老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

1326; 皺に刻まれた老人の顔

2019-12-22 04:10:40 | 病室から
皺に刻まれた老人の顔

皺に刻まれた老人の顔は
誰もが同じように見えてしまいがちだが
おつきあいさせて頂くと
ひとり一人の顔の違いがわかってくる

皺に刻まれた老人の顔は
その人が生きてきた証明(あかし)でもある
働きに働いた老人の手は
指は曲がり爪は変形している

人生の家族の重荷を背負い続け
いまはこうして炬燵の温もりに安らぐ

昔 東京は花の都と呼ばれ憧れた
貧しかった時代だったけれど
卓袱台や囲炉裏を囲み
そこには家族の団欒があった

今 便利な時代になった
日本が、世界が狭くなった
「豊か」になったけれど
お金がかかる時代になり住みずらくなった

親がわが子を殺めるなんて
狂った世の中になった
老人の家族想いをつけこみ
振込め詐欺の行為も
同じく人間の心を殺めている


節くれだった老人の手指を握りながら
昔の苦労話を何度も繰り返す老人の話に
じっと耳を傾ける

老人の顔はすっきりとした表情になり
「こんな年寄りの話を聴いてくれてありがとう」と云いながら
湯呑み茶碗にお茶を注いでくれた

数分前のことは忘れても
満月に照らされ田の草取りをしたことは忘れていない
赤子を背負い実家に逃げ帰ろうとしたこともあった
今こうして炬燵の中で過ごしている自分が幸せだ


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