今だから…昭和さ ある男のぼやき

主に昭和の流行歌のことについてぼやくブログです。時折映画/書籍にも触れます。

「二人でお酒を」革命~梓みちよ

2005-07-28 11:51:22 | 昭和の名歌手たち
梓みちよはナベプロが力を入れてデビューさせた歌手である。
当初は「ボサノバ娘」をキャッチフレーズだった。
その後、田辺靖雄との「ヘイ・ポーラ」がヒットする。
通称「マイ・カップル」、他にも「けんかでデイト」「いつもの小道」をこのコンビでヒットさせる。
そんな中、本当は永六輔のこの誕生を個人的に詞を書き、中村八大が曲をつけた曲が梓に転がり込む。

「こんにちは赤ちゃん」
このささやかながら言いたいことはしっかり言っている詞、口ずさみやすい曲。
人気テレビ番組「夢で逢いましょう」の今月の歌として、世に出たこの歌は話題となった。そして、本命と言われた畠山みどりの「出世街道」を押さえ、レコード大賞を受賞した。梓みちよの健康的なイメージも定着した。

だが、実際は酒もタバコも麻雀もたしなむ梓はやりにくかった。
「私はこんな女じゃない」、やがて曲も売れなくなってきた。
やがて自分のイメージを作った「こんにちは赤ちゃん」を憎むようにもなった。
そして、徐々に自分のイメージを変えていこうと決心した。

「新婚さんいらっしゃい」の司会もイメージチェンジに一役買った。
だが、やはりこの曲なくしてイメージチェンジは語れない。
「二人でお酒を」
この曲は平尾昌章が自身のリサイタル用に書き下ろした作品だった。
それを聴いた梓が是非にと希望し、レコーディングしたのだった。
当時は歌謡曲全盛時代、毎日どこのテレビ局でも歌番組があった。
梓のあぐらをかくパフォーマンスは視聴者の度肝を抜いた。
大好評だった、見事に梓は「大人の女」にイメージが変わった。

この曲のヒットに、ザ・ピーナッツはショックを受け引退の意思をより強くしたと言われている。「ここまでは私たちに出来ない…」

昭和49年の紅白歌合戦では紅組司会の佐良直美以外全員が応援であぐらをかいて
梓の歌に花を添えている。
さらに余談だが、今の女性があぐらをかくことは普通の光景となっている。

その後も「大人の女」路線を突き進み、「淋しがりや」「あかいサルビア」「メランコリー」「よろしかったら」などをヒットさせる。
「良い歌だから」と後輩の歌も躊躇することなく、ステージで披露したり、アメリカで本場の舞台を見て自身の物にしたり、芸の精進は怠っていない。
そのため、レパートリーは広い。
歌は、自信が感じられる歌唱が嫌いという方もいるが、やはり巧い。
「梓みちよの世界」をしっかり確立しているため、カバーも安心して聞ける。
宝塚出身だけあって、もとの芸がしっかりしているのも大きいと思う。

コンサートでは長年「こんにちは赤ちゃん」はあまり歌いたがらなかったが、アメリカでの公演の際の反響がきっかけで、自分の浅はかさに気がついた。
そう40周年のコンサートの際に話している。
「『こんにちは赤ちゃん』が元キーで歌えなくなったら引退する」とも発言。
今は披露するようにはなってきたと思われる。

最近はあまりテレビで見かけないが、たまには良い歌を聞かせて欲しい。

蘇った伝説のステージ~CHIEMI IN Los Angeles

2005-07-28 01:30:39 | 江利チエミ
江利チエミのステージは、その殆どが聴衆の記憶にしか残っていない。
映像の類は30thアニバーサリーの(おそらく)東京公演が若干現存の可能性がある
だけという半端じゃないくらいのお寒い状況だ。
音源も4・5ステージのみ現存。復刻された物も今では廃盤で入手困難である。

そんな中、「もう一度、チエミのステージを見たい、せめて聴きたい」「一度、チエミのステージを見たい、せめて音源を…」とファンが思っていた最中、このニュースが入ってきた。

