ためぞうが、
『とても、溜まっていて悶々とした日々を送っているらしい・・・。』
というウワサが町内に流れています。
◇ 残りタイムは『30』秒です。
GOッ!
29秒・・・。
ためぞう「ちょっ、
ためぞうが30秒程度で、
この危機を乗り越えられんのは、認めるッ!
せめて、もう少しだけ猶予をください!!」
カチッ!
ストップウォッチが止まったような音がした。
どうやら、手動で計っているようだ。
審議で承認されましたっ♪
はーい。 では「3分」でお願いしまーす。
ためぞうの冒険ダッシュが始まった・・・。
ためぞうは、長崎ドラゴンタウンにある、
エリスねーさんの家にいます。
ただの、長テーブルとなったこたつの上に、
かごに入れられたみかんと湯飲みが二つ。
一つはおねーさんの物のようです。
ためぞうのは、有田焼の湯のみに、
タヌキの絵が墨で描かれています。
残り2分30秒・・・。
ためぞう「そーゆー、時間の使い方はやめてくれってw」
エリスねーさんが、お手洗いから戻りました。
エリスねーさん「ためぞうが、色々貯めてるって、
別にウワサにする事でもねーだろう?
ほら、ポイントとか商品券とか、
カードとかゲームとか、色々あんじゃん。」
ためぞう「それ、大声で学園の屋上でいいから、叫んでくんね?」
みかん食べてるエリスねーさん「ん? 別にいいぞー。
今度、言っとくから。」
残り2分・・・。
ためぞう「出来れば、1分半以内に叫んでくれないか?」
エリスねーさん「そりゃ、無茶振りだろ。
あたし、いまジャージだし、
ちゃりんこでも、すぐは無理だぞ。」
ためぞう「たのむ、オレのピンチを救ってくれっ!!
ワープすりゃ、間に合うだろ!?」
残り1分30秒・・・、
エリスねーさん「ちょっと、急かすなよ。
行くのはいいけど、せめて着替えさせてよー。」
ためぞう「こ、声だけでいいっ!!
録音して、大音量でオレが再生してくるからっ!!!」
エリスねーさん「そんなん、すぐバレて、
余計にあやしくね?
ウワサが気になるなら、消してやっから、
そんなに慌てるなって。
・・・そんなに、堅実に貯めてコツコツしてる事が、
気になるのか?
むしろ、あたしとかは誇らしいと思うんだけど。」
残り一分になりましたー。
カウントダウン開始しますねっ!!
ためぞう「お願いだから、ねーさんにも、
そのカウントダウンを見せてやってくれぃ!!」
エリスねーさん「えっ、何っ!?」
はーい、
では、デジタル表示で。
- カウントダウン 『0:50秒』 -
エリスねーさん「な、なんだこれっ!!
ば、爆発すんのかっ!!!」
ためぞう「・・・おそらく、
オレのハズカシ固めが、大爆発して、
ふっ飛んでしまうだろう・・・。」
『0:45秒』・・・。
エリスねーさん「えぇーっ!
もしかして、あたしのも、
一緒に巻き込まれちゃったりするのぉ!!」
それは、ありませんっ。
『0:40秒』・・・。
湯のみを持ったエリスねーさん「ずずーっ。
ちょっと、安心しちゃったぞ。」
ためぞう「何が起こるかわかんねえんだぞっ!!
またオレ、冒険送りかもしれねぇ・・・。
そんときゃ、暫しの別れだな。
おろおろおろ・・・。
ああ、みじけぇー帰還だったぜ。」
『0:25秒』・・・。
エリスねーさん「えぇー!!
折角、あたしに平和が訪れたのに、
また、エリナ先生たちに、怖え目に遭わされるのかっ!!!
そ、それは、ちょっと待ったッ!」
『0:18秒』・・・。
セバリオスさん「主審に「タイム」を要求するっ。」
ねーさんの危機に、
セバリオスさんがまるで、
未来からの来訪者のようなSFX効果で、
ほぼ全裸に、白のブーメランパンツ一丁で現れます!!!
