老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

802;お年寄りが好きなドリンク

2018-07-07 17:47:24 | 老いの光影 第2章
 お年寄りが好きなドリンク

余が関わり知っている老人
在宅訪問をすると
お茶代わり或は帰り際に
よく出されたりするドリンク
リポビタンD
チオビタ
オロナミンC

認知症を患う老人のなかには
体に「いい(良い)」と思い込み
1日に3、4本飲んだりしてしまう
トイレに通うこと頻回

頭痛や腹痛などすると
家庭薬である置き薬箱から
せきどめ
ケロリン
救心
などを手軽に服用してしまう
置き薬の人が
これは体調が悪いときに
よく効く薬だよ、と置いていく高価な薬

何でも効くと誤解される救心

救って欲しいのは
老人の心(気持ち)

そう「痛く」なくとも
「痛い」と訴えることで
あなたの傍に「居たい」
または
「生きたい」とも聞こえて来る

801;ただいま〔5〕

2018-07-07 12:25:43 | 老いの光影 第2章
 ただいま〔5〕

人間は人の中に居ても
一言も話をせず
家でもデイサービスでも
無言のまま5年間過ごしてきた文婆さん

耳が聞こえない
話しかけても話さない人だと
誰もがそう思い込み
デイサービスの椅子に座っていても
話しかけない
歌を忘れたカナリアではないが
話すことをしなくなった老人は
言葉を忘れてしまう
それだけでなく
口や喉の機能までが低下(退化)していく
脳卒中の病いがないのだが
話すとき呂律が回らず言葉が不明瞭な文婆さん
回りはそんなことは気にもせず
話しかける

隣りに坐る91歳の婆さんは
昨年の夏脱水症で入院
寝たきりの状態で退院した
さくらデイサービスに通い
2週間で介助つきだが歩けるまでに復活
復活した智恵子婆さんは
迎えに行ったときから帰るまで
機関銃の如く喋りどおし
文婆さんは口を開けざるを得ない

スタッフからも
洗濯たたみ、食器拭きなど
いろいろとお願いされる
人間頼まれると嫌な気持ちははしない

したくないときは
断れることもできる

いまは呂律が回らずはっきりしないが
そのうち言葉ははっきりしてくる
気長に待つ

デイサービスが終わり
家路に着いた文婆さん
夫が出迎える
聞こえる声で
「ただいま~」と話した
いままで「ただいま」の言葉を聴いたことがなかっただけに
夫の目はウルウルしていた
妻から話しかけることはもうないと思っていただけに
嬉しかった

「ただいま」の言葉は素敵だし
心に残したい言葉
学校や仕事などから家に着き
玄関戸を開け
「ただいま」
「おかえりなさい」
の会話は
家族のぬくもりが其処に在る
家で(自分を、私を)待ってくれる人が居るから
「ただいま」と言葉をかける

これが
家には誰も居ず
冬などは夕暮れ時が早いから
玄関戸を開けても
真っ暗で寒々しく寂しさを覚えるし
「ただいま」の言葉は必要としない

私を待ってくれるあなた
老いても夫婦で助け合いながら生きる
チョッとした言葉が人の気持ちを温かくしてくれる
「ただいま~」

800;ただいま〔4〕

2018-07-07 03:58:54 | 老いの光影 第2章
90歳を過ぎても 自分でできることは自分で行う 時間はかかるが「待つ」ことが大切

子育ても老人介護も同じく「待つ」

 ただいま〔4〕

文婆さん
昨日(7月2日)は85歳の誕生日だった
今日はさくらデイサービスに行く日(2回目)
85歳の誕生祝ということで
少し遠出ではあるが
約10km先にある田舎食堂で外食会
空は晴れ
心も晴れ
8人のジジババと
4人の熟年?スタッフ
4台の軽自動車に分乗し
出発

別のデイサービスで
5年間利用していたが
外食の機会は一度もなかった
〔25名の利用者では行きたくても行けない〕
必ずしも大きいことはいいことではなく
小さい方が小回りがきいて自由がきく
10名の小規模デイサービスはいい
〔経営は厳しい〕

テーブルに着いた
文婆さん
メニューを手にし
カレーライスを選んだ
職人が作ったカレーの味に
口元もほころぶ

ここの田舎食堂の目玉は
ビッグな海老天丼

外食は
子どもだけでなく
老人もウキウキ楽しみ

さくらデイサービスに来て
文婆さんは
自分を気にしてくれる
言葉をかけてくれる
お願いごとをされる
自分の居場所ができたような
そんな気持ちがする


〔次回へ続く〕