昭和初期の大阪 十二
目白
ウメちゃんちの道具部屋に四羽の羽が緑色の小鳥が小枝をいったりきたり跳ねていた。 目のまわりが白くて雀よりもちいさく、ウメちゃんは目白と言った。 チーチーチーといい声でぼくを見て可愛い白メガネでいったりきたりしている。
籠はウメちゃんのお父が竹のヒゴでつくった大きな籠である。
…買うたんか?…
…ち、ち、ち、やーう!…
…捕らえたんやな!セミ取り網で…
…ち、ち、!…
…天才やから手やなぁ!…
ウメちゃんは大きく首をふった。
…き、き、き、てみーや!…
ウメちゃんは奥の板を外して鳥黐(とりもち)の入った小さな缶を持ってきた。そばの小さな鳥籠には目白が一羽、ぱたぱた飛んでいる。
ウメちゃんが合図したのでぼくは目白籠と鳥黐を持って阿倍野原のむこうの森へでかけた。
突然ウメちゃんは口へ人差し指を立てた。
そして静かに木の小枝を拾って先から二十センチほど鳥黐をつばで練ってつけた。
木の太い枝に鳥黐をつけた小枝を横にさした鳥籠をつるしてそばをそっと離れた。そこから少し離れた草むらにぼくとウメちゃんはしゃがみこんで鳥籠の様子をうかがった。 ウメちゃんは不思議にも吃らずにチーチーチーと真似をした。
しばらくするとどこに隠れていたのか小鳥が飛んで来て籠の上にとまった。見ると同じ目白だ。
籠のなかの目白はしきりにチーチーやっている。
するとあっという間に鳥が横の小枝に舞い降りた途端、くるりと逆さ釣りになった。
ウメちゃんは猫が飛び掛かる様に素早く籠のそばへ走ってぶらさがった小鳥を鳥黐からはがし、籠の扉からなかへほうり込んでぼくを見てにっこり笑った。
ウメちゃんは胸をそらし、口笛ふきながら野原へでた。
家に戻るとちょうどウメちゃんのお父がリヤカーをひいて戻ったところだった。
目白
ウメちゃんちの道具部屋に四羽の羽が緑色の小鳥が小枝をいったりきたり跳ねていた。 目のまわりが白くて雀よりもちいさく、ウメちゃんは目白と言った。 チーチーチーといい声でぼくを見て可愛い白メガネでいったりきたりしている。
籠はウメちゃんのお父が竹のヒゴでつくった大きな籠である。
…買うたんか?…
…ち、ち、ち、やーう!…
…捕らえたんやな!セミ取り網で…
…ち、ち、!…
…天才やから手やなぁ!…
ウメちゃんは大きく首をふった。
…き、き、き、てみーや!…
ウメちゃんは奥の板を外して鳥黐(とりもち)の入った小さな缶を持ってきた。そばの小さな鳥籠には目白が一羽、ぱたぱた飛んでいる。
ウメちゃんが合図したのでぼくは目白籠と鳥黐を持って阿倍野原のむこうの森へでかけた。
突然ウメちゃんは口へ人差し指を立てた。
そして静かに木の小枝を拾って先から二十センチほど鳥黐をつばで練ってつけた。
木の太い枝に鳥黐をつけた小枝を横にさした鳥籠をつるしてそばをそっと離れた。そこから少し離れた草むらにぼくとウメちゃんはしゃがみこんで鳥籠の様子をうかがった。 ウメちゃんは不思議にも吃らずにチーチーチーと真似をした。
しばらくするとどこに隠れていたのか小鳥が飛んで来て籠の上にとまった。見ると同じ目白だ。
籠のなかの目白はしきりにチーチーやっている。
するとあっという間に鳥が横の小枝に舞い降りた途端、くるりと逆さ釣りになった。
ウメちゃんは猫が飛び掛かる様に素早く籠のそばへ走ってぶらさがった小鳥を鳥黐からはがし、籠の扉からなかへほうり込んでぼくを見てにっこり笑った。
ウメちゃんは胸をそらし、口笛ふきながら野原へでた。
家に戻るとちょうどウメちゃんのお父がリヤカーをひいて戻ったところだった。