はせがわクリニック奮闘記

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癌には高濃度ビタミンC点滴も施行中です。

亜鉛欠乏症

2013年06月05日 | 医学
今日はネットで、”亜鉛欠乏症のホームページ”を開いて勉強しました。

長野県の民間診療所に勤務する倉澤隆平医師が2002年に或る患者に出会ったのが、そもそもの始まりでした。
元来、精神発達遅延の73歳男性です。
ベッド上に寝たきりで、周囲に全く無関心で意識レベル低下、拒食のために胃瘻(いろう:腹に穴を空けて、食物をチューブから直接胃に流し込む手技)設置、
難治性の褥瘡(床ずれ)など、意識ある植物人間とでも言うべき状態でした。

拒食に対して倉澤医師は亜鉛不足による味覚障害を疑い、亜鉛が含まれた胃薬であるプロマックDを朝、夕に1錠ずつ処方しました。
また、血中亜鉛濃度を定期的に調べてプロットしていきました。
2週後に褥瘡が治癒。
5週後に、徐々に食事を摂取し始め、
2ヶ月で食事をどんどん摂りだしたので
2ヶ月と10日後に胃瘻を抜去、きざみ食を全量摂取
3ヶ月後には元気度も改善、表情も出てきて精神的にも落ち着き、簡単な会話も可能になり、歌も歌い始めました。

この症例から倉澤医師は、亜鉛欠乏症を改善させてやると味覚障害だけでは無く、様々な症状が回復するのではないかと推理します。
その後、数回にわたり長野県内のいくつかの地域で、住民の血中亜鉛濃度を調べて、様々な疾患との関連性を考察しました。

分かったことは、長野県民の血中亜鉛濃度の平均が基準値よりも低いということでした。
そして、亜鉛不足は高齢者になるほど増えてくることも分かりました。

以後現在に至るまで、亜鉛欠乏症が疑われる患者250人に倉澤医師はプロマックDを処方しました。
その結果、明らかな著効が得られた病名を頻度順に列記すると、
食欲不振、褥瘡、元気度の低下、味覚障害、舌咽頭症状、水疱性皮疹、アフタ性口内炎、角化性皮疹、口角炎、貧血、慢性下痢、嗅覚障害などです。

私も、上記のような疾患や、不定愁訴が多彩な患者さんに遭遇した時には、プロマックDを試してみるつもりです。
ただし、問題点もあります。
プロマックDは胃潰瘍以外の病名では保険適用にならないのです。
倉澤医師は長野県側と話し合って、亜鉛欠乏症の病名でプロマックDを保険適用にすることに成功しました。
しかし、日本では長野県だけのローカルルールです。
一錠が37円の安価な薬ですが、どうしたものでしょうか?
この薬だけ実費で売ることは、混合診療となるので許されないのです。