今だから…昭和さ ある男のぼやき

主に昭和の流行歌のことについてぼやくブログです。時折映画/書籍にも触れます。

歌の世界はどこか夜~松尾和子

2005-07-29 14:40:23 | 昭和の名歌手たち
松尾和子、東京生まれの箱根育ち。
ナイトクラブかどこかで歌っていたところをフランク永井にスカウトされ
「グッド・ナイト」でデビュー。
B面は数年後にヒットし、一昔前のデュエットの定番「東京ナイトクラブ」
デビューで両面、ビクターの期待の星だったことは容易に想像がつく。

第2弾シングルがあの名曲中の名曲、「誰よりも君を愛す」。
この歌はアレンジが素晴らしい。イントロが特に。
詞も実に川内康範らしいもの。

そしてソロで「再会」のヒット。

私だけなのだろうが、「誰よりも君を愛す」「再会」この2曲は2番の歌詞が印象深い。テレビなどでは1・3番を歌うことが多いのだろうが、松尾の場合は1・2番を歌うことが多かったような気がする。間に合ってないので判らないが…。
両曲とも2番が肝、そう思えてならない。

松尾和子の歌にはどこか影がある。
彼女以外誰にも醸し出すことが出来ないムードだ。
「東京ナイトクラブ」のパフォーマンスがいい例である。
そのせいなのか彼女のヒット曲は昼のイメージが無い。
せいぜい「お座敷小唄」、これも夜の宴会のイメージだ。
トークはざっくばらんだったそうだが、歌のマイクを握ると夜の帳が下りる。
ムード歌謡の女王と言われるわけである。

作曲家の吉田正は松尾が早世したことを悔しがっていた。
「今こそ、松尾に歌ってほしかった歌があるのに…」と。
まさにその通り、病気ではないだけに、なおのこと惜しまれてならない。


余談であるが晩年の吉田は由紀さおりを絶賛していた。
彼女が歌った松尾和子ナンバーにいたく感動したとか。
そこに亡き松尾とは違う夜の空気を醸し出すムードがあったのだろう。
残念ながら、松尾の吉田作品を由紀さおりがレコーディングする機会は未だ無い。
吉田正はビクター専属、由紀さおりは東芝EMI専属という壁があるからだ。
吉田作品の吹き込みも超法規的措置で「お先にどうぞ/嘘つき」というシングルをビクターから出しただけである。
(あとは安田姉妹名義のアルバムで「寒い朝」だけである)
ぜひ「由紀さおり 名曲を歌う」といった趣のアルバムを出してほしい。
松尾和子や美空ひばり作品をしっかり自分色に染めて、聴かせることができる
数少ない歌手であるから…。
ピアノ1本で、姉と、という安っぽいことはしないで、バンドの演奏で。