ぎっくり腰になると言いますが、あなたが腰痛になってしまったのは、他の誰かのせいではなく、あなたの責任、取り巻く生活環境への免疫低下が原因です。この機会にしっかりと自分自身の体を治す、いたわる努力も必要です。
しかし、少し動いてもビクッと激しい痛みが走り、歩くにもそろりそろりと歩かなければならない。一旦、ベットに寝ていただいて治療しようとして、寝返りをお願いしてもまったく動けない患者さんもいらっしゃいます。そんな方をどう治療するのかをご紹介しましょう。
まれに椎間板ヘルニアなど重症な方もありますが、普通は筋・筋膜性腰痛と言われるものです。
刺激鍼による治療をおこなう治療院では、トリガーポイントと言う筋肉の硬結している部分を探り、鍼を皮膚から筋肉の硬結部位まで差し込んでいく。そして、鍼を刺入した時にひびきが痛みを感じている部位に生じたことを確認します。このひびきは筋肉の硬結に緩みを与え、痛みを緩和させる手法です。
当院、脉泉堂では鍼を直接痛みが生じているところへ差し込んで治療する治療はしません。
経絡治療 (けいらくちりょう)と言う治療をおこないます。
経絡治療とは体全体の気血の調整を行なう治療方法です。 治療法を東洋医学と西洋医学の2つに分類したとき、痛んだ筋肉を治すのは整形外科的手法で、西洋医学的手法です。
それに対し、経絡治療は東洋医学そのものです。
私たちの身体に起こる病はおおまかに言って、気の変化、つまり気によって病を起こす人と、血の変化、血によって病を起こす人に分類、気が滞っている気虚証、血が滞って病気を起こしている血虚証に分類します。
この気と血の調整をするためには、治療方針となる見極めをまずおこないます。
患者さんの訴えをどの経絡の変動であるかと言うことを診る。患者さんの気の状態を診る手法として四診法と呼ぶ、望診・聞診・問診・切診の流れがあります。
まず、望診・治療院に患者さんが入ってこられた時のドアの開け方閉め方、スリッパの履き方、歩き方、自覚症状を訴えるその訴え方の特徴を見て、五臓『肝・心・脾・肺・腎』に落とし込んでいきます。
次に、聞診・声の高低、喋り方のメリハリのあるかないか、力加減、さらには臭いも聞診に入れるのですが、体臭とか口臭とか発する臭い、五香を嗅ぎ分けようとしています。
望診・聞診の中で主訴・愁訴を含めて気の変動が浮き彫りになった。今度は問診をするにあたってはそれに関わるものから絞り込んでいくという技術を組み立てて行きます。
患者さんにいろいろ聞いている中で、患者さんが自分の状態を理路整然とはっきりと答えられるときは五臓『肝・心・脾・肺・腎』の状況を虚実で言えば、腎が実状態になっている場合が多いようです。
肝の状況が実している場合は、とにかくやることが一方的と言うか、自分の悪いところを分からせようと自分の体をポンポンとたたきながら訴える行動を取られるようです。
当然、食欲、睡眠、便通、それから既往歴。そのようなことも必須のことでございます。例えば、この方は脾土の変動が強そうだなと思ったら、それに関することをこちらから聞く。脾土だったら食欲の問題とか排便の問題とか。それから、すぐ考え込んで色々と悩んでしまうような精神面の思い、脾の病でしょう。
望診・聞診・問診の結果がつながるように診察していきます。
次に、切診です。患者さんにベットの上に仰向けに寝ていただき、まず両手の手関節付近の脉状を診ます。脉状とは六祖脈と言って、浮沈・遅数・虚実のどの状態かを診ます。脈が浮いているか、沈んでいるか、遅いか早いか、力がないか勢い過ぎているのかです。
次はお腹の状態を診ます。お腹の皮膚の状態、乾燥してカサついていないか、湿っぽくないか、お腹も五臓に配当する診どころがあります。肝の診どころ、脾の診どころ、肺の診どころなどがあり、これまでの望診・聞診・問診の結果を考えながら触診していきます。その他、足の冷え、むくみ、カサツキ、湿疹、肩のコリなども確認していきます。最後に脉診です。
脉を診るのに、患者さんの手関節掌面において橈骨茎状突起の内側に中指を当て、その両側に示指と薬指を添え、この三本、両手で六本の指で脉診します。臓腑経絡の配当で判断し、どこが一番虚しているかをこれまでの望診・聞診・問診・切診を考慮しながら診ていき、主症を決めます。
どの経絡に変動が起きているかを総合的に判断していきます。
