今だから…昭和さ ある男のぼやき

主に昭和の流行歌のことについてぼやくブログです。時折映画/書籍にも触れます。

お千代節 対 服部メロディー

2006-11-08 08:32:36 | 戦後・歌謡曲

今、70年代の歌謡曲が密かに人気を集めているとか。
こういう「懐メロ」が人気を博すようになったのは、いつからなのでしょう。

私が知る限りでは昭和32年の映画「雨情」で、森繁久彌が歌った「船頭小唄」が最初であるように思います。
その後モリシゲは「ゴンドラの唄」もリバイバルヒットさせています。
この流れも手伝い、34年に村田英雄が楠木繁夫のカバー「人生劇場」を発売します。

昭和36年、ロカビリーで人気を博していた「3人ひろし」の一人・井上ひろしが「雨に咲く花」、これまたロカビリーで人気だった佐川満男が「無情の夢」を、それぞれロッカバラードにアレンジさせ、ヒット。
ですが、そのリバイバルヒットの代表格は、何と言ってもフランク永井「君恋し」。
その年のレコード大賞にまで輝き、リバイバルであることは今では忘れられています。

昭和38年、アイ・ジョージが「戦友」を、反戦歌の意味合いで歌い始め、このあたりから軍歌が再びリバイバルされ始めます。

昭和40年、東海林太郎の、(今で言うセルフカバーの)アルバムが当時の新記録を作る売り上げを出したあたりから、更に戦前~戦後の唄が再び人気を博すようになり、「懐メロブーム」が沸き起こってきます。
このあたりから、藤山一郎の助言もあり、声が出なくなったため、歌うのを止めていた高峰三枝子が再び歌い始めるようになります。
さらに明治百年もあり、そのブームは明治・大正の唄にまで及びます。

昭和43年、「懐かしの歌声」放送開始。これにより、「当時の」歌い手がさらにクローズアップされます。淡谷のり子や藤山一郎あたりのまだ前線で踏ん張っていたものから、すっかり忘れ去られたモノまで、ここぞばかりにみんな復活します。

レコード会社も、懐メロ歌手によるLP、人気歌手による懐メロLP、いろいろ出し、またそれがよく売れていました。古賀メロディーなどは特によく吹き込まれていたようです。

そのブーム真っ只中の昭和46年に一枚のアルバムが出ます。それが今回当ブログで取り上げます、「島倉千代子 服部メロディを歌う」です。
意外にもお千代さんは、このアルバムまで服部メロディーとはわずかに1曲しか縁がありません。これが縁となり、「月蒼く恋は命」(47年)、「あじさい旅情」(48年)と曲提供に至ります。
それにしても昭和歌謡史に残る大物作曲家&歌手がここまでまったく無縁というのは実に面白いです。
まあ、これはお千代さんに限りませんが。
さて作曲家である服部先生は、歌い手のお千代さんをどう思っていたか。
このLPに言葉を寄せています。


大絶賛です。
(まあ、この手のアルバムへ寄せる言葉に批判なんざある訳ありませんが・・・)
やはり気にはなっていたようです。
作曲家は自分のヒット曲を若手の歌手に歌うことを喜ぶ場合が多いです。
オリジナル歌手の歌い方が嫌、という場合も少なからずあるようです。
古賀政男は、森進一が歌う「人生の並木路」で号泣したそうです。
(このレコーディングでは森本人も自身の経験が重なり、号泣したとか)

では、服部先生絶賛のこのLP、私なりの感想を。

お千代さん、服部先生の楽曲と物凄く相性が良いなァ…と。
ホント、もっと早く一緒に仕事をしていたらお千代さんは演歌カテゴリに入れられずにすんだのかも知れなかったのに…と正直残念。

「セコハン娘」など山下毅雄「プレイガール」シリーズのようなスキャットアレンジになっていたり、「雨のブルース」「夜のプラットホーム」はなかにし礼による詩がアンコに挟まり、独自の世界を醸し出しています。
懐メロを今に生かす、というのがコンセプトだったのでは?

服部2代目こと、服部"記念樹"克久編曲による「蘇州夜曲」は語り継がれるべき名カバーで、見事にお千代さんの「蘇州夜曲」と化し、李香蘭(山口淑子)、渡辺はま子(&霧島昇)ともまた違う、完全なるポップスとなっています。

このアルバムは懐メロであって懐メロにあらず、見事なまでに昭和40年代の歌謡曲のアルバムなのである。四半世紀前の楽曲が違和感無く、こういう形に出来るあたり、服部良一がいかに先端を行く素晴らしい作曲家だったかということを痛感。
日本のポップスの父の称号は伊達ではないのです。

ちなみにカマトトムード全開でもあるので、その辺に注意が必要。
淡谷のり子はおそらく「アダス、このシトの歌い方嫌い」と言いそう…。

懐メロを見事にアレンジした、数年前流行だった懐メロカバーブームにも通じるこのアルバム、何とか再販を希望します。
そして、ポップスの歌い手である島倉千代子にもスポットが当たることを祈ります。
昭和40年代の歌謡曲ファンは聴いて損は無いでしょうね。

※曲目
夜のプラットホーム(オリジナル:淡谷のり子、二葉あき子)
蘇州夜曲(オリジナル:渡辺はま子&霧島昇)
風は海から(オリジナル:渡辺はま子)
アデュー上海(オリジナル:渡辺はま子)
銀座カンカン娘(オリジナル:高峰秀子、笠置シズ子)
雨の日ぐれ(オリジナル:二葉あき子)
小雨の丘(オリジナル:小夜福子)
別れのブルース(オリジナル:淡谷のり子)
セコハン娘(オリジナル:笠置シズ子)
胸の振り子(オリジナル:霧島昇)
雨のブルース(オリジナル:淡谷のり子)
花の素顔(オリジナル:藤山一郎・安藤まり子)
湖畔の宿(オリジナル:高峰三枝子)
小鳥売りの歌(オリジナル:松平晃)


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2 コメント

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はじめまして (むろんた)
2006-11-12 06:03:22
はじめまして。
凄い情報量ですね。すっかり読みいってしまいました。
私はアマチュアとして写真を撮ってまいりましたが、演歌の歌詞がわかるようになった頃からまともな写真が撮れるようになりました。
いつも演歌を歌いながら写真を撮っています。(嘘)

これからもよろしくお願いいたします。
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ありがとうございます(^.^) (函館のシト)
2006-11-12 14:12:43
むろんたさん
ありがとうございます、わざわざこんな辺鄙ブログにおいで頂きまして…。

不定期に更新してますので、気が向きましたら、たまに覗いて見てくださいm(_ _)m
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