つくばの“ド素人”音楽同好会

クラシック音楽から,邦楽,洋楽とジャンルにとらわれず幅広く語り明かす,音楽の素人さんのための憩いの場です。

新宿+代々木ハロコン+地震+サントリーホール読響=奇跡の演奏会【ソワレ soire】

2005年07月26日 22時22分58秒 | 素晴らしき演奏会
さて,前回の続きになります。
紙屑と化した勝馬投票券を忘れるかのように,私は急ぎ足で渋谷駅に向かった。
気落ちしている場合ではない。なんともう1本コンサートをこなさなければイケナイのだ。
今日の私はなんて忙しいのでしょう!

次の会場はあのヘルベルト・フォン・カラヤンがアドバイザーとなって1986年にオープンしたサントリーホールだ。
渋谷駅から銀座線に乗り換えれば会場はすぐだ。
「さ,溜池山王まで切符を買いますか・・・」と売場に並ぼうとしたとき・・・。

グラグラグラ~(ふぉんと7)

なんと震度5強の大地震ではないか!!
ほどなく,電車は止まり,売場も一斉に“販売中止”になった。
線路の点検でしばらく電車は走らないという。
とはいうものの,私はほとんど揺れを感じなかったので震度の詳細などは後から知って驚いたくらいだ。

とにかく,運行再開を待つのだが,待てど暮らせど一向に走る気配はない。
改札前では,そろそろイライラしてきた乗客で雰囲気が悪くなってきた。
そのくせ,スクランブル交差点では若者達が何事もなかったかのように109に向かっていく。その対比が何ともいえなかった。

さて,さすがにこのままだとコンサートに間に合わない。
私はタクシーを拾いに,コンクリートジャングルへ飛び出した。
しかし如何せん,どのタクシーも空いていない。しかも,あちこちでタクシー待ちする人の姿が。
実はこの段階で開演50分前。呑気な私もさすがに顔が青ざめてきた。
と,渋谷駅南口付近でお客を降ろしかけるタクシーを発見。
ただ,信号待ちの車道でのこと。
しかも目の前の信号は今にも青に変わろうとしている。
「これを逃したら,間に合ワン!」。
やはり人間はその気になれば何でもできる。
私はガードレールをベリーロールで飛び越えると,一目散にそのタクシーに駆け寄った。
途中,他の車にクラクションをブーブー鳴らされたが,知ったことか!
なんとか,このタクシーに乗り込んだ。運転手もまさか車の隙間から人間が出て来るとは思わなかったらしく驚いていた。おかげで時間に間に合った!!

さて,サントリーホールでは我がOGT氏が喫茶店の椅子にドデーンと構えて私を待っていた。アル・カポネみたいな男である。
既に携帯電話はつながらない状態だったが,カポネのオーラーは300m離れていても一目で分かった。こういうときのカポネは有り難いと思った。

申し遅れたが,ここで観るコンサートはこれだ!!
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読売日本交響楽団

指揮:井上 道義
■モーツァルト: 歌劇〈ドン・ジョバンニ〉序曲 K.527
■モーツァルト: 交響曲第40番 ト短調 K.550
■シュニトケ: モーツァルト・ア・ラ・ハイドン
■ハイドン: 交響曲第45番 嬰ヘ短調〈告別〉
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交響曲40番は最高にお気に入りだし,ハイドンの「告別」は演奏中に一人一人奏者がいなくなり最後は指揮者だけになるという面白そうな曲だ。
指揮者の井上道義さんは初体験なのでそれも楽しみだ。

会場に入ると,お客さんが全然いない!
それもそのはず,交通機関が機能していないのだから。
30分開始を遅らせたが,焼け石に水。入場数約4割。

冒頭,指揮者の井上さんから「このような状況の中で足を運んでくれた皆様に感謝します。」との旨のコメントが。お客さん,一同拍手。
さて,コンサートの内容の方だがOGT氏によれば,やはり読響は上手いとかなんとか言っていた。私はその辺のところはよく分からなかった。ただ強烈に感じたのは,井上さんは指揮はもとより,一流のエンターティナーだということ。モーツァルト・ア・ラ・ハイドン ではそのユニークな身振りで観客を大いに沸かせてくれた。気が付けば井上さんファンにさせてしまうエネルギーを感じた。

さて,「告別」。演奏中に一人一人奏者が舞台裏に引っ込み,指揮者まで先に引っ込んでしまった。最後にヴァイオリンとビオラ(?!)の2人が残って演奏会は幕を閉じた。

拍手喝采の中,顎を少し上にあげてステージ上に戻った井上さん。
「今日の公演は満員のはずなのでしたが(笑),お客さんがだんだんと増えてきて,こちらのメンバーはだんだんと減っていくとても不思議な経験ができました。ありがとうございました(会場爆笑)」。と洒落た挨拶で締めくくった。

確かに,地震でほとんどお客さんが入らないコンサートを観るなんて,そうそうあることではない。
まさに私にとっては奇跡のコンサート。奇跡の1日だった。