吉松ひろむの日記

高麗陶磁器並びに李朝朝鮮、現代韓国に詳しい吉松ひろむの日記です。大正生まれ、大正ロマンのブログです。

昭和初期の大阪 十

2006年09月04日 05時49分56秒 | Weblog
昭和初期の大阪  十

 リレー独楽  三
 …中学校は金持ちの学校か?…
 ミシンを踏む母の台にうでと顔を乗せて訊いた。
 …金持ちじゃのうても苦学言うて頭が秀才の子が働きながら行けるけん…母さんも苦学  して洋服学校を出たんじゃき、あれがその証拠じや…
 顎をしゃくった先の長押に額がある。なにやら字がかいてあって名前だけが読めた。 …母ちゃんも秀才やったらぼくもそうやでェ…
 …そうともそうともY家は代々秀才の家じゃけに、死んだひい祖父さんはしょう偉い学  者で母ちゃんが子供の頃、寺子屋の先生しよったき…
 …ふーん、ぼくも勉強せにゃならん、タンクタンクロウの本、買うて、買うて!…
 …あれは漫画じゃろが、漫画はあかん!…
 粘ったが本は無理やった。
 ウメちゃんはタンクタンクロウの本やったらゲンちゃんから借りてあげるさかい…と言うたので飛び上がって喜んだ。
 タンクタンクロウはチョンマゲ頭の少年が真ん丸の鎧を着て手足が自由に四っつの穴からだしいれできるんで敵と戦って負けたことがない。それに坂は手足をひっこめて毬のようにころげるからあっと言う間に敵においつくのである。本は幼年倶楽部にのっていたが四十五銭もするんで手にはいらない。
 いよいよ独楽の鬼ごっこの日がやってきた。
 ゲンちゃんは同級生の子を二人もさそってきた。
 始める前の練習を見たら皆じょうずだった。