 戦後、ジャズ歌手として活躍し「サザエさん」役でも人気のあった江利チエ
ミさん(1937-82年)が晩年に残した米国公演の録音テープが2日まで
に、東京都内の親族宅で見つかった。
 テープはチエミさんが自身で聴くために録音したもので、存在は知られてい
なかった。一時、結婚生活を送った高倉健さんの「唐獅子牡丹」を熱唱するな
ど異色の内容で、21日発売のCDボックスセット「江利チエミ 歌の宝石
箱」(キングレコード)に初めて収録される。
 テープを保存していたのは、チエミさんの義母の久保多紀子さん。公演はチエミさんが死去する約2年前の1980年5月、ロサンゼルスで行われ、チエミさんにとって最後の海外公演となった。久保さんはテープを仏壇の近くに保存しており「チーちゃんは気に入らない部分だけを何度も巻き戻して、音が変わるまで再生していました。努力の人でした」と話す。

何と幻中の幻のロス公演の音源がソフト化!
これはワイドショーでも報道された。

音が悪いのでは?モノラルでは?
キングレコードが気合を入れて、リマスタリングなどを行なってくれたお陰で予想以上に良い音で、そしてステレオで聴くことができた。
残念ながらトークは殆どカットされてしまっていたが、収録時間の関係上、仕方ないだろう。

肝心の内容だが、素晴らしいの一言に尽きる。
チエミのボーカルも晩年とは思えないくらい絶好調。
バンドのロサンゼルス・ユニオン・オーケストラの演奏の良さ、さすが本場のバンドである。
この公演では在留日本人や外国人向けにチエミ十八番の民謡を数多く歌っている。
(これはチエミのステージでは珍しいらしい)
これが本当に良い。オープニングは花笠音頭(余談:同じ会社の三橋美智也の公演の最後はこれ)から始まるのだが、にぎやかなOPにこれから始まるショーへの期待も高まる。そこから怒涛の勢いでチエミ民謡の連続。一般ファンには堪らない。
そして十八番の中の十八番「さのさ」を早めに披露。

秋田民謡「ドンパン節」では会場の客にマイクを向ける。
ここでのチエミのトークが、人柄を感じさせる温かい、そして機転の利く人であったことを感じることが出来る。

第2部(?)ではチエミ以外はほぼ不可能な芸当である「歌の勧進帳」と称した20数曲のポップスメドレーを披露する。

懐かしの唱歌「叱られて」では望郷の念・幼少時の思い出を呼び起こさせる。

コアなファンも一般ファンも大喜びの、披露の機会は少なかった、人気ドラマ「咲子さんちょっと」、加藤剛との競演の『黄色いトマト』主題歌の「愛はひそかに」
を、さらに、あの、江利チエミと言えば、の「サザエさん」までのサービス歌唱。

江利チエミの実力を感じさせる戦後歌謡曲メドレー。
最後は「唐獅子牡丹」を披露し、沸かせる。

「酒場にて」でのバンドの演奏の良さ。
「新妻に捧げる歌」では神々しさ。
最後のあいさつの台詞がまた泣かせる。
まさかこの約2年後にああいうことになるとは…残念無念である。

CDに収録された分では、チエミは民謡・俗謡・唱歌を13曲も歌っている。
そしてさらにメドレーで洋楽を20数曲連続で歌い上げている。
どちらも並みの歌手では100%不可能な芸当である。
おまけに前者もヒット曲、後者もチエミのヒット曲である。
ここまでレパートリーが広い歌手は他にいない。
何より「ヒットさせている」、さすがのひばりも洋楽はヒットはしていない。
何事も一生懸命で、何でもモノにしてしまう。
そんなチエミの努力の結晶がこのロス公演に十二分に生きているよう思える。
少なくとも私は、残っているステージ音源ではこの音源が最もよく愛聴している。
リアルタイムで体験できなかった私にとって、この音源は特に宝物である。

ぜひBOXの中から、アルバムカット(?)して、普通のアルバムとしての発売し、より多くの人に聞いていただき、凄さを感じていただきたい。そう思う。

追伸
最近、美空ひばりのラストステージ音源もソフト化された。
ぜひそちらも聴いてみたい。もしかして、ソフト化はこの音源がきっかけかも。
少々辛いのだが。