エリスねーさん「すげーっ、カウント『3:00秒』に戻ってるぞっ!
てか、さっさと何か着ろよッ!!」
素晴らしく鍛えられた、
美術室の彫像のように美しいセバリオスさんの肉体美ですが、
エリスねーさんが見るには、まだちょっと早かったようです。
でも、他の女子たちなら、
キャーキャーもんですぜ、セバリオス先輩ッ!!
セバリオス先輩「まあ、エリスがそー言うならネ。
急いじゃったから、衣装が遅れたっぽいね。
サモンヌッ!! ジェントルスーツッ。」
と、次の瞬間、
マジカル変身シーンのように、
白の高級スーツと、ポケットに一本のコスモスを挿した、
セバリオスさんです。
ためぞう「クッーーー。
か、かっこいーッ!!
何すか、そのテクは。」
エリスねーさん「ていうか、
セバリオスでも止めれるタイマーだったのかよ。」
エリスねーさんは、
セバリオス先輩のその神のような実力を、
まったく理解してはいないようです。
セバリオス先輩「ところで、ためぞう君、
何か溜まってるのー?
熱く激しくスパークしたいって事なの。
あと「先輩」っていらないから、
ふつーで、お願いします。」
ためぞう「いや、
自分でも、いきなりカウントダウン始まっちゃって、
何の事やら。
確かに、キュンキュン甘酸っぱい、
キラメキ青春イベントには飢えておりますが、
個人的には、燃え上がるようなものではなく、
もっと、ゆっくり少しづつ、
和やかにほっこり出来るというのが、希望ですね・・・。」
恋愛番長セバリオスさん「・・・余計な「通り名」いらないから。
次、付けたら10億ボルトだからネ。
でも、ためぞう君らしいねぇ。
さすがに、5千と16年生きてるだけの事は・・・。」
ためぞう「な、何を仰る、セバリオスさんっ。
自分、まだピュアで冴えない16才の学生ですよ。」
エリスねーさん「ためぞうとの想い出は、16年しかないぞ。
ためぞーの前世でも語ってるのか?」
セバリオスさん「あ、そーだよねー。
(エリスの記憶、操作してるの?
変なことしたら、怒りますから。
エリスには、いつも微笑んでいて欲しいと願う、
セバリオスです。
例え、結ばれる相手がサフィリアさんや、
エリナ先生だったとしても、
そこは、変わりません。)」
セバリオスさんがいるので、
カウントダウン出来ません。
話が進まないのですが、
ためぞう君の冒険ダッシュ! は、
一本目、失敗でいっスか?
セバリオスさん「あ、用事があるんで、
今日はこの辺で。
はい、エリス。
コスモス、一本しかないけど良かったら。」
エリスねーさん「お、おう、
最近、気が効くよな、セバリオス。
みかん、何個か持っていけよ。」
セバリオスさん「ありがとー!
2個、もらって行きます。」
ガラガラーっと、エリスねーさんが玄関を開けると、
セバリオスさんは、道に横付けされた白にリムジンに乗って、
行ってしまいました、
みかん、一個は車内のセリスさんが受け取ったようです。
運転手さんは、代わりに中華まんを一個、受け取って、
お辞儀をしていました。
残り時間3分という、一時の安らぎの時間が訪れます。
エリスねーさん「お花っていいよな。」
ためぞう「騙されるなよ、ねーさんっ、
3分なんて、あっという間にチン! だぞっ。」
エリスねーさん「そんときゃ、
また、セバリオス、来るんじゃね?」
ためぞう「だから、それじゃ、
延々と終わらないからっ!」
『2:35秒』・・・。
エリスねーさん「おぅ!
カウントダウン見えると、
何だか急かされるな。
でもタイマーが無いのは、
無いで、分からんのも困る。」
ためぞう「てか、オレがどーして「もんもん」してるわけよ?