本題に戻って、腰痛でお見えになった患者さんとの会話、エピソードですが、「先生! 痛いのは腰ですよ~ どうして手首・腕とか足先・ふくらはぎにばっかり触るんですか??」と聞かれるることがあります。 聞かないまでも心境として怪しがっておられるな・・・と気づくこともあります。
まあ、そうなる前に経絡治療の特徴をそれなりに説明しながら進めていきますけど、腰とはとんでもなく離れた足親指の付け根付近に鍼をすることもあります。
ギックリ腰で多くみられるのは肺虚証と呼ぶ証です。 風寒の邪が皮毛を冒したために起こるものです。
肺虚証の治療では 太淵、太白 と呼ぶ経穴を補っていきます。 太淵は手首に、太白は足親指のある経穴です。 この経穴をそっと私の左人差し指先で探って、右手に持った鍼で弱っている気に元気を与えていくのです。
「虚するものはこれを補い、実するものはこれを瀉す」が治療の原則です。 すなわち、補う鍼、瀉す鍼の手技があります。優しく正気を補い、邪が入っている場合は取り去るために鍼をします。
鍼は使い捨てのディスポーザブル鍼で滅菌処理された銀鍼、ステンレス鍼で、太さは0.18㎜程度の細い鍼を使います。鍼を刺すと言う表現は適切ではなく、鍼を皮膚に接触させて虚している部分に元気を与える、邪が入っている場合は邪を鍼先に絡めて引き出す、取り去ることをします。
気の変動が鍼をしたことでどう変化したかを検脉して確かめ、次の鍼につなげていきます。ほぼ2本の鍼で虚していた経絡は補われ、平脉となります。
次は標治法と言って体全体の虚実が現れていた場所を接触鍼、散鍼、お灸などで整えていきます。カサついていた場所は潤いが出、冷えていた場所も温かみを取り戻し、凹んでいた場所も膨らみを取り戻せれば完了です。
全体の気がスムーズに流れるようになり、邪もきれいに取れたっていうことになれば、患者さんはすっきりと気持ちよく帰っていただけることになります。
その他、緊急的に痛みを即効性ある鍼の手技でとりあえず治療して始めることもあります。この治療も経絡治療で、我々の身体を流れている経絡、痛みが生じている場所がどの経絡の流れに生じているかを見定めて金鍼を接触させていく、鍼尖の抵抗が緩むと共に、症状の改善を診て抜鍼します。(子午治療)
事例ですが、夕方 そろそろ治療院を閉めようかなと思っている時間に一台の車が玄関口までそろっと入ってきました。 60後半の男性で、作業着を着ておられ、車の窓を開けて話しかけてこられました。
「今から良かね・・・?」 「腰が痛かとばってん、直しきっや・・?」
何ともつらそうな声で話しておられます。 「まあ~、上がらんね!」 と声掛けして治療院のベットに横になってもらいました。
とりあえず、先に述べました 子午治療を施し、少し話しぶりも柔らかくなられたようなので、身体の気の調整をさせていただきました。
治療時間は 約30分間、4日後の予約を入れ、治療を終え 玄関で靴を履くご様子を後ろから観察させていただきながら
「どうですか・・?」と声を掛けると腰をくねらせながら、「あれ・・? 少し良かごたるばい・・」 と言って、車に乗ってお帰りになられました。
2日後、今度は電話を掛けてこられました。 「今日は時間あるね。 もう少し診てもらいたかとばってん。 だいぶ良~なったとばってん、もうチョット診てもらって早く治したかと」とおっしゃいます。
結局、初診含め 3回お見えになりました。 その後、音沙汰なしがあって・・4ヶ月後の先日、電話を掛けてこられました。 「予約でけんね・・、今日は前回の場所では無かとばってん、腰が痛うなって、診てもらいたかと」 とおっしゃいました。
3回で来られなくなり、あれ~~ 別の治療院へでも替えられたのかな~~ と思っていました。
何もしないで弱った身体に邪が去来し、身体をおかしているのです。 ときどき、経絡治療で気の調整をすると邪が入りにくい身体の状態を保てます。
健康には、栄養と運動と生きがいを持って過ごすことだと言いますが、とんでもない境遇が自然界・生活環境・人間関係からのストレスが我々の身体はさらされます。 穏やかな、ホッコリとした生活を送りたいですね。
大丈夫、きっと良くなります。何より、あなたの体に向きあおうとする姿勢が治癒力を高めていきます。
いつでも、同じ場所で、同じ気持ちで、あなたをお待ちしています。
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