11…桜は染井吉野だけにあらず

己の声で水晶を振動させて、
石を割り出すクリスタルシンガーのようになれたらなあ。
彼女たちの歌は、重なり合い響きあううちにコダマとなり
コーラスとなって峰山を走る。


桜を見た。
染井吉野の盛りはとうに過ぎていたけれども、
桜は染井吉野だけにあらず、
遅咲きの桜たちが、春の爛漫を謳歌しているようだった。


流行り歌は街行く人がひとつの歌にそれぞれの心を載せて唄うもの。
僕は僕の歌を歌いたい。
けれどどうしたって僕の心から歌は生まれてこない。