東京国立近代美術館で開催中の展覧会
『揺らぐ近代:日本画と洋画のはざまに』を
ギャラリートークの帰りに同僚ボランティアと見て来ました。
そもそも、日本画ってなに?洋画ってなに?
という”問い”を切り口に、
「脱亜入欧」という時流の洗礼を受けた近現代日本画壇の作家の、
日本画らしからぬ日本画、洋画でありながら日本画的芳香を残す
作品~ボストン美術館収蔵以来、日本初公開となる4点も加え~
約150点を全国から集めた展覧会です。
(今では珍しくもないことですが)日本画の画材を用いながら
洋画的な題材やタッチ、構図に”挑戦した”紛れもない日本画。
その逆を行く洋画(こうなると世紀末フランスで見られた
ジャポニスム運動にも見え…となると逆輸入?何だか不思議)。
正に日本画と洋画の「はざま」に位置するような作品群に、
当時の作家達の、”時代の急激な変化への戸惑い”と同時に
”旺盛なチャレンジ精神”を感じました。
彼ら近代の作家は、先日受講したセミナーで講師が引用していた
文化人類学者マーガレット・ミードの言葉
「変化が大きい時代には、”何を教えるか”ではなく、
”どう学ぶべきか”が重要である」を
図らずも体現していたと言えます。
変化の激しい時代が求めるのは、
変化に臆することなく対応し、
新たに何かを生み出す創造的な人間。
そうした人間が生み出した作品だからこそ、
後年の作家達に大きな影響を与え、
100年を経ても生き残って、往時の”熱気”を今に伝えている。
今また変化の著しい時代だからこそ、
こうした作品群との出会いに、私達見る者は励まされ、
先達の勇気と努力への尊敬の念を呼び覚まされるのです。
共に鑑賞した同僚とも語りあったことですが、
近々可決される見通しとなった教育基本法案などの文言よりも、
そしてその法令の下に行われる学校教育(特に徳育?)よりも、
例えばひとつには、こうした作品群
~過去の先達が切磋琢磨して創造したであろう遺産を間近に見て
”感動する体験”こそが、自国の文化や自国の国民性、
ひいては自国を、誇りに思い愛することに繋がるのではないか?
そこには大義名分は必要なく、強制力も働くことはない。
ただただ作品と向き合い、自然と沸き上がる思いが、
屈託なく尊敬や誇りへと繋がって行く…
本展覧会を見て、そんなことを思いました。
海外の有名作家の企画展で、
しばしば大きな賑わいを見せる東京国立近代美術館ですが、
こうした自国の近現代の作品を新たな切り口で紹介する活動も
行っています。
本展覧会は一見して地味(マニアック?)な印象なのか、
あまり巷では大きな話題にはなっていないようですが
(混雑していない分、じっくり見られる利点もあり…)、
見終わった後に思わず背筋がシャンとするような、
日本の近現代の作家達を再発見、再評価できる、
またとない機会となっています。
お時間を作って、是非足を運んでいただけたらと思います。
会期は今月24日(日)まで。観覧料は一般が850円。
中学生以下は無料となっています。下記サイトには割引券も。
東京国立近代美術館『揺らぐ近代展』情報
ちなみに出展作家は狩野芳崖、横山大観、速水御舟、熊谷守一、
原田直次郎、高橋由一、岡田三郎助、梅原龍三郎、岸田劉生など、
錚々たる面々です。