいえ、
 その鉄壁の防御の前に、意味を成さない。
 ウィルローゼは、まだヤマモトの実力を見抜いてはいない。
 それ自体を、楽しんでいるからだ。
 ヤマモトの手には、必殺の秘奥義である、
 「剣皇剣・覇、第九の太刀『暗黒』」が握られている。
 その威力は、まさに次元を切り裂くほどに超絶だが、
 放てば、その余波で我が身さえも危うい。
 さらに言うと、ウィルローゼを倒してしまえば、
 この隔離された空間が消滅してしまい、奥義の威力が外へと放出されてしまう。
 エストは確実の消え去るであろうし、堅牢なドーラベルン城にさえ、甚大な被害を与えるだろう。
 ヤマモトは、これ程の大技をこちら側の世界で放ったことなど、過去に一度も無い。
 かつて、限定解除すら使えぬ戦士たちは、ギーガとの戦いで禁忌の力を用い、
 惑星エグラートの南半球を闇へと没させた。
 ヤマモトはその限定解除能力を持ってはいるが、
 皮肉にもそれを使っていないからこそ練成することの出来た奥義なのだ。
 奥義を放った瞬間、即、その能力を展開する自信はヤマモトにはなかったし、
 わずか、コンマ一秒の遅れが、大いなる破滅をもたらすのは避けようがなかった。
 ヤマモトの限定解除能力は、前にも言ったように完璧ではない。
 セバリオス級のマスタークラスの補佐があれば、遠慮無用で行けるだろうが、
 そこまでヤマモトは、エストにも世界にも無責任にはなれない。
 ウィルローゼであらば、躊躇わずにその剣を振り下ろしたであろうが。
 そんなヤマモトを見かねたように、ウィルローゼは薄ら笑って言った。

「ウフフ・・・。
 ヤマモトさんの心配など、取り越し苦労に過ぎませんわよ。
 例え、この私が消え去っても、ウィルハルトは残ると、
 そう申し上げたハズです。
 私の予測が正しければ、この空間の保護は継続され、
 他に、何ら害を及ぼすことはないと言えるでしょう。」

 ヤマモトは、そう言うウィルローゼに問う。

「そこが分からぬのじゃが、良かったら聞かせてくれぬかのう。」

 ウィルローゼは、その問いに笑顔でこう答えた。

「ヤマモトさんの迷いを解く為に、教えてあげましょう。
 でないと、この退屈がまだ暫く続くことでしょうから。
 正確に言うならば、私はウィルハルトではありません。
 ウィルハルトがこう変化したように見えるのかも知れませんが、
 私の肉体と魂は、ウィルハルトとはまた別に存在しているのです。」

「!?」

 次のウィルローゼの言葉を待たずに、ヤマモトは過去の経験から、その事に気が付く。
 確かに、ウィルローゼの言うような存在とヤマモトは逢った事がある。
 その者の名は『邪王 アトロポジカ』。
 六極神と呼ばれる異界の神々の中でも、最強クラスの神の名だ。
 邪王は、二人の姉と妹の六極神で、一つの命を二人で共有し、
 故に、最強の六極神である『美髪王 ルフィア』に次ぐ実力を備えていた。
 姉のアリスと、妹のフェノ。
 邪王とは、彼女たち二人の姉妹を指してそう呼ぶ。
 一人でも、他の六極神たちと拮抗する実力を備えるが、
 数の上で、二人は他を圧倒している。
 つまり、ウィルローゼ、
 いや、ウィルハルトは中立の性を持っていたのではなく、
 単純に、男性のウィルハルトと女性のウィルローゼが存在していた事になる。
 ヤマモトは呟いた。

「ふん、バルマードのヤツに一杯喰わされておったか。
 てっきり、ウィルちゃんは女性にもなれる『中性』と思っておったのだが、
 まさか、双子であったとはな。
 何故、個々に存在しておらぬのかまでは、わからぬがの。
 姉の方か、妹の方かは知らぬが、
 まるで絵本に出てくるような悪い魔女のようじゃの。
 はよ、魔法が解けて、可愛い王子様の方に戻ってはくれぬかのぅ?」

「ウフフ・・・。
 魔法を解くには、清らかなキスよりも、
 全てを粉砕する必殺剣の方が、黒メガネのヒゲのおじさんには、お似合いでしょう。
 私、ヤマモトさんにファーストキスをお譲りするつもりもございませんし、
 勿論、そんな単純な方法で、この悪い魔女の魔法は解けませんわよ。
 でも、仮に今、愛らしい姿をした弟のウィルハルトに戻ったとして、
 ヤマモトさんは、そのウィルハルトにどんな悪戯をしようと思っていらっしゃるのかしら。
 男でも、女でも、可愛ければ見境が無いというのは、
 私としては、少々、変態じみていて心がくすぐられますけれど。
 フフフフフッ、愛のカタチは様々ですもの。
 私がお父様を何よりも深く強く愛するというのと同じで、
 お互い歪んだ愛の思想を持つということで。」

「一緒にするなーーーっ!!
 ワシ、純愛だからねっ!!
 例え女の子になれないと言われようが、
 ウィルちゃん(ウィルハルト)のことはどっぷり深く愛しとるからね!!
 ワシ、ウィルちゃんとハッピーエンドを迎えるつもりでおるから、
 ワシの後継者の方だけは、お前さんに頼むとするかのう!!」

「まあ、素敵な純愛ですこと。
 ヤマモトさんが力づくで奪ってしまわれるというのであれば、
 私はそれで、結構ですわよ。
 ウフフフフ・・・。」

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