昭和初期の大阪 九
リレー独楽 二
自分でも驚くほど独楽まわしがうまくなって空中に強くなげても途中で紐を軽くひっぱり下から上に向かって曲線をえがくようにすると独楽は回転しながら見事に手の平におちてくるようになった。
そのまま動かずにどのくらいまわりつづけるのがうでのみせどころである。
ウメちゃんのはぼくの独楽がまわるのをやめてころりと手のひらで横になってもまだ回っている。
その分だけ駆けっこできるきまりだから鬼になかなかつかまらない。
独楽をかえてやってみたらやはりウメちゃんの手のひらのほうが長くまわっていた。
…ウメちゃんのはひっぱるのが強いんやろ!…
…そ、そ、そ、…
…そうなんやな!強くひっぱるとぼくの独楽は手におちてこんのや!…
ぼくはウメちゃんの不思議な手を見て驚いた。
独楽の芯が乗る所が白く固まって触るとかちんかちんになっていた。
…これや!芯ののっかるとこが鉄みたいや!…
ぼくは生まれつき独楽まわしの名人で母が言うように頭が秀才のウメちゃんは手のひらも秀才に出来とるんや…と思ってあきらめた。
ぼくはリレー独楽遊びはウメちゃんが考えたと思った。
碁会所の向こうの道に二階建ての家が五、六軒立っている。
一番手前の家は阪神電車会社に勤める父をもつタツちゃん兄弟、その一軒むこうがキシャの子のゲンちゃんの家で小学校一年生だ。
母はゲンちゃんのお父さんはキシャで偉い人なんや…と言う。
ぼくは汽車が大好きなので汽車の偉い人は運転しないで命令する人やと思っていた。
…新聞を作るキシャじゃけんえらいんじゃ…
…汽車は新聞を遠くまで運ぶんやろ…
…お前のは機関車じゃ、ゲンちゃんのお父は新聞を作る会社の記事を書く人や、頭が秀 才の人や…
…ほんまか!ウメちゃんもキシャになるろうか?…
…なろうと思えばなれるろうが銭のかかる中学校へ行かんとあかんさかい、桶屋さんで はのぅ…
ぼくはゲンちゃんも秀才やと思った。
いよいよリレー独楽の鬼ごっこを始める時がきた。
リレー独楽 二
自分でも驚くほど独楽まわしがうまくなって空中に強くなげても途中で紐を軽くひっぱり下から上に向かって曲線をえがくようにすると独楽は回転しながら見事に手の平におちてくるようになった。
そのまま動かずにどのくらいまわりつづけるのがうでのみせどころである。
ウメちゃんのはぼくの独楽がまわるのをやめてころりと手のひらで横になってもまだ回っている。
その分だけ駆けっこできるきまりだから鬼になかなかつかまらない。
独楽をかえてやってみたらやはりウメちゃんの手のひらのほうが長くまわっていた。
…ウメちゃんのはひっぱるのが強いんやろ!…
…そ、そ、そ、…
…そうなんやな!強くひっぱるとぼくの独楽は手におちてこんのや!…
ぼくはウメちゃんの不思議な手を見て驚いた。
独楽の芯が乗る所が白く固まって触るとかちんかちんになっていた。
…これや!芯ののっかるとこが鉄みたいや!…
ぼくは生まれつき独楽まわしの名人で母が言うように頭が秀才のウメちゃんは手のひらも秀才に出来とるんや…と思ってあきらめた。
ぼくはリレー独楽遊びはウメちゃんが考えたと思った。
碁会所の向こうの道に二階建ての家が五、六軒立っている。
一番手前の家は阪神電車会社に勤める父をもつタツちゃん兄弟、その一軒むこうがキシャの子のゲンちゃんの家で小学校一年生だ。
母はゲンちゃんのお父さんはキシャで偉い人なんや…と言う。
ぼくは汽車が大好きなので汽車の偉い人は運転しないで命令する人やと思っていた。
…新聞を作るキシャじゃけんえらいんじゃ…
…汽車は新聞を遠くまで運ぶんやろ…
…お前のは機関車じゃ、ゲンちゃんのお父は新聞を作る会社の記事を書く人や、頭が秀 才の人や…
…ほんまか!ウメちゃんもキシャになるろうか?…
…なろうと思えばなれるろうが銭のかかる中学校へ行かんとあかんさかい、桶屋さんで はのぅ…
ぼくはゲンちゃんも秀才やと思った。
いよいよリレー独楽の鬼ごっこを始める時がきた。