今だから…昭和さ ある男のぼやき

主に昭和の流行歌のことについてぼやくブログです。時折映画/書籍にも触れます。

意外にも挑戦者・前川清

2005-07-19 02:36:58 | 昭和の名歌手たち
前川清は演歌歌手では無い。
本来、歌謡曲の歌い手である。80年代で歌謡曲のカテゴリーが消滅し、無理やり演歌に流されてしまっただけであり、特にソロ当初はまったく演歌色は無い。

彼のソロデビューは1982年。
萩本欽一の番組でも使われた「雪列車」という曲である。
作詞:糸井重里 作・編曲:坂本龍一
従来の前川清(=クールファイブ)の歌とはまったく違う曲におそらく「えっ」と思った方もいただろう。一方で新たなファンを獲得できたようにも思える。
大ヒットとは言えないがそれなりに成功したように思える。
ちなみに未だにカラオケで男性が結構よく歌うことがあるらしい。

そういう挑戦をてっとり早く纏めたCDがある。
「前川清コレクション 雪列車~ひまわり」(TECE-30304 テイチク)だ。
このCDは前川清がテイチクに移籍し、福山雅治に提供してもらった「ひまわり」までの各種アーティストに書いてもらった曲のベスト盤である。
(正直なところ、ベスト盤では無く、ちゃんとアルバムを作ってほしかった…)

普通のベスト盤とは違い、若干愛情はある作りである。
ピクチャーレーベル、シングル「ひまわり」同様の福山雅治撮影のジャケ…。
「東京砂漠」「そして、神戸」などの代表曲は排除された曲目…。
1 雪列車(坂本龍一)
2 涙(中島みゆき)
3 最後の手紙(村下孝蔵)
4 ファニー(鈴木茂)
5 うつっちゃったみたいな(井上ヨシマサ)
6 北のHOTEL(高見沢俊彦)
7 流木(近田春夫)
8 明日に(2001 Version)(梶原茂人)
9 他の男・別の女(坂本龍一)
10 雨を聴きながら(福山雅治)
11 I Love You So(矢野顕子)
12 なきむし姫の物語(矢野顕子)
13 終着駅 長崎(さだまさし)
14 酔いしれて(村下孝蔵)
15 決断(伊勢正三)
16 ひまわり(福山雅治)

5はヒップホップというのだろうか…とにかく唖然としてしまう出来。
14は素晴らしい出来である。シングルでもいける。

他もなかなかの出来である。さすがといえる。
中島みゆきの2など、ホントにびっくりするぐらいの出来。
10は「ひまわり」のカップリングで、福山雅治のアルバム曲だそうだ。
原曲とは違うボサノバアレンジがまた良い。


しかし…彼の中でもっとも凄いアルバムがある。
「バラードセレクション~明日に」(GRCE-1003 ガウス)
1 明日に
2 恋人
3 涙
4 HOWEVER
5 愛がほしい
6 ラブ・イズ・オーバー
7 花の時・愛の時
8 最後の雨
9 蛍…どこかで
10 真夏の果実
11 抱きしめて
12 乾杯

サザンやGLAYのカバーに自分の名曲…。
ヤフオクに出品されれば毎回1万円をこえる人気商品(もう入手不可)。
私もまだ聞いたことすらない。
ぜひお持ちの方、聞かせてほしいものである。
こういうものこそ再販してほしい…。


一度、騙されて聞いてみてください、前川清を。
恥を捨てて(笑)。予想以上にいいものである。

そして歌は生まれた~恋文

2005-07-19 01:21:09 | 70年代・歌謡曲
「恋文」作詞:吉田旺、作曲:佐藤勝
1973年8月に発売され、スマッシュヒットし、この年のレコード大賞では最優秀歌唱賞に輝いた。由紀さおりの代表曲である。

作詞の吉田旺の弟が、当時由紀さおりの所属していた事務所のスタッフだった。
彼は兄から預かっていた詩を、何の気もなく机の中に入れっぱなしにしていた。
それを由紀さおりのマネージャーが、やはり何の気なしに見つけたのだった。
「候文の歌とは、面白い」と早速この詩を由紀や他のスタッフに見せた。
それが「恋文」だった。

候文の文体そのものに独特のメロディーのようなものがある。
イメージを損なわずに曲をつけることは大変な作業。
「さて…」と考えに考えた結果、黒澤明の映画音楽で著名な作曲家である佐藤勝に白羽の矢が立ったのだった。

彼は詩に2パターンの曲をつけ、持ってきた。
一つ目を由紀やスタッフに見せた後にこう言った。
「実は、もうひとつ作ったんだけど、ちょっと恥ずかしいんですよね。こっちを使うなら、ペンネームを別に作ろうかと思うくらいでね」

由紀は後にこう回想している。
「おそらく、先生にとっては歌謡曲っぽくなりすぎたかな、と躊躇されたのだと思います」

どちらにするか、協議し、由紀が歌っていくうち、彼も「二つ目の方がいいかな」とやっと納得し
こう由紀に言った。
「僕の曲は、3年に1度のペースでヒットするんだ。だからこの曲もヒットするよ」

作曲家・佐藤勝としては「若者たち」(同名ドラマ主題歌)、「昭和ブルース」(非情のライセンス主題歌)などのヒットがある氏がそう自信を持っていっただけあり、この歌はヒットした。
とはいえ、爆発的ヒットではなく、じわりじわりと…というヒットである。

2代目中村鴈治郎(3代目、中村玉緒の父)がワイドショーに出る際、歌は聴かないが、「恋文」は好きで、ぜひにと競演を依頼されたというエピソードがこの歌のヒットの仕方を示すいい例である。

歌詞のイメージは
和服を着た女が巻紙を片手に筆で思いをしたためている、そんな姿が浮かぶ。
当然、ステージ衣装も着物で…とスタッフも考えていた。
が、「あまりに決まりすぎていて、嫌だ」と由紀が反対し、ステージ衣装はドレスに。

歌う際も、「なにぶん、候文ですから、殿方にとって、耳障りにならないよう歌うのに、人には言えない苦労がありました」と後に由紀が語っている。

ちなみに♪アズナブール流しながら~
のアズナブールは、フランスの歌手の名前である。
その辺の絶妙な詩がまた素晴らしい。

聞けば聞くほど…そんな歌である。