オレって、結構ー、そば打ちやら、学業やら、
バイトで充実はしてるんだが。」
『2:10秒』・・・。
ためぞう「こまめに表示して、数秒無駄に使うんじゃねーYO!
だが、どうするためぞう?
何を達成すれば、オレの変なウワサは消えてくれるんだっ。」
ピンポーンッ!
ためぞう「お、行ってくる。」
すると、たずねて来たのは、
最近よく会う、アリス会長さんでした。
アリス会長さん「こんにちはー。」
秋の晴れ渡る空に、草原を駆ける風のような、
心地よさを運んでくれる、
甘い香りのする、アリス会長さんです。
学園のブレザー姿ですが、その美少女っぷりは、
ためぞうの眼力程度て受け止められるほど、
甘っちょろい光輝ではありません。
正直、眩しくて何も見えない、ためぞうでした。
カウントダウンが、『99:99:99・・・世紀』の値で、
完全に停止しています。
エリスねーさん「おお、会長さん、
これは、珍しいですね。」
アリス会長さん「これは、エリスおねーさん。
妹のシオンが、お世話になりました。
今、女子力を再教育中ですので
(ためぞうにあてられて、
アニメとゲームにハマリ過ぎたので、
適度にやるよう、シオン君の将来の為、
主に気品を磨かせています。)
また、お世話になると思いますので、
ご挨拶に参りましたっ。」
っと、アリス会長さんは、
有名な洋菓子店の、なかなか買えないお土産を手に、
その洒落た紙袋を、ねーさんに渡しました。
あのお菓子大好き会長さんが、
人にそのお菓子をあげる何て事、
会長さんをよく知る人たちにとって、
有り得ない行為でした。
その知恵を出したのは、
お隣の女子高生のレイカさんですが、
会長さんに協力しておく事が、
今後の学園青春ライフがアゲアゲになるとか、
そんな下心はありません。
エリスおねーさんを共有すると、
誰もが心豊かになれると、
ご近所の女子さんたちは、信じて疑わないのです。
そのねーさんのカリスマ性が、殿方を遠ざけ、
ねーさんの婚期を遠ざけるだと気付いていても、
寝覚め立ての、ふんわりほかほか毛布のような居心地の良さから、
言えないでいる方もいたりします。
遠くのレミーアさん(う、言えねーっw)
同じく一緒にいるサフィリアさん(ご、ごめんなさい。まだ、学びたいのですっ(>ω<)!!)
ダッシュ!
が、止まってしまった、
エリスねーさん家ですが、
そんな中、アリス会長さんが、
にこやかな表情で、こう言ったのですっ!
アリス会長さん「噂は聞き及んでおりますっ。
正直、自信はないのですが、
おねーさんのお役に立てるのなら、
私、好感度ゼロ設定ですので、
ためぞうさんとは、何があっても関係が変わる事はありません。
(おねーさんには、気に入られたいですし、
もしかしたら、『好感度設定』が発生しちゃうかも♪)
私がこの身の全てを尽くして、
ためぞうさんの、もんもんを受け止めますので、
安心して、スッキリしちゃて下さいねっ!!
ねっ、ためぞうさんっ!!」
その会長さんのとんでも発言に、
ねーさんも、ためぞうも凍ったように固まっています。
自分でも、よく意味のわからない事を言った、
会長さんですが、
これは、となりの女子高生のレイカさんも、
慌てて、こっちへとやって来ちゃいます!!
今、この世界のすべてに時が停止しています・・・。
レイカさん「時を止めちゃって、何やってるんですかっ、
アリスさんともあろうお方が。
まったく・・・。」
アリス会長さん「えっ、
私は、妹のアリサに、
そうアドバイスを受けてですねっ。」
レイカさん「ハァ・・・、疑う事すら知らないとは、
そこまで、ピュアピュアなのですか・・・。
少しは、知っておいた方がいいと思いますので、
ごにょごにょ・・・。」
アリス会長さん「・・・。」
それはもう、その美しい顔を真っ赤にして、
そのままうずくまってしまった、会長さんです。
と同時に、会長さんとレイカさんの見えないレーザーサイトが、
アリサ副会長さんの、ビデオカメラを持つ姿を捉えたのです。
時はしっかり止まっています。
この瞬間、うっかりアリサさんは、
無限の時の牢獄に捉えられたのですっ!
黒幕が分かったところで、
ダッシュ! 一本目は終了です。
アリス会長さん「さて、出ておいでなさい・・・。」
いつもと空気が180度違う、
見たことも無い、深淵の闇を見せる会長さんです。
レイカさん「ほぉ、これがあの絶対者さんですか。
迫力、ハンパ無いですね。^^:」
この宇宙一、恐ろしいラスボス的、
暗黒と光輝の両方を纏う、ブラック・アリス会長さんの降臨です・・・。
その瞬間、何もかもが消えるように視界から無くなり、
星空の海の上に、アリス会長さんと、レイカさん、
そして、アリサ副会長さんと、
ちょっと遠くに、セバリオス先輩と亀吉さんの姿があります。
セバリオス先輩「だから、先輩って、言わないでねっ。」
亀吉さん「ど、どげんなんちょるとー!!(何が起きてるのー。)」
レイカさんが、お二方にお辞儀をすると、
空気を呼んで、見ないフリをするセバリオスさんと亀吉さんです。
アリス会長さん「アリサさん、
私の言いたいことは、分かりますね?
でなければ、私の世界に貴女は必要ありませんし、
この無駄な時間も必要ありません。」
宇宙空間のど真ん中で、
強烈な狂気を、嵐のように巻き上げるブラック・アリス会長さんです。
レイカさん「まあまあ・・・、
猛省しているようですし、
少しはアリスさんもお勉強になったので、
お許しになってはいかがですか?
仕切り直せばすむことですし、
アリサさんのこれまでの、
ためぞうさんへの軍師としての貢献度も評価してですね。」
アリス会長さん「何処かの大宰相のレイカさんが、
そこまで仰るなら良いでしょう。
しかしあのまま、何の知識もなく、
無様に終わったのだとしたら、
その後悔は計り知れないものだったでしょう。
そういう知識をレイカさんがお持ちであれば、
私に、その実力だけで、
銀河が取れるだけなるまで、
徹底的な、鍛練が必要なようですね・・・。」
レイカさん「そんなの、有りませんってっ!!!
それに、ピュアが売りのアリスさんが、
そんな凄テクを身に付けてたら、
ためぞうさんでなくても、どん引きですっ!!」
ちっちゃくなった(妹の)アリサさん「お、お許しを・・・。」
再び、みなさん地上に引き戻されると、
アリス会長さんからは、完全に闇が抜け去り、
レイカさんと口裏を合わせたように、
再度、エリスねーさん家にやって来た、
アリス会長さん。
そのシーンからの再会ですが、
とっくにウワサは消滅してますし、
エリスねーさんも、ためぞうも、
その記憶ごと、何も無かった事になっています。
セバリオス先輩(・・・。
エリスもエリスなりに、苦労しているのだな。
いいように、無かった事にされるとは。
その数も、どれ程なものなのか・・・。
それに比べ、先輩如きで煩うのは、
実に些細な事だ。
エリスっ、
ちゃんと応援してるからねーっ!)
この後、アリス会長さんは、
失ったような何かを取り戻すように、
充実した一日を送ります。
ダッシュ! 一本目は、
ためぞうに経験値を与えることはありませんでした。
アリス会長さん「久々に、ハネを伸ばせました~っ。
では、またですー。 (^-^)」
エリスねーさん「・・・、
何か失った気がするが、
一体なんなんだろう。
あ、みかんがちょっと少ないのと、
なぜかコスモスが一輪飾ってある・・・。
会長さんもご機嫌だし、
き、気にしない、気にしないの方向で。」
◇ ためぞうの現在のダッシュ能力。
・ 50m 5、00秒(ファーストからのタイム。)
・ 100m 9,87秒(セカンドからのタイム。)
代走には、うってつけです